ありふれた職業の世界最強と歩む機凱少女   作:エルナ

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待たせたな!
……いえ、本当にお待たせしてしまい申し訳ありません(汗)
遅れた言い訳は活動報告にてしているので、ここではやめておきます。

それからエルナの武装の名前を少し変更しました。機凱種(エクスマキナ)の武装って「ヒーメアポクリフェン」みたいに模倣した武装は「〜アポクリフェン」が付いてるんですよね。私これを「〜ポクリフェン」だけだと思ってたんですよ。「エンダーポクリフェン」みたいにないのもあるので。でもよく考えたらダの母音ってアじゃね?って気づいて他のも調べてみたらないのは全部母音がアでした(汗)
これ前に指摘されてたんですけど勘違いしてたので「ないのもありますよ」なんてふざけたことをほざいたんですよね。恥ずかしい。指摘してくださった方ありがとうございました。そしてすみませんでした。


第2章
第18話


魔法陣の光に満たされた視界、何も見えなくとも空気が変わったことは実感した。奈落の底の澱んだ空気とは明らかに異なる、どこか新鮮さを感じる空気にハジメの頬が緩む。

 

 

やがて光が収まり目を開けたハジメの視界に写ったものは……

 

 

洞窟だった。

 

 

「なんでやねん」

 

 

魔法陣の向こうは地上だと無条件に信じており、半眼になってツッコミを入れてしまったハジメにエルナとユエがツッコミを入れる。

 

 

「【苦言】反逆者の住処への道を堂々と置いてあるわけがない」

 

 

「……秘密の通路……隠すのが普通」

 

 

「あ、ああ、そうか。確かにそうだな」

 

 

そんな簡単なことにも頭が回らないとは、どうやら自分は相当浮かれていたらしいと恥じるハジメ。頭をカリカリと掻きながら気を取り直す。緑光石の輝きもなく、真っ暗な洞窟ではあるが、ハジメもユエも暗闇を問題としないので道なりに進むことにした。

 

 

途中、幾つか封印が施された扉やトラップがあったが、オルクスの指輪が反応して尽く勝手に解除されていった。何事もなく洞窟内を進み、遂に光を見つけた。外の光だ。ハジメはこの数ヶ月、ユエに至っては三百年間ぶりの光。

 

 

ハジメとユエは、それを見つけた瞬間、思わず立ち止まりお互いに顔を見合わせた。それから互いにニッと笑みを浮かべ、同時に求めた光に向かって駆け出した。……エルナは着々転移で帰っていた上にそもそもエルナがいた世界には太陽なんてなかったので特に何の感慨も無かったが。

 

 

近づくにつれ徐々に大きくなる光。外から風も吹き込んでくる。奈落のような澱んだ空気ではない。ずっと清涼で新鮮な風だ。そして、ハジメとユエは同時に光に飛び込み……待望の地上へ出た。

 

 

そこは【ライセン大峡谷】と呼ばれる渓谷だった。断崖の下はほとんど魔法が使えず、にもかかわらず多数の強力にして凶悪な魔物が生息する。深さの平均は一・二キロメートル、幅は九百メートルから最大八キロメートル、西の【グリューエン大砂漠】から東の【ハルツィナ樹海】まで大陸を南北に分断する巨大な渓谷だ。

 

 

ハジメ達は、そのライセン大峡谷の谷底にある洞窟の入口で、地の底にまで届く頭上の太陽の暖かな光を浴び、大地の匂いが混じった空気を吸い込む。そして、呟く。

 

 

「……戻って来たんだな……」

 

 

「……んっ」

 

 

お互い見つめ合い、そして思いっきり抱きしめ合い、叫んだ。

 

 

「よっしゃぁああーー!! 戻ってきたぞ、この野郎ぉおー!」

 

 

「んっーー!!」

 

 

小柄なユエを抱きしめたまま、ハジメはくるくると廻る。人々が地獄と呼ぶ場所には似つかわしくない笑い声が響き渡る。……その直後地獄らしい強烈な殺気が迸った。

 

 

2人に遅れて洞窟から出てきたエルナだ。

 

 

それにより2人は我に帰り、各々の反応を示す。ハジメは顔を引攣らせ、ユエを離し、ユエは離されたにもかかわらず、ハジメに再び抱きつき、挑戦的な笑みを浮かべる。

 

 

無言の敵意を交差させる2人を止めたのは魔物達。騒がしかった為に魔物達が集まってきたのだ。

 

 

「……確かここって魔法使えないんだっけ?」

 

 

魔物を殲滅する為にドンナー・シュラークを抜きながらハジメが首を傾げる。座学に励んでいたハジメには、ここがライセン大峡谷であり魔法が使えない場所であると理解していた。

 

 

「……分解される。でも力づくでいく」

 

 

ライセン大峡谷で魔法が使えない理由は、発動した魔法に込められた魔力が分解され散らされてしまうからのようだ。しかし、ユエは相当な量の内包魔力を持っている上に、今は外付け魔力タンクである魔晶石シリーズを所持している。

 

 

