Paranoia Agent   作:倉木学人

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事情により、短編に変更しました。


ウィーアー! その④

 天竜人。

 彼らは漫画ONE PIECEに登場する悪役キャラだと覚えている。

 世界政府創設者の末裔であり、そのため今も絶大な権力を振り回す。

 恐らく彼ら程、“腐った貴族”が似合う者はいないであろう。

 中には良い人もいるはいるようだが、基本は人を人と思わぬ鬼畜である。

 

(“石ころぼうし”―)

 

 ここはシャボンシティだから、私もエンカウントするかもしれないと思ってはいたが。

 意外と出会ってしまうものなのか。

 とはいえ、厄介事に巻き込まれるつもりはない。

 ひみつ道具で隠れることにする。

 

「シャルリアー。お父様―。どこだえー?」

 

 天竜人の集団は、このレストランに近づいてきているようだ。

 思わず腰の刀に手をかける。

 目の前で非道が行われるのであれば、私はそれを許容して良いのだろうか。

 ひみつ道具は万能なのだ。

 “悪魔のパスポート”がそうであるように、最悪は何をやっても許される。

 大義は間違いなく、こちらにある。

 

「ふう。疲れたえ。おい、ノドが乾いたえ」

「はっ。おい! 至急、お飲み物をお持ちしろ!」

「はい!」

 

 シャボンと変なスーツを纏った、天竜人と思われる人を見る。

 漫画でもそうだったけど、酷い顔だ。

 こちらは見えてないはずなので、じっと見ても不敬にはならないだろう。

 こういう時にひみつ道具は便利だ。

 

 しかし不敬、か。

 どうも私はアレに敬意を払うつもりでいるらしい。

 何故だろうか?

 日本人だからか?

 

「お持ちしました」

「ふん」

 

 奴隷に乗ったまま、ワイン(私に出されたのと違う。多分特注品)を飲んでいる。

 その所為は貴族らしくなく、全くといって洗練されていない。

 何で人から降りようと思わないのかなあ。

 

 マナーもへったくれもないようだ。

 親から教わっていないのだろうか?

 いや多分、家ではちゃんとしているとか?

 天竜人に道徳とか、どこまであるかは知らないけど。

 

「デザートでございます」

「ふーん」

 

 背後で人が給仕しているのに、鼻ほじってる。

 うわ、汚いの出さないで。

 とても見てられない。

 

 しかし、こう見てみると手慣れてるものだな。

 勿論、ここのホテルの人たちがだ。

 天竜人御用達というのは伊達ではないらしい。

 彼らの扱いというものを完全に理解しているようだ。

 アレではどちらが扱われているか、分かったものではないくらいに。

 

 ふと私が天竜人を消したらどうなるかと、考える。

 多分、それは幸福なことではないだろう。

 天竜人がいなかったら、ここにいる人は間違いなく不幸になる。

 きっと、そうなるはずだ。

 とはいえ、実際は天竜人の所為で不幸になる人の方が多いだろうが。

 

 あの少女は、世界の数が無限にあると言った。

 その中で恐らく完全に幸福な世界や、完全に不幸な世界はないのだと思う。

 世界の人口が無限であるならば、不幸な人間の数も無限だろう。

 無限は幾ら割ろうとも無限だからだ。

 

 いや、少し違うか?

 私は完全に幸福な世界や、完全に不幸な世界というものを知らないだけだ。

 あの少女なら知っているのだろうか?

 

 あの少女に、再び会いたい。

 早く、この仕事を終わらせたくなった。

 

 

**

 

 

 私はとある海賊の元を訪れた。

 事前に手紙を送り、返事を受け取った上である。

 特に、七武海の立場とかは考えていない。

 単に最強というものを追い求めての行動のつもりだ。

 

「何事もなければ良いのですけど。私のやる事がやる事ですからね」

 

 目立つように、わざと船を作ってから訪れている。

 “タイムテレビ”と“プラモ化カメラ“で作った”霧の重巡『タカオ』“のプラモデルを、”天才ヘルメット“を用いて改造したものである。

 一応は私が(コア)扱いであり、遠隔操作や自動運行も可能となっている代物だ。

 この世界に来てから遊びで作った船であり、これが処女航海になるが。

 荒くれたこの海でも、特に支障もなく作動している。

 

