Paranoia Agent   作:倉木学人

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Breakers Collectionが2020年に発売される記念に。
サンダー(→)・クラウザー(↓)。


ドラえもんのうた その②

「全問正解! よくできました」

 

 今日は休日。

 天気も良く、今日は勉強日和です。

 

 朝、のんびりと朝食を食べた後。

 のび太君は殺せんせーとお勉強中だ。

 

「ねえ殺せんせー。これ、小学一年生の問題だよ。こんなかんたんな問題ばっかりでいいの?」

「おお、良くぞ聞いてくれました」

 

 勉強机にかじりついているのび太君って中々貴重に感じる。

 彼って寝っ転がっているか机で寝ているかのどっちかだろうから。

 

「今の君に必要なのは自信です。自分にもできる、という思いが何よりも大切なのですよ」

 

 ああ、彼はやれば出来る、というのは知ってるけど。

 彼もやろうと思えば、テストで100点を取る事はそう難しくないはずだ。

 

「では。簡単な問題に慣れた所で、前にやったテストの問題をやってみましょう」

「えー。こんなの僕には無理だよ」

「ニュルフフフ。大丈夫です。分からない所は積極的に聞いてください。ここには学ぼうとする君を笑う者はいません」

 

 この調子だと彼も普通に勉強が出来るのも、そう遠い未来ではないように思える。

 

 うん、頑張ってほしい所だ。

 

「今日できなくても、明日できるようになればいいのです。それこそが人間の力なのですから」

 

 殺せんせーも中々良い事言うなあ。

 私もこんな先生が欲しかったです。

 

「ふふ。楽しそうだなあ」

 

 触手に指導を受けている少年は、案外まんざらでもなさそうで何よりだ。

 

 しかし、教育とは。

 私が人に教えるなんて。

 

 研究室のころは、後輩に教えることが多少はあったが。

 私って基本的に人望無かったからなあ。

 

 

 

 ―私の精神だけが、少しだけ昔の別の場所へと飛ぶ。

 

 そこは私の中にある脳噛ネウロと暗殺教室の世界。

 現代的な私立椚ヶ丘中学校の理事長室である。

 

「今回の件は、貴方が教えたかったりします?」

 

 目の前には落ち着いた机に座っている男性が、高級だが下品ではない整ったスーツ服を決めていて。

 部屋には至るところに何らかの賞のトロフィーだとかが、それもごく最近のばかりのものが飾られている。

 彼こそは暗殺教室の悪役、浅野學峯だ。

 

「彼は我が校の中でも、私に次ぐ優秀な教師だ。タカオ先生からの依頼であっても、彼ならば安心して任せられます」

 

 アルカイックな笑みを浮かべる彼は、人好きな指導者のそれだ。

 のび太君の教師は彼にお願いしてもよかったかな、と思うところもある。

 

「もし、より盤石な体制が必要でというのであれば。私がのび太君の学校に赴任しましょう」

「んー。そこまでする必要はないと思いますが」

 

 そこまでやったら、のび太君の担任先生(あの人の名前なんだっけ?)の立場が危ういのではなかろうか。

 有能かどうかは知らないけど、のび太君には慕われていたのに。

 浅野先生が色々したら、魔改造される未来しか見えないぞ。

 

「タカオ先生。教育の本質とは何だと思われますか?」

「哲学的ですね」

 

 理事長先生が、ぐっと椅子を引いて。

 姿勢を整える。

 

「私はあまり、教育を良くは思っていません。別に、あなた方が嫌いな訳ではありませんが」

 

 私は、教育は、その、うん。

 親や先生方には良くしてもらったが、あまり良い思い出が無い。

 それらにはいくつかのトラウマがある。

 それは、教育というものの体質が関係していると後から知ったものだ。

 

「賢明な判断です。なにせ、教育とは"誰もが出来る簡単な仕事"ではないのですから」

「すみません」

 

 割と強くあたってしまったつもりだったが、理事長はまるで困ったように笑うだけだ。

 殺せんせーも含めて彼らは、私の世界の住人だ。

 どこぞのアカネちゃんのように、基本は創造主である私に絶対服従である。

 

「人の心を砕き、自信を絶対と信じ込ませ、そこから新しい価値観に矯正する。つまり、我々のしていることは―」

 

 とはいえ、私の世界の全員が単なるイエスマンや太鼓持ちという訳でもない。

 彼らは私のためなら辛辣な言葉だって吐いてみせる。

 というか、そっちの方が私的には好みなのだが。

 

「洗脳ですよ。優れた教師であるということは、優れた教祖でもあるということです」

「必要なことではあると思います。自然のままの人間なんて、見れたものではないのですから」

 

 教育とは洗脳、確かにそうだろう。

 となると、分かっていたが、一つ問題がある訳で。

 

「先生は、のび太少年をどうするつもりで?」

「どうしたいか。ですか」

 

 私は子守を依頼されたが、特にノルマとかはない。

 別に失敗しても、あの人は怒らないだろう。

 良く言えば気楽な、悪く言えば責任が無い、今回はそういう仕事だった。

 

「私には、のび太君にに示せる道がありません。彼をどうしたい、というのが強く無いのですよ」

 

 私も先生になりたい、とは思ったことがあったが。

 結局はならなかった。

 自信のない私は、根本的に教師に向かないからだ。

 

 故に、私は私の世界の住人に教師役を任せたのだ。

 

「成程。彼自身に選択を任せるつもりだと」

 

 殺せんせーは生徒の自主性を重んじる教育方針だ。

 恐らく今回の場合、経営者的な目標を持つ理事長より適任だろう。

 

