ありふれた職業の世界最強と歩む機凱少女   作:エルナ

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活動報告にてエクスの名前についてのアンケートを取っています。良ければ答えてください。もちろんここの感想に書いてもらっても構いません。


第11話

サソリもどきが瞬殺されたショックから回復したハジメ達は、サソリもどきとサイクロプスの素材やら肉やらをハジメの拠点に持ち帰った。その巨体と相まって物凄く苦労すると思われたがエクスが見た目に合わない怪力を発揮し、1人で運んでしまった。

 

 

ちなみに、そのまま封印の部屋を使うという手もあったのだが、ユエが断固拒否した。断固拒否したユエを見たエクスが封印部屋を使うことを進めた。

 

 

しかし、何年も閉じ込められていた場所など見たくもないのが普通だ。消耗品の補充のためしばらく身動きが取れない事を考えても、精神衛生上、封印の部屋はさっさと出た方がいいだろう。なのでこの案は没になった。

 

 

そう言ったハジメにエクスは僅かに口を尖らせ、「【質問】何故ユエ(これ)に優しくするのか」と言っていた。

 

 

ユエをこれ呼ばわりしたことにハジメとユエは揃って顔を引きつらせた。

 

 

そんな訳で、現在エクス達は、消耗品を補充しながらお互いのことを話し合っていた。

 

 

「そうすると、ユエって少なくとも三百歳以上なわけか?」

 

 

「……マナー違反」

 

 

ユエが非難を込めたジト目でハジメを見る。女性に年齢の話はどの世界でもタブーらしい。

 

 

書物によれば三百年前の大規模な戦争のおり吸血鬼族は滅んだとされていたはずだ。二十歳の時、封印されたというから三百歳ちょいということだ。

 

 

「吸血鬼って、皆そんなに長生きするのか?」

 

 

「……私が特別。“再生”で歳もとらない……」

 

 

十二歳の時に魔力の直接操作や“自動再生”の固有魔法に目覚めてから歳をとっていないらしい。普通の吸血鬼族も血を吸うことで他の種族より長く生きるらしいが、それでも二百年くらいが限度なのだそうだ。

 

 

ちなみに、人間族の平均寿命は七十歳、魔人族は百二十歳、亜人族は種族によるらしい。エルフの中には何百年も生きている者がいるとか。

 

 

ユエは先祖返りで力に目覚めてから僅か数年で当時最強の一角に数えられていたそうで、十七歳の時に吸血鬼族の王位に就いたという。

 

 

「そういえば、機凱種(エクスマキナ)? の寿命ってどの位なんだ?」

 

 

「【解答】約1000年」

 

 

「そんなもんか……」

 

 

あまりにもエクスのデタラメさを見てきたせいか拍子抜けした。寿命はないと言われると思っていたが、よく考えれば機械なのだから経年劣化は避けられないのだろう。

 

 

「……何歳なの?」

 

 

ユエがこれまでの嫌がらせの仕返しかそんな質問をする。先行きが不安である。

 

 

しかし、エクスは特に気にした様子はなく、

 

 

「【解答】製造経過年数——431年」

 

 

「ユエより歳上なのかよ……」

 

 

ハジメはその年数に呆れ、ユエは嫌がらせが失敗したことに舌打ちする。

 

 

ユエの力について聞くとユエは全属性に適性があるらしい。チートと思いかけたがそれ以上が隣に居たことを思い出す。ちなみにユエ曰く、接近戦は苦手らしい。後で魔法を見せてもらおう。

 

 

ちなみに、無詠唱で魔法を発動できるそうだが、癖で魔法名だけは呟いてしまうらしい。魔法を補完するイメージを明確にするために何らかの言動を加える者は少なくないので、この辺はユエも例に漏れないようだ。

 

 

“自動再生”については、一種の固有魔法に分類できるらしく、魔力が残存している間は、一瞬で塵にでもされない限り死なないそうだ。逆に言えば、魔力が枯渇した状態で受けた傷は治らないということ。つまり、あの時、長年の封印で魔力が枯渇していたユエは、サソリモドキの攻撃を受けていればあっさり死んでいたということだ。

 

 

それを聞いたエクスは「その程度か」と拍子抜けした。エクスならユエを一瞬で塵するなど容易い。

 

 

「それで……肝心の話だが、ユエはここがどの辺りか分かるか? 他に地上への脱出の道とか」

 

 

「……わからない。でも……」

 

 

ユエにもここが迷宮のどの辺なのかはわからないらしい。申し訳なさそうにしながら、何か知っていることがあるのか話を続ける。

 

 

「……この迷宮は反逆者の一人が作ったと言われてる」

 

