夏の間はネット環境がなく、書き始めたのが九月十六日という失態をやらかしました。
完結目指して頑張りますので、応援よろしくお願いします。
灰薔薇は物言わぬ肉の塊に成り果てた。
こういう殺しても死なない様な奴は頭を潰すのに限る。
「銀薔薇……結界をさっさと解け!」
サーベルで頭部を叩き割る。勿論峰打ちで。
「いつ!!……だ、だれですの?!結界に集中しないと」
「灰薔薇は倒した。黒薔薇無事だ。さっさと解除しろ。殴る。分かったな」
「いつ!!……間もなく殴りましたわね?!もう間もなく解かれますので待ちなさい」
間と間でかけて——————かけてもねーし上手くもねーよ。なに"どうです?"てきな顔でこっち見てんだよ。チッ……左足の痛みでイライラしてきた。帰ったら暫らくは治療に専念するか。
「くっ付くかな……最終的に腕は義手にするにしても……そもそも治るのかこの足」
犠牲にしたサーベル二本は当主が代々受け継ぐ母から貰った方ではなく、魔術を仕込む事が出来る特別性の魔具だ。一本は腕と一緒に吹っ飛びサーベルだけ炎の中に飛び込み溶解。戦場を世話になった相棒が……尊い犠牲になったのだ。
「特別にショコちゃんに接触するのを許可します。台から降ろしなさい」
「そうしたいが黒薔薇が賢者の石の起点になっている。無理に動かせば何らかの異常が起こるぞ。なに心配するな。賢者の石のスペシャリストが控えている。お、解けたか」
「この疲労……エンジンに負荷を与え続けてエンストした気分ですわ」
「どんな気分だよ」
アストが心配そうに駆け寄ってくる。体をアストに預けぐっすり休みたいが、俺の
「黒薔薇を台から速く降ろせ!」
「分かってる!」
突如濃厚な殺意が空間を支配する。常軌を逸した存在が黒薔薇を飲み込んだ。
ソレは人間でも無ければ人形使いでも無い。
自動人形でもなければ禁忌人形でも無い。
血の通わないごつごつと固そうな灰色の肌。鎖された瞼からは血の涙を流し器の造形から十代後半の女性だと分かるが一回り巨大のせいか黒薔薇を体内に飲み込んでもまだ余裕があるように見える。虚無色の髪の石像は、慈愛に満ちた聖職者の様な微笑みからは想像できない程の喜び、怒り、悲しみ、憎悪、嫉妬…………殺意。
魂は物質として存在しているとか人間は記憶と精神さえ在れば器たる肉体は不必要などと言い実現しようとしている魔術師はいた。ハッキリとした定義はないが現に実現ている魔術師(一人は錬金術師)はこの場に三人いる。
一人は、金薔薇アストリッド・セト。自分の魔力の限界を生きた人間を材料にエネルギーにし、そのキャパシティを超える事に成功している。
一人は、白薔薇イルクオーレヴァンス・マーレ。最終形態で水に捕らわれた者の"生命力"を水に変換・還元する。
一人は、黄薔薇クレオ・ヘル・トリスメギストス。生きた人間の魂だけを抽出後、凝縮した正に魂のエネルギー結晶、賢者の石を錬成している。
三人の中で魂の物質化に成功しているのは、黄薔薇クレオ・ヘル・トリスメギストスのみ。
この場合の<魂>は<生命力>か<記憶と精神>の事を指すのか、はたまたそれら両方を指すのかは分からないが、この虚無色の髪の石像はコロッセオで殺し合いをされ、死刑にされた何千何万の
目の前の存在は黒薔薇と共に賢者の石を飲み込んだ。
もしも此奴が賢者の石のエネルギーを十全に引き出せ、尚且つ黒薔薇の能力を使えるなら——————。
『——————エクリヴァン・B・ヴィシーはお父様と一つになりました……あぁ、ついに……遂にこの日が来たのですね。我が一族の"復讐"が……世界に我が一族の名を刻む為の"悲願"が!!!』
此奴は灰薔薇なのか?そもそも俺は間に合わなかったのか!脳が潰れるほんの——————ほんの僅かなあの瞬間、器を捨てて"中身"を移動させやがった!!
