*原作ネタバレ(村田版はまだの領域で)あり*
どこにでもありそうで、現実にはどこにも存在しない現代社会の街。
私は虚空から刀を振るい、そのまま次元の隙間を作り出した。
雨雲の上に作り出した隙間から私は身を投じ、そのまま重力に身を任せる。
ここは多種多様なヒーローと怪人たちが、終わりの見えない戦いに投じる世界。
ある者は科学、別の者は武術。
また別の者は超能力や単純な精神論により、一個人があり得ない程の力を所持している社会。
この世界では異次元からの訪問者たる私も、そういう“個性”に過ぎないのだろう。
この世界における私の目的は、とあるヒーロー。
彼はその身体であらゆる攻撃を回避し、また耐えることができる。
そして、拳一つであらゆる敵を粉砕する“最強“の存在。
私たちの世界では、彼を“ワンパンマン”と呼んだ。
**
人気のない街であるZ市。
インフラこそ機能しているが、そこに住んでいる人は最早極少数。
前世では見たことがないが、シャッター商店街というべきか。
この街も、近くのイオンモールだけが唯一の灯となっている。
この市は度重なる怪人の出現により、人々に見放されて久しい。
被害の痕跡がどの光景を切り取っても存在しており、もはや工事される見込みもない。
そんな街に、彼は節約目的で住んでいる。
どうやら、彼は隣町のスーパーで買い物をしたばかりのようだ。
多分、今日は特売だったのだろう。
「サイタマ、ですね?」
禿げ頭に、明らかに素人製なヒーローコスチューム。
良く見ると筋肉質だなとは思うが、全く覇気を感じられない男。
“Ma=F“のニュートンの法則(所謂、質量はパワー)が必ずしも成り立つ訳でないとはいえ、流石にこれは異常だろう。
ここに訪れる前に“キング”(私たちの間では、ハッタリで有名)の元を訪ねたが。
私の六感では、二人の違いを見分けることが出来ない。
恐らくだが、極端な最強と極端な最弱は同じ位置にいるのだと推測できる。
「誰?」
私は海軍やら海賊達から、しょっちゅう覇気が無いと言われたとはいえ。
あちらは私を警戒している素振りは無いようだ。
私も、まあ、その、外見が完璧にキュート系なのもあるのだろうか。
この身体の外見は、間違いなくアルペジオ・艦これ・アズレンのそれぞれの“高雄”がモデルである。
三で割った外見(?)、でも体型は“タカオ”重視だし。
兎に角覇気なんて無いと思う。
あの少女は、なんでこんな外見に。
いや、この考えはよそう。
「私はタカオ。私は、そう。時の旅人、です」
「ふーん?」
そのために“妖魔刀・ちゅんちゅん丸”がプレッシャーを放っているはずなのだが。
上手くいかないものだ。
この男が強敵に警戒するイメージなんて全く思い浮かばないとはいえ、これはどうなのだろう。
「私の目的は、一つ。戦いましょう?」
私は“手袋”を取り出して身に着け、そのまま居合の構えを取るが。
サイタマは動かない。
腹立つほどに自然体だ、全く警戒心がない。
しかし、これは分かる。
ミホークとかで見覚えがあるぞ。
多分、“様子見”、か?
隙だらけだが、余裕たっぷりだ。
「『きり・きりきり』」
目にも留まらぬ速さで、二連続の斬り。
それをサイタマは“同じ速度”で、私の後ろに回り込んだ。
「その荷物、預かりましょうか? これから邪魔になりますよ」
「ん?」
サイタマが両手に持ったビニール袋を見やる。
両方に小さいが、底に二つの明確な傷がついていた。
「おい。お前」
「今の私は、“貴方と同じ強さ”。貴方の要望に添えるかと」
未知数の強さを持つサイタマだが、私なら同じの強さを持つ“だけ“なら簡単だ。
私が両手に着けた手袋は、“あいこグローブ”の改良品。
”相手と互角の勝負になる”という効果のひみつどうぐだ。
「これ、ゴミ袋に使うつもりだったのに」
えーと。
その。
えー、と。
うん。
反応するところ、そこですかね?
あと、ゴミ袋は役所指定の物を使いましょうよ。
多分、一時的に使うだけでしょうけど。
「とりあえず、それは置いたらどうでしょうか」
サイタマはバス停のベンチまで歩いて、そこに荷物を置いた。
あれ、思ったよりも冷静だ。
**
「『満月・大根斬り』」
「『キモベラース・コンビネーション』」
「『秘剣・万国博覧会』」
いくつかジャブ代わりと、大技やラッシュを仕掛ける。
しかし、どれも決定打はないし、傷一つつかない。
躱される中で何回か私の刀はパンチで砕かれたが、それでも何も問題ない。
“妖魔刀・ちゅんちゅん丸”は前回の反省を生かし、私の髪を組み込んである。
刀を私の一部とすることで、この刀は壊れても場面が変われば元通りになるのだった。
問題があるとしたら。
それは別の問題だろう。
「どうして、戦わないのでしょうか?」
サイタマは、私と全く戦う素振りを見せていない。
これが戦争で例えるなら、彼は自衛しかしていないのだ。
彼は戦うことが、好きではなかったのか?
