「君には衣食住を提供するよ。その代わり私の娘冠の専属執事にならないか?」
「へ‼」
この人何言ってんだ、屋敷に入った途端俺みたいな見知らぬおっさんにいきなり執事になれだと。
「冠も君の事を気に入っている。勿論ここに住んでも構わない。」
「そうか、そりゃいい案だな。」
「どうだい?この案を呑む気になったかい。」
「だがな、俺みたいな奴をここで雇っていいのか。ひょっとしたら財産目当ての悪党かもしれないぜ」
「大丈夫、セージそんな人じゃない。」
「おいおい、なんでそんな簡単にそう言えるんだ。」
「こう見えても人を見る目はある。」
おいおい冠、もし俺が悪人に見えないってんなら眼科行った方がいいぞ。俺のどこが悪人に見えないってんだ、今の俺髪ボサボサだし無精髭生えてるし、不審者と思われても可笑しくない格好だぞ。
「確かに今の格好怪しいけど人は見た目じゃない。」
「お前人の心読めるのかよ。」
「セージが解りやすいだけ。」
「さいですか。」
「兎に角、冠も君を気に入ってるんだ。ここで働いて見たらどうだい?給料もそこそこ出す。」
「応よ、まさか執事をやる日が来るとはな。この、男門脇誠児、千石家の執事引き受けるぜ。」
「よろしくセージ。」
「あぁよろしくな、冠お嬢様。」
それから俺は千石家の執事となり、執事の仕事を覚え、冠の世話に育むのだった。
「ほらお嬢様、起きてくださいよ、朝だぞ。」
「う~ん。」
「起きろって。」
俺は冠から布団を剥ぎ取り、冠の身体を揺する。
「お嬢様、朝食の用意出来ましたよ。」
俺がそう言うと、冠は素早い速さで飛び起きる。ホントお嬢様食べ物の事になると目の色変わるな。
「セージ、着替えさせて。」
「自分で着替えて下さいよ、自分の事は自分でやるって行ったじゃないですか。」
俺はそう言って部屋を出ようとすると冠に袖を掴まれる。
「着替えさせて。」
「だからお嬢様。」
「着替えさせて‼」
「解りましたよ。今回だけだぞ。」
つい言う事を聞いてしまった。これではお嬢様のためにならん。まぁ起きてくれたからいいけど。
朝食を済ませてから俺は掃除をしたり洗濯をしたり庭の手入れをしたり料理をしたりと次々と仕事をこなす。その夜俺は晩飯を食べにチビ太のおでん屋に向かう。
「晩飯におでん食いに行くか。」
「おでん楽しみ。」
そのまま俺はお嬢様と共におでん屋に向かう結局又行くことになって
「ってお嬢様なんでここに。」
「セージ、私もおでん食べたい。」
「いいんですかお嬢様、旦那様に怒られても知りませんよ。」
「大丈夫、晩御飯はセージと食べると言ってきたから。」
「さいですか。」
俺は観念してそのままおでん屋に向かう。おでん屋に着くと今回は六つ子達が先に来ていた。
「なんだよ、もう来ないんじゃなかったのかよ。」
「わりぃなチビ太、事情が変わったんでな。」
そう言って俺とお嬢様はチビ太が新たに用意した椅子に座る。
「ねーねーところでその子誰?おじさんの娘さん?」
松野家五男の十四松が冠の事を聞いてきた。そして俺は彼女の下で働いている事を話した。
「へぇー門脇さん執事になったんだ。」
そう言ったのは三男のチョロ松である。
「マジかよ、門脇のおっさんが執事とか想像出来ねぇよ。」
長男のおそ松はそのまま爆笑する。
「でもいいんじゃない?千石家の執事だから給料はいいよね。」
六男のトド松が給料の話を振る。
「なぁトド松、千石家ってなんだ。」
「知らないのおそ松兄さん、千石家って言ったらそこそこ有名な財閥だよ。」
おいこらトド松、そこそことか言ってんじゃねぇよ。まぁ確かに知っているのはごく一部の人間だけど。
「マジか!!だったら俺もそこで働こ。」
「おそ松兄さん、絶対財産目当てでしょ。」
チョロ松に釘を刺されて黙り込むおそ松、図星か。
「ところでリトルレディ今夜は俺と共に夜を明かそうぜ。」
「ふぇ!?」
次男のカラ松が冠に接近し、冠はおどおどとした表情になる。
「セージ」
「怖がらなくていいんだぜリトルレディ。」
そのまま接近を続けるカラ松だが、
「やめろクソ松」
四男の一松に止められる。
「何してるのさロリコン松兄さん。」
そのままトド松に止めをさされるカラ松であった。
「何を言うトッティ、こんな小さくても10年すれば」
「ぷーーー」
カラ松の言葉に冠は頬を膨らます。
「ちょっとカラ松、なんか冠ちゃん怒ってるんだけど。」
「おいどうしたんだリトルレディ。」
チョロ松に指摘されて冠の怒りに気付くカラ松。
「もしかして身長気にしてるんじゃないの。」
トド松がそう言う。
「気にしてんだよ、身長。」
「そうなのか、すまないリトルレディ。」
俺がそう言うと、カラ松は必死に冠の機嫌を直そうとする。
「チビ太、卵一個。」
「あいよ。」
俺はチビ太から卵を受け取り、冠に差し出す。
「ほら、これ食って機嫌直せ、」
冠は箸で卵を掴み嬉しそうに食べる。どうやら機嫌が直ったようだ。
「食べ物で機嫌直るんだ。」
そのまま冠は竹輪、はんぺん、蒟蒻、牛スジ、餅巾着、昆布、大根と次々と食べ続けた。
「お嬢様、そろそろ帰りますよ。」
「なんだよおっさん、もう帰るのかよ。」
六つ子達はもう酔いつぶれている。因みに俺は酒は飲んでいない。
「ほらチビ太、代金だ。」
俺は自分とお嬢様の分を払う。
「おっさん、俺達の分も払ってくれよ。」
「知るか、いい加減働けお前ら。」
「母さんみてぇな事言うなよ。」
俺はそのままその場を去る。
次の日、俺は又仕事をこなす。そして夕飯時、
「セージ、夕飯の用意できた。」
老執事の田中さんが指を鳴らすと、料理が運ばれてきた。
「こっ、これは。」
俺が皿を見ると、そこには人参、じゃがいも、玉葱、キャベツ、コーン、ベーコンの入ったコンソメスープがあった。これは俺の亡きお袋がよく作ってくれたスープ。
「少しでも誠児様の孤独を癒してあげたいとお嬢様が一人でお作りになりました。」
「美味しくなかったらゴメン。」
「お嬢様。」
俺は涙を流しながらスプーンでスープを掬いそのまま飲む。
「どう、セージ。」
「お嬢様、今まで食べた中で一番美味しいです。」
俺は夕食を食べ終えた後、風呂に入る。やっぱり執事の生活も悪くないな。
「セ~ジ~背中流しにきた~。」
前言撤回、俺このままやっていけるのか。