 

 

 ―そして、再び今に時を戻す。

 

「タカオ先生」

「どうしました?」

 

 気づけば、のび太君は勉強が一息つき、一休みしているようで。

 私に注意を向けている。

 

「それ、なあに?」

 

 そうして、私が自分で用意した机の上のそれを指さした。

 ああ、これはこの時代じゃまだマイナーなものだったな。

 

「これはコンピュータです。私達の代わりに計算をしてくれる機械なんですよ」

 

 これは2010年ぐらいの、業務用ノートPCだ。

 私が生きた時代では、最新鋭でも何でもないのだが。

 この時代では間違いなく、どのPCよりも早い。

 

「例えばですね。"=1 + 2"とすると、ほら」

「すごーい!」

 

 というかこの時代、家庭用の電卓もない。

 剛田さんの所の商店が、そろばんで計算している時代だし。

 これも、一種の異世界チートかなあ。

 

「図や文章を作る機能もありまして、これでちょっと教科書を作っていました。あなたが勉強しているのに、私だけ遊ぶわけにはいきませんからね」

 

 いろんな世界を持っている私なら、世界から物を取り出すだけでなく。

 世界から新たに新しい物も作れる。

 

 教えるだけなら、適当に塾の教材を持ってきてもいいけどね。

 私だけ遊んでいるわけにもいかない、というのは本当なのだ。

 

「ねえ、僕にもやらせてやらせて!」

「いいですよ。じゃあ、ゲームでもしますか」

 

 ちょっと遊ぶことになるが、まあいいだろう。

 遊ぶことも勉強です。

 

「”サンリオタイニーパーク”?」

「はい、まずは簡単なマウス操作に慣れましょう」

 

 私はキティ―ちゃんたちサンリオキャラクターのゲームを立ち上げた。

 幼児向けの簡単なゲーム集だが、PCのPの字も知らぬ初心者には最適だろう。

 

 

 で、暫く楽しく遊んでいると。

 外から大声が聞こえる。

 

「おいのび太! 野球しようぜ!」

 

 窓から覗いてみると。

 そこにはバットとグローブを持った大柄な少年と、変な髪形の小柄な少年が。

 

 よく見た光景で見間違えるはずもない、ジャイアンとスネ夫だ。

 

「あら、ごめんなさい。のびちゃんは今、家庭教師の先生と勉強中なの」

「ええ!? そうですか、すいません!」

 

 のび太君が対応するか迷っていると。

 玄関から玉子さんが出て、対応してくれた。

 

 ならしょうがないかと、ジャイアン少年たちは気安く去っていった。

 

「のび太の家に家庭教師だってよ!」

「ははは、あののび太が続けるワケないじゃん!」

 

 二階でも聞こえるぐらいの声で、そういっているのが聞こえる。

 それを聞いたのび太君は、また意気消沈しているようだ。

 

 しょうがないなあ。

 

「そうですね。じゃあ、このパソコンで勉強したら、次は野球の勉強しに行きましょうか?」

「え!」

 

 いいの、と聞いてくるが。

 遊ぶのもまた勉強だ。

 この世界では、劇場版イベントは発生しないが、その分彼にはいろんな物を見てもいいんじゃないかな。

 

「でも、ジャイアンたちと遊びたくないや」

「大丈夫ですよ。ジャイアンたちとはしませんから」

 

 野球かあ。

 そうだ、私も久しく野球をしていない。

 

 せっかく身体能力上がったんだし、この際スポーツをするのも良いかもしれない。

 

「バッティングセンターに行きましょう。良いところ、知ってるんですよ」

 

 

**

 

 

 バッティングセンター。

 そこにはバッティングボックスだけでなく、自動販売機やパンチングマシンが並んでいる。

 1970年台にもバッティングセンターというのは全国的に広がってはいたが。

 そこはのび太の時代には似つかわしくない、現代的な装いの場所だ。

 

「目をつぶってますね。ああ、そのままで大丈夫です。バットは振らず、今は良く見てください」

 

 のび太少年が、ややへっぴり腰でバットを振るう。

 ボールはバットにかすりもしていない。

 そんな状況だが、私は彼を肯定する。

 

「いいチャージングです。ボールに慣れたら、次はボールが来る場所にバットを持っていきましょう」

 

 100km/hのアーム式ピッチングマシン、ボロ助の腕が縦回転し。

 ボールがこちらに投げ出される。

 別に変化球でも何でもない、ど真ん中の甘い球だが。

 彼はまだそれしか投げられないし、またそれが彼の正しい姿なのだ。

 

「連コ、連コ」

「ちょ、ちょっと待つだ! お客様!」

 

 ちゃりんこちゃりんことメダルをマシンに入れていたのだが。

 傍にいた若い店員さんに何故だか止められた。

 

「そんなに連続で動かしたら、壊れてしまうっぺ」

「ああ、ごめんなさい。じゃあ別の機体に移りましょうか」

 

 今の時間、他の打席も十分空いている。

 隣の打席でも使えばいいだろう。

 

「ふふ。いいなあ、この感じ」

 

 今、私たちは22世紀の江戸川に来ている。

 ここはこの時代の最新鋭のバッティングセンターという訳ではないのだが。

 それでも、この雰囲気は私の良く知っているそれとよく似ている。

 

 そうしたこの場所で、私たちは暫く楽しい時間を過ごした。

 そして、イベントはまだまだ始まったばかりだ。




描きたいのがあるから、そこまで進められるといいなあ。

???「お姉ちゃ~ん」
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