その日の夕食時。クラスメイトからの視線に耐えながら食事をしているハジメにエクスが唐突に話しかけた。
「【質問】迷宮にはついていかない。それでもいい?」
「えっ、いいけどなんで?」
「【解答】ハジメの戦闘能力は見なくて問題ない。なのでこの機会に済ませておきたい用事がある」
「そうか、見なくて問題か……ハハ……」
「ちょっと、そんな言い方ないでしょ!」
エクスの言葉にハジメが傷つき、それを見た香織が言う。
「【訂正】ハジメの戦闘能力に興味がない」
「きょ、興味が、ない」
訂正したがそれでもダメなようでエクスが首を傾げる。さらにその声は他のクラスメイト達にも聞こえており、クラスメイト達はクスクスと笑っている。
「ギャハハ‼︎興味ないってよ弱すぎてハハハハ‼︎」
ハジメをよくいじめている檜山が大声で笑う。
「檜山、仲間を笑うのは良くないんじゃないかな?それにエクス、いくら南雲が弱くてもそんな言い方はないんじゃないかな?」
光輝が諭すように言う。
「【訂正】勇者達の戦闘能力には興味がない」
「な、なんで?」
ハジメがクラス全員の疑問を代弁する。
「【解答】勇者達の——【訂正】この世界の住人の戦闘能力は総じて低い。最強と最弱の戦闘能力の差は
そうだろう、12と200の人がいたとしても1000000の攻撃をすればどちらも即死することに変わりはないのだから。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
次の日エクスはハジメの見送りをした後空を飛んでいた。
エクスはこの2週間でこの世界の戦闘能力が激低なことを理解していた。——実際はエクスの世界の戦闘能力が高すぎるだけなのだが……。なので全く興味がない戦闘を見ているより本を
エクスの目的地は2つ、1つは北の山脈地帯の奥だ。そこは人がいない未開の地とされているがもしかしたら何かあるかもしれないと思い調べに向かうのだ。そしてこの予想は大当たりし、竜人族の里を見つけて、そこで書物を略奪——借りるのはまだ先の話。
目的地、2つ目は魔人族の領地だ。これには特に理由はなく、単に人間族の知識から蓄えるか、という気まぐれである。人間族の主要都市の書物はあらかた読み漁ったので次は魔人族の知識を、というわけなのだ。
まずは、北の山脈地帯から行こうとその方向へ飛翔した。
ちなみに、この世界には精霊がないため、『
そして、エクスは色々あって1ヶ月近く、足止めを喰らった。用事を切り上げ、転移すればすぐに帰れたが、別に急いで帰る必要はないと思い、しなかった。
エクスは後に後悔という感情を体験することになる……