ある蜘蛛のお話   作:蛟ㅤ

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最初は山の神(深夜廻)絶対に許さねぇ!って思ってたんだけど、夜廻の小説を読み直して、ああなったのにも理由があるのかなって考えて、山の神の見た目と倒した瞬間の挙動、考察サイトを読みあさってこんなのができました。……おれ、徹夜でなに書いてんだろ。

あ、初投稿です。


ある蜘蛛のお話

──あるところに一匹の蜘蛛がいました。その蜘蛛は人の掌ぐらいに大きく、真っ白な見た目をしていて、赤と白の糸を自由に出すことができるとても珍しい蜘蛛でした。

 

 山の上の洞窟の奥を住処としてひっそりと暮らしていると、ある時、人間の男女が住処にやってきて、蜘蛛の存在に気づくとしばらくじっ と眺めていました。男の方が何を考えたのか、蜘蛛の巣を採り、自分の小指に巻き、女の小指にも巻くと、男女は笑い合って地面に食べ物を置いて去っていきました。

 蜘蛛は困りました。食べ物があっても、住処が無くては他の生き物から身を守れず、安心して休めません。仕方なしに、再び巣を張りました。

 その日を境に、人間が度々来るようになりました。人間達は巣を採り、その代わりに、とでも言うように色々な食べ物をおいていきました。

 蜘蛛は必死になって巣を張りました。ですが、いくら巣を張ってもたちまち人間に壊されてしまいます。来る日も来る日も巣を張り続け、あることに気がつきました。白い糸で作った巣は人間に壊されないのです。

 それからは自分の住むための巣を白い糸で張り、人間のために赤い糸で巣を張りました。人間が食べ物を置いていくので蜘蛛は食事に困りません。ただ赤い巣を張っているだけで人間が食事を持ってきてくれるのですから、これほど楽なことはないでしょう。

 

 そんな日々が十数年も続くと、蜘蛛は寿命で死んでしまいました。人間は蜘蛛の住処に祠を建て、亡骸をそこに安置し、縁結びの神として祭り上げました。

 

 蜘蛛は死にましたが、意識がありました。死んでから、人間の体から出ている赤い糸が見えるようになり、操ることができました。人間が二人でお詣りに来ると、その糸同士を結んであげました。なんとなく人間がしてほしいことがわかったのです。幾度となく同じ事を繰り返していくと、いつしか蜘蛛は肉体が無くても動けるようになり、体も大きくなっていったのです。

 

 ある日のこと、立派な身形の男女がお詣りにきました。蜘蛛はいつもどうりに人間の糸同士を結び、男女は帰っていきました。

 

 それからまた月日は流れて、パタッと人間が来なくなりました。

蜘蛛は訝しみましたが、人間が来ないとやることがありません。ただただ待ち続けるだけです。

 数年が経つと、蜘蛛は自身の変化に気づきました。体が段々と小さくなっているのです。蜘蛛は焦りました。人間がこのまま来ないと消えてしまうと思い、なんとかしようと外に出ることにしました。

蜘蛛は洞窟から出て外に行くと、人間に出会います。

 

 その人間は木箱に腰掛け、読書をしていました。

不意に、人間は蜘蛛に気づくと 興奮した様子で言いました。

 

「クモ!? でかっ!? クモでかっ!? えっ、すげぇ……、真っ白くてキレイなクモだ……。えっと、おにぎり食べれるか?」

 

 蜘蛛は少し間を置いて答えました。

 

『…………タベレル』

 

 人間は驚きながら辺りを見渡して、しばらくすると蜘蛛に尋ねました。

 

「今のって、クモ、お前が喋ったのか?」

 蜘蛛はすぐに答えました。

 

『ソウダ、オニギリ、クレ』

 

これが一人の人間と一匹の蜘蛛の出会いでした。

 

 

 

 

 

 

 

