Paranoia Agent   作:倉木学人

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ウィーアー! その③

「貴方が黄猿、ですか」

「そうだよ~」

 

 どっちつかずの正義を掲げる海軍大将、黄猿。

 ピカピカの実の光人間であり、その戦闘力はこの世界でもトップクラスだろう。

 光速の攻撃は、まず避けれるものではない。

 今の私なら余裕を持って対処できるだろうが、ルフィとかは将来どうやってこの人に勝つというのだろうか。

 

「とんだ大物ですね」

 

 とはいえ、彼のイメージはその能力より人柄の方が印象深い。

 青雉のように穏健でもなく、赤犬のように過激でもなく。

 つかみどころがなく、バランス感覚に優れた人物であると記憶している。

 天竜人との間を任されていることから、その人格はうかがえる。

 私としては、こうした人間は好ましい相手だと思うが。

 

「というか。私なんかの勧誘のために、海軍大将が出張ってくるとは。海軍も人員配置を間違えている気がしなくもないです」

 

 それでも賞金稼ぎに向かわせる階級の人間ではないと思うのだが。

 最高でも、もう少し下の人間の仕事だと思う。

 モモンガ中将とか、ガープ中将とか。

 まあ、赤犬とかを派遣されてもそれはそれで困るのだけれど。

 偏見だけど、彼は協力しないなら死ね! とか言ってきそうだし。

 

「ん~? 今回は違うよぉ~」

「というと? 勧誘じゃないのですか?」

 

 疑問に思っていると、大佐さんが恐縮しながら羊皮紙を私に差し出した。

 見るからに豪華な飾りつけがしてあり、大事そうな書類である。

 

「これを」

 

 羊皮紙を広げてみる。

 送り主は、世界政府か。

 また随分な相手だ。

 どれどれ。

 あー。

 

「成程。七武海への勧誘でしたか」

 

 中身を要約すると、権限を約束するから政府の下で働け、ということが日本語で書かれていた。

 なるほど、七武海の勧誘なら納得がいく人員であるが。

 原作は手紙でそういったやり取りをしていたような気がするが、私は犯罪者でないのでこうして直接のやり取りできるのだろう。

 

「というか。私、海賊じゃないのですけど」

 

 七武海は有名所の海賊がなる、と聞いている。

 結局の所、彼らは政府から私拿捕行為を認められた海賊にすぎないのだ。

 賞金稼ぎもあまり良い職業イメージではないが、私は海賊と一緒にされたくないのだが。

 

「七武海に必要なのは他の海賊への抑止力となる知名度と武力だからねぇ~」

 

 私はこの世界で有名になってきている、ということなのだろう。

 驚くほど、嬉しいとは思わないのだが。

 正直、私は有名人になりたいとは思わない。

 

「私は海賊ではありませんが。七武海を脱退した場合の扱いはどうなりますか? ペナルティがあっても可笑しくはないと思いますが」

 

 私はこの世界に身を埋めるつもりはない。

 この世界で一通りの強さを感じた後は、他の世界に移る予定だ。

 とはいえ、飛ぶ鳥跡を濁さずと言う。

 この世界に汚点を残して去るつもりはないのだ。

 

「あくまで今のキミは、善良なる一市民ということだからねぇ~。法さえ守っていればお咎めはないよぉ~」

 

 となると、私が七武海を脱退してもペナルティは無いと見ていいだろう。

 市民が非協力であってもそれは罪とはされない、ということだろうか?

 オハラの件もあるし、そうなる保障はないと思うが。

 

「ふむ」

 

 正直、メリットの薄い話だと思う。

 元々、私が海軍やらCP(サイファーポール)(世界政府の諜報員)の勧誘を断り続けているのは理由がある。

 私にとって仕事に就くことに抵抗はないが、軍や組織に仕えるのは抵抗である。

 特定の組織に、自分の時間を大量に捧げるのがナンセンスなのだ。

 

 それに、私はその場の流れとはいえ、あの神々しい少女の元で働くと決めたのだ。

 私は二君に仕えるつもりはない。

 抱えるのは、一つの仕事で十分だ。

 

 よって海軍などに入ってもいいが、上の指示に従うつもりはない。

 そういう契約でならどうか、という形で断り続けていたのだが。

 

 とはいえ、今回の契約はそれらをクリアしている。

 七武海は政府の犬という立場であるが、かなり自由な行動が許されている。

 政府に割合の上納金を収める代わりに、それらの行為も認められているのだ。

 

 それに政府は、私の以前からのリクエストに応えるつもりでもあるようだ。

 私が対価に求めたのは、“覇気“と”六式“の技術だ。

 基本的に私の強さはひみつ道具に依存しているので、それらに依らない力には興味があるのだ。

 

 ちなみに、私は悪魔の実の力に興味がない。

 ひみつ道具を持つ私には、リスクとリターンがつりあわないからだ。

 悪魔の実の能力は魅力的なものもあるが、海に嫌われるというどうしようもない欠点がある。

 私は泳げない(ひみつ道具により泳ぐことはできる)ので、それだけなら良いのだが。

 温泉や風呂にも入れなくなる、というのはあまりに致命的すぎた。

 私は毎日シャワーでも構わない人間ではあるが、入れるなら毎日風呂に入りたい、というか今はそうしている。

 風呂に入れなくなることを対価にびっくり人間になる、というのはあんまりな話だと思ったのだ。

 ひみつ道具があればリスクはどうにかできるかもしれないが、それを含めても食べようとは思えなかった。

 

