例の如くガリィからまたちみっ子の普段着を勧められるが、丁重にお断りして唯一あった男物の服を拝借する。
少し大きいが、他の女物よりはマシだろう。
「うーん…五分五分かな?」
何故かガリィからは、そんな微妙な評価を受ける。
何が五分五分なんだよ…
「まぁ、マスターのところに行ってみればわかるよ☆」
へいへい…
ガリィに連れられ、ちみっ子の元に向かう。
アレ?あの玉座みたいな部屋通り過ぎたよ?
「マスターが常に玉座に座ってる訳ねぇだろ☆今から行くのはぁ、し・ん・し・つ☆やぁん、マスターってば大胆☆」
…落ち着け、俺。
勘違いするな、ガリィのいつもの軽口だ。
ぼっちの癖に調子に乗ってはダメだ。
ていうか、あの見た目は普通に犯罪だろ…
「服着る必要無かったかもね☆」
いや、全裸で拐ってきたお前が言うなよ…
しかし、こいつのからかい方から見て、寝室に呼んだ事に他意は無さそうだ。
こうやってぼっちの反応を見て楽しんでいるだけだろう。
からかい上手のガリィさんである。
からかい上手なら、たまには「やっとこっち見た」とかキュンキュンする台詞言ってくれねぇかな…
さっきから言葉の核弾頭の連発で、心が折れそうだよ?
「ガリィちゃんの性格についてのクレームはマスターに言えば?設定したのマスターだし☆」
マジかよ…
自分からからかわれに行くとか、あのちみっ子見た目に拠らずドMか何かなの?
ヤバい…今から会うのに変な目で見てしまいそうだ…
***
「来たか…って何だ、その目は?」
やべっ、無意識にかわいそうな人を見る目で見てたわ。
「いや、俺のこの目はデフォだっつうの…」
「そ、そうか…その…何だ?強く生きろよ?」
俺のこの目は、今から世界を壊そうという奴からも同情されるレベルらしい…
泣いていいかな?いいよね?
「というか、その服…」
ん?何だ?この城?に1着だけあった男物の服なんだが、着ちゃダメな奴だったのか?
「…いや、何でも無い。本題に入ろう」
何だったんだ?すぐに感情を隠されたので良くわからんかったが、まず哀愁、次に懐かしい、そんな印象を受けた。
「で?何の用だ?」
「まぁ、簡単に言えば勧誘だが…オレの境遇、ルーツを話しておこうと思ってな?」
まだ俺を引き込もうとしてたのかよ…
俺は引きこもっていたいが、引き込まれるつもりはねぇよ…
専業主夫を希望しているが、養われるつもりはあっても飼われるつもりは無い、が俺の信条である。
何?一緒じゃねぇのかって?完全に別物だろ?
「まぁ、焦るな。どうせ時間はある。結論はオレの話を聞いてからでも遅くは無いだろ?」
…確かにちみっ子の言う通りだ。
エルフナインの対抗手段がどのくらいこいつらに有効かは知らんが、今すぐに、という訳でもないだろう。
話くらいは聞いて、時間を稼げれば儲け物か…
次に雪音が全裸で抱き付いてきたら、理性が持つ自信が無いしな…
あいつらには、しっかり準備して欲しいものである。
「おい、今オレと話しているのに、他の女の事を考えてなかったか?」
…だから、あいつらといい、こいつといい、何で俺の考えてる事がわかんの?
エスパーか何かなの?
テレポートとか使えるし、割と近い存在なのかも知れん…
「…まぁいい、話が逸れたな、今からオレが世界を壊す理由を教えてやる」
…それから、彼女の境遇を聞いた。
助けた人に裏切られ、父親を火炙りにされたこいつに確かに同情はする。
しかし、こいつの父親の最後の言葉をどう解釈すれば、世界を破壊するなんて話になるのか…
俺には、愛する娘を案じるのみで、その中にネガティブな要素などまったく無いようにしか聞こえなかったのだが…
あぁ…おそらくだが、その時にこいつの心は何処か壊れてしまったのだろう。
だから、他人が何を言ったところで、こいつが聞き入れる事は無い…無いはずなのだが…
「世界を知る…その為にすべて分解する、か…ハッ」
どうやら、俺も一言言ってやらないと気が済まないようだ。
ぼっち道を極めたとばかり思っていたが、俺もまだまだだな。
久しぶりの感覚だが、負け続ける事に関してなら俺の右に出る者は、それこそ負完全先輩くらいだろう。
問はこうだ。
世界は変わりません。自分は変われます。あなたはどうしますか?
答えは、「俺が新世界の神になる」だ。
「何がおかしいっ!!?」
怖えよ…
ちょっとビクッてなったから、いきなり大きい声出すのやめてね?
「難しく考え過ぎだっつうの」
「お前にパパの何がわかるっ!!?」
「わかんねぇよ」
「…は?」
「これは、俺の友達の友達の話だがな?」
「お前の話だな?」
うるせえよ、何で俺に友達がいないって知ってんだよ?