「引き返せクレオ!!黒薔薇はもう——————」
「黒薔薇様を返せえええええええええええええええええええええ!!!」
「あの馬鹿が!」
クレオにはもう何を言っても意味がない。黒薔薇の事しか見ていない。
『トリスメギストス……此れこそ私の切り札。世界を変革させる為お父様が創り上げた<アインの石>を核にする、最も
虚無色の髪の石像がクレオに手を翳すその瞬間。
『おや?あーー……ブラットレイの人形の……メタトロンでしたか?そういえば貴女とセトには大変お世話になりましたからね。肉体強化等ばかり力を入れてきたブラットレイ家にこんな人形が創れたのが異常です。そう考えると私の計画が此処までずれたのは貴方のせいになりますねブラットレイ?』
「退け!体勢を立て直す!」
メタトロンは暴れるクレオの腰に手を回し離脱する。
『逃げるのですか?これはチャンスですよ?私はまだ完全に性能を発揮できていない今が倒すチャンスだと思いますが?』
「手負いの状態で殺り合うほど馬鹿じゃない。それに、どっちにしろ試したくてうずうずしてんだろ?」
『分かります?嗚呼、駄目ですね。永かった……本当に此処まで永かったんですよ?考えて考えて考えてただひたすら考えて私の技能とお父様が残した遺産と灰薔薇としての席をどう利用し活用すれば一族の悲願……復讐を成し遂げれるか……本当に考えました。薔薇の師団を崩すにはそれこそ人間が生きれる年月では短すぎる。だから私は最初に肉体を捨て、生まれた時から調整し続けてきた我が子を成人を迎えると冷却保存し、肉体に限界が訪れると器を入れ替えるを繰り返し繰り返し繰り返してきました。そして遂に、世界は真実を知るのです。世界を、国を、民を、人間を支配するのはこの私だと!』
攻撃が来る。満足に回避行動も出来ないこの足では殺られるだけだ。
だが、俺の傍にはアストがいって——————白薔薇が計画通り動いているなら。
「《"
『——————!!』
背後からの奇襲。水そのものになった白薔薇が水飛沫の様に細かくなり灰薔薇の背後に回り込んだのだ。全ての水の触手を束ね圧縮し心臓部分を貫きアインの石を破壊——————したかに思えた。
「な、なんなの……ソレ?!」
『こらこら勝手に出て来て。まったくしょうがないですね』
駄々っ子を叱るようにやれやれとため息をつく。
『成程。逃げるのは出まかせでしたか。それにしても……あんなに大きかった御三方が……あ、今は御二方ですね。その御二方がこんなにも小さく見えるだなんて……此れが"終章の獣"』
蛇、そんな生易しいモノではなく。
大蛇、それでは小さすぎる。
怪物、魔物——————大陸を飲み込むヨルムンガンドが相応しい。
誰もが呆然と見上げる仲、意外にも冷静だったのが三人。
エーインは蛇の天辺に佇む灰薔薇を狙撃する。狙うは心臓部。アレが人形である以上
メタトロンはクレオをエーインの部下に投げ渡すとそのまま主の元に急いで向かう。あのままでは回避も攻撃もままならない、主とアストリッドを回収しただこの場を脱出する事のみ考えていた。
呆然とするラグナの傍でアストリッドは冷静に打開策を練っていた。ただ彼を死なせたくない一心に。
『本調子ではないし……消耗しているとはいえ"三人の魔女"に私の魔術が何処まで効くのか試してみたいですね……』
