ぼっちが人前で歌などハードルが高すぎる   作:祥和

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気付いたらお気に入りが800を超えてましたので…
UAに至っては、14万…マジか…

趣味全開の道楽で始めた拙作をたくさんの方に読んで頂き、感謝の想いを込めて、番外です。


番外 魔法少女キャロル☆マギカ~始まりの物語~

「ボクと契約して、魔法少女になってよ」

 

…あの、白い地球外生命体から契約を持ち掛けられて早数百年…

願いによって、火炙りを回避したパパももう今はいない。

…それでもオレは、朽ちかける度に錬金術で生み出したホムンクルスにソウルジェムを移し換えながら、このマッチポンプのクソ喰らえな現実と戦い続けている。

しかし、それもどうやらここまでのようだ。

 

永く魔法少女の間で噂になっていた、ワルプルギスの夜とかいう魔女を討ち滅ぼした所で、運悪く魔力が尽きてしまったのだ。

オレが絶望などする筈が無いが、魔力が尽きてしまっては、身体を動かす事すらままならない。

せめて、グリーフシードを落とす魔女なら良かったんだが、残念ながらあの災厄と呼ぶに相応しかった魔女はグリーフシードを落とさなかった。

あれだけ苦労してようやく倒したというのに、ボウズとは世知辛い世の中だ。

このままでは、魔力が自然回復して動けるようになるより、この身体が朽ちる方が早いだろう。

何せ、この肉体を維持する為の食べ物も傷を癒す為の設備も何もここには無いのだから…

 

でも、それでもいいかと思っている。

魔女になって誰かに迷惑を掛けるでもなく、人知れず朽ち果てていく。

なんだ、最高じゃないか…

ようやく…そう、ようやくオレは休めるんだな…

強いて言えば、昔から憧れだけはあった、恋っていうものをしてみたかったが、まぁ、縁が無かったものは仕方がない。

そもそも、今でこそ大人の女の姿だが、元に戻ればチンチクリンのオレを愛してくれる男など、パパ以外にいないだろう。

パパとお別れして久しい今となっては、すべて詮無きことだ。

 

「キャロル、正直キミが彼女を倒してしまうとは思っていなかったよ」

 

今わの際、インキュベーターのクソ野郎が声を掛けてくる。

人が今まさに大往生という時に無粋な奴だな。

オレ達魔法少女を消耗品として扱い、デリカシーの欠片も無いこいつが本当に嫌いで仕方ない。

だが、それ以上にこんな奴に騙されたオレ自身が一番赦せないのだが。

まぁ、あのままだと殺されるのを待つだけだったパパを救えたのだから、その一点に関してだけは感謝しないでもない。

 

しかし、数百年力を付けた魔法少女がこのまま魔女にもならず朽ち果てるのだ。

奴にとっては、手痛い損害だろう。

ざまぁ見ろだ。

 

「ただ、彼女を倒してしまったキミをこのまま退場させるのも勿体無いからね。キミを次の彼女にしようと思うんだ」

 

!?こいつ、オレを次の災厄にするだと!?

 

「キミという最強と呼ぶに相応しい魔法少女が魔女になる際に生まれるエネルギーは、間違いなく史上最高の物になるだろう。有史以来、キミ達人類を見てきたけど、キミ以上のエネルギーを生む魔法少女は今後も現れないんじゃないかな?これは誇っていい事だよ」

 

白い小動物の皮を被った化け物がゆっくりとオレに近付いてくる。

やめろ!来るな!オレに近付くな!

クソっ!こいつ、オレがワルプルギスの夜と戦うのを狙ってやがったな?

あの災厄、単独の魔女にしては強すぎると思ったが、世襲制だったのか!