 

「反逆者?」

 

 

聞き慣れない上に、何とも不穏な響きに思わず錬成作業を中断してエクスに視線を向ける。するとエクスは首を振る。どうやらエクスも知らないらしい。

 

 

次にユエに視線を転ずる。ハジメの作業をジッと見ていたユエも合わせて視線を上げると、コクリと頷き続きを話し出した。

 

 

「反逆者……神代に神に挑んだ神の眷属のこと。……世界を滅ぼそうとしたと伝わってる」

 

 

ユエは言葉の少ない無表情娘なので、説明には時間がかかる。サソリもどきとの戦いで攻撃力不足を痛感したことから新兵器の開発に乗り出しているため、作業しながらじっくり聞く。

 

 

ユエ曰く、神代に、神に反逆し世界を滅ぼそうと画策した七人の眷属がいたそうだ。しかし、その目論見は破られ、彼等は世界の果てに逃走した。その果てというのが、現在の七大迷宮といわれているらしい。この【オルクス大迷宮】もその一つで、奈落の底の最深部には反逆者の住まう場所があると言われているのだとか。

 

 

それを聞いたエクスは179名の『幽霊』達を思い浮かべた。人の身で神々の大戦を誰も死なさずに終わらせようとした者達を……。

 

 

「……そこなら、地上への道があるかも……」

 

 

「なるほど。奈落の底からえっちらおっちら迷宮を上がってくるとは思えない。神代の魔法使いなら転移系の魔法で地上とのルートを作っていてもおかしくないってことか。それにそこなら元の世界に帰るための手掛かりがあるかもしれないしな」

 

 

見えてきた可能性に、頬が緩むハジメ。そこに再び、視線を手元に戻し作業に戻る。ユエの視線もハジメの手元に戻る。ジーと見ている。

 

 

「……エクスもそうだけどさ、そんなに面白いか?」

 

 

口には出さずコクコクと頷くユエ。エクスの場合は手元よりハジメの顔を見ているが頷く。メイド服と白ワンピの美少女2人に見つめられている。男なら泣いて嫉妬するシチュエーションだ。

 

 

(だが、三百歳。流石異世界だぜ。ロリババアが実在するとは……)

 

 

変心してもオタク知識は健在のハジメ。思わずそんなことを思い浮かべてしまい、ユエがすかさず反応する。

 

 

「……ハジメ、変なこと考えた?」

 

 

「いや、何も?」

 

 

とぼけて返すハジメだが、ユエの、というより女の勘の鋭さに内心冷や汗をかく。黙々と作業することで誤魔化していたがこの場に機凱種(嘘発見器)がいるのを忘れていた。

 

 

「【解析】嘘を感知」

 

 

エクスのジト目を受けながらハジメは次は本当に冷や汗をかきつつ、黙々と作業する。ユエも気が逸れたのか今度はハジメに質問し出した。

 

 

「……ハジメ達、どうしてここにいる?」

 

 

当然の疑問だろう。ここは奈落の底。正真正銘の魔境だ。魔物以外の生き物がいていい場所ではない。

 

 

ユエには他にも沢山聞きたいことがあった。その為ハジメやエクスのことを次々と質問して行く。

 

 

それらに律儀に2人は答えていく。

 

 

ハジメが、仲間と共にこの世界に召喚されたことから始まり、無能と呼ばれていたこと、ベヒモスとの戦いでクラスメイトの1人に裏切られ奈落に落ちたこと、魔物を喰って変化したこと、爪熊との戦いと願い、ポーション(ハジメ命名の神水)のこと、故郷の兵器にヒントを得て現代兵器モドキの開発を思いついたこと、エクスが追いかけて来てくれたことをツラツラと話していると、いつの間にかユエの方からグスッと鼻を啜るような音が聞こえ出した。

 

 

2人が視線をユエに向けると、ハラハラと涙をこぼしている。ギョッとして、ハジメは思わず手を伸ばし、流れ落ちるユエの涙を拭きながら尋ねた。

 

 

「いきなりどうした?」

 

 

「……ぐす……ハジメ……つらい……私もつらい……」

 

 

どうやら、ハジメのために泣いているらしい。思えばエクスはこんな反応はしなかった。ハジメは少し驚くと、表情を苦笑いに変えてユエの頭を撫でる。僅かに隣のエクスがピクッとなる。

 

 

「気にするなよ。もうクラスメイトの事は割りかしどうでもいいんだ。そんな些事にこだわっても仕方無いしな。ここから出て復讐しに行って、それでどうすんだって話だよ。エクスもいるし。そんなことより、生き残る術を磨くこと、故郷に帰る方法を探すこと、それに全力を注がねぇとな」

