この寂しがり屋なお姫様に祝福を!   作:シルヴィ

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プロローグ

 ――それはまだ、少女が『子供』でいられた時のこと。

 平和だったはずの世界に突如として出現した魔王と、それに従う者達による侵攻。通称魔王軍に手始めとして狙われたのは、『ベルゼルグ』という名の王国だった。

 それでも王国が崩壊することはなく、そこに所属していた騎士達と、優れた冒険者、またどこからか現れた、魔王を倒す役目を背負う『勇者』候補達によって、王国は今尚存続している。

 魔王軍との戦闘の大部分は最前線と呼ばれる街で行われ、王都を始めとした都市には、一定の平和が保たれていた。

 だが、その均衡にも限度があった。

 元来戦争とは消耗戦のようなもの。食料、金銭、その他燃料を湯水のように使って行うことだ。そのため戦力があっても無くなっていく備蓄は抑えきれず、隣国等からそれらを融通して貰って保たせているのが真実だった。

 ――だから、そうなるのは目に見えていた。

 少女は、王族だった。

 それも、恐らく国内でも『最強』と言って過言ではない王族の、娘だった。優秀な才能を持った者達の血を受け入れ、深く濃い才能を持つ一族の、末だった。

 とはいえ少女は未だ二桁にも及ばぬ齢。どれほどの才能があろうと、戦場へ行くにはあらゆる物が不足している。

 だが、父親は別だった。また、己とは一回り以上年の違う兄も、別だった。王国最強の戦力。それを遊ばせている余裕は、この国には無い。

 「伝令! でんれーい!」

 ――幼い少女が、家族から引き離される言葉が、その日、城内に響き渡った。

 もたらされた内容は、前線に魔王の娘と、それに従う魔王軍幹部出現。それに伴う戦線の激化、それによる士気の減少だ。

 特に問題なのが冒険者達だった。結局のところ彼等は金に雇われた傭兵に過ぎず、命が惜しければ他国へ逃げてしまえばいい。……実際、少数ながら逃げ出そうという動きを見せている者達は既にいる。

 王は。父は、言った。

 「私と、ジャティス。そして騎士を連れて最前線へ赴く。その報を持っていってほしい」

 文官の誰かが引きとめようとして、止められた。王が出陣する。士気の下がった戦場に、これ以上ない朗報だった。

 何故なら王も、またその息子であるジャティスも、その強さは国内外に響き渡っている。魔王の娘や幹部の一人や二人、何するものぞと騎士達は奮起してくれるだろう。

 そして、戦線を押し返せれば、まだ稼ぎ時と判断した冒険者も撤退を止めるはずだ。

 ――その事を、幼いながら聡明な彼女は理解していた。

 だから、止められなかった。

 行かないで、お父様。お兄様――たったそれだけの言葉を言うことが、できなかった。戦況がそれを許してくれなかった。

 結局少女は何も言わぬまま、顔を暗くしたまま謁見の間を後にした。

 その後ろ姿を、王は、そして父は、兄は、顔に出さぬまま歯を噛み締める事しかできなかった。

 

 

 

 

 

 如何に王が『出陣する』と言っても、すぐにとはいかない。王や、次期国王であるジャティスのやっていた仕事を、各人に分担する必要があるからだ。

 本当に重要な物は、信頼する宰相や大臣達に任せればいい。というより、今まで最後に王が確認していた作業が無くなるだけだ。問題はない。

 問題なのは、『王として』の責務を、任せられる者を探すことだった。同時に『父親としての』責務を任せられる者を探すことだった。

 『――本当に、行くんだな?』

 最愛の娘、今は亡き妻の面影を色濃く残す彼女の護衛を選んでいた彼の耳に、声が届く。それに顔を上げたが、執務室には横で書類を書いていた宰相しかいない。その宰相も、声を発した様子は無かった。

