side迅悠一
アーシスがこの世界に来てから約一週間。負傷していたボーダーの者達も徐々に復帰を始め、リサリサちゃんも5日ぶりに睡眠をとった翌日。
ジョセフさんが食堂にいると聞き、俺はぼんち揚を持って訪れた。
迅「ジョセフさん、おはようございます。ぼんち揚、食います?」
ジョセフ「貰いたいところじゃが、さすがに朝食を食べたばかりじゃからな」
残念。ジョセフさんはぼんち揚が好きみたいだから勧めるのが何気に楽しみだったんだけどな。
迅「みたいですね。コーンフレークですか」
アメリカ人らしい朝食だ。
ジョセフ「日本に移住して以来、とんと食うことがなかったからのう。たまに食いたくなるんじゃ」
日本暮らしが10年ともなるとそういうもんかね?普段は片手にパンかおにぎりを食べつつ、新聞を読みながらパソコンを操作しているのに。そう言えば新聞もパソコンも今朝は無いな。
迅「あれ?ジョセフさん、経済新聞はどうしました?食事の時は読んでますよね?」
今朝は珍しくコーヒー片手にテレビを見てゆっくりしている。
ジョセフ「この世界ではもう資金繰りは必要ないからじゃ。質草の金塊を買い戻してあるし、稼いだ残額についてはボーダーに寄付しておる」
異世界に来てまで株で儲けたらしいからな。
戦闘でも化け物なら経済でも化け物だ。
建築と不動産業で一代でアメリカのトップにのしあがったと聞いたときは嘘だろ?とか思ったが、この手腕を見たらその疑惑はすぐに消えた。
迅「まるで帰り支度ですね」
ジョセフ「それで間違っておらんよ。もうじき、帰るからのう」
迅「諦めたんですか?ハチの魂の回収は」
ジョセフ「お前さんも白々しい事を言いよるのう。それとも、お前さんの……えーと、なんじゃったかな。細胞エフェクトじゃったか?それは言っておらんのか?」
何かの病気みたいだ。
迅「サイドエフェクトっすよ。ええ、俺のサイドエフェクトは言ってますよ。大規模侵攻は今夜…だとね。逆に聞きますけど、ジョセフさんは何でわかったんです?」
まじでなんで?
ジョセフ「やはりのぅ。理由は夕べの防衛任務でな、シーザーがトリオン兵がこれを落としたのを拾っての。大方、奴等の偵察でも現れたと見て報告して来たのじゃ」
ジョセフさんら牙が口から出ている石で出来た仮面じゃ。
迅「それは?面白そうじゃないですか。被らせて貰って良いですか?」
ジョセフ「構わんよ?二度と太陽の下を歩けんようになるがの?」
迅「え゛……」
なにそれ。
ジョセフ「このは石仮面を良く見るがええ」
ジョセフさんは手ごろな針で指を刺し、石仮面を床に置いて出てきた血を垂らす。
すると、石仮面からビン!ビン!ビン!と針が出てくる。もしこれを被って血を付けたら、ドズドスドズと頭に刺さっていただろう。
迅「こっわ!こんなん刺さったら死ぬぞ!」
ジョセフ「死にはせんよ。人間を辞めるだけじゃ。DIOのようにの」
迅「どういうことですか?」
ジョセフ「この針が人間の頭に刺さるとな、吸血鬼になるのじゃ。クソッタレ吸血鬼にのう」
そう言えばジョジョの記憶にそんなのがあったような。
迅「……よく知ってますね、ジョセフさん」
ジョセフ「まぁな。コレはジョースター家にとっては忌々しい宿命の発端となったものじゃからのう。この蛙の小便よりも汚ならしい石仮面が、ジョースター家を血塗られた歴史に変えたと言っても過言じゃあない。これを作ったのが柱の一族……カーズじゃ。わしらの世界では、の話じゃがな」
ジョースター家の奇妙な冒険の発端はカーズかよ。
迅「何だってカーズはこんなものを?」
