ぼっちが人前で歌などハードルが高すぎる   作:祥和

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393誕生日記念。

みくるーとの延長的な何かです。
番外の番外ってもう訳わかんねぇな…

みくるーとでは初の八幡視点です。


番外 "愛"が生まれた日

「八幡、聞いてるの?」

 

目の前の少女に責められる。

 

小日向未来。

 

いつの間にやら、数年の腐れ縁で知り合いの中では立花と並び古い方から数えた方が早い奴になってしまったのだが、つい最近、その関係性が変化し、恋人という間柄になった。

自他共にこいつと付き合う事だけは絶対に無いと思っていたので、人生何があるかわからないものである。

 

「悪い、聞いてなかったわ」

 

俺にしては素直な返事だが、こいつ相手に下手な嘘吐く方が絶対バレるし、後が怖いので、正直に答えるが吉なのだ。

 

「もぉ…八幡は。今度の私の誕生日、響達とクリスの家でお泊まり会になったからって……もう、嫌そうな顔しないの」

 

いや、周り全員女子で女子の家でお泊まり会ってぼっちに求めていいレベルじゃねぇだろ…

 

「もうぼっちじゃないんだから、いいんじゃない?」

 

いや良くねぇよ…

そんな簡単に変わるなら最初からぼっちやってねぇっつうの。

という訳で…

 

「残念だが俺はふさ…」

 

「私が浮気しちゃってもいいの?」

 

………それは困る。

いや、普通に考えると女子しかいないのに浮気ってどういう事?なんだが、こいつの場合、元ガチユリだけに十分過ぎる程の説得力なのだ…

 

「響にクリスに調ちゃんに切歌ちゃん…うふふ、選り取り見取りだなぁ…」

 

「はぁ…仕方なくだぞ…」

 

「うん、ありがとね、八幡」

 

やっぱり鎌かけてやがったか…

ホント、最近こういう強引な手が増えてきてるので困った恋人なのだ…

 

***

 

小日向の誕生日当日。

 

他の連中は雪音の家に現地集合らしいのだが、俺と小日向は別の場所で待ち合わせしてから行く事になっている。

というのも…

 

「ホレ…その……誕生日おめでとう」

 

小日向にプレゼントを渡す為だ。

ちなみに渡したのは、本人の強い希望で指輪だ。

S.O.N.G.の給料があるので、買えなくはないのだが、学生が贈るプレゼントとしては高額なので、最初は別の物と言ったんだが最終的に押し切られた形だ。

 

「八幡…ありがとう!」

 

受け取った小日向はそれを何の躊躇いもなく左手の薬指に嵌める。

 

「次は()()を頂戴ね?」

 

「バ…しょ…しょういうにょはせめて学校卒業してからだな…」

 

噛み噛みである。

まぁ…こいつには今さらだし、問題無いだろう。

 

「うふふ、でもこれが私の正直な気持ち」

 

……まったく…

今から尻に敷かれるのが目に見えているので、お先真っ暗である。

結婚は人生の墓場とは良く言った物だ。

 

……そういや、家に居候してるネコキチも誰か貰ってあげてくれませんかねぇ…

あの人もうすぐアラフォーなんだけど…

 

っと、そろそろ立花達と合流する時間か…

 

「こひ…」

 

「名字禁止」

 

はい、すみません。

でもこっちの方が言い慣れてるんだから勘弁してくれません?

 

「……未来、そろそろ行くか」

 

「うん」

 

名前で呼ぶだけでニッコニコである。

こいつ、そんなチョロくは無い筈なんだがなぁ…

 

***

 

雪音の家に着き、目ざとく小日向の左手の薬指に気付いた雪音や月読がギャーギャー騒いでいたが、一段落してようやく晩飯を食おうという事になった。

 

「…おい」

 

「はい、お醤油」

 

「ん…サンキュ」

 

「ねぇ…」

 

「おう」

 

そう言ってドレッシングを渡す。

………ん?何か妙に静かだな…

こいつら、そんなに黙って飯食える奴らだっけ?

 

「熟年夫婦デスか!?」

 

「そう!それ、私も思った!」

 

と思ったら、急に暁と立花が騒ぎだす。

………?どういう事だ?

婚約はさっきしたけど、結婚はしてないよ?

 

「長年連れ添ったみたいな阿吽の呼吸…これが…」

 

「チクショウ…敵わない訳だ…」

 

今度は月読とマリアさんが呟く。

当の小日向は顔真っ赤だしなんなの?この空気…

 

「雪音、何故小日向と比企谷は言葉も交わさずお互いの事がわかってるんだ?」

 

「アタシが聞きてぇよ!!チクショウ」

 

あ、そういう事か…

素でやってたわ。

小町もアラサーも特に何も言わんし、お互いこのやり取りに慣れ過ぎてるからなぁ…

 

…で、この空気どうすんの?

 

「そ、それじゃあケーキ食べよっか?」

 

立花が切り込む。

よし、さすが立花だ。

良くも、悪くも空気を変える達人である。

 

「そ、そうだね。私、取ってくるね」

 

「あぁ!未来は主賓なんだから座ってて!待ってて!ちょぉっと行ってくるから!」

 

立花ェ………

今のは居たたまれない空気だったから席外したい感じだったぞ…

またおかしな空気になるから言わないけどね?

相変わらず、褒めたと思ったらすぐこれである。

 

***

 

微妙な空気の中、ケーキも食べ終わり、パーティーも一段落し、各々談笑したりテレビを見たりしている。

……今さらだが、これ、俺泊まる必要なくね?

どうする?帰るか?

 

………と思ったら、我が彼女が手招きしている。

 

「八幡、ちょっと抜け出そっか」

 

え?お前から誘ってくんの?

どういう事?

 

訳もわからぬまま、念入りに神獣鏡で気配を消した小日向に連れられた先は…

 

「………」

 

「………だめ?」

 

恋人達御用達のお城だった…

 

こいつ…おかしいと思ったが、この為だけにお泊まり会やら何やら裏で手を回して企画させやがったな?

目的は俺が泊まりがけで外出する事だけだったのだろう。

証拠は何も無いが、どちらかを問われるとこいつはやる奴である。

いや、俺も興味が無いかと言われると嘘になるがさすがにこれは心の準備が………

 

「八幡から指輪貰った時から我慢できなくて…」

 

いや、お前それ最初からというかプレゼント要求した時からじゃねぇか…

つまり、推定どころか確実にクロである。

 

「未来!ハチ君!何処行ったの!?」

 

「ぜってぇ見つけるぞ!」

 

「やらいでか!デス!」

 

やべ、あいつら来やがった。

お前らご近所様に迷惑だからもう少し静かに行動しろよ…

 

それから、俺達を捜索する装者達から逃げたりやら、唯一見つかったマリアさんを小日向が有無を言わさず瞬殺したりやら何やら色々あったのだが、結果がどうなったかは諸兄のご想像にお任せする。

おかげで寝不足なんだよ…




という訳で393誕生日回でした。

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