本当についてこれる奴だけついてこいなお話なんですが、こんなに沢山の人に読んで頂けて感謝です。
では、駄文ですがお付き合いください。
そうだ。私は彼女を応援すると決めた。
たとえ世界を敵に回すことになろうとも――
この邂逅が仕組まれた物であったとしても――
この身体が彼女に塗り替えられてしまったとしても――
彼女の想い人にどのような理由があったとしても――
恋する乙女の想いを蔑ろにしていい訳が無いのだから
***
立花から告白された。
正直どうしていいかわからん。
いまだに、自分が彼女の隣にいていい人間とは思えないのだ。
そう、今まで自分がやってきたことを考えれば、俺はあのまっすぐな少女の隣にいてはいけない。
そう、誰が赦そうとも、他でもない比企谷八幡が赦せる筈が無いのだ。
結論は出ている。
出ている筈なのに何故こうも後ろ髪を引かれる?
いつから自分はこんなにも弱くなってしまったのだ?
結局、自分の心に整理など付かず、半端な想いのまま、帰路に付くことになった。
…そう言えば、フィーネさんの計画決行って明日だったな。
***
「八幡!あのバカから聞いたけど、もう大丈夫なのか!!?」
帰宅早々、雪音に問い詰められる。
「大丈夫かどうかでいうと大丈夫じゃねぇよ…だから、今すぐ離れてくれ。近い」
「良かった…大丈夫みたいだな!」
雪音さん?人の話聞いてた?
それより、フィーネさんの方何とかしなきゃいけねぇんだよ。
「あー…少し真面目な話していいか?」
「?おう、あたしは構わねぇぞ?」
「今からフィーネさんを説得に行く。もし俺が今日中に帰って来なかったら、小町を避難させてお前も逃げてくれ」
「はぁ!?お前何言ってんだ!?ただでさえ狙われてたってぇのに1人で行くなんて…自殺行為じゃねぇか!?」
「どっちにしても、今からじゃ俺1人じゃねぇと間に合わねぇんだ。お前らが来て、下手に刺激する方がまずい」
「…本当に大丈夫なんだろうな?」
「確証はねぇけどな」
「…まぁ、信じて待ってやるのも嫁の務めだ。信じてやるよ」
「…お前、本当にいい女だな」
俺なんかには勿体ない。最高にいい女だ。
「へへ、あったりめぇだ!今さら気付くなんて遅えよ!」
そう言って微笑む彼女は、本当に見惚れてしまう程のいい笑顔をしていた。
***
二課の研究室のドアを開ける。
「来たか…立花響が訪ねて来た時から、もう一度君が来るような気がしていたよ」
「そりゃどうも…」
行動が読まれている?
罠があると見た方がいいか?
「大方、私を止めに来た、といったところだろう?」
「まぁ、そうっすね。ただ、その前に具体的に何をするつもりなのか聞きたいっすね」
フィーネさんがこちらに向き直す。
「月を破壊する」
は?月を?何で?
「月にはバラルの呪詛という名の呪いを振り撒く遺跡がある。それを破壊し、本来、人が持っていた相互理解能力、統一言語を取り戻す」
急に話のスケールが爆上がりして意味がわかんねぇんだけど…
「そもそも、君は私の事をどう認識している?」
「…フィーネって名を自称する櫻井了子さん?」
「…あながち間違いという訳でも無いのが腹立たしいな…」
え?違うの?
てっきり、櫻井さんが中二的な何かを患ってるんだと思ってたんだが…
「私は先史文明時代に巫女を務めていた。何度も転生を繰り返し今に至っている」
転生とか先史文明時代とかちょくちょく俺の黒歴史を刺激する単語が出てきたな…
くっ!鎮まれ俺の右手!
「…何だその目は?…まぁいい。私が元いた時代には、人は統一言語を利用して、完全なる相互理解が出来ていた。だが、ある日突然、あのお方によってそれが奪われた。それがバラルの呪詛だ」
…完全なる相互理解だと?
ハッ、笑わせる。そんなものはあり得ない。
そんな
「解るか!?統一言語を使い、あのお方に恋心を抱いた私に対して、あのお方はそれを一方的に奪ったのだ!赦せる筈が無いだろう!?」
フィーネさんの口調が強くなる。
それがあなたの目的ですか…事実であれば、同情の余地もあるし、統一言語とやらに興味が無い訳でも無い。
…しかし、
「月を破壊した事による被害はどの程度なのでしょうね?」
「…破壊そのものによる被害と、その後の混乱で人類の八割は失われるだろうな」
そう、
確かに人同士の完全なる相互理解が出来るのであれば、それは理想だし、本物だ。
だが、その為に必要な犠牲が人類の八割であれば、到底釣り合う内容ではない。
ずっと欲していた物が、そんな犠牲の先にしか得られない物であるなら、そんな物はいらない。
俺が欲しい物は、そんな見せかけの作り物では無い。
俺が欲しい本物は、まっすぐな少女がまっすぐなままであれる世界でなくては意味が無い。
「なら…止めるしか無いっすね」
「…だろうな。それが普通だ。協力しようなど、普通であれば狂人の所業だ」
?何だこの違和感…何を見落としている?
何故そこで協力なんて単語が出てくる?
「だが、準備してきたと言っただろう?ここまで話したのだ。君自身も計画の一部とは思わなかったか?」
!?しまっ…
フィーネさんにスプレーのようなものを吹きかけられ、急激に虚脱感に襲われる。
「アンチLiNKER…眉唾物だと思っていたが、融合症例の君には高い効果が出ている様だな?」
フィーネさんがゆっくり近付いてくる。
…このアラサー、やっぱり俺の身体を狙ってたんじゃねぇか…
「さて、君には最後の実験に付き合って貰うぞ?」
フィーネさんの笑みが、強くなる。
薄れ行く意識と共に、脳裏に浮かんだのは、不思議と、あのまっすぐな少女の笑顔だった。
それぞれの第0話が一巡したと言ったな?
すまんな。あれは嘘だ。
このお話の上で、重要な意味を持つ彼女の存在は、この回まで伏せておきたかったのです。