《
どこまでも優しい声。心に染みこんでいくような俺を虜にし全てを許す言葉。この言葉に従えばどれだけ幸せか——————。だがその後に俺を貫いた冷たい刃は俺の凍りついた心を砕いた。
「グッ——————、これ……は……言霊か?」
じわりと左の太腿から血が広がる。血を失い、心身ともに疲れ果て、衰弱したとはいえ彼とて魔術師。こうも簡単に支配されたことに驚きを隠せない。咄嗟に自傷行為をしなければ自分はあの時点で己の刃で首を切り裂いていた。
白薔薇と銀薔薇は流石というべきか膝を折るも自我をしっかりと保っている。アストも同様だが左の小指を根元から圧し折っている。
エーインは——————自分と部下を撃ったのか。並みの判断力じゃないぞ。
『地を這う鼠を潰しなさい』
蛇の鼻孔が振り下ろされる。直撃すれば衝撃でコロッセオごと俺達は潰れる。
「メタトロン!」
「
腐毒の接触面から腐り果てて行く世界蛇。だが、質量がありすぎる。蛇を蝕む腐毒はそのまま俺達を道連れに突っ込んでくる。
「フレア」
拡散する光のショットガンは蛇を消滅させる。
だが、灰薔薇を消滅させるには至らない。
『面倒ですね、私の創造する子達と相性が悪い……』
「相性が悪いだと?その光を屈折させた亀がか?」
素材は不明だが光を屈折させるほどの甲羅。
メタトロンの光が爬虫類に防がれる。ぜってー消滅させてやる。
『魂が馴染んできましたね。そろそろですね……《第三封印"終章の獣"——————開放》』
魂の流脈が土塊に命を宿し、その役割に準じた形に生まれ変わっていく。
"人狼"
大きさ二メートルの巨体はそれだけで脅威。武器である牙と爪は肉を紙細工のように引き裂く。
あの形状はスピードタイプ。数は——————今も増え続けている。
『試運転には丁度いい肩慣らしです。子供たちよ、喰らいなさい』
腐毒を撒き散らすアストだが犠牲を厭わない人狼はその身を犠牲に腐毒を抑え込み、また別の人狼が飛び越えて突き進む。
(何て数だ。一匹一匹が犠牲を厭わず連携するのが此処まで厄介か!)
アストの取りこぼしを狙い撃っているが着々にその数は増していく。
灰薔薇を狙いたいがムカつく爬虫類が身を守っている。何よりちょっとでも気を差せば人狼に殺されるのはこっちだ。
メタトロンを前衛にもう満足に動けない俺はひたすら魔力を送る。
「な……」
ラグナの足元の地面が突如陥没する。支えが右足しかなくバランスを崩し、体制を崩さぬようサーベルを倒れた方へ突き刺す。
激痛。地面から一匹のワームが右足に喰らいついている。
すぐさまサーベルで真っ二つにするが時すでに遅し。両足はもう使い物にならない。
それでも魔力を途切れさせずメタトロンに送っているのは見事としか言いようがない。
「主!!」
戦闘経験が少ないメタトロンは主を心配するあまり敵から目を逸らした。
それだけあれば——————十分。
「~~~ッ!!この獣風情が!!」
人狼の爪がメタトロンの腹を裂いた。
眉間にレーザー光線を撃ちこむが、次から次へと体を裂かれて行く。
「ラグナ!!待ってて、いま、そっちに行くから!!」
攻性即呪法<恩賜の腐毒>をラグナを助ける為に用いればその瞬間私は死ぬ。
でも、それでも——————!!