ジョセフ「吸血鬼は奴等の手駒であり、食糧じゃ。他にももうひとつ理由はあるがな。今夜が山場じゃ。ワシらが負ければ、この世界は奴等の餌場になるぞ」
思ったよりもヤバいタイプのネイバーだな。
ジョセフさんは食器を片付け、食堂を出る。
ジョセフ「ワシはこれから城戸の所へ行くが、お前さんも来るかの?」
迅「え、ええ…」
ジョセフさんは忍田に連絡を入れた後に司令室へと足を運ぶ。コレを見せた城戸は緊迫した表情になり、ボーダー全体に緊急指令を発動した。
城戸「……ジョースターさんはこれからどうするのです?」
ジョセフ「ワシか?夕方まで寝とるよ。いくら波紋の戦士といってものう、そう何日も起きとるのは堪えるんじゃよ。見えんかも知れんが、ワシはこれでも百歳じゃよ?百歳。年寄りを少しは労らんかい」
よく言うぜ。全然年寄りに見えねぇって。
迅「……年寄り扱いすると怒るくせに、調子が良いじいさんだぜ」
ジョセフ「忘れたのう。一時はボケもあったからのう」
ホント、調子の良いジジイだ。
城戸「夜まで出てこない…という保証はあるんですか?ジョースターさん」
ジョセフ「奴等は太陽と紫外線が弱点じゃ。じゃから間違いなく夜に現れる。通常の防衛任務を除いては、今のうちに寝て、食べて、心身共にリフレッシュしておくのじゃな。これでワシは失礼するぞ」
ジョセフさんはわざとらしく欠伸をしてから司令室を退出する。
途中、比企谷隊の隊室に寄って不意討ちで脳幹に波紋を流して気絶させ、眠らせる。
何気なく近付いて隙を付けばこんなもんじゃわい。とか言ってどや顔するジョセフさん。マジでいい性格してるわ。
それから俺も玉狛支部に戻り、小南を適当にからかった後にシャワーを浴びて眠る。
……今夜か。
side比企谷八幡
リサリサ「う~ん!」
大志「比企谷さん、スッキリした顔をしてるっスね」
リサリサ「まあね。最後に寝たのは千葉村に出発する前の晩だからね」
八幡『寝てなさすぎだろ』
ジョジョ『それが可能なのが波紋の戦士だからな』
マジで化けもんだな。波紋の戦士。
俺も波紋を修得したわけだし、真面目に修行してみるか。
迅さんの話が本当なら、こいつらとも今夜で最後みたいだしな。
やっと静かな日常に戻れる。
小町「せっかく友達になれたのに…もうお別れなんだね…」
小町は寂しそうに言うが、リサリサは首を横に振る。
リサリサ「本当は出会わなかったのが一番良いんだよ。もっとも、小町にはお兄ちゃんの復活を見届けて貰いたいけどね」
ああ、殴りに行くと言ったもんな。
小町「………うん。是非見せて」
リサリサ「八幡さんやいろはさん、陽乃さんに遥さん、めぐりさん、それになんだかんだお世話になった迅さんにも見届けて貰わないと!」
大志「勝てるんっスか?究極生物に…」
弱気な大志…C級のお前が怖じ気づくな。
そういうのって案外伝染するんだぞ。
リサリサ「小町達には勝利しかない。敗北は許されない。犠牲を払いながらも小町達はやって来た。それは今回も変わらないよ。勝てる、じゃあないんだよ。勝つんだよ。勝敗を分けるのは……執念!オーケー?」
ジョースター家の家訓らしいな。
ジョースター家の戦いは勝たねばならない。引き分けはない…だったか?
小町「小町達は応援しか出来ないけど、頑張って…リサリサちゃん」
リサリサ「うん。そして日常を取り返すんだ!逃げるゴミぃちゃんを捕まえて社畜にして、逃げる生ゴミぃちゃんを捕まえて波紋の修行をさせて、粗大逃げるゴミぃちゃんを捕まえて添い寝して、逃げる産廃ゴミぃちゃんを…」
おいーー!怖いよ!あと怖い!