 だが王は不審に思うこともせず、ただこう心中で返す。

 ――ああ、今私が行かなければ戦線は崩壊する。そうなれば、次に狙われるのは王都だ。

 それだけは避けなければならなかった。ここには娘も、また妻の墓もある。それを狙われるのだけは、絶対にごめんである。

 ――私を、責めるか? 娘を置いていく私を。

 『それについて俺がどうこういう資格は無いな。で、俺はどうすればいい? お前に着いていけばいいのか、それともジャティスに『移す』のか』

 姿なき者は、王にも、また王子にも気安く接していた。更に言えば王もその態度を受け入れていた。

 ――それについてなのだが。……私は君を、娘に託そうかと思う。

 その言葉に、彼はへぇ、と驚いた様子を見せた。

 『彼』は、代々ベルゼルグの国王が受け継いできた者だ。常に王を支えてきた者だ。国王が象徴なら、彼はそれを彩る物だった。

 ――君を維持するのは、これから最前線で戦う私やジャティスでは辛いものがある。

 『それならいっそ非戦闘員であるあの子に、か? 諦めで言っている、訳ではなさそうだが』

 ――実用的な話さ。死ぬ気は無い。だが、保険は必要だろう。

 『……俺としてはそれでも構わない』

 そもそも俺が王と契約してきたのは、王が一番安全で危険だからな、と言う。これから危地に赴く王様には必要ないだろう、と。

 ――君は本当に優しくないな。

 『大人として扱っているだけさ。それとも王になったばかりの頃のように接してほしいか?』

 ――黒歴史を持ってこないでくれ。頼むから。

 けらけら笑う彼に、王は羞恥に耳を赤くする。一度意味なく咳を零すと、話を変えた。

 ――この後娘を呼ぶ。しばらく消えていてくれ。

 『わかった。これから数年以上会えないんだ。最後くらい、父親として言葉をあげてくれ』

 言って、彼の気配がどこかへ消える。王は小さく笑みを作ると、人を呼んで娘を連れてくるように頼んだ。宰相には退出を促し、別の場所へ移ってもらう。

 それから少しして、娘が控えめに扉を叩き、失礼します、という言葉と共に入ってくる。王族としては考えられないほど大人しい我が娘の姿に、だが思うのは愛おしいという感情のみだ。

 その感情を押し隠し、まずは王として接する。

 「先にも告げたが、私は戦場へ向かう。アイリス、我が娘よ。お前の役割はわかっているな?」

 「はい。もし万が一、お父様とお兄様が……亡くなられたら。私と、私の夫となる者の二人でこの国を、支えます」

 やはり聡明な娘だ。妻の血が濃いのだろう。己やジャティスがアイリスと同じ時、果たしてこれだけの理解力があったかどうか。

 「その通りだ。理解しているなら問題ない」

 冷たい親だろう。少なくとも別れ際にするような会話ではない。だが、これは王として、王族に生まれた者としての義務である。

 これは、必要な事だった。

 だから、ここからは父親として接する。

 「アイリス」

 「は、はい」

 若干俯いていたアイリスが顔をあげた。その顔は、気のせいでなければ寂しさが色濃く宿っていて、その事に胸が痛む。

 「これから私とお前は、長い間、お互いの姿を見ることもできなくなるだろう」

 「……わかって、います」

 「だからこそ、お前にこれを託そうと思う」

 取り出して差し出したのは、古ぼけた本。否、本にすら満たぬ数枚の紙束だった。それを丁寧に受け取ったアイリスの顔に浮かぶのは、困惑。

 「お父様、これは一体?」

 「初代国王より私の代に至るまで受け継がれてきた物だ」

 「え!?」

 困惑が驚きに変わり、何度も紙束と王の顔を往復する。一体、これにどれほど重要な物が書かれているのか、そう思っていそうな。

 「その本を読めば、お前の元に私が最も信頼する存在が現れる」

 「お父様が?」

 「ああ。彼であれば、お前を護り、導ける。そう言い切れる程の、絶大な信頼を寄せている」

 だから、と続けた。

 「もし私やジャティスと会えない事を寂しく思ってくれるなら。お前が信頼できる者と一緒にその本を読むんだ」

 幼い娘にかける言葉としてはあまりに迂遠で、また意味のわからない物だろう。

 それでいい。それでいいのだ。

 己もまた、父に、先代国王にそうやって託されたのだから。

 「この国における真の『国宝』を、お前に託す。これは王として、何より父親としてお前に渡せる最大の物だ」

 ベルゼルグ王国の国宝といえば、宝物庫に安置される神器だろう。だが王は、この紙束をこそ真の国宝と断言した。

 その事実に、アイリスの心に宿ったのは、それを預けられた嬉しさと、それを持つことへの責任感。

 「ありがとうございます、お父様。初代国王陛下から託されたこの想いを、無駄にはしないと誓います」

 「頼む。……もう夜も深くなる。お前はそろそろ寝なさい」

 「わかりました。お休みなさい、お父様」

 「ああ、お休み、アイリス」

 それが、父と娘が交わした最後の言葉だった。

 余程の事がなければ、二人が次に話せるのは、魔王が討伐された後のことになるだろう。

 