そして、こいつはこいつで、内情を知るオレがずっと邪魔だったのだろう。

わざわざオレにとってアウェーの地である日本まで誘き寄せたのも、それが狙いだったのだと今ならわかる。

知り合いなどいないこの地では、万が一にも助けなど来る訳が無いからな…

戦って死ねばそれで良く、万が一倒したとしても消耗は免れず、弱り切った所で後釜として処理する。

やられる方からしたらクソったれだが、実に効率的でこいつらしい策だ。

 

「安心するといい。キミという最強を倒す誰かが現れたら、次はその誰かが彼女(キミ)になるよ。そうやって、キミという存在は永遠に語り継がれていくんだ。これはキミ達人間にとって究極の夢である不死の存在になると言ってもいいんじゃないかな」

 

それの何処に安心する要素があるんだよ!?

宇宙人にジョークセンスは無いみたいだな。

クソったれ…オレもここまでか…

 

「おい、あんた大丈夫か?」

 

自分の最期を覚悟した所で、ふと誰かの声が聞こえる。

どうやら、目撃者が現れた為、あの宇宙人は逃げたようだ。

何とか命拾いしたみたいだな…

 

それが、錬金術師であり、魔法少女であるキャロル・マールス・ディーンハイムと、目が腐った男、比企谷八幡との初めての出会いだった。

 

***

 

なんか、観測史上最高とか言われたスゲー台風が来た次の日、露出の高い格好で倒れていた豊満な女を助けたら、みるみる縮んでツルペタの幼女になった。

何を言っているのかわからんと思うが、俺にもわからん。

世の中は、まだまだ俺の知らない不思議で溢れているようだ。

 

「すまん。その…助かった。って甘っ!何だ、この飲み物!?」

 

暖ためたマッ缶をマグカップに移して渡すと、キャロルと名乗る幼女が礼を言いながら、砂糖と練乳のハーモニーに驚いている。

どうやら我が家最上級のおもてなしはお気に召さなかったようだ。解せぬ。

一応、応急手当はしたんだが、所々見える生傷が痛々しい。

 

「…気にすんな。人が倒れてたら、助けるのは当たり前だ。それと、マッ缶は千葉のソウルドリンクだ」

 

これは間違いなく、事情を聞かない方がいい奴だろう。

どう見ても成人女性だった奴が幼女になるとか、確実にヤバイ案件だ。

もしかしたら、見た目は子供、頭脳は大人な名探偵で、変に関わったら謎の黒ずくめの組織から命を狙われる事になるかもしれん。

俺は角の生えた戦闘民族ではないので、狙われたら即被害者入り間違いないだろう。

あの戦闘民族、至近距離から撃たれた銃の弾道を見切って避けるとか、どんどん人間離れしてませんかね?

彼女の空手は確実にカラテの方だと思う。

空手のチャンピオンだからって、至近距離でプロが撃った銃弾が避けれますか?

おかしいと思いませんか?あなた。

ハハッ、バーロー。

 

「世話になったな。うぇぇ、まだ口の中が甘い…」

 

マッ缶を飲み切ると、幼女がフラフラと覚束ない足取りで、出て行こうとする。

…あー、チクショウ…

俺は頭をガシガシ掻きながら…

 

「まだもうちょい寝てろ。調子戻るまで家にいていいから」

 

…そう言ってしまったのだった。

はぁ…幼女拾って来たとか、小町に何て説明すりゃいいのかね?

最愛の妹に誘拐犯扱いされる未来しか見えないんだけど…

 

***

 

最初はこいつが何を言っているのか、わからなかった。

言われた事を反芻し、理解するのに時間がかかった。

見返りも無しに他人を助ける人間(ばけもの)などいない。

オレの知っている人間(ばけもの)は、そんな綺麗な生き物ではない。

別段、金を持っているようにも見えないオレを助けるなど、こいつに何のメリットがあるんだ?

金でないとするなら…あぁ、なるほど、得心がいった。

 

「お前、ロリコンか?」

 

目の腐った男が、ブーっと、口に付けていたあの甘い飲み物を盛大に噴き出す。汚っ。

しかし、こいつのこの狼狽えようはどうやら図星か?