八幡「逃げるのを捕まえられるのがお前の日常か…そしてそっちでもお前は社畜なんだな…ジョジョ。さらにゴミレベルが上がってるぞ…リサリサ…『末永くよろしくな、八幡』……おい、末永くよろしくしねぇよ!今日で終わるなら、絶対に明日の朝イチには出てってもらうからな!」
ジョジョ『いやだー!社畜はいやだー!部活が会社の出張所って何ー?!奉仕部が会社に乗っ取られてるってなんなんだよ!』
そんなの知らねぇよ!そっちの奉仕部は恐ろしいな!
まぁ、何をしてるのか全くわからないし、たまに依頼が来ても失敗し、余計に拗らせているらしい存在意義が疑われるこっちの奉仕部もワケがわからんがな!
ホントに何で平塚先生はあんな部活を作ったの?ジョジョの世界のように単に生活指導の仕事を丸投げする下請けとして作ったわけじゃないよな?
京華『来たよ!ゲート多数!リサリサ様!ジョーちゃん!死なないで!アーシス、スクランブル!』
めぐり『数が今までの比じゃないよ!ネイバーは…吸血鬼が多数!けーちゃん、それ良いね!比企谷隊!スクランブル!』
遥『トリオンと波紋は似た性質!身体能力に差はありません!みんな、頑張って!嵐山隊、スクランブル!あ…うつっちゃった…』
歌歩『良いんじゃない?士気が高まりそうだし、私も真似して…風間隊!スクランブル!』
遂に来たか…ネイバーの中でも異質な奴等が。
ジョセフ「行くぞ!トリガー、オン!」
キュイイン!
コォォォォォ…トリオン体になり、みるみる若返るジョセフさん。
若ジョセフ「へっ!来やがったな!アーシス、スクランブルだぜ!」
リサリサ「アーシス、スクランブル!」
全員がトリガーを起動させる。ペットショップも。
八幡「今日は始めから全開だ。袖の白雪…起動!アーシス・スクランブルに倣うぜ…比企谷隊!スクランブル!」
今日は始めから飛ばす。
ジョジョ『おさえ目にいけよ。前に見せた雪ノ下のエンジェル・ダスト…あれを参照にした威力でやれ。何なら代わるぞ?』
八幡『要らねぇよ。あれから少しは練習したんだ。エンジェル・ラッシュにエンジェル・アルバム、フリージングビーム……それに、お前から提案された技も面白そうだしな』
ジョジョ『俺にも出番をくれよ?』
八幡『抜かせ。砕けた魂で無理すんな』
迅「ハチ!らしくないじゃん?玉狛支部!スクランブル!」
嵐山「嵐山隊!スクランブル!」
那須「今日はアーシス流で行くわよ。那須隊、スクランブル!」
二宮「二宮隊、スクランブル」
三輪「……三輪隊、スクランブル…」
影浦「二宮も三輪も空気には勝てなかったな。影浦隊、スクランブル」
加古「たまにはこういうのも良いね。加古隊、スクランブル」
「○○○隊!スクランブル!」
ボーダーの全隊がアーシスの真似をしてスクランブルをかける。
城戸『アーシスも含めたボーダー諸君!今は普段のしがらみも派閥も関係ない!ここで負ければ人類の敗北だ!奮起せよ!全隊!攻撃開始!ボーダー!スクランブル!』
そして……この人も出てきた…。
忍田「城戸さんの言うとおりだ…。ここで負ければ思想だのはただの夢幻……私も出る!トリガー起動!ボーダー、スクランブル!ジョースターさん!」
若ジョセフ「へ!粋じゃあねぇの!忍田さんよぉ!確かに今は俺達もボーダーだ!言い直すぜぇ!ボーダー、スクランブル!」
うおおおおおおおおおおおおー!
全ての戦力が戦場に散る!
ボーダー始まって以来の総力と総力のぶつかり合いが始まった。
ニネスが関わったことにより、表の記録からも抹消された非公式の大規模侵攻…。その戦端が今、切られた。
←To be continued