 

 

 

 

 ――数年前、最後にした会話を思い出しながら、アイリスは目を覚ました。

 12歳となった少女は、未だ父から託されたあの本を読んでいない。それは王族の娘として軽々に扱わないと決めたが故の考えだったが、同時に父親の想い、その真意に気付いていない証拠でもあった。

 「クレアとレインは、仕事……ですよね」

 己の護衛であり、側近である二人の名を呼ぶ。だがその二人の姿は無く、クレアは騎士団の早朝訓練、レインは宮廷魔法師としての仕事らしい。

 呼べばすぐにでも来てくれるだろう。だが、そうすればあの二人の邪魔をする事になる。

 「……」

 『おはよう』、そんな当たり前の挨拶すらまともにできなくなったのは、いつからだろうか。甘えられる態度を見せられたのは、いつまでだったろうか。

 『もし私やジャティスと会えない事を寂しく思ってくれるなら――』

 そんなお父様の言葉が、脳裏を過ぎる。

 寂しいのだろうか、と自問する。

 すぐに、寂しいのだろう、と思った。この城で働く者達が、『いつからかアイリス様は笑われなくなった』と話しているのを、聞いたことがあったから。

 アイリスは豪奢なベッドが起き上がり、厳重に封じていた箱から、紙束を取り出した。

 何百年前に書かれた物なのだろうか。表紙は擦り切れ、文字も読めない。色落ちし、紙はヨレ、皺だらけになった、しかし大事に扱われてきたとわかる物。

 紙束を纏めていた紐を解き、アイリスはその中身に目を通した。

 「これは……呪文? という事はこれは、何らかの魔法……」

 見たことも聞いたこともない呪文だった。王族にのみ伝わるオリジナルの魔法とも違う。そもそも呪文を必要する魔法などないはずなのだが――紅魔族がたまに言う呪文は単に気分の問題でしかない――これは違うらしい。

 「えっと……けっこう長いですね。コホン。

 素に銀と鉄。礎に石と契約の大公。

 降り立つ風には壁を。

 四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ。

 

 閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)

 繰り返すつどに五度。

 ただ、満たされる刻を破却する

 

 誓いを此処に。

 我は常世総ての善と成る者。

 我は常世総ての悪を敷く者。

 

 ――告げる。

 汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。

 運命の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ、天秤の守り手よ――!」

 本来なら、発動しないはずの魔法だった。

 この魔法を発動するには、正しく描かれた()()()()()で正しい呪文を唱える必要がある。それをアイリスは、その身に宿る膨大な魔力で、強引に発動させた。

 「きゃ――っ!」

 光が満ちる。その光によって網膜を焼かれ、アイリスは目を瞑った。

 目を開けたとき、彼女の目に映ったのは――、

 「――え?」

 

 

 

 

 

 「さあ、今日の早朝訓練を開始する! 朝が弱くて眠いです、だから戦えませんなどという軟弱者はいないだろうな!?」

 いれば叩き切る、そんな雰囲気さえ滲ませる女性。

 彼女の名はクレア。シンフォニア家の出身であり、国王陛下からの命で幼きアイリスの側近として彼女を守り続けている女傑だ。

 女ではあるがアイリスを守る事の方が重要なのか、彼女が着用しているのは動きやすい男性用の白いスーツであり、また短髪でもある。

 付け加えれば騎士達の訓練を指導している事から想像できるように、その腰にある剣は飾り物ではない。彼女は騎士達を相手にしてもなお上回る強者であった。

 そんな女性が不機嫌な事に、情けないながらも身を竦ませる騎士達。それは彼女の苛烈さを身を持って知っているからだった。

 故に、返答は一つしかありえない。

 『ハッ! そんな惰弱な者など一人もおりません!』

 声を揃えて返す。一糸乱れぬ彼等に、不機嫌そうだったクレアも少しはマシになったのか、眉間に寄っていた皺が少し消える。

 「よし! 言うまでもないかもしれないが、敢えて言おう。我々は国王陛下から、王都を守る事を託された。我々が強くなることこそがこの王都を、ひいてはアイリス様を守ることに繋がることだろう。たかが訓練と手を抜くな、そう私が判断すれば、直々に指導をしてくれる!」

