やはり俺の社畜物語は間違っている。   作:雪楓❄️

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更新遅くなってごめんなさい。
詳しいことは活動報告をご覧下さい。


18話

 

千葉村でのボランティアも最終日となった今日、俺たち高校生組は各々準備をしていた。

 

「………それで、なんで俺がこの衣装なんだ………?」

 

俺たちは小学生たちを肝試しで驚かすために、元々千葉村にあった仮装用の衣装に各々着替えている。

本来ならばボーダー組は防衛のために出来ることなら参加したくなかったのだが、総武組だけでは人数的に物足りないということでボーダー組も参加することになった。そんな中、米屋や出水は狼男やミイラ男など男の仮装の王道をいっているにも関わらず、陽乃さんに俺が渡された衣装は……。

 

「いいね、いいね〜。流石に似合うね!雪女」

 

「……………俺は女じゃないんですがね……」

 

元々雪ノ下雪乃が着るはずだった衣装なのだが、その雪ノ下は何故か由比ヶ浜とペアで小悪魔の衣装を。結果、余っていた雪女の衣装を陽乃さんが俺に押し付けるようにして渡してきたのだ。

 

「え〜、でも八幡のブラックトリガー使用中ってそんな格好だよね?」

 

陽乃さんはわざとらしく大きな声でそう言ったあと、俺の耳元で囁くように続けた。

 

「……それに、この格好ならブラックトリガー使ってても遠くからははハッキリわからないだろうから」

 

「………さすがにバレると思いますけど」

 

幾らこの衣装がブラックトリガー使用中の姿と似ているからと言って、流石にバレるような気もする。冷気出るし…。

 

「それで、陽乃さんは着替えないんですか?」

 

こういった類のイベントは真っ先に参加しそうな陽乃さんだが、その格好は普段と変わらない。陽乃さんだけというより、俺を抜いた比企谷隊の面々は皆画像をしていない。

 

「本当なら参加しようかと思ってたんだけどねぇ、私らは参加しない方がいいって迅がね〜」

 

「……そうですか」

 

納得のいく理由としてこれ以上ない返答をされた俺にそれ以上特に言うことは無かった。それに、陽乃さん達がいるのならば小学生の案内役に回った非戦闘員の遥や三上も安全だと思えた。

 

(……それにしても、迅さんと陽乃さんって本当に仲良いな)

 

俺は同じ年だとしても、改めて異様なまでに仲がいい2人の関係が少し気になってしまった。

 

「……ほら、八幡置いてくよ?」

 

「お、おう」

 

いつの間にかいなくなっていた陽乃さんの代わりに居た遥に呼ばれ、俺もみんなの後を追うように外へと出た。

 

 

◇◇◇◇

 

防衛の目的も含め俺たちボーダー組はある程度バラけて待機することとなった。

俺もサイドエフェクトで念の為、雑木林一帯の安全を確認した後、自分の持ち場へ向かうことにした。

 

(にしても、本当に暗いな)

 

小学生の肝試しに使うにしては本格的に真っ暗な雑木林に内心驚きながらも、俺は目的の人物の元へと近づいていた。

 

(………ヤツが動くとしたらこのタイミングしかないはずなんだが)

 

迅さんの予知からして、本人が直接手を出してくるとは考えにくいが何かしらアクションを起こすのはまず間違いなかった。

 

(………あいつ、こんな所で何を……?)

 

目的の人物【葉山隼人】がいたのは明らかに小学生たちが通る道では無い場所だった。

俺は相手に悟られないように距離を保ち、相手の動向を探った。

 

(………あいつ、何をしてるんだ?)

 

誰かと接触するわけでもなく、ただ周りを警戒しているだけで何もする気配がなかった。

 

(………俺の取り越し苦労か?)

 

俺がそう思い少し警戒を緩めた時だった。

葉山は少しだけしゃがみこむと、直ぐに立ち上がってその場を去った。

 

「……一体、何をしてたんだあいつは……」

 

葉山が遠くへ離れたのを確認し、俺は直ぐに葉山が居た場所に向かったがそこには既に何もいなかった。

 

 

◇◇◇◇

 

当初の小学生を驚かすという目的を完全に忘れ、俺は葉山の動向を探り続けることにした。だが、葉山はあれ以降怪しい動きをすることなく小学生を驚かすという役割をこなしていた。

 

(……本当に俺の取り越し苦労か?)

 

その後も葉山は淡々と小学生たちを驚かし続け、小学生たちの肝試しも最終グループの順番となっていた。

 

(………迅さんの予知が外れた?)

 

既に林間学習の日程も終わりに近づいているが、近界民が現れる予兆すら感じない。

俺も何も起きないだろうとたかを括り気を緩めた、その時だった。

 

バチィ

 

そんな音とともに、上空に視認出来るだけで4つのゲートが開いた。

 

「なっ!?」

 

確認出来た4つのうち、3つはボーダー隊員がいる方向だったが残りの1つは俺が居るべき場所の方向だった。つまり、あのゲートの方にはボーダー隊員は誰一人いない。

 

「っ……くそっ」

 

俺は葉山のことを確認することなく、ゲートの方へと急いだ。

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

「いやぁー!!!」

 

「助けて、お母さん」

 

突然開いたゲートにより現れた近界民の存在に、居合わせた小学生たちはただ恐怖するしかなかった。

 

「…………ほら、早く立って!!」

 

そんな中でも鶴見留美は恐怖を押し殺し、恐怖で動けなくなっている班員を連れていこうとしていた。だが、幾ら恐怖を押し殺そうと小学生の力では全く力の入っていない同級生を引きづることも叶わず、近界民は1歩、また1歩と鶴見たちへと近づいてきていた。

 

「…つ、鶴見!?」

 

「は、早く逃げて!!」

 

何故、間に立ったのか。そんなことは鶴見自信にも分からなかった。ただ身体が勝手に動いた、そうとしか言えなかった。

 

(……ごめんなさい、お母さん)

 

鶴見が後ろを確認したときには、腰を抜かしてしまっていた女児童も走り始めていた。だが、鶴見が逃げるには既に時遅く、もう目の前まで近界民は迫っていた。

 

「………い、いや」

 

自分以外全員逃げた途端、押し殺していた恐怖が鶴見の心を覆い尽くした。腰は抜け、ただ目の前の巨大な生物の手が自分の方へと伸びてくるのをただ眺めるしかなかった。

 

「よく頑張ったな」

 

そんな空耳のような声がした瞬間、鶴見の目の前にいた近界民は時が止まってしまったかのように凍りついていた。

 

「ほら、立てるか?」

 

そう言って鶴見に手を伸ばしたのは、雪女のような格好をした比企谷八幡だった。

 

 

 





いつになるかわかりませんが、また次回!
できる限り早くしたいとは思います。

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