ぼっちが人前で歌などハードルが高すぎる   作:祥和

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九話です。

ちょっとシリアスです…


第九話GX

「ここでは些か決戦には手狭だな」

 

キャロルがそう言って、転移結晶を投げる。

 

「パパはここで待っててくれ、すぐに()()()()()

 

そう言って装者達を伴って、キャロル達が消えていく。

俺はただ、彼女の微笑みの意味が理解出来なくて、高い天井を一人で見上げていた…

 

***

 

最初にミカがやられた。

次にファラ、そしてつい今しがたレイアとレイアの妹が呪いの旋律の餌食となった。

先ほどから何をしても、鏡のシンフォギアを纏うこいつには通用していないので、間もなく私も同僚達と同じ運命を辿る事になるだろう。

 

()()()()()()()()()()()()

 

マスターの計画に従い、奴らの呪いの旋律を受けるのは、私達自動人形(オートスコアラー)にとって誉れであり、規定事項だ。

だけど…だけど、何故か私は醜く、生き汚く恥を晒している。

私の性格であれば、真っ先に奴らに仕掛けて一番乗りの誉れを受けているのが一番しっくりくるはずなのに…

それもこれも全部あの目が腐った自称ぼっちのせいだろう。

 

「ハァ…ハァ…ハァ…クソッ」

 

実際の私達には疲労など無いので、この息切れは演出としての機能の一つだ。

何でマスターはこんなに人間に近く作っちゃうかなぁ…

初めから、感情など持たないただの機械として生まれていれば、あんな捻ねくれた男の事でこんなに悩む事も無かったのになぁ…

おかげで一番乗りを取り逃しちゃうし、散々だ。

 

「…お別れはあれで良かったの?」

 

目の前のメス豚がそんな事を聞いてくる。

こいつ!?まさか気付いて…!?

 

…私にも自動人形(オートスコアラー)としての矜持がある。

人形は人間に非ず、だ。

だからこそ、人形である私を人間と同じように扱うあいつが最初は気に食わなかった。

でもすぐに、たとえ人形が相手だろうと誰にでも優しい男なのだと知った…知ってしまった…

それから、その優しさを独占したいと思ってしまった。

マスターが幼児化して、それに拍車が掛かった。

マスターをダシにして、あいつの隣を主張した。

()()()()()…何度そう言い聞かせても、自分でももう止められなかった。

 

違う…訳のわからない変な男をマスターよりも優先するなど、人形すら失格だ…

 

だから、人形としての分を弁えず、人間に恋をしたなど絶対に誰にも知られてはならない。

同僚達にはバレバレだったみたいだけど、まぁ、あいつらは私と同じく死ぬ事が規定事項の奴らだ。

特例で除外してあげましょう。

だけど、こいつの口だけは確実に封じる必要がある。

 

「ガリィちゃんには何の事だかさっぱり☆てめえは氷漬けにでもなってろ、メス豚ァ!」

 

ありったけの力を込めて、奴の周囲に水を錬成し、瞬時に氷に変える。

死人に口無しだ、ざまぁ見ろ。

 

「ッ!?ガリィ!?お前!?」

 

「いやぁ、マスター…つい勢い余って殺っちゃったみたいです☆」

 

マスターにそう報告した次の瞬間、氷の棺から無数の光の束が発生し、やがて粉々に砕け散る。

チクショウ…これじゃどっちがバケモノかわかんねぇよ…

 

「ごめんね…私にも守りたい世界があるの」

 

――漆黒――

 

あぁ…あいつは相当なニブチンだからどうせ気付いてないんだろうなぁ…

あーあ、人に生まれてたら、あいつに抱き締めて貰えたのかな?

温もりなんて感じないし、与えてあげる事もできないこの身体が心底恨めしい。

こんなどっかの星詠人形みたいな恋愛脳(スイーツ)、ガリィちゃんらしくもないなぁ…

 

最後だというのにおかしな感想を抱く私を黒く輝く光が包み込む。

 

温もりなど感じない身体のはずなのに、何故か『暖かい』と感じてしまった…

 

***

 

どれくらい経っただろうか?

 

何も考える事が出来ず、天井に書かれた紋章に一つ、また一つと光が灯るのをただ眺めていると、急に何かカプセルっぽい装置が作動し、中からキャロルが出てくる。

 

「待たせたな、パパ」

 

帰ってきた?いや、このキャロルは最初からあの中にいたんじゃないか?

だとしたら…

 

「計画は順調だ。この座標はバレているみたいだからシャトーごと移動させる。次の目的地は深淵の竜宮だ」

 

いや、そんな事より、レイアは?

ミカは?ファラは?…ガリィは?

 

「奴らはシンフォギア装者にやられた」

 

キャロルが淡々と述べる。

浮遊感が身体を襲う。

 

先ほどまで、普通に会話していたのだ。

彼女の微笑みの意味がわからなくて、問い質したかったのだ。

 

…少しだけ…そう、ほんの少しだけだが、実の父親を失い、出された命題を盲目的にこなそうとしていたキャロルの気持ちが理解出来てしまった。

だが俺には…今はいない彼女の真意を知るなど、無理難題もいいところだ。

 

キャロルはなおも続ける。

 

「後は、ヤントラ・サルヴァスパがあれば、計画を実行に移す事が出来る」

 

やはり、俺とのあのやり取りを経た今でもまだ、キャロルは世界を壊そうと思っているのだろうか?

