エクスは一角を占拠している国立図書館に転移した。まずは借りてきた本を置いていこうと思ったのである。そして、本を置いた、エクスは訓練施設へ転移した。今の時間は訓練している時間帯だからだ。
訓練施設へ転移したエクスは首を傾げた。勇者達が13人しかいないのだ。ハジメを始めとした(決してダジャレではない)他の勇者達はどこへ行ったのだろうか?
その疑問を感じながら、勇者達を鍛えているメルドに近づいた。エクスに気が付いたメルドや勇者達は気まずそうな顔をした。そのことにも疑問を感じながらメルドへ話しかけた。
「【質問】ハジメや他の勇者は?」
「え、えっとな。エクスよく聞いてくれ。」
メルドが言うには1人の勇者が罠に引っかかり、それでかなり下の階層に転移させられたらしい。そこで強力な魔物に出会い、それとの交戦中に誰かの魔法が誤射し、ハジメにあたり、奈落へ落ちてしまったらしい。
それを聞いたエクスは元々無表情だったが能面のような顔になった。
「【質問】誰が罠にかかったの?」
元々は起伏の少ない声だったが、今は氷のような冷徹な声に変わった。
「い、いやすでに謝罪してそれは終わって——」
「【警告】次はぐらかせば勇者を皆殺しにする。【質問】誰が罠にかかったの?」
それは本気であることを分からせる冷たい声だった。エクスの実力を知っているメルドは本当に皆殺しにされると思い、話した。
「……檜山だ」
それを聞いたエクスは檜山を睨みつけた。実は檜山の名前は知らなかったが話の間やメルドが名前を出した時に心拍数が急上昇したためわかった。
「ご、ごめんなさ——」
エクスに睨みつけられた檜山はその目に凄まじい憤怒がこもっているのを見て、クラスメイト達にやった全力の土下座で許してもらおうとした。
しかし、その前にエクスは檜山の腹を殴った。それだけ聞くと大したことないように思えるだろう。しかし、殴ったのは
そして、エクスは『
「なッ⁉︎何をするんだエクス‼︎大丈夫か⁉︎香織、早く治してくれ‼︎」
女子達は悲鳴を上げ、男子達は息を呑み、メルドは叫んだ。香織はメルドの言葉に檜山に駆け寄り、治癒魔法をかけた。
エクスは涙と鼻水と血で酷い顔をしている檜山を冷たく見下す。それを見た檜山は漏らしそうなほど怯えている。
「【質問】魔法を誤射したのは誰?」
「……わかっていないんだ。国王より勇者達に詮索を禁じられたのだ」
エクスはそれを聞き、周りを見回した。すると檜山が明らかに反応した。エクスは理解したが、恐怖で体が震えている檜山を見て何かする気が失せ、ハジメの救出に向かうことにした。
「【
エクスは迷宮には入ったことはないが、迷宮のあるホルアドには行ったことのあるため転移しようとしたがその前にメルドが声をかけた。
「待ってくれ!ハジメを助けに行くんだろ?だったら俺も連れてってくれ。俺はあの時助けると約束したんだ」
しかし、エクスはメルドを見もせず、
「【拒否】邪魔」
端的に告げた。
「そんな言い方はないんじゃないか?それに檜山は謝ろうとしただろう。なぜ、殴る必要があったんだ?」
光輝がまさに勇者の発言をするがエクスは議論の余地はないと、
「【命令】うるさい、黙れ。役立たず」
「なっ!そんな言い方はないだろう⁉︎それに南雲はもう生きてはいな——」
その瞬間、光輝の姿がかき消えた。それをメルド達が認識する前に、2つの衝撃音が聞こえた。1つはエクスの足元から、もう1つは吹き飛んだ光輝が激突した壁から。
エクスは地面にクレーターができるほど踏み込み、ここにいる誰も視認出来ない速度で光輝を殴り飛ばした。
エクスは殴った態勢のままの腕を下ろし、先よりも数倍冷たい声で、気絶した光輝に告げた。
「【警告】次同じこと言ったら殺す。【
そして、エクスの姿は訓練施設から消えた。
次回から迷宮探索が始まります。