ありふれた職業の世界最強と歩む機凱少女   作:エルナ

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ヤバイ、もうモチベが全然上がらん。
どうしよう……。


第19話

「私の家族も助けて下さい!」

 

 

峡谷にウサミミ少女改めシア・ハウリアの声が響く。どうやら、このウサギ一人ではないらしい。仲間も同じ様な窮地にあるようだ。よほど必死なのか、先程から相当強くユエに蹴りを食らっているのだが、頬に靴をめり込ませながらも離す気配がない。

 

 

それより、ハジメは黙ったままのエルナが怖くてたまらない。嵐の前の静けさのようだ。寒気が止まらない。

 

 

あまりに必死に懇願するので、ハジメは仕方なく……“纏雷”をしてやった。

 

 

「アババババババババババアバババ!?」

 

 

電圧と電流は調整してあるので死にはしないが、暫く動けなくなるくらいの威力はある。シアのウサミミがピンッと立ちウサ毛がゾワッと逆だっている。“纏雷”を解除してやると、ビクンッビクンッと痙攣しながらズルズルと崩れ落ちた。

 

 

「全く、非常識なウザウサギだ。2人とも、行くぞ?」

 

 

「ん……」

 

 

「【了解】」

 

 

どの口が常識を語るのか、ハジメは何事もなかったように再びバイクに魔力を注ぎ込み発進させようとした。

 

 

しかし……

 

 

「に、にがじませんよ~」

 

 

ゾンビの如く起き上がりハジメの脚にしがみつくシア。流石に驚愕したハジメは思わず魔力注入を止めてしまう。

 

 

「お、お前、ゾンビみたいな奴だな。それなりの威力出したんだが……何で動けんるんだよ? つーか、ちょっと怖ぇんだけど……」

 

 

「……不気味」

 

 

「【失笑】無駄に頑丈」

 

 

「うぅ~何ですか! その物言いは! さっきから、肘鉄とか足蹴とか、ちょっと酷すぎると思います! 断固抗議しますよ! お詫びに家族を助けて下さい!」

 

 

ぷんすかと怒りながら、さらりと要求を突きつけるシア。このままだとどこまでもついてきそうと思ったハジメは話だけは聞くことにした。

 

 

「ったく、何なんだよ。取り敢えず話聞いてやるから離せ。ってさり気なく俺の外套で顔を拭くな!」

 

 

話を聞いてやると言われパアァと笑顔になったシアは、これまたさり気なくハジメの外套で汚れた顔を綺麗に拭った。本当にいい性格をしている。イラッと来たハジメが再び肘鉄を食らわせると「はぎゅん!」と奇怪な悲鳴を上げ蹲った。

 

 

「ま、また殴りましたね! 父様にも殴られたことないのに! よく私のような美少女を、そうポンポンと……もしや殿方同士の恋愛にご興味が……そうでッあふんッ!?」

 

 

なにやら不穏当な発言が聞こえたので蹲るシアの脳天目掛けて踵落としをするハジメ。その額には青筋が浮かんでいる。

 

 

「【質問】そうなの?」

 

 

「違えぇぇぇえよッ!!おいこらウザウサギ!テメェのせいで変な勘違いされただろうが!ったく。しかも美少女だと?この2人を見ても同じことが言えんのかよ。お前なんかより遥かに綺麗だろうが」

 

 

そう言ってハジメはユエとエルナに目を向ける。ユエはハジメの言葉に赤く染まった頬を両手で挟み、体をくねらせてイヤンイヤンしていた。腰辺りまで伸びたゆるふわの金髪が太陽の光に反射してキラキラと輝き、ビスクドールの様に整った容姿が今は照れでほんのり赤く染まっていて、見る者を例外なく虜にする魅力を放っている。

 

 

エルナも無表情に近いが、僅かに頬を赤くし、緩ませているその表情を見れば照れているのは一目瞭然だ。そのどこか作り物めいた、まさしく人形のような可憐さは男女問わず魅了する。

 

 

そんな美少女達を見て、「うっ」と僅かに怯むシア。しかし、ハジメには身内補正が掛かっていることもあり、シアの容姿も決して2人に負けてはいない。

 

 

少し青みがかったロングストレートの白髪に、蒼穹の瞳。眉やまつ毛まで白く、肌の白さとも相まって黙っていれば神秘的な容姿とも言えるだろう。手足もスラリと長く、ウサミミやウサ尻尾がふりふりと揺れる様は何とも愛らしい。ケモナー達が見れば感動して思わず滂沱の涙を流すに違いない。

