過去、人気をはくしたMMORPG「ユグドラシル」のサービス終了の日。かつてプレイヤーの間で恐れられたPKギルド「アインズ・ウール・ゴウン」には、ただ1人だけプレイヤーがいた。その名は「モモンガ」。この「アインズ・ウール・ゴウン」のギルド長にして、サービス終了まで残った唯一のメンバーである。
かつて41人いたギルメンは、現実とゲームの折り合いがつかず引退や、他のゲームへ移籍、仲の良いギルメンの引退と共に引退するなど、ほとんどはゲームをやめ、残ったものもログインはしなくなった。
それはこの日も同じだった。
広い玉座の間にいるのは「モモンガ」ただ1人だけ。
正確には、NPCもいるが、喋ることもなく、ギルメンとの思い出には浸れるが、心に空いた穴を埋めることはない。
強制ログアウトまで後5分をきった。
玉座の間に掲げてあるギルメンの旗を見る。
「――、餡ころもっちもち、ウルベルト・アレイン・オードル、源次郎、死獣天朱雀、タブラ・スマラグディナ、ぶくぶく茶釜、武人建御雷、弐式炎雷、ぷにっと萌え、ブルー・プラネット、ヘロヘロ、ペロロンチーノ、ホワイトブリム、やまいこ、ぬーぼー、るし★ふぁー、ベルリバー、音改、ばりあぶる・たりすまん、スーラータン、ク・ドゥ・グラース、チグリス・ユーフラテス、そしてたっち・みー…。」
旗を見て、ギルドメンバー全員の名前を挙げながら、かつての騒がしくとも楽しかった思い出に浸る。
それと関連して運営が開催した幾つかのイベント、その1つにギルメンの多くが気に入った、過去のゲームとコラボしたイベントを思い出す。
空を飛ぶ船に乗り、空中に浮く島々を他のギルドより早く征服するイベントだった。島にいる特殊なボスモンスターを倒したり、他のギルドの船を奇襲し落としたりと楽しいイベントだった。
「ブループラネットさんが、綺麗な空を飛ぶことにやけに興奮してたな。あの人は、1番空に憧れを持ってたしな。」
そのイベントで手にいれたアイテムがインベントリにあることを思いだし取り出す。
「たしかこれは、「蒼天の輝き」だったかな?これを透かしてみると何時でも空が見えるって喜んでたな――」
薄く光輝く丸い硝子玉に、イベントで飛び回った空のミニチュアが入っているのだ。時間と共に陽が出て沈む様に色が変わる、あの空をそのまま閉じ込めたような非常に凝ったものだ。
「これは何と言うゲームとのコラボだったかな?たしか――」
その時、強制ログアウトの時間が過ぎた。サーバーとの接続が切れログアウトされ、何もない現実に戻される―はずだった。
手に持っていた、「蒼天の輝き」から突如眩い光が溢れ、それと共に聞こえた「助けて…」と言う声。
何か行動を起こす前に、引き込まれるかのように光に飲み込まれた。