やはり俺の社畜物語は間違っている。   作:雪楓❄️

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大分、投稿遅れてしまい本当にごめんなさい。


長い間待っていてくれている人がいるか分かりませんが、更新自体は続けるのでお願いします。


17話

「……幡………八幡………八幡!起きて!」

 

遥に揺さぶられるようにして、目を覚ました俺の視線の先にはもちろん遥がいるわけなのだが…俺を起こすために前屈みになっている。

つまり、いい眺めである。

 

「………もうみんな朝ご飯食べ始めちゃってるよ!」

 

「あ、あぁ悪い。すぐ行くわ」

 

俺が起きたことで満足したのか、遥はせっせと部屋を出て行ってしまった。

 

(………あいつ、あの格好のまま行ったのか?)

 

若干遥が心配になったが、気を取り直して俺も身支度を整え朝食会場へと向かった。

 

 

◇◇◇

 

朝食を終えた俺達の仕事は、キャンプファイヤーのための組み木。

男共でやる予定だったのだが、ボーダー組は出水と米屋は遊び始め、総武組ははなからやる気がないのかここにいない。

結果、俺と三輪と奈良坂の3人で組み立てるハメになった。

 

「ふぅ。漸く終わったな」

 

「あぁ。俺はあのバカ2人はを始末してくる」

 

そう言うと三輪は奈良坂を連れ、未だに遊び続けている馬鹿2人の元へ歩いていった。

 

(……俺も、川で涼んで来るか)

 

三輪によって、正座させられているバカ2人を尻目に俺は川の方へと歩いた。

 

 

◇◇◇

 

(……ふぅ。暑いな)

 

夏休みということで、容赦なく照りつける日差しは引きこもりにとって天敵と言っても過言じゃない。

そんなわけで、川に到着したが遊ぶ気力など元々存在せず。こうして木陰で休むのが定石である。

 

(あいつらこんな所でサボってやがったのか…)

 

川には先客が既におり、楽しそうに遊んでいた。もちろん、先客というのは言うまでもなく総武組である。元より防衛も兼ねたこのボランティアに不真面目なやつを連れてくるわけもない。米屋と出水も、普段こそあれだがやる時はやるヤツらである。

 

「あれ?八幡どうしたの?」

 

若干サボって遊んでいた総武の奴らに怒りを覚えていた俺は背後にいた遥を声をかけられるまで気づくことが出来なかった。

普段ならば何も問題はないのだが、遥の格好が不味かった。

 

「……あぁ、遥………!?」

 

普段ならばもう少し驚きを抑えられたかもしれないが、不意をつかれた上に今の遥は川で遊ぶために水着に着替えていた。

つまり、圧倒的美少女がほぼ裸同然の格好で急に話しかけてきたようなものである。

全国の男性諸君、どんなに幸せでも顔には決して出してはいけない。

 

「…八幡?」

 

急に俺が顔を背けたことにより、それを疑問に思った遥は余計に俺の方へと身体を近づけてくる。

 

(……陽乃さんたちは何をしてるんだ)

 

遥がいるということは近くにボーダーの誰かしらがいるはずなのだが…。

 

(……おい、何をやってるんだあんたらは…)

 

よく見ると総武組の少し奥の方によく見知った顔がちりほら水着に着替えて、遊んでいるのが見えた。さらに言えば、三輪や米屋たちも。

 

「ねぇ、八幡大丈夫?」

 

俺が顔を背け顔を真っ赤にし続けていたことが、逆に心配になったのか遥は先程よりもその距離を縮めてきた。

 

「あ、あぁ大丈夫。大丈夫だけど、一旦離れてくれると助かる」

 

変態だと罵られようが、これ以上この格好の遥に抱きつかれていては俺の理性の壁がいつ破壊されてもおかしくない。

 

「……え?なんで?」

 

遥は今の自分の格好を把握していないのか忘れているのか、何故俺が離れてくれと言ったのかわからなかったようだ。

 

「そのだな……、格好がアレなんだ……」

 

「……あっ……ごめん!!」

 

俺の言葉で漸く自分の今の格好を理解したのか、恥ずかしさからか遥は耳まで真っ赤にして顔を背けてしまった。

 

・・・・・・・・・

 

(……気まずい…)

 

自分から言ったとはいえ、言わざるを得ない状況だったわけでどうしようもない。だからといって、ここで一気に空気を変えられるほど俺のコミュニケーション能力は高くない。

 

「あ……八幡と綾辻さん?」

 

俺だけ何故か呼び捨てだったのは一旦置いておき、なんとも絶妙なタイミングで来てくれた鶴見には感謝せざるを得なかった。

 

「……あ、ごめんなさい。お邪魔するつもりは無かった……です。それじゃあ」

 

鶴見は遥の方を見るなり、急に遠慮した態度に変わりその場を去ろうとした。

 

「いや、待て鶴見。ど、どうしてこんな所にいるんだ?他の奴らはどうした。」

 

どうにか鶴見にこの状況を変えてもらわなければいけないと考えたら俺は、少しでも鶴見がここに残るために普段ならばしないような他者への質問という行為を選んだ。

 

「……今日は自由行動だったんだけど……、起きたらもう…みんないなくなってたから…」

 

(……なるほどな、ここまであからさまな嫌がらせだとは。それにしても、なんでこいつ少し怯えてるんだ?)