 

 

それ故に、矜持を傷つけられたシアは言ってしまった。言ってはならない言葉を……

 

 

「で、でも!そっちの子はともかく、そっちの子には胸なら私が勝ってます!そっちの女の子はペッタンコじゃないですか!」

 

 

“ペッタンコじゃないですか”“ペッタンコじゃないですか”“ペッタンコじゃないですか”

 

 

峡谷に命知らずなウサミミ少女の叫びが木霊する。恥ずかしげに身をくねらせていたユエがピタリと止まり、前髪で表情を隠したままユラリと二輪から降りた。

 

 

ハジメは「あ~あ」と天を仰ぎ、無言で合掌する。ウサミミよ、安らかに眠れ……。

 

 

ちなみに、ユエは着痩せするが、それなりにある。断じてライセン大峡谷の如く絶壁ではない。

 

 

震えるシアのウサミミに、囁くようなユエの声がやけに明瞭に響いた。

 

 

―――― ……お祈りは済ませた? 

―――― ……謝ったら許してくれたり

―――― ………… 

―――― 死にたくなぁい! 死にたくなぁい! 

 

 

「“嵐帝”」

 

 

―――― アッーーーー!! 

 

 

突如発生した竜巻に巻き上げられ錐揉みしながら天に打ち上げられるシア。彼女の悲鳴が峡谷に木霊し、きっかり十秒後、グシャ! という音と共にハジメ達の眼前に墜落した。

 

 

エルナのようなデタラメでもなければこうなるのは当然であった。

 

 

「【嘲笑】事実にキレるのはウサギが可哀想」

 

 

ユエは「いい仕事した!」と言う様に、掻いてもいない汗を拭うフリをするとトコトコとハジメ達の下へ戻ったユエにエルナが話しかける。誰一人として思っていないだろうがエルナは1ミクロンたりともシアのことを可哀想などと思っていない。ただユエをバカにする口実にしてるだけだ。

 

 

しばらくエルナを睨みつけていたユエだったが、二輪に腰掛けるハジメを下からジッと見上げた。

 

 

「……おっきい方が好き?」

 

 

実に困った質問だった。ハジメとしては「YES!」と答えたい所だったが、それを言えば未だ前方で痙攣している残念ウサギの二の舞である。それは勘弁して欲しかった。

 

 

「……ユエ、大きさの問題じゃあない。相手が誰か、それが一番重要だ」

 

 

「……」

 

 

取り敢えずYESともNOとも答えず、ふわっとした回答を選択するハジメ。実にヘタレである。そのハジメにエルナは胸を押し付けた。

 

 

「……」

 

 

「……」

 

 

素晴らしい感触ではあるがそれを表情に出せばどうなるかは自明。故にハジメは全力で平常心を保つ。

 

 

ユエはスっと目を細めたものの一応の納得をしたのか無言で後席に腰掛けた。

 

 

居心地の悪い沈黙を破ろうとハジメが視線を彷徨わせた直後、痙攣していたシアの両手がガッと地面を掴み、ぷるぷると震えながら懸命に頭を引き抜こうとしている姿を捉え、これ幸いにとシアに注意を向け話のタネにする。

 

 

「アイツ動いてるぞ……本気でゾンビみたいな奴だな。頑丈とかそう言うレベルを超えている気がするんだが……」

 

 

「……………………ん」

 

 

いつもより長い間の後、返事をしてくれたことにホッとしていると、ズボッという音と共にシアが泥だらけの顔を抜き出した。

 

 

「うぅ~ひどい目に遭いました。こんな場面見えてなかったのに……」

 

 

涙目で、しょぼしょぼとボロ布を直すシアは、意味不明なことを言いながらハジメ達の下へ這い寄って来た。既にホラーだった。

 

 

「はぁ~、お前の耐久力は一体どうなってんだ? 尋常じゃないぞ……何者なんだ?」

 

 

ハジメの胡乱な眼差しに、漸く本題に入れると居住まいを正すシア。バイクの座席に腰掛けるハジメ達の前で座り込み真面目な表情を作った。もう既に色々遅いが……

 

 

「改めまして、私は兎人族ハウリアの長の娘シア・ハウリアと言います。実は……」

 

 

語り始めたシアの話を要約するとこうだ。

 

 

