12月某日…
旧特異対策機動部二課仮設本部の一室に呼び出された私こと比企谷小町はとても焦っている。
なぜなら…
「小町ちゃん!何とかしてハチ君とクリスマス二人きりになれないかな!?」
「おい、バカ!バカも休み休み言いやがれ!八幡はあたしと一緒に過ごす予定だ!」
「だから比企谷は私に告白して来たと何度も言っているだろう!当然、クリスマスは恋人である私に権利がある!」
「妄想も大概にした方がいい。八幡は私と切ちゃんが予約済み」
「厨二病の妄想乙デース!」
「あなた達いい加減にしなさい!彼の気持ちが最優先よ!その場合は当然、私が選ばれる事になるでしょうけどね?」
これである。
みんな、お兄ちゃんとクリスマスを過ごしたくて、一歩も引く気は無いみたい。
これだけ拗れるなら、みんなでクリスマスパーティーじゃダメなのかな…?
ダメなんだろうなぁ…
ていうか、響さんは未来さん放置して大丈夫なんだろうか?
小町的に絶対大丈夫じゃない予感しかしないんですけど…
後、何を勘違いしたのか知らないけど、翼さんの中ではいつの間にかお兄ちゃんと恋人同士という事になっている。
お兄ちゃんなら恋人が出来た時点で挙動不審になったり何かしらのリアクションがあるハズだから、勘違いで間違いないと思うけど…
でもクリスマスは確かにお兄ちゃんと距離を詰めるには格好のイベントだから、みんなの気持ちもわからないでもない。
「み、皆さん落ち着いてください…」
さて、どうしよう…
正直、クリスマスを誰と過ごすかなんて、お兄ちゃんの答えはほぼ決まっている。
あの自称ぼっちでヘタレなお兄ちゃんならお義姉ちゃん候補がこれだけいたとしても、十中八九小町と言うに違いない。
でも、それをただ伝えてもみんなは絶対に納得しないだろう…
だから、小町的には当たり障りの無いクリスマスパーティーに持っていきたいのだ。
「正直、この中から誰かを選んで過ごすなんて、あの兄がやる訳ないです。そんな事するくらいならあの兄なら小町と過ごすとか言いかねません。皆さんならわかるでしょう?」
「う…確かにハチ君なら言いそう…」
「そうね…悔しいけど目に浮かぶわ…」
うん、みんなお兄ちゃんの事を好きなだけあって、ある程度お兄ちゃんの事は理解してるね?
「後、翼さんの恋人宣言は残念ながら勘違いだと思います。お兄ちゃんに恋人が出来たっぽいリアクションが全然ありませんので」
「な!?そんな馬鹿な!?」
でもでも、恋愛感情が無い時はお義姉ちゃん最有力候補だったのは間違いないですよ?