「なぁ、クモ」

『ナンダ、ニンゲン』

「そのさー、人間っていうのそろそろやめないか?もう会ってから結構経ってるし、それにおれにはカイって名前があるんだよ」

『オマエモ、クモッテ、イウ』

「じゃあ名前でもあるのかよ」

『ナイ』

「ほら、クモって呼ぶしかないじゃん。でも、名前がないと不便じゃないか?」

『ナンデダ』

「なんでって……、たくさん人がいる時とかにさ。……あっ、おれ以外に話す相手がいないのか、すまん」

『……………』

「いや、悪かったって、本当にそういうつもりじゃなかったんだよ」

『……ナラ、オマエガ、ツケロ』

「おれが?いいのか?」

『イイ』

「ん~、そうだな、じゃあシロはどうだ! 名は体を表すっていうし、誰が聞いてもお前だってわかるだろ」

『ソレハ、イヤダ』

「だめ? じゃあ、シクモは?」

『イミハ』

「白いクモだからだ」

『ダメダ』

「えー、これもだめ?じゃあ、ちゃんと考えるからお前のこと教えてくれよ」

『ナニヲ、オシエレバ、イイ』

「今まで何をしてたとか、どこからきたとか、そういうのを教えてくれよ」

『ズット、スヲ、ハッテタ』

「まぁ、クモだしな」

『ソコノ、アナカラ、キタ』

「うん、それから?」

『ソレダケ』

「おしまい!?」

『オマエガ、ソレヲ、キイテキタ』

「いや、そうなんだけどさ、もうちょっとひねりがあってもいいんじゃないか?」

『ヒネリ』

「そう、巣を張ったらどんな獲物がかかったとか、何がおきたとか、洞窟の中はどんな場所だったかとか」

『スヲ、ハッタラ、ニンゲンガ、コワシテキタ』

「ひどい奴だな!」

『デモ、タベモノ、オイテッタ』

「うん? なんでだ?」

『ワカラン』

「えーっと、じゃあ、壊した巣でその人はなんかしてたか?」

『ユビニ、マイテタ』

「子供かっ‼」

『フタリデ』

「二人? ……もしかして、男と女だったりする?」

『オスト、メス、ダッタ』

「……お前の作る糸って、赤かったりするか?」

『アカイノモ、シロイノモ、ダセル』

「なるほどわかった。よく聞けクモ、お前の名前が決まったぞ」

『ナンダ』

「ずばり、エニシだ!」

『エニシダ』

「違う違う、エニシ、だ。エ・ニ・シ」

『エニシ』

「そうだ、さっきのお前の話を聞いてな。人間の間では運命の赤い糸っていう言葉があって、いつか結ばれる男女はその赤い糸がお互いの小指に結ばれている、って言われてるんだ。だから、それに肖ってお前の糸を貰って小指に巻いてたんだと思う。その代わりに食べ物を置いてったんだよ。」

『ソウナノカ』

「多分そうだと思う。で、お前がしてきたことは縁結びのお手伝いだ。」

『エンムスビ』

「そう。それで、縁結びの縁の字の読み方を変えるとエニシになるんだ。だからエニシ! どうだ、ちゃんと意味も考えてあるだろ」

『…………』

「おい、なんか言えよ、自信作だぞ。これが駄目だったらエンとかムスビとかユイになるぞ」

『……コレデイイ』

「……不満があるなら言えよ? あとでやっぱりイヤだとか言われても──」

『コレガ、イイ』

「……よし! じゃあ決定だな! これで今日からお前はエニシだ! あらためてよろしくな! エニシ!」

『ヨロシク、ニンゲン』

「おい、そりゃーないだろ! せっかく名前考えたのに、おれだけ呼ぶとか不公平だ!」

『カッテニ、ヨンデルダケ』

「……へぇ~? そういうこと言うんだ? じゃあもう食べ物、持ってこなくてもいいんだな?」

『ソレハ、コマル』

「じゃあ、名前で呼び合う! エニシ!」

『…………カイ』

「聞こえなぁ~い。エニシ君は食べ物が欲しくないのかなぁ~?」

『カイ、……コレデイイカ』

「ああ! 名前で呼び合ったんだから、おれたちもう友達だな!」

『トモダチ』

「そう、友達!」

『トモダチッテ、ナンダ』

「えー、そういわれると困るなぁ…。う~ん、名前で呼び合って、ずっと一緒にいて、おれ達みたいに頻繁にしゃべる関係? あとはお互いが困ってる時に助け合うとか……」

『タスケアウ』

「そう! それがおれの考える友達だ。」

『エニシ、カイ、トモダチ』

「友達として、よろしくなエニシ!」

『ヨロシク、カイ』

「じゃあもう暗いしまた明日な! 食べ物ちゃんと持ってくるからな!」

『……マタナ』

 

 

 

~数日後~

 