 

「オレには人を救わぬ奇跡など要らぬ!ならば世界を、人が奇跡などに頼らずに生き、ついでにオレとパパが誰にも邪魔されずに幸せに暮らせる世界に再錬成してくれる!」

 

…どうやら、突拍子も無い方向に修正されてしまったようである。

おい、ご主人様が変な方向に行こうとしてんぞ…

さっさと軽口の一つでも叩きにこいよ…

 

***

 

深淵の竜宮…

 

どうやら、ここは海底に位置しているらしい。

転移結晶で来たので、よくわからんのだが…

 

ここにあるヤンバルクイナ?とかいう聖遺物がキャロルのお目当てらしい。

なんで沖縄固有種の鳥が必要なのかはよくわからん。

ていうか、探すなら沖縄に行った方がいいんじゃねぇの?

 

「ここにあるはずだ」

 

とある一画にキャロルと共に入る。

今さらだが、これって不法侵入だよね?

ていうか、錬金術マジで何でもアリだな…

 

「あった…が、基底状態か…」

 

キャロルが変な鉄っぽいプレートの束を手に取る。

ん?それがヤンバルクイナ?俺が知ってんのとなんか違うんだけど…

 

「起動にはフォニックゲインが必要だが…パパ…は無理だな…」

 

さすが我が娘、よくわかっている。

ぼっちである俺が聖遺物を起動させる程のフォニックゲインを出せる訳が無い。

もはや、融合症例でも何でもない紛うことなき一般人だしな…

 

「となると、オレが歌うしかない訳だが…」

 

「おっとそこまでだ」

 

突然掛けられた声に振り返ると…

そこには、月読、暁と雪音がシンフォギアを装着した臨戦体勢で立っていた。

 

***

 

「やけにあっさりしてやがったし、いつまで経っても八幡が戻って来ねえからおかしいと思ったぜ」

 

「大人しくお縄につくデス!」

 

「抵抗しないなら危害は加えない」

 

ちみっ子達が最後通告を出してくる。

まぁ、これ不法侵入だし普通にこちらに非がある。

しかし、我が愛娘は…

 

「知ったことか!」

 

これである。

とことんあいつらと相入れるつもりは無いらしい。

俺も何故だか、今はあいつらのところに行くような気分になれない。

 

「ちょせえ!」

 

雪音が威嚇射撃を放つが…

 

「ヘルメス・トリスメギストス」

 

キャロルのバリアが全てを防ぐ。

 

「パパ…これは参重層術式防護って術式でかなり難しい術。バリアで片付けられるのはちょっと心外」

 

いや、素人の俺が見てもバリアにしか見えないんだが…

まぁ、娘が凄いのは俺としても悪い気はしない。

 

「そうか、すごいなキャロル」

 

そうやって、頭を撫でてやる。

 

「えへへ♪もっと誉めてもいいよ♪」

 

キャロルのおねだりに応え、撫でるのを続けていると、ふと寒気を感じる。

見ると何故か雪音達が暴発寸前だった。

 

「人の目の前でイチャコライチャコラ何やってやがんだ!!」

 

「ギルティ…」

 

「話はベッドで聞かせて貰うデス!」

 

雪音がフルオープンで全弾発射してくる。

おい、非武装の一般人相手にこれはねぇだろ!?

ていうか、キャロルの参重層術式防護?(まぁいい、バリアだバリア)で俺達は無事だが、周囲は大惨事である。

これじゃどっちが賊かわかんねぇな…

続けて暁が切り掛かってくるが、これもまた、キャロルのバリアで防ぐ。

しかし、その裏から現れた月読には、さすがのキャロルも対処が遅れてしまう。

 

「そこぉ!」

 

「チッ!あっ!?」

 

キャロルが驚いたような声を出す。

見れば、月読の攻撃によって、バリアとは逆の手に持っていたヤンバルクイナが壊れてしまったようだ。

そして、想定外の事態が起きてしまったが故に、死角から来る雪音のミサイルにまったく気付いている気配が無い。

まずい!俺は咄嗟にキャロルを抱き締める。

 

「ッ!?八幡!?何してやがんだよ!?」

 

せめて、娘だけでも無事でいて欲しいが……

 

……

………

ん?いつまで経ってもミサイルの爆発で俺が木っ端微塵になったり、衝撃で吹っ飛ばされたりしない為、疑問に思い振り返る。

 

「久しぶりの高純度の聖遺物ぅぅ!」

 

雪音のミサイルが白衣を着た男の左腕に飲み込まれていく。

おいおいおい、マジかよ…

月読と暁も声の主の正体に気付いたようで、げんなりした顔をしている。

 

「そう!ボクこそが!英雄にして、真実の人!ドクターウェルぅぅぅ!!」

 

そこには、半年前、何度も色んな意味で俺を苦しめた歩く天災が立っていた。




という訳でシリアス展開からの杉田君登場です(笑)
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