結社において男性とは非常に珍しい。結社の幹部のほとんどが女性なのだ。だが、過去の記録を確認したところ幹部は男性の方が多いのだ。いや、多かったと言うべきか。
約2000年前に設立された最古の魔術結社。ネロ皇帝の弾圧から逃れるために地下に潜ったキリスト教徒の集まりが始まりとされ、最初は男性しか幹部になれなかった。しかし、何百年と経ちどのような事があったのかは定かでないが、特例として初の女性を幹部一席にへと置いた。代々薔薇の一角を継承してきた男性共は当初初の女幹部を侮っていた。所詮女だと——————。
薔薇になる条件は血でも家柄でもない。確かに最初の何代かは血と家柄で薔薇を継承していた。だが時代がそれを許さなかった。
薔薇の一輪となる権利は以下の三つ、『実力』・『技術』・『権力』この三つ項目のいずれかが秀でている者に薔薇は与えられた。そんな実力主義の時代に女性の身で薔薇を掴み取った彼女はやはり別格なのだろう。だが、どんなに実力があろうが時間——————老いには勝てない。
実際薔薇の権力を振るってきた男性達は50を越えると指輪を次の世代に明け渡してきた。しかし、彼女は違った。彼女は半世紀経とうが二十代の若さを保ち続けた。
次々と世代が変わっていく中、彼女だけは変わらず薔薇に居続けた——————それから狂い始めたのかもしれない。
時が経ち大幹部へなった彼女は最も発言力がある存在へと到った。そして彼女は薔薇の一輪になる三つの項目に新しく『美』を加えた。
実力——————力を
技術——————己の作品を
権力——————全てを手の平の上で
美——————―変わらぬ美しさを
<それこそ薔薇を名乗るに相応しい者。この十人の頂きに選ばれし存在>
この教えは彼女が死してなお残り続けた。そして、数世紀が経ち薔薇の半数以上が女性となり、美しさが重視されるようになった。例え実力・技術・権力のいづれか充たそうが美しくなければ薔薇は与えられなかった。
設立された当初とは目的も構成も意図も異なる。今となっては男性が結社の幹部になるのは難しい時代だ。そんな中蒼薔薇の指輪を所持する彼はやはり天才なのだろう。
そんな憧れの彼と二人っきり……恥ずかしくて顔が見れない!頬が熱い、ううう……絶対真っ赤です。こんな顔では彼を見る事は出来ません。
何故でしょうか。いつの只歩くだけの散歩道が今日は異様に長く感じる。
緊張している。この私が?ええい、意識したら余計に緊張してきました。ここは一度深呼吸をして落ち着きましょう。スーハースーハー——————……・・・・よしっ!
「どうした?」
「ふにゃー!!」
「……すまない、いきなり声をかけて驚かせてしまったようだ」
「その様な事はありません!声を掛けて貰い嬉しさしかありません!!」
「……そうか」
ヤバい!絶対変に思われた。何か話を振らないと……
「いい……天気ですね」
「そうだな」
「……」
「……」
話が弾まない!ええっとこの場合はどうすれば——————仲を進展させる為に何か良いアイディアはないか考察するが突如自動人形を引き連れたあからさまに怪しいフードを被った複数人の魔術師に囲まれる。
「金薔薇アストリッド・セトだな」
「我々と来てもらおうか」
「ソコの男が如何なってもいいなら話は別だが?」
「噂以上の美しさだ」
「引き渡す前に俺等だけで楽しまね?」
「……」
ここまでの接近を許しあまつさえこんな下賤な輩に彼を危険な目に合わせてしまった……何より好い雰囲気(?)が台無しです!
「黙ってたら分からないだろ」
「我々の標的は金薔薇だ。隣の男は殺すぞ」
「隣の男は人質に使おう」
「お持ち帰りしたい」
「もしかして怖がっちゃった?大丈夫優しくするから、最初はね♪」
「……」
こんな三流屑魔術師に接近されるまで気づかないなんて。そこまで私は彼の事で頭がいっぱいっていうこと!?ああ、けど、—————
「アストリッド・セト。今の会話からこいつ等は敵と認識して問題ないか?」
「あ、っは、はい!」
「……そうか」
彼はゆっくりとした動作で腰に差してある刀に手を掛ける。囲んでいた三流屑魔術師もそれに警戒はするが自動人形相手に刀で挑む彼を馬鹿にしたように失笑いしている。
"キンッ"
刀を鞘に収める音が響いた。金に雇われただけの三流屑魔術師には気付いたら刀を鞘に収めていたと、見たまんまの事しか思わないだろう。だが、同じく『化け物』と称される私はしっかりと視ることが出来た。念動を纏った刀が鞘から抜かれ一太刀で自動人形ごと三流屑魔術師の首を斬りつけ鞘に収める。
『
「さて、散歩の続きと行こうか」
目の前には差し出された手。体温が上昇し体が火照る。六人の命を奪いながら先程と変わらないしゃべり方。彼にとっては道端の雑草を踏みつけるのと何ら変わりないのだ。命を奪うことだけに特化した技術。奪う事しかできない殺人技。人が人を殺める時、その瞬間必ず殺気が存在する。人を殺し慣れた殺人鬼でも僅かながら殺気は存在する。彼にはそれが無いのだ。
予想通り……いや、予想以上の『化け物』。鬼才?天才?誰が言い出したか知らないが間違っている。彼こそ十九世紀最強——————否、『最凶』の天災なのだ。
「……////はい」
差し出された手を勇気を振り絞って握る。この手をずっと握っていたい。私は、彼を見れば見るほど……触れれば触れただけその存在が私のナカで大きくなっていくのを感じた。
「私の呼び名アストリッド・セトでは少々固い感じがするので……えっと……あの……アストとお呼び下さい」
「ん、そうか?君がそういうなら次からはアストと呼ぼう」
あぁ。名前を呼ばれただけでこんなにも胸が煩いとは……破裂しそうです。けどこれから彼にアストと呼ばれるのだから結果オーライです。
そういえば、本当に今更ながら——————私、まだ彼の名前を知らない。
感想、アドバイス等お願いします。