 

「悪いが、この身体に生殖機能は付いていない。残念だったな?」

 

ホムンクルスであるこの身体に生殖機能など不要なので、取っ払って久しい。

まぁ、危うく魔女にされる所を助けて貰ったのだ。

オレに出来る範囲でなら、あくまでも!そう、あくまでも礼として、この変態(仮)の欲望を満たしてやるのも吝かではない。

痛いのとか、マニアック過ぎるのは勘弁して欲しいが…

 

「ゲホっゲホっ、お前、俺にそんな下心があったとして、実行できるような度胸のある人間に見えるのかよ?」

 

…確かに。どこをどう見てもこいつはヘタレだ。

しかし、金でもなく、オレの身体が目当てでも無いなら、一体何が目的なんだ?

 

「…困ってる奴を見て、無視したら妹にドやされるんだよ。これは、あくまでも俺の為であって、お前の為じゃねぇ。お前こそ勘違いすんな」

 

…なるほど、何とも不器用な奴だな。

そう思って、数百年ぶりに会った()()に思わず微笑んでしまうのであった。

 

***

 

幼女にロリコン扱いされ、案の定、小町に誘拐犯扱いされたが、何とか誤解を解き、事なきを得た。

はぁ…今日は厄日に違いない。

 

「おい、八幡」

 

幼女に声を掛けられる。

いきなり名前で呼び捨てかよ…

ぼっちには、ちょっとハードル高いからもうちょい手加減してくんない?

 

「フェアじゃないからな。オレの事情を話しておこう」

 

幼女が自分の身の上を話し出す。

 

…は?魔法少女?こいつが?

変身後はどう見ても少女じゃなかったよ?

普通逆じゃねえの?

何その詐欺。こんなのアニメで放映したら訴訟も辞さないよ?

ていうか、魔法少女ってもっと夢がある存在だろ?

何?その殺伐とした世界…

そんな感じの感想をオブラートに包みながら述べていると…

 

「お前はどこまでも小市民だな…」

 

と呆れられてしまった。解せぬ。

因みに一番しっくり来なかった実年齢の事だけは、確実に地雷なので言うのをやめておいた。

いかにぼっちで対人スキルゼロの俺だってその程度の空気くらい読める。

むしろ空気を読み過ぎて、自分が空気になってしまうまである。

 

だが、プリキ○アを愛し、魔法少女には一家言ある俺としては、やはり夢も希望も何処かに置いてきてしまったような現実の魔法少女社会はどうにも受け入れ難い物だったのだ。

 

…だから聞いた。聞いてしまった。

 

「つらくないのか?」

 

「…正直、つらくないと言えば嘘になる。だが、インキュベーターの思惑通りになるのも面白くない。ただそれだけだ」

 

そう言って、儚く微笑む幼女は、どこまでも綺麗で美しく、神秘的な何かに見えてしまった。

 

落ち着け、俺は断じてロリコンなんかじゃない。

 

「でもまぁ、魔法少女なんかに成らなければ、こうしてお前と出会う事も無かったんだ。インキュベーターはクソ野郎だが、そう考えると魔法少女も捨てたもんじゃないんじゃないか?」

 

そう言って、今度は悪戯っぽく微笑む。

 

…もうロリコンでもいいんじゃないかな?

 

『彼女の笑顔を守りたい』

 

彼女の方が、俺なんかよりずっと強い筈で、ただのぼっちの俺ごときが烏滸がましいにも程があるのだが、彼女の笑顔を見て、不意にそう思ってしまった。

 

何度も戒めてきた筈なのに、まだ簡単に人を好きになろうとする度しがたい大馬鹿者に、我が事ながら心底呆れ果ててしまうのであった。




という訳で番外でした。

また続き物の番外を書いてしまったよ…

みくるーとも正妻戦争もあるのに、何してるんでしょうね…
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