「くっ、だからとてっ!私が引き下がる道理などありはしない!」
「翼さんにだって負けません!」
「あたしが絶対に勝ち取ってやるから指咥えて見てやがれ!」
「あら?私だって負ける訳にはいかないわ?」
「それはみんな一緒、私だって負けるつもりはない。相手が切ちゃんやマリアでも絶対」
「絶対の絶対にアタシが勝つデスよ!」
うーん、でも正直、翼さんの場合は恋愛感情が無いからお兄ちゃんも惹かれてた部分が無い訳でもないしなぁ…
追わない人には自然に接するけど、追われると逃げるめんどくさい兄なのだ。
その点、今は全員で追いかけてる状態なので、お兄ちゃんが逃げるのは目に見えている。
なので、お兄ちゃんが逃げない為の土台作りが必要だ。
ほんと、めんどくさいお兄ちゃんだなぁ…
「という訳で、今回は合同クリスマスパーティーを提案します」
「まぁ…仕方ねぇか…」
「妥協案としては順当…」
「そうデスね…」
でもでも?ただクリスマスパーティーをやるだけというのも、一向に進展の無いお兄ちゃんの恋愛事情を考えると最善でもないと小町は思うのです。
「ただし!」
「?」
全員の注目が小町に集まる。
「合同クリスマスパーティーの最中にそれぞれ、お兄ちゃんと二人きりになるチャンスを平等に譲り合うというのはどうでしょう?」
「なるほど…それなら…」
「チャンスを生かせるかどうかは自分次第という訳ね?」
「ですです。ルールは、お互いに邪魔だけは絶対にしない。後、過度のスキンシップもお兄ちゃんが絶対に逃げるのでナシです。特にクリスお義姉ちゃんとマリアさんは自重してください」
隙を突いてお兄ちゃんにキスしたこの二人は特に要注意だから釘を刺しておかないとね…
行為がエスカレートしたら、確実にお兄ちゃんは逃げるだろう。
「うっ…わーったよ」
「でも、彼から求められた場合は応じてもいいのよね?」
マリアさん…自信満々ですね…
「あのヘタレのお兄ちゃんの事だから万に一つも無いと思いますが、その場合は構わないです」
「たとえ万策尽きたとしても、一万と一手目がきっとあるはずよ!」
もの凄いポジティブ思考ですね…
さすが全世界に全裸を晒して尚、今もテレビに出続けてるだけありますね…
年上で包容力もあるし…
しかも、全然現実的じゃなかったあの専業主夫という希望でさえもこの人なら叶えてしまえる。
…あれ?もしかして、お義姉ちゃんに一番近いのって実はこの人なんじゃ…?
「じゃあ、今一度お互いに絶対に邪魔しない事を約束してください。当日は、違反者が出た時の為に未来さんにも来てもらいます」
「うへぇ、何で未来まで…」
「…あの人には逆らえない…」
「あの人を敵に回すくらいなら、司令の特訓フルコースの方がナンボかマシデスよ…」
よし、これで未来さんの方も大丈夫だね?
響さんには悪いけど、積極的に小町も関わる以上、小町も命が惜しいのです…
「それじゃあ、お兄ちゃんの説得は小町にお任せください」
正直、これが一番めんどくさいんだけど、乗り掛かった船だし仕方ないかぁ…
小町はいつでもお兄ちゃんの幸せの為なら、がんばれるのです!
「では、順番を決めるか!初手は当然私が頂く!初手より奥義にてつかまつる!」
「何当然のように主張してやがんだよ!?あたしに決まってるだろうが!」
「一番をもぎ取る為なら、私…戦います!」
「ままならない想いは、力づくで押し通すしかないじゃないデスか!」
「勝つのは私」
「…普通にくじ引きじゃダメなのかしら…」
またこれである…この人達は…
マリアさん、もっと強く主張してください!
この人達の争いに巻き込まれたら、小町の命がいくつあっても足りないですよ…
***
帰宅した私はお兄ちゃんのところに行く。
どうせお兄ちゃんの事だから、クリスマスに予定なんて無いだろうけど、みんなに言った手前一応確認しておかないとね。
「お兄ちゃん?」
「あん?どうした、小町?」
「クリスマスは予定あるの?」
「フッ、聞いて驚け?今年は板場達とオールナイトでプリキ○アを見る予定だ!」
…は?よりにもよって何でその日に予定あるの!?
…ヤバッ、マジでどうしよう…
その後、お兄ちゃんとお義姉ちゃん候補達両方を説得の末、弓美さん達にもクリスマスパーティーに参加してもらう事で事なきを得た。
ほんと、今年に入ってから、お兄ちゃんの天然ジゴロ関連のせいで小町の命の危険が急激に増えたように思う。
小町としてはお兄ちゃんの意志を尊重したいけど…本当に危ないと思ったら、奥の手の未来さんとくっつけてしまおう。
そう心に誓ったのだった。
という訳で前編です。
後編はクリスマス当日のお話になります。
近日中には書き上がると思いますので、気長にお待ちください。