『カイハ』

「うん? なんだ? エニシ」

『アカイイト、ムスバナイ』

「結んでくれる相手がいないの。いい女はいい男が持ってっちゃうからなぁ」

『カイ、ヨクナイオトコ』

「やかましいわ! 別に女がいなくたって、エニシがいるから寂しくないし」

『ムスブ』

「誰が? 誰と?」

『エニシト、カイ』

「えっ? エニシ、お前メスだったのか!?」

『チガウ』

「いや、おれそっちのケはないから、そもそもエニシはクモだからな?」

『トモダチ』

「……あー、そういうことね。結ぶとどうなるんだ?」

『バショガ、ワカル』

「地味に便利だな、じゃあ結ぶか。エニシ、頼んだ」

『モウ、オワッタ』

「はやっ! えっ、本当に?」

『イドウスル、メヲトジロ』

「えっ? あ、ああ。……………………おぉ、ホントにエニシの場所が分かる! なんとなくだけど!」

『……………………ドウダ、ウソ、ツイテナイ』

「ぁー、疑って悪かったよ。エニシって結構スゴいのな」

『エニシ、スゴイ、カイ、トモダチ、ホコレ』

「はいはい、エニシサマトトモダチデワタクシトッテモホコラシイデスー」

『ナンカ、チガウ』

「それよりもさ! 明日! いつもよりたくさん食べ物持ってくるからな! 期待してろよ!」

『アシタ、ナニカ、アル』

「金持ちのおっさんが宴会をするとかでな、たくさん食べ物が食べれるんだ! 普通ならおれみたいな貧乏人は呼ばれないけど、そのおっさんは太っ腹でな、村のみんなに振る舞うんだってよ!」

『ソウナノカ、タベモノ、タノシミ』

「エニシは何か食いたいものとかあるか?」

『ニク』

「だよなー、エニシ肉好きだもんなー。いつも持ってきてやれなくてごめんな」

『ソウイウ、ツモリ、チガウ』

「わかってる、今のはおれが意地悪だった。じゃあ、また明日な、いつもより遅くなるかも知れないけど待っててくれよな!」

『マタ、アシタ』

 

 

~翌日~

 

『……カイ、オソイ、エニシ、ズット、マッテル』

 

ガサガサ、ガサガサ

 

『カイ』

 

──グチュ!

 

『ギィィィィィ!』

 

「ハッハー、あのガキの言うとおりだ。ここにいやがったぜ、化け蜘蛛」

 

『イタイ……、ナンダ、オマエ』

 

「俺か? 俺はな、オマエを殺すように雇われたんだよ」

 

『ナンデ』

 

「お前が金持ちの息子を自殺に追いやったからだよ!」

 

『エニシ、ヤッテナイ、ニンゲン、コロシテナイ』

 

「エニシだぁ? 化け蜘蛛がいっちょまえに名前なんて名乗りやがって、オラァ!」

 

──グチュ!

 

『ギィィィィィ!』

 

「まぁ、理由なんざどうだっていいさ、要はオマエを殺すと俺が金をもらえるってこと、さっ!」

 

──グチュ!

 

『…………イタイ、イタイ、カイ、タスケテ』

 

「カイぃ? あぁ、あのガキのことか、いつもコソコソ山に行ってるって話だったからな、酒飲ませてベロンベロンにしてやったら一発よ! 洗いざらい吐いてくれたぜ、オマエのことをな。今ごろは寝てんじゃねぇのか?」

 

『…………カイ、カイ、タスケテ、トモダチ』

 

「助けは来ねぇよ、オマエはココで死ぬんだ、よっ!』

 

──グチュ!グチュ!グチュ!グチュ!グチュ!

 

『………ギ…ィ…』

 

「じゃあな、化け蜘蛛、恨むならあのガキを恨みな、出会わなかったらまだ死ななかっただろうな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「エニシー!エニシーー!!どこだ!!」

 

──カイ

 

「そうだ! おれだ! カイだ! 大丈夫か!」

 

──ダメ タスケテ

 

「ああ! 今行く! でもこの洞窟暗くてよく見えない!」

 

──メヲ トジテ

 

「そっか! 場所が分かるんだっけ! 待ってろよ! すぐに行く!」

 

──ハヤク

 

 

 

 

「エニシ! もうちょっとなんだけど! どうやって降りればいい!?」

 

──ススンデ

 

「え!? 高さが合ってなくない!?」

 

──エニシ ウソ ツカナイ

 

「そうだけど…。」

 

──カイ トモダチ タスケアウ ウソ

 

「嘘なんかじゃない! 今助けるからなエニシ!」

 

ガラッ ヒューーー グシャア!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──あるところに一匹の蜘蛛がいました。その蜘蛛は、まるで人間の死体を組み合わせたかのような見た目をしていました。

蜘蛛は人間の体から出ている糸を操り、山に(いざな)い、死に至らしめるのです。

それを繰り返し、どんどんどんどんと大きくなっていきました。

ある程度大きくなると、町を覆うほどの糸を張り巡らせ 、その町から離れようとする人間がいればすぐに察知し、代償として若い者の命を奪いましたとさ。

 

 

 

 

 

──カイ アリガトウ トモダチ ズット イッショ

 

 

 

 




ここでは本来、縁結びのお詣りをした人間が死んだ後、その伴侶は縁切り神社に行って、縁を切ってもらいます。金持ちの息子が自殺したのは、死んだ妻をいつまでも思い続け、縁を切らずに放置したからです。

カイの名前の由来は後悔、戒める(山の神を倒した時の挙動)からです。
蜘蛛の生態とか食事に関しては適当なので勘弁です。

この話を書いて、何が言いたいかっていうと、一番怖いのは人間なんじゃないかな、ってことです。
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