 その島に近づくと、島から火の鳥が飛んでくるのが見える。

 その姿を見たことはないが、多分白ひげ海賊団一番隊隊長、“不死鳥マルコ“だろう。

 

「アンタが『鉄腕』か?」

「はい。お迎えありがとうございます」

「船を持っているとは知らなかったが。随分と変わった船を持っているんだな。乗せてもらってもいいか?」

「どうぞ」

 

 火の鳥がパイナップルヘアの男に変わって降り立つ。

 そうして艦の動く様を、物珍しそうに眺めている。

 

「風も無いのに、随分と速い船だよい」

「一応、60kt出てますね」

「へえ」

 

 この世界の船は、随分と高性能なのだと感じる台詞だ。

 世間にあるのは木造船ばかりだが、凶悪な天候でも簡単には壊れない。

 殆ど見ないが、潜水艦やらを作る技術もある。

 恐らく人間がそうであるように、私のいた世界とは生物の頑丈さが違うのであろう。

 

「おお」

 

 小さな島には、多くの船が泊められている。

 海賊でも艦隊を組むものはいるが、ここまでとなると一握りだ。

 海軍にはない多種多様な船が、持ち主の人格を表しているようだ。

 

「では、案内をお願いします」

「おうよ」

 

 マルコに連れられた先には、今まで見たことがないくらい海賊たちが集まっていた。

 四皇の小競り合いに参加した中でも、ここまでは見ない。

 こちらを見る視線は期待と困惑と、そして僅かな殺気。

 そして私を向いていない視線は、別の一か所に集中している。

 

 視線の先には豪華な椅子に座る、老人ながら筋骨隆々の巨漢が。

 彼こそが“白ひげ”エドワード・ニューゲート。

 現世界最強の男、四皇の一角、白ひげ海賊団の長だ。

 そして、私が決闘を申し込んだ先でもある。

 

「聞いていたより、老けてんだな。『鉄腕』」

「ええ、ちょっと。貴方は聞いていたより若そうです」

「グララ。言うじゃねえか」

 

 実際見てみると、迫力がすごい。

 これが時代で最強を名乗る事のできる男の姿。

 この辺りは単独で“最強”と言われている、“百獣”のカイドウとは違う。

 だからこそ、私は挑む価値があるのだと思う。

 

「この度は決闘を受けていただき、ありがとうございます」

「あー。悪いが。それだがな」

「はい?」

 

 周りを見ると、やけに殺気立っているような。

 中には武器を抜こうとしている者もいる。

 

「ああ。部下が納得していない、と?」

「そういうこった。お前さんには悪いが、ちょっと付き合ってくれや」

 

 白ひげが一喝すれば、止めれそうなものであるが。

 とはいえ、そこは白ひげの優しさと周りの信頼故か。

 

「分かりました。では、誰を斬れば良いのですか?」

 

 私としても、異論はない。

 戦いを積極的に好むわけではないが。

 最強を証明するという仕事から逃げるつもりはない。

 

 周囲から、何人かが前に出てくるが。

 ある人物が大きく進んできたことで、その者たちは歩みを止めた。

 

「俺が行こう」

 

 見覚えのある帽子と、短パンに半裸の男。

 底抜けの明るさにより、白ひげと同じものを感じさせるような。

 つまり若いが、一種のカリスマさえ感じさせる。

 

「成程。ポートガス・D・エース。ですね?」

「おう。そう簡単に親父と戦えると思うなよ?」

 

 未だ未熟に見えるが、有数の実力者であるのは間違いないだろう。

 相手として不足はない。

 

 私たちは、それなりの広場へと移動した。

 その上で、二人は向かい合う。

 

「これからの戦いに、感謝を。ですが、ごめんなさい」

「!」

 

 私は“妖刀ちゅんちゅん丸”を手にやり、居合の構え(見よう見まね)を取り。

 ちょっと修行した成果を発揮する。

 

「“秘剣・飛飯綱(とびいづな)“」

 

 技名を態々言いながら、ちょっと小さな飛ぶ斬撃を放つ。

 ウルトラ・スーパー・デラックスマンの身体能力で無理やり作り出したものだが。

 こういう漫画の雰囲気は、まあ悪くない。

 

「“炎戒(えんかい)“!」

 

 とはいえ、それは炎の壁によって防がれた。

 

「む」

「残念だったな。風で火は切れねーよ」

 

 エースは自然系“メラメラの実”の能力者。

 炎人間で、炎に関することなら自由自在といったところであるか。

 