 

 

スンスンと鼻を鳴らしながら、撫でられるのが気持ちいいのか猫のように目を細めていたユエが、故郷に帰るというハジメの言葉にピクリと反応する。

 

 

「……帰るの?」

 

 

「うん? 元の世界にか? そりゃあ帰るさ。帰りたいよ。……色々変わっちまったけど……故郷に……家に帰りたい……」

 

 

「……そう」

 

 

ユエは沈んだ表情で顔を俯かせる。そして、ポツリと呟いた。

 

 

「……私にはもう、帰る場所……ない……」

 

 

「……」

 

 

そんなユエの様子に彼女の頭を撫でていた手を引っ込めると、ハジメは、カリカリと自分の頭を掻いた。

 

 

ユエが自分に新たな居場所を見ているということも薄々ハジメは察していた。だからハジメが元の世界に戻るということは、再び居場所を失うということだとユエは悲しんでいるのだろう。

 

 

ハジメは、内心「“徹頭徹尾自分の望みのために”と決意したはずなのに、どうにも甘いなぁ」と自分に呆れつつ、再度、ユエの頭を撫でた。

 

 

「あ~、何ならユエも来るか?」

 

 

「え?」

 

 

ハジメの言葉に驚愕をあらわにして目を見開くユエ。涙で潤んだ紅い瞳にマジマジと見つめられ、何となく落ち着かない気持ちになったハジメは、若干、早口になりながら告げる。

 

 

「いや、だからさ、俺の故郷にだよ。まぁ、普通の人間しかいない世界だし、戸籍やらなんやら人外には色々窮屈な世界かもしれないけど……今や俺も似たようなもんだしな。どうとでもなると思うし……あくまでユエが望むなら、だけど?」

 

 

しばらく呆然としていたユエだが、理解が追いついたのか、おずおずと「いいの?」と遠慮がちに尋ねる。しかし、その瞳には隠しようもない期待の色が宿っていた。

 

 

キラキラと輝くユエの瞳に、苦笑いしながらハジメは頷く。すると、今までの無表情が嘘のように、ユエはふわりと花が咲いたように微笑んだ。思わず、見蕩れてしまうハジメ。すると、隣のエクスが横腹を抓る。

 

 

「痛いっすエクスさん……ごめんなさい」

 

 

何故か謝罪し、ハジメは作業に没頭することにした。ユエも興味津々で覗き込んでいる。但し、先程より近い距離で、ほとんど密着しながら……。それを見たエクスも……

 

 

ハジメは気にしてはいけないと自分に言い聞かせる。

 

 

「……エクスって何なの?」

 

 

ユエがそんなことを聞いてくる。

 

 

「さぁ。俺とは違う異世界来たってこととデタラメな種族だ、ってことくらいしか分からん」

 

 

そう言ったハジメはユエと一緒にエクスへ視線を向ける。

 

 

「【解答】当機は機凱種(エクスマキナ)。機械の種族。撃破要因を解析し、模倣する種族」

 

 

「……機械?」

 

 

それを聞いたハジメは「そりゃ分からんよなぁ」と苦笑する。この世界に機械なんて物は存在しないのだから。

 

 

「……まぁ、アーティファクトみたいな物かな?」

 

 

それを聞いたユエは納得する。

 

 

そして、さらに質問を続ける。

 

 

「……エクスも、ハジメの世界に行くの?」

 

 

「いや、エクスは自分の世界に帰るんだよな?」

 

 

僅かに自覚もなく悲しそうな顔をしたハジメが言う。

 

 

それを聞いたエクスはフリーズした。ハジメと触れ合う度に少しざわついていた感情(シュヴィの心)が大きくざわついた。

 

 

帰りたい。ゲームの結果を知りたい。リクに会いたいと。

 

 

しかし、論理(ロジック)でも感情(シュヴィの心)でもない何かがハジメから離れたくないと叫ぶ。

 

 

エクスは貰い物(シュヴィの心)ではない、自分の心が生まれ始めていることにまだ気づいていない……

 

 




機凱種(エクスマキナ)って年齢気にしませんよね?そんな描写ないですし……


そういえば、女性に聞いちゃいけないで思い出したのですが機凱種(エクスマキナ)の重さってどれくらいなんでしょうね?金属で出来てるから重いような——


エクス「【典開(レーゼン)】——『偽典・焉龍哮(エンダーポクリフェン)』——ッ」

ギャアアァァァァァァッ‼︎

ハジメ「作者……いい奴だったよ」
エクス「【懇願】次回も見てね(上目遣い)」

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