あ、実際見たんでしたね。
「そいつは、妹が好きで好きで堪らなくてな、同じく娘を溺愛する父親とよく喧嘩してたんだが、捻ねくれて育ったそいつは口だけは達者でな?」
「もうお前の話でいいんじゃないか?」
「まぁ、相手が大人でも、口喧嘩なら割と勝つんだよ」
「続けるのか…」
「でもな?そいつの父親だが、一度だって小町に仕返ししてくれなんて頼んだ事はねぇんだよ」
やべっ、小町って言っちまったわ…
「何が言いたいかって言うと、娘を愛する父親なんて皆そんなもんなんだよ。自分の事なんかより、娘の方が大事だからな」
そう、父親になどなった事は無いが、父親が娘を愛しているなら、古今東西どの父親でも同じ事を言うだろう。
今聞いた情報しかなく、少し違うかもしれんが、こいつの父親だってきっとそうだと思う。
「知った口を!」
「俺は何も知らねぇよ、でも、お前は知ってんだろうが」
普段なら「この愚か者」と付け加える所だが、こいつが元ネタ知ってるとは思えんしやめておこう。
べ、別にビビった訳じゃねぇし、普通だし。
「な、何を…」
「お前が知ってる、お前の父親は自分の娘に復讐を命じるような親だったのかよ?」
そう、こんな簡単な事ですら、こいつに言ってやれる他人がいなかったのだ。
こいつは数百年の間、ずっとぼっちで、盲目的に、言葉の意味を考えず、ただひたすらに忠実に父親の命題を成し遂げようとしていたのだろう。
「ち…違う、パパは…パパは…あぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
キャロルが取り乱す。
しかし、口出しこそしたが、答えはあくまでも、キャロル・マールス・ディーンハイムが出さなければ意味が無い。
俺に出来るのは、ここまでだろう。
「マ、マスター!?どうしたんですか?」
キャロルの叫び声が聞こえたのか、ガリィが慌てて入ってくる。
「おい!お前、マスターに何をした!?」
何って、ただ話してただけなんだけど…
「まさか、無理矢理マスターの唇を奪って、あの変な思い出をマスターに!?えげつない事するわね!?」
…色々言いたいが、好きでこんな黒歴史積み重ねてきた訳じゃねぇからな?
それに、俺の黒歴史見たからってさすがに発狂するようなレベルじゃねぇだろ…
え?違うよね?
そう思っていたら、キャロルが再起動する。
さて、鬼と出るか蛇と出るか…
「…パパ?」
………はい?
***
幼児が幼児退行した。
何を言っているのかわからんと思うが、何が起きたのか俺にもわからん。
わかっている事は…
「パパー♪」
この幼女が、何故か俺を父親だと認識している事だけだ。
小町…お兄ちゃん、ぼっちで経験も無いままシングルファーザーになっちまったよ…
嘘だと言ってよ、バーニィ…
そうか、これは夢だな?
ずいぶん、リアリティーに溢れてるから勘違いしてしまったみたいだが、きっと夢に違いない。
これは夢これは夢これは夢…
カカカッ……
ところがどっこい……
夢じゃありません………!
現実です………!これが現実………!
ってやかましいわ!
「あーもう!どうすんのよ、これ!?さすがのガリィちゃんも対処に困るんですけど!?」
「ガリィきらい」
俺が脳内で現実逃避していると、ガリィが慌てふためいていた。
こいつがこんなに取り乱すなんて珍しいな…
いつも人を喰ったような態度しかしないこいつが、こんなに慌てているという事は、よっぽどの状況なのだろう。
…まぁ、自分に命令出してた相手が急に幼児化すれば、当然か…
しかし、これ…どうすんのかね?
「パパすきー」
思考の海に潜っていると、幼児と化したちみっ子が突撃気味に抱き付いてくる。
…ぼっちに不意討ちはマジでやめてくれ…
俺がオートで発動するお兄ちゃんスキルを駆使して、ちみっ子の頭を撫でていると…
「とりあえず、マスターが元に戻るまで、お前に面倒見て貰うからな!?」
ガリィにそんな事を宣告される。
マジかよ…これじゃ、マジでパパじゃねぇか…
「えへへぇ♪パパ、もっと」
はぁ…気楽なもんだな…
「後、私達
…は?何でそんな事まで…
ていうか、これ、また
俺、マジで生きて帰れるのかな…
俺が近いうちに確実に起きるであろう、ハイライトさんが行方不明の装者達に迫られる状況からどうやって切り抜けようか考えていると…
「パパ…zzz」
あー、こんな所で寝るなよ…
ちみっ子をおぶってベッドまで連れて行く。
どうやら計らずも、俺を勧誘するというこのちみっ子の思惑は、結果だけ見れば達成されてしまったようである。
あくまで結果だけだが…
という訳で魔境です(笑)
もはや、原作の面影も無いですね…
XDビッキー爆死しました(笑)
今月後2回東京と大阪を往復するので、残念ながら断念しました…