「私はラグナを助ける!!」
ラグナとメタトロンに取り付いていたワームと人狼を的確に全滅させる。
喉に人狼の牙が迫る。大きな口は私の首を包囲している。後は咢をほんの少し動かすだけで私の首は胴体から離れるだろう。
もう間に合わない。牙がゆっくりと私の皮膚に突き刺す。
手刀で人狼の首を切り裂くため動いてるが間に合わないだろう。
時間が遅く感じる。牙が肉に食い込む感触がリアルタイムで感じる。
ラグナ——————私は——————貴方を——————
「諦めるのは早いのでなくて?」
アストの首に噛み付こうとした人狼が一瞬で灰になる。
これは——————
「僕もうねむい……」
「こんな時くらいシャキッとしなさい!エクリヴァン・B・ヴィシーを止めれるのは私たちしかいないのですから」
最強の魔女の魔女の称号を欲しい侭にする"三人の魔女"。
「白薔薇様!銀薔薇様!」
その称号に偽りはない。
『あら、結構の数を御二方に割いたのに早い到着で』
「こっちみたいに無限湧きしてないし」
「さっさと片付けて下準備をしていましたの」
心底楽しそうに灰薔薇は攻撃を一旦停止し此方の出方を待つ。
「アストリッド、その男を連れて彼方の方角へ。クレオが視てくれますわ」
「で、ですが……」
「行きなさい!貴方はその男を死なせたいの?!」
アストは驚きに目を見開くが、感謝の意を伝えラグナを運んで行った。
「……私のキャラじゃありませんの」
「ギーかっこいいー」
「ちゃ、ちゃかすのもいい加減におし!あくまで……そう!あくまで戦略的にあの二人には生きて貰わないと困りますの!」
「ふふふ」
「な、なんですのその生まれたての小鳥を見る目わ!」
「小鳥じゃなくて子豚だよ?」
「ど……どうやら私に本格的に殺されたいようですわね……」
相変わらずのこの二人。顔を合わせれば喧嘩喧嘩口喧嘩。
だが、目的が一致しているこの二人は互いの事を信頼し合っている。
『態々御二方がその身を挺して逃がす価値があるのですか?』
「お聞きしますが、何故私たちではなくあの二人を集中的に狙ってましたの?」
『……』
「そういう事です」
「この半径一〇キロの結界は僕たちを逃がさない為の檻。その器に乗り移ってから張ったね?」
「私達を逃がさない為に張ったのはいいですがそれは思い違いですわ。編みに掛かったのは貴女自身、この結界は貴女が逃がさない為の牢獄」
「キンとアオは貴女の天敵、相性最悪。けど、僕は負ける気は鼻から無い」
「ショコちゃんを還してくれるのでしたら半殺しで済ましますわよ?」
『《第五から第一封印"終章の獣"——————開放ォォォオオオオオオ!!!!』
大小様々な生物。その全てが殺戮に特化した生き物たち。
「こうやってコンビ組むの久しぶりだね」
「不本意ですがそのようですわ」
互いを認める不器用な二人。戦いの狼煙を告げる。
「逝きますわよ、白薔薇イルクオーレヴァンス・マーレ」
「僕に当てないでね、銀薔薇アン・ヴァミリオ・ラルジャフラム」
二人は演唱する。黒薔薇を助け出すため、互いが最強だと、二人だと無敵だと——————
「《偉大なる広大な海を祖に神は生命を創造し破壊の涙を零す——————
それは生命を洗い流す激流や土砂となり、罪深き咎人を祖へと還す——————
海は生命を引き摺り込み肉体を凍てつく深海へと導く祖の守護者なり——————
その名は海魔、その役は暴食、顕現せよ、我が身に集いて力と為せ——————》」
「《"
「《世界を構築する五大元素の一つ、偉大なる始まりの炎よ——————
それは生命を育む恵みの光にして、邪悪を罰する裁きの光なり——————
それは穏やかな幸福を満たすと同時、冷たき闇を滅する凍える不幸なり——————
その名は炎、その役は剣——————
顕現せよ、我が身を喰らいて力と為せ——————》」
「《"
水の怪物が姿を成し。
炎の巨人が誕生する。
「「ここからは虐殺だ(ですわ)」」
他アニメ・漫画から使わせていただいたキャラと能力。
①戦う司書
※戦う司書のラスボスです。
②とある魔術の禁書目録
※魔術師ステイル=マグヌスの魔術。
今回はちょっといい加減ですが此れで終わります。