「力づくって……効率は?」

 

 

「……十倍くらい」

 

 

どうやら、初級魔法を放つのに上級レベルの魔力が必要らしい。射程も相当短くなるようだ。

 

「そうか。エルナはどう——」

 

 

「【典開(レーゼン)】——『偽典・蒼天(ブランメアポクリフェン)——」

 

 

「——だ……」

 

 

ハジメの言葉の途中でエルナが典開した武装が蒼い閃光を放ち、魔物を消しとばす。

 

 

「【解答】問題無し」

 

 

「そ、そうか。じゃあ俺とエルナでやるからユエは身を守る程度にしておけ」

 

「うっ……でも」

 

 

「いいからいいから、適材適所。ここは魔法使いにとっちゃ鬼門だろ? 任せてくれ」

 

 

「ん……わかった」

 

 

ユエが渋々といった感じで引き下がる。地上に出て最初の戦いで戦力外とは納得し難いのだろう。しかも、いつも通りエルナは無双中。唇を尖らせて拗ねている。

 

 

そんなユエの様子に苦笑いしながらハジメはエルナと共に魔物を蹂躙した。

 

 

辺り一面が魔物の屍で埋め尽くされるのに1分もかからなかった。

 

 

ドンナー・シュラークを太もものホルスターにしまったハジメは、首を僅かに傾げながら周囲の死体の山を見やる。

 

 

その傍に、エルナとユエが寄って来た。

 

 

「……どうしたの?」

 

 

「いや、あまりにあっけなかったんでな……ライセン大峡谷の魔物といやぁ相当凶悪って話だったから、もしや別の場所かと思って」

 

 

「【解答】ハジメが異常」

 

 

エルナの言葉にハジメとユエは半眼でエルナを見る。

 

 

「……それ、お前が言う?まぁ、奈落の魔物が強すぎたってことでいいか」

 

 

そう言ってハジメは峡谷の壁を見る。

 

 

「さて、この絶壁、登ろうと思えば登れるだろうが……どうする? ライセン大峡谷と言えば、七大迷宮があると考えられている場所だ。せっかくだし、樹海側に向けて探索でもしながら進むか?」

 

 

「……なぜ、樹海側?」

 

 

「いや、峡谷抜けて、いきなり砂漠横断とか嫌だろ? 樹海側なら、町にも近そうだし。」

 

 

「……確かに」

 

 

ハジメの提案に、2人は頷いた。魔物の弱さから考えても、この峡谷自体が迷宮というわけではなさそうだ。ならば、別に迷宮への入口が存在する可能性はある。エルナはもちろんのこと、ハジメとユエも絶壁を超えることは可能だろうが、どちらにしろライセン大峡谷は探索の必要があったので、特に反対する理由もない。

 

 

ハジメは、右手の中指にはまっている“宝物庫”に魔力を注ぎ、魔力駆動二輪を取り出す。颯爽と跨り、後ろにエルナが横乗りしてハジメの腰にしがみつき、ハジメの前にユエが潜り込む。

 

 

魔物を蹴散らしながら暫く魔力駆動二輪を走らせていると、それほど遠くない場所で魔物の咆哮が聞こえてきた。中々の威圧である。少なくとも今まで相対した谷底の魔物とは一線を画すようだ。

 

 

魔力駆動二輪を走らせ突き出した崖を回り込むと、その向こう側に大型の魔物が現れた。ティラノサウルスに似ているが頭が二つある、双頭のティラノサウルスモドキだ。

 

 

その双頭ティラノの足元にウサミミ少女がいた。……いや正確には本物のウサギのようにぴょんぴょんと跳ね回りながら半泣きで逃げ惑っていた。

 

 

3人は魔力駆動二輪を止めて今にも喰われそうな哀れなウサミミ少女を見やる。

 

 

「……何だあれ?」

 

 

「……兎人族?」

 

 

「なんでこんなとこに? 兎人族って谷底が住処なのか?」

 

 

「【否定】樹海に生息しているのを確認している」

 

 

「……生息って言い方はやめようぜ。ってか樹海に行ったことあるのか?」

 

 

「【肯定】詳しく調べたわけではないけど書物を読みに何度か行った」

 

 

「ほーん。なんかあったか?」

 

 

「【解答】特に気になるものはなかった」

 

 

「そうか。ま、詳しく調べれば何かわかるかもな」

 

 

逃げ惑うウサミミ少女を尻目に呑気にお喋りをする3人に助けるという発想はない。赤の他人である以上、単純に面倒だし興味がなかっただけである。

 

 

ユエの時とは違い、ウサミミ少女にシンパシーなど感じていないし、メリットが見当たらない以上ハジメの心には届かない。

 

 

しかし、そんな呑気な3人をウサミミ少女の方が発見したらしい。そして、ハジメ達の方へ猛然と逃げ出した。

 

 

それなりの距離があるのだが、ウサミミ少女の必死の叫びが峡谷に木霊しハジメ達に届く。

 

 

「だずげでぐだざ~い! ひっーー、死んじゃう! 死んじゃうよぉ! だずけてぇ~、おねがいじますぅ~!」

 