 

「……そっか。それで留美ちゃんはこんな所に?」

 

「……は、はい。何もやることなくて、でもお母さんから友達と写真を撮って来なってカメラを渡されちゃったのでどうしようって。」

 

(……こいつ、遥に怯え過ぎだろう)

 

昨日の1件が原因だろうが、そこまで遥に怯える必要はないと思うがな。

 

「そっかぁ、それじゃあ私たちと写真撮ろっか!」

 

「…えっ?」

 

「はい?」

 

遥ならば言いかねないとは思ったが、ここに居るのは鶴見を抜いて2人。つまり、「私たち」ということは俺も含まれていることになる。

 

「…なにかな?八幡」

 

顔は笑っているのに目が笑っていない。そんな表情を遥にされて、さらに反抗出来るそんな男がいるのならば俺の目の前に現れてみて欲しいものである。

 

「い、いや…なんでもないぞ?写真だな、写真」

 

土下座などしようものなら、遥の怒りを買うような気がしたため俺は謝るのではなく何も無かったことにしたのだが、これが良かったのか遥は笑顔に戻った。

 

「ほら留美ちゃん、カメラ貸して?」

 

「う、うん」

 

鶴見も遥に押し負けたのか、渋りながらも遥にカメラをを渡した。

 

「ほら、二人とも笑って?」

 

遥は手を目一杯伸ばして、3人が写るようにカメラを構える。

 

「はい、チーズ」

 

カシャッという音と共にシャッターが切られる。

遥は撮ったであろう写真を見ると、満足したような顔をして鶴見にカメラを返した。

 

「あ、ありがとう。八幡、綾辻さん」

 

「うん、またね。留美ちゃん」

 

遥からカメラを受け取った鶴見はそのまま、来た方と戻って行った。

 

「……なんとかしてあげられないのかな」

 

「俺たちに出来ることは少ない。どちらにせよ、鶴見自身が動かなければ何も変わらないがな。」

 

「……そうだね」

 

そう言った遥の表情は普段見せること後ないほど暗いように、俺には見えた。

 

 

◇◇◇

 

「こんな所に居たら風邪引くぞぉ?」

 

「陽乃さんこそ、こんな時間まで起きてたら肌に悪いんじゃないんですか?」

 

夜風に1人当たって1人物思いにふけっていた俺に、眠れなかったのか陽乃さんが話しかけてきた。

 

「不安?」

 

陽乃さんは俺の隣まで来て座ると、たった一言そう聞いてきた。

 

「……何がですか?」

 

素直に不安だと言ったところで何が変わる訳でもないが、昔の俺ならば不安から逃げようとしただろう。だが、今の俺は不安を人にさらけ出していい立場ではないということは幾ら俺でもわかっている。

 

「誤魔化すのが下手だなぁ、君は。お姉さんにまで、強がらなくていいのにぃ〜」

 

「………少しぐらいは俺の覚悟を汲んでくれてもいいと思うんですがね…?」

 

「汲んでるよ〜?だから、こうやって誰もいないところで聞いてあげてるんじゃない。遥ちゃんにも、言えないからことがあるだろうからお姉さんがこうして聞きに来てあげたんだよ」

 

こういう時の陽乃さんには敵わない。

なんと言うか母性というかなんと言うか、遥とは違う包容力のようなものが陽乃さんからは感じられる。

 

「………そうですね。不安って言うほどのものじゃないんですけど、俺にはどうも分からないんです。なんで葉山が近界民と繋がってるのかが。確かに、ボーダーでの職場見学以来あいつは学校での立場が少し危うくなりましたがそれでもあぁやって周りに友達はいるわけで、そこまで深刻な事でもないと思うんです。なにより、あいつがもし力を手に入れた場合あいつは俺じゃなくて遥を狙う、そんな気がしてならないんです。その時、俺は遥やみんなのことをちゃんと守りきれるのかなって。」

 

「君がそんなことで悩んでるなんてね。少し遥ちゃんが羨ましいかな。確かに隼人や雪乃ちゃんが力を手に入れたなら、君が1番苦しむ選択肢を取ろうとするかもしれない。でもね、一つだけ覚えておいて欲しい。君は1人じゃない、ボーダー全員君の味方だってことをね」

 

陽乃さんはそう言うと俺の頭を少し撫でて、立ち上がった。

 

「……おやすみ、八幡」

 

陽乃さんはそれ以上何も言うわけでもなく、そのままコテージの方へと歩いて行った。

 

(……もっと周りを信用しなさいってか)

 

両親が亡くなって以来、初めて頼った年上の言葉は俺の心になによりも重く響いた。

 

 

 





気が向いたら感想残して言って貰えると嬉しいです。
やる気も少しは出ると思うので。


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