「わかりました。この話、お受けしようと思います」

「それはありがたいねぇ~」

 

 結局の所、この世界で私がやりたいことはそんなにない。

 七武海に入れば、同じ七武海や四皇との接触も増える事だろう。

 そうしたことを考えると、七武海になるのは悪くない選択だろう。

 

「じゃあ、後々、政府との詳しい話の連絡をするからねぇ~」

「よろしくお願いします」

 

**

 

 あれから世界政府の基に訪れたが、特に驚くようなイベントは無かった。

 世界政府のお偉いさんとは話をしたが、私があちらに協力的なこともあって、話はすんなりと進んだ。

 その際、私の目的について聞かれたが。

 

「私は武人として、強者との戦いを望みます」

 

 そう答えておいた。

 私には過ぎた台詞であるが、一度は言ってみたかった台詞なのだ。

 実際分かりやすい台詞であるし、私の目的にも適っている。

 

 それ以来、私の元には政府からの様々な依頼が届けられている。

 その多くは億越えのルーキー討伐等の、犯罪者との戦いだ。

 報酬をきちんと払ってもらえているので、依頼に不満はない。

 

 一番の収穫は、新世界における四皇との小競り合い系の任務だろう。

 これまでに、カイドウやビッグマム傘下の海賊と戦える機会が多々あった。

 彼らは武人や能力者として優秀な者が多く、戦術というものを知る上で大いに役立った。

 特にクロコダイルやボア・ハンコックの類、つまり致命的な必殺技を持っているような能力者との戦いは有益だった。

 事前に警戒してなければ、私でもやられていたであろう相手ばかりだった。

 ひみつ道具で情報収集は怠らなかったので、その行いにより私は生き延びさせてもらっている。

 

 ちなみに、カイドウやビッグマム本人と戦う機会は未だない。

 白ひげやシャンクスの勢力とかち合うこともまだない。

 機会があれば、彼らとも戦ってみたいとは思うのだが。

 政府としては勢力の均衡を考えており、彼らとの本格的な戦いは望んでいないらしい。

 私には良く分からないが、お偉いさんは色々と考えているのだろう。

 

 変わり種の任務では、革命軍との戦闘もあった。

 彼らも四皇の勢力に劣らぬ強者が多いのであるが。

 それ以上に彼らは戦略に長け、こちらを策に嵌めるのが上手いと感じた。

 戦略的な観点は、特に私に欠けているものなので、特に参考になったと感じている。

 ただ、私は罠にかかった上で常に力ずくで破っているので、そこらへんは申し訳ないと感じている。

 

 革命軍といえば、カマバッカ王国女王であり革命軍の幹部でもある、エンポリオ・イワンコフとの戦いが印象的だった。

 彼(彼女)が政府によって捕まることは知っていたが、私が駆り出されるとは思っていなかった。

 何より、私がニューカマーの一種ではないか、と見抜いてきた事がショックだった。

 捕獲作戦自体はすんなりいったが、何故かしばらく、気分は晴れなかった。

 

 他の七武海との仲は、そんなに良くない。

 そもそも、顔を合わせる機会がそんなにないのである。

 他の七武海は、私に興味や関心を大してもってないのだろう。

 

 “鷹の目”ことミホークに勝負を申し込んでみたりもしたが。

 彼は私が生粋の戦士や剣士でないことを見抜いていたようで、あまり乗り気にはなってくれなかった。

 勝負自体は行われたが、互いに面白くない結果になったとだけは言っておこう。

 

 私を一番警戒しているのは、バーソロミュー・くまであろう。

 彼は本来革命軍の勢力なので、政府に協力的な私の存在は無視できないのであろう。

 彼は私の任務に介入し、工作することもしばしばである。

 別にそれはそれで構わないのだが、獲物を横取りされることだけはどうにかならないものか。

 まあ、仕方ないとは思うけど。

 

「ご馳走様でした」

 

 といった感じで、私は日々を過ごさせてもらっている。

 今日の私は、シャボンシティ内の高級ホテルでフルコースの夕食をとっている。

 まあ、アレである。

 異世界に来たら、グルメだと思ったのだ。

 

 味は正直に言って微妙だった(口にはしないが)。

 味が濃すぎて、私の口には合わなかった。

 結局全部、高級そうなワインで適当に流し込む結果になってしまった。

 天竜人も御用達のホテルと聞いて期待していたのだが、正直期待外れだったな。

 無理に予約を取るほどではなかったか。

 

 この世界に来て一番の食事は海上レストラン・バラティエでの食事だが、アレを超える味には中々出会えないでいる。

 最近では、食事はもっぱら“グルメテーブルがけ”に頼りっぱなしだ。

 異世界の料理といえど、21世紀の料理の方がまだ優勢らしい。

 

 と、私の中の感覚が、急に何か厄介なものをとらえたように感じた。

 探索の範囲を拡大して周囲を見ると、遠くで人が跪いているのを確認した。

 中規模の程度の集団が居て、先頭にはシャボンを被った偉そうな人間が。

 

「むふーん。シャルリアとお父上様は一体どこだえ?」

 

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