シア達、ハウリアと名乗る兎人族達は【ハルツィナ樹海】にて数百人規模の集落を作りひっそりと暮らしていた。

 

 

そんな兎人族の一つ、ハウリア族に、ある日異常な女の子が生まれた。兎人族は基本的に濃紺の髪をしているのだが、その子の髪は青みがかった白髪だったのだ。しかも、亜人族には無いはずの魔力まで有しており、直接魔力を操るすべと、とある固有魔法まで使えたのだ。

 

 

当然、一族は大いに困惑した。兎人族として、いや、亜人族として有り得ない子が生まれたのだ。魔物と同様の力を持っているなど、普通なら迫害の対象となるだろう。しかし、彼女が生まれたのは亜人族一、家族の情が深い種族である兎人族だ。百数十人全員を一つの家族と称する種族であり、ハウリア族は女の子を見捨てるという選択肢を持たなかった。

 

 

しかし、樹海深部に存在する亜人族の国【フェアベルゲン】に女の子の存在がばれれば間違いなく処刑される。魔物とはそれだけ忌み嫌われており、不倶戴天の敵なのである。国の規律にも魔物を見つけ次第、できる限り殲滅しなければならないと有り、過去にわざと魔物を逃がした人物が追放処分を受けたという記録もある。また、被差別種族ということもあり、魔法を振りかざして自分達亜人族を迫害する人間族や魔人族に対してもいい感情など持っていない。樹海に侵入した魔力を持つ他種族は、総じて即殺が暗黙の了解となっているほどだ。

 

 

故に、ハウリア族は女の子を隠し、十六年もの間ひっそりと育ててきた。だが、先日とうとう彼女の存在がばれてしまった。その為、ハウリア族はフェアベルゲンに捕まる前に一族ごと樹海を出たのだ。

 

 

行く宛もない彼等は、一先ず北の山脈地帯を目指すことにした。山の幸があれば生きていけるかもしれないと考えたからだ。未開地ではあるが、帝国や奴隷商に捕まり奴隷に堕とされてしまうよりはマシだ。

 

 

しかし、彼等の試みは、その帝国により潰えた。樹海を出て直ぐに運悪く帝国兵に見つかってしまったのだ。巡回中だったのか訓練だったのかは分からないが、一個中隊規模と出くわしたハウリア族は南に逃げるしかなかった。

 

 

女子供を逃がすため男達が追っ手の妨害を試みるが、元々温厚で平和的な兎人族と魔法を使える訓練された帝国兵では比べるまでもない歴然とした戦力差があり、気がつけば半数以上が捕らわれてしまった。

 

 

全滅を避けるために必死に逃げ続け、ライセン大峡谷にたどり着いた彼等は、苦肉の策として峡谷へと逃げ込んだ。流石に、魔法の使えない峡谷にまで帝国兵も追って来ないだろうし、ほとぼりが冷めていなくなるのを待とうとしたのである。魔物に襲われるのと帝国兵がいなくなるのとどちらが早いかという賭けだった。

 

 

しかし、予測に反して帝国兵は一向に撤退しようとはしなかった。小隊が峡谷の出入り口である階段状に加工された崖の入口に陣取り、兎人族が魔物に襲われ出てくるのを待つことにしたのだ。

 

 

そうこうしている内に、案の定、魔物が襲来した。もう無理だと帝国に投降しようとしたが、峡谷から逃がすものかと魔物が回り込み、ハウリア族は峡谷の奥へと逃げるしかなかった。そうやって、追い立てられるように峡谷を逃げ惑い……

 

 

「……気がつけば、六十人はいた家族も、今は四十人程しかいません。このままでは全滅です。どうか助けて下さい!」

 

 

 最初の残念な感じとは打って変わって悲痛な表情で懇願するシア。どうやら、シアは、ユエやハジメと同じ、この世界の例外というヤツらしい。特に、ユエと同じ、先祖返りと言うやつなのかもしれない。

 

 

話を聞き終ったハジメは特に表情を変えることもなく端的に答えた。

 

 

「断る」

 

 




皆さま感想をお寄せ頂くとモチベが上がると思いますので良ければお寄せくださいm(_ _)m

ハ「コメ稼ぎ乙」
ユ「……かっこ悪い」
エ「【失笑】恥知らず」
シ「まったく、酷い人ですね!」

バカタレモチベ上がんないとお前らの出番無しやぞ!

ハユエシ『是非とも感想をお寄せください』

何という手のひら返し。
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