それとも、何か理由が?
「え? そりゃあ。-って、ん?」
私と彼が何かを捉えた瞬間、私の手元が煌めき。
刀が私の周囲を引き裂いた。
紐状の物が、いくつもの断片となって周囲に落ちる。
これは。
縄跳びの紐?
サイタマに同様の物が、巻き付いて拘束しているようだが。
「ありゃ。防がれちゃった?」
私が見上げると、三階建てのビルの上に少年が立っている。
機械仕掛けのランドセルに古いデザインの棒付きキャンディー、あの姿は確か。
S級・五位のヒーロー、『童帝』だったか?
「あの刀が? 例の。いや、しかし―、とても業物には見えんが」
よく見ると、私たちは包囲されている。
この世界のヒーローの見知った姿がちらほら。
力の巡りによると、S級クラスが変に多いようだが。
何故だろう?
「とりあえず、要件を聞きましょうか?」
恐らく、ヒーローの中でも常識人であろう童帝に話しかける。
彼がやや驚いた様子を見せ、口を開くが。
「アンタのソレが、人類滅亡の兵器って訳?」
後ろから話しかけられた。
振り返ってみると、やけに小柄だが確かな力を感じる女性が。
S級・二位、戦慄の『タツマキ』だろう。
「え、と。多分、違うと思いますが。とりあえず童帝さん、もっと前から事情を話してくれませんか?」
「ちょっと! 私が話してんのよ!」
「え、あ。わかった」
タツマキから、私の苦手な人間の空気を感じる。
あれは間違いなく、コミュ障で状況をややこしくするタイプだ。
悪いが少年の方を頼ることにした。
「シワババって人が、ある預言をしたんだ。『兵器が人間を亡ぼす』ってね」
シワババ、は覚えてないが。
預言者でなら覚えている。
確か、的中率100%の預言だったか。
「ボクは預言なんか信じてなかったのだけどね。突然、ボクを含めたS級ヒーロー数人が、君のその気配を感知したんだ」
となると、ここにいる人選も納得か。
童帝の他は、タツマキとぷりぷりプリズナーが。
それらも感知タイプに分類できる人間だろう。
「で。ボクらが解析する限り、君のソレがどう見ても怪しいと意見が一致した。そうなの?」
あああ、ちゅんちゅん丸の改造が、こんな所で影響出ている。
出来れば、邪魔して欲しくなかったのに。
別に、これが人間を亡ぼす兵器なわけではないというか。
というか。
「
やっべえ。
私、人類亡ぼせるわ。
だって実際人間じゃないし、ドラえもんのひみつどうぐだもん。
全くもって、可能性が否定できない。
「ッ!
タツマキのその言葉で、周囲の殺気が膨れる。
一方、サイタマはそのままの雰囲気だ。
「なあ、おい?」
「アンタが誰か知らないけど、邪魔だからどっかいってなさい!」
「いえ、いいんですよ。何でしょうか」
「お前、怪人じゃないだろ?」
あ。
サイタマが戦わなかった理由が分かった。
私が、“敵”じゃないからだ。
「そうですよ。人間とかヒーロー、でもないですけど」
「どういうこと?」
童帝が疑問を零すが、それが最も善い判断だろう。
今ので、話す余地が出てきた。
あまり、意味はないけども。
「怪人とは何か、と問えば。皆が“人間に害をなす者”と答えるでしょう。害をなせば、人間に限らず自然現象や機械、異界からの侵略者でも怪人なんです」
この世界に、ガロウという人物がいる。
彼は多くの人を傷つけたが、その一方で少数の人を救っていた。
その一線を守っているだけで、彼は怪人ではなかったのだ。
「つまり私は、“人類を滅ぼすけど、人類にとって無害な存在”ということになります」
ようやく、私が何をすればいいかが分かった。
私は右手に仕込んだ、とあるスイッチに指をかけた。
その瞬間、超能力で
「気を付けて! コイツ。アンドロイドの、とても強力な超能力者よ!」
その認識は正解だが、正確ではない。
私は“E・S・P訓練ボックス”によって超能力者になっているが、私の力はひみつどうぐ頼みの所が大きい。
とはいえ解としては本当に正しく、何も間違ってはいない。
どれだけ警戒しようが、彼女たちでは何も変わらない。
「『みんなきえちゃえ』!」