 腰に差した剣を鞘ごと引き抜き、地面に叩きつける。その勢いのまま、では各自、体を解した後で対人訓練を行えと告げた。

 騎士達が動き出すと、クレアは強ばった肩から力を抜く。先程はああ言ったが、騎士達が自ら手を抜くとは思っていない。

 領主達が雇った騎士は知らないが、この王都にいる騎士はエリートである。つまり、相応のプライドを持ってここにいる。己が弱くなるような事をするなど、まずありえない。

 とはいえ人の目があるかないかで、己に課せる内容の質が変わることも知っている。そのためクレアは、ザッと彼等を見渡す作業を止めることは無かった。

 新人の騎士が先輩騎士の胸を借りている光景に、いつかは私もアイリス様に剣を教えることが、いやそのような機会を作らないのが私の役目、と戒めていると、ふいに目がチラついた。

 『――――――――――!』

 太陽の明かりを剣が反射したのだろうか、と思ったが、何かおかしい。

 『―――――――――――――――!』

 そもそも、この妙な音はどこから聴こえてくるのだろうか。

 『――――――――――――――――――――!』

 先程のチラつきも、この声も、どちらかというとこの訓練場からではなく、もっと――。

 「避けろおおおおぉぉぉぉおおおおォ――ッ!!」

 その叫びに目を上に向け、即座にクレアは叫んだ。

 「中央にいる騎士二人、後ろへ飛べ!」

 その指示に、クレアの指示に従うことに慣れた体が、頭が思考する前に行動へ移す。それによって二人は助かり――二人がいた位置に、轟音が響き渡った。

 砂埃が舞い上がり、目と喉を襲う。それでもクレアは、城内にいきなり降ってきた謎の物体を見逃さんと、腕で盾を作りつつ目を凝らした。

 煙に紛れてわかりづらかったが、それが晴れると、黒く丸まった何かが見えた。

 「……何だアレは? 人、か?」

 恐らく全身を黒いローブで覆っているのだろうが、はっきり言って不審者である。

 ……不審者? 城内に?

 「ッ、何を呆けている! 侵入者だぞ、逃げられないようにせんか!」

 その言葉に、呆然と立ち尽くしていた騎士が整然と動く。剣を構え、逃げられないように包囲網を作り上げる。

 だが、侵入者はそれを一向に気にしなかった。その気になればさっさと逃げられただろうに、その必要などないと言わんばかりに立ち上がり、その場に留まり続けている。

 背は、高い。騎士団全員を含めても上から数えたほうが速いだろうくらいには。

 となると、やはり男か。

 クレアは警戒心を滲ませつつ、騎士達が作り上げた包囲網を縫って近づいた。危険なのは承知の上でだ。

 ある程度のところまで近づくと止まり、問いを投げる。

 「貴様、何者だ。ここは王城だと知っての狼藉か?」

 愚問だと自分でも思うが、敢えて尋ねた。

 そもそもこの侵入者の意図がさっぱりわからない。念のため不審人物として接しているが、(恐らく)上空から降ってきたのも、下にいた騎士に避けろと警告したのも。

 城内に侵入するという一点において、無駄という他ない。

 一貫性がないのだ、この人物の行動に。

 「……正直、どうして上空に放り投げられたのかなんて、俺が知りたいんだが」

 声は、中性的だった。恐らく意識して変えれば女性の声と勘違いするだろうが、今は男だとはっきりわかる。

 「何? まさか貴様、ここに来たのは自分の本意ではない、などと言うつもりか?」

 「いや、ここに来たのは自分の意思だけど、上空に放り投げられたのは俺の意思じゃない」

 「侵入方法が想定と違っていたということか? ……バカか貴様」

 聞いても意味はわからなかったが、こいつは『城内に来るつもりだった』と暴露したのだ。拘束してからきちんと取り調べをするべきだろうと冷静に考えたクレアは、しかし、次の瞬間冷静でいられなくなった。