 

涙や鼻水で顔をぐしゃぐしゃにして必死に駆けてくる。しかし、ここまで直接助けを求められても、3人は……

 

 

「うわ、モンスタートレインだよ。勘弁しろよな」

 

 

「……迷惑」

 

 

「【進言】とっとと先に進もう」

 

 

やはり助ける気はないらしい。必死の叫びにもまるで動じていなかった。むしろ、物凄く迷惑そうだった。ハジメ達を必死の形相で見つめてくるウサミミ少女から視線を逸らすと、ハジメに助ける気がないことを悟ったのか、少女の目から、ぶわっと更に涙が溢れ出した。一体どこから出ているのかと目を見張るほどの泣きっぷりだ。

 

 

「まっでぇ~、みすでないでぐだざ~い! おねがいですぅ~!!」

 

 

更に声を張り上げるウサミミ少女の後ろを追いかける双頭ティラノがハジメ達に気がついた。そして、殺意と共に咆哮を上げた。

 

 

「「グゥルァアアアア!!」」

 

 

その瞬間、双頭ティラノの運命が決まった。

 

 

「アァ?」

 

 

双頭ティラノの殺意に反応するハジメ。

 

 

双頭ティラノが、ウサミミ少女に追いつき、片方の頭がガパッと顎門を開く。ウサミミ少女はその気配にチラリと後ろを見て目前に鋭い無数の牙が迫っているのを認識し、「ああ、ここで終わりなのかな……」とその瞳に絶望を写した。

 

 

が、次の瞬間、

 

 

ドパンッ!!ドパンッ!!

 

 

聞いたことのない乾いた破裂音が二度、峡谷に響き渡った。そして、目前に迫っていた双頭ティラノの双頭に閃光が走り、粉砕しながら貫通した。

 

 

両方の頭を失い、即死した双頭ティラノは地響きを立てながらその場に崩れ落ちた。

 

 

殺意に反応したハジメと、ハジメの様子を見たエルナの2人によってあと少しで獲物にありつけた哀れな双頭ティラノは瞬殺された。

 

 

双頭ティラノが倒れた衝撃で、ウサミミ少女は吹き飛ぶ。狙いすましたようにハジメの下へ。

 

 

「きゃぁああああー! た、助けてくださ~い!」

 

 

眼下のハジメに向かって手を伸ばすウサミミ少女。例え酷い泣き顔であり、格好もボロボロであっても男なら迷いなく受け止める場面だ。

 

 

「アホか、図々しい」

 

 

しかし、そこはハジメクオリティー。一瞬で魔力駆動二輪を後退させると華麗にウサミミ少女を避けた。

 

 

「えぇー!?」

 

 

ウサミミ少女は驚愕の悲鳴を上げながらハジメの眼前の地面にベシャと音を立てながら落ちた。両手両足を広げうつ伏せのままピクピクと痙攣している。気は失っていないが痛みを堪えて動けないようだ。

 

 

「……面白い」

 

 

 ユエがハジメの肩越しにウサミミ少女の醜態を見て、さらりと酷い感想を述べる。

 

 

しばらくして、痛みが治まったのか、起き上がったウサミミ少女は後ろを振り向き、死んだ双頭ティラノを見ると驚きの声を上げる。

 

 

「し、死んでます…そんなダイヘドアが一撃なんて…」

 

 

ウサミミ少女は驚愕も表に目を見開いている。どうやらあの双頭ティラノは“ダイヘドア”というらしい。

 

 

呆然としたままダイヘドアの死骸を見つめ硬直しているウサミミ少女を置いておいて、もう用はないとばかりにハジメはなに事もなかったように魔力駆動二輪に魔力を注ぎ先へ進もうとする。

 

 

その気配を察したのか、今までダイヘドアの死骸を見ていたウサミミ少女は振り向いて、「逃がすかぁ~!」とハジメの腰にしがみつくウサミミ少女。約1()が目元をピクッと動かしたのに気づかない様子で。

 

 

「先程は助けて頂きありがとうございました! 私は兎人族ハウリアの一人、シアといいますです! 取り敢えず私の仲間も助けてください!」

 

 

そして、なかなかに図太かった。

 

 

ハジメは、しがみついて離れないウサミミ少女を横目に見る。そして、奈落から脱出して早々に舞い込んだ面倒事に深い溜息を吐くのだった。

 

 




いや〜、マジで今回は難産だった。

ついに残念兎こと、バグ兎ことシアが登場しましたね。前回シアを出すと言ったせいで遅れたので少し嫌いになりました(ニッコリ

シ「いや、私悪くないじゃないですか!作者の自業自得です!」

それはそれ、これはこれという言葉を知らないのかこの残念兎は。

シ「いや、今回色々カットしたからそんな残念要素なくないですか⁉︎」

ハイワロハイワロ。

というわけで今回のことで口は災いの元と学んだので次回予告は次話がある程度出来ているとかでもない限りしません。

次回は1ヶ月後かな〜。可能な限り早く出せるよう善処します。

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