「では、“無銘・燕返し”」

「な!」

 

 こちらから一瞬で距離を詰め。

 適当な願望系のひみつ道具で“必中”の概念が与えられたそれを放った。

 

「痛ってえ! 流石に覇気使いか!」

「自然系とはいえ、流石に防がないと痛いですよ」

 

 必ず中るとはいえ、防御が薄かった。

 これまでの戦闘経験から、多分自然系全体の癖なんだろうが。

 物理無効というのも何か考えさせられる。

 

「“詐刀・鬼蹴り”」

「うお!」

 

 そのまま回し蹴りを放って、大きく吹き飛ばす。

 “覇気“でガードをしていたようだが、手ごたえは十分。

 

「避けて下さい。“現世妄執・無為無策斬り”」

「“大炎戒(だいえんかい)”!」

 

 多数の斬撃を大雑把にばら撒く。

 とはいえ、今度のそれは真空波ではない。

 自分でも良く分かっていないが、それは剣の幽霊と呼ぶべき存在である。

 

「てめえ!」

 

 炎を爆発させることでガードしようとしたのだろうが。

 若干の消耗が見られる。

 今度はあちらが距離を詰め、仕掛けてくる。

 

「“非行・鸚鵡(オウム)返し”」

「うお!」

 

 今度は私の身体から炎が爆発し、大きく吹き飛ばす。

 先ほどの相手の技を再現したのだ。

 

「“ソードビーム”!」

「クソッ! お前、何でもアリかよ!」

 

 剣の形をしたビームという、自分でやっといてダサい攻撃を放つ。

 見た目はアレだが、この剣の攻撃なので弱くはない。

 

「“陽炎”!」

「-?」

 

 多量の炎攻撃が放たれるが、明らかにその威力が弱い。

 意図が掴めず固まっていると、急に炎の中から姿が現れた。

 これは、目つぶしか。

 

「貰ったあ!」

「わ」

 

 やば、刀を取られた。

 そ、そういえば盗難対策をしていなかった。

 この辺、ひみつ道具に頼り過ぎなような気もする。

 だからこそ鍛えようとしているのだが、これはひどい。

 

「ですが。武器など不要、“ツヴァイト・ファイアアイ”!」

「“火炎斬り“!」

 

 その刀は私でなくても使えるようになっているので、当然のように利用される。

 

「―おいおい、エースの奴が火力で押し負けてやがるぞ」

 

 周りから、焦りの声が聞こえてくる。

 私はそもそも武器があんまり必要ないぐらいの強さ。

 あちらも工夫を凝らしているが、この差を埋めるのは厳しいみたいだ。

 

「“天覇確殺(てんはかっさつ)“!」

「うお!」

 

 手から気の砲を放ったが、よりによって私の刀でガードされた。

 かなり頑丈に作ったつもりだったのだが、あっさり壊れてしまった。

 

「わ、私の刀を盾にするとは、なんと悪質な」

 

 そういえばルフィも海軍を盾にすることがあったような。

 この兄あって、あの弟ありということか。

 やる事が地味にえげつないぞ。

 

「畜生!」

 

 突撃してくるが、若干苦し紛れの感じが否めない。

 

 ここは無手では、心もとない。

 ポケットからサーベル(自作)を取り出し、構える。

 いい加減、決着はつけねばならないだろう。

 恐らく、相手にも失礼に当たる。

 

「“サンダ~・」

 

 私の身体が放電を初め。

 明らかに大技ですと言わんばかりの演出(無敵付き)を、相手の攻撃に重ねる。

 

「クラウザ~!”」

 

 剣から、雷霆の一撃が放たれる。

 大技らしく、命中と共にダウンを奪う。

 開発した技の中ではかなり有情な一撃のはずだが、ちょっとやり過ぎのような気もする。

 

「良かった。生きてますね」

「ク、クソ」

 

 流石に生きていたようだ。

 私の世界の人間は、洗濯機でも感電すると死に至るだろうが。

 まあ、この世界の住人は感電ぐらいで死なないか。

 

「そこまでだ。エース」

「親父! こいつは危険だ!」

 

 白ひげが椅子から立ち上がった。

 

「わかっている」

 

 そこには、さっきまでの余裕は感じられない。

 それどころか、決死の覚悟すら感じられる。

 

 私はここで、何か重大な間違いを犯したようでならない。

 

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