 「多分召喚方法を間違えたんだろう。しっかりものに見えたけど、意外と抜けてるのかね、アイリスは」

 「貴様……!?」

 敬愛する己の主人に召喚されたと抜かす。

 あまつさえ呼び捨て。

 「一国の王女を呼び捨てとは大きく出たな! お前達、その不敬者を今すぐ捉えろっ、多少手荒にしても構わん!」

 「あー待て待て待て! ちょっと落ち着け、クレア・シンフォニア!」

 名を呼ばれ、顔をしかめるクレア。少なくとも今日名乗った覚えはなく、また名を呼ばれた覚えもない。

 騎士達もそれに動揺したのか、勇み足で止まってしまう。その隙を突いて、彼は言った。

 「別に大人しく捕まるのは構わない。だけどその前に、アイリスに聞いて欲しい。『あの紙束を読んだ時に、誰かと一緒にいたのか』って」

 「一度ならず二度までも……。その言葉の意味はなんだっ」

 「アイリスがこの質問の意図に気付いたら連れてきてくれ。わからなかったら……拷問でも何でもしてくれていいぞ?」

 これ以上ないほど顔をしかめるクレアだが、騎士の一人に伝令を頼んだ。十中八九時間稼ぎだろうが、気になるのは事実だからだ。

 五分か、十分か。距離を考えればそろそろ戻ってきておかしくない。

 そして、伝令に走らせた騎士は、戻ってきた。

 ――その傍らに、敬愛するアイリスを連れて。

 「な、アイリス様……どうしてここに!?」

 「私が頼んだのです。ここに連れてきて欲しいと」

 何故連れてきた、と騎士を睨むも、アイリス本人に止められた。クレアが説明して欲しいと目で懇願したが、アイリスはそれに気付かず、不審者の前へ躍り出た。

 誰も、止める動きを見せられなかった。それほどに意外な行動だったのだ。

 「あなたが、お父様の言っていた人物ですか?」

 「どう言ったのかは知らないが、アイツに紙束を託されたんだろう? それを呼んで召喚されたのが俺なのは間違いないな」

 「お父様を……国王を『アイツ』呼ばわり、とは」

 「俺からすればアイツは今も子供みたいなもんさ。知ってるか? アイツがアイリスくらいの時はいつも正体を隠して王都に――」

 「ま、待て! 待ってくださいアイリス様!」

 普段大人しいアイリスが、ほとんど表情を動かさないアイリスが、期待に目を輝かせている。その事実に混乱するも、クレアは慌ててアイリスを己の背に庇った。

 「結局お前は何なんだ!?」

 その叫びは、クレアと騎士達の想いを纏めたモノ。突如現れ、敬愛する主の関心全てをかっ攫っている不埒者。

 拘束したいがアイリスは何かを察しているようで、更に『父親』に『国王』という単語が出てきたせいで、行動にも移せない。

 だからこその叫びに、彼は応えた。

 「サーヴァント、アヴェンジャー」

 パサリと、顔を隠していたフードを取る。

 彼の顔は、その黒いローブに反して白かった。病的なまでに白い肌。何の色素も見えない、白い長髪。真紅の瞳。女性的な目鼻立ち。中性的、というより女性的な男性。

 アイリスに引けを取らぬ美少女――のような少年。あるいは青年。

 だが、何よりも目を引いたのは、顔の左半分を覆う包帯だった。額から左頬までを覆い隠すその包帯が、一番の注目を集めていた。

 「召喚の呼び声に応じ、参上した」

 そんな彼が見ていたのは、己を呼んだ召喚者。その輝く瞳だけを、射抜いている。

 「問おう」

 即ち、アイリス。

 「お前が俺の、マスターか?」




 最近このすばの動画を見ました。やっぱ面白くて最高ですね。その煽りを受けてハーメルンの二次創作も読みまくりました。大爆笑させていただきました。

 でもですね、アレなんですよ。

 アイリスがメインのお話が無いんですよ! 少なくとも私が読んだのでは!
 お話の展開上出てくるのはあってもメインで出張るのがほとんどありません!

 と、言う訳で。無いなら書けばいいじゃない思考で書き始めました。ただし私のメインはゲームなのでこちらは手慰み。
 三話まで書きましたが、投稿速度はお察しです。期待しないで下さい。
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