この世には二人の天才がいる。
ISの生みの親にして世界が必死になって探している篠ノ之束、
もう一人は本来なら存在しないはずの一夏の双子の弟、真夏。
世界はこの二人を中心にして廻っている。
学校の帰り道、一人の男の子が泣きじゃくりながら歩いていた。
少年の名前は織斑一夏、先程まで双子の弟である真夏と一緒だったのだが
今日も嫌なことがあり泣きながら帰っていた。
「なんで? なんで、先生は僕を褒めてくれないの?
真夏は今日も満点を取って先生から褒められていたのになんで
僕には褒めてくれないの? 僕だって頑張ったのに」
一夏はランドセルから答案用紙を取り出すとそこには
90点と書かれていた。
今日は先日受けたテストが帰って来たのだが双子の弟である
真夏には担任の先生は褒めたにもかかわらず
一夏には褒めるどころかこういった。
『なんで真夏君が満点を取ったのに君は満点をとれないの?
そんな点数あなたのお姉さんなら勉強しなくても取っていたわよ』
「僕と真夏を比べないでよ」
「ただいま」
一夏は家の鍵を開けて中に入ると既に千冬と真夏が帰っていた。
「ねえねえ見て千冬お姉ちゃん! また満点を取ったよ!」
「おぉ! 凄いな~! 流石は真夏だな!」
一夏もすぐにその会話の輪に入り自分もこんなに良い点数を
取ったのだと示したかったがそれは出来なかった。
「……ただいま」
「お帰り一夏。今日、テストが帰って来たんだろ? お姉ちゃんに見せてくれ」
千冬は満面の笑みを浮かべて一夏に話しかけるが一夏は顔を俯かせたままだった。
「………嫌だ」
「どうしてだ? もしかして悪かったのか?」
一夏はその問いに否定を表すために首を左右に振った。
「なら、見せてくれ。な~に悪くても怒らないさ」
千冬は満面の笑みで一夏に問いかけ一夏も観念したのか
ポケットに入れていた答案用紙を千冬に渡した。
「そうか、90点か。よく頑張ったな」
それを聞いた一夏は一瞬喜ぶが次の言葉に地獄へと落とされた。
「真夏の満点に比べれば少し低いが
一夏からしたらよく頑張ったな! よし!
じゃあ、今日はお前たちの好きなご飯にしてやろう!」
「やったぁぁぁぁ! じゃあねじゃあね!」
「………また真夏と比べた」
「ん? 何かいった? 一夏」
「……別に」
真夏は不思議そうに問いただすが一夏は不機嫌気味に言い返した。
これはまだISが世に出される前の話。
それから数年後、一夏は縄で縛られた状態で薄暗い倉庫に隠されていた。
辺りは薄暗く何も見えない、目を開けているのに目隠しをされたように暗かった。
(……誘拐かな……お姉ちゃん早く来て!)
今日は千冬がモンドグロッソという世界大会に出場するので
一夏と真夏はその会場にまでついて来ていたのだが一夏が
トイレに行こうとした時にいきなり何かを嗅がされ意識が落ちた。
すると奥の方から3人ほどの男性がこちらに近づいてきた。
「へへ! やったな! これで俺たちも雑用からおさらばだぜ!」
「あぁ! しっかしガキ一匹を誘拐するだけで昇進できるなんて
まるで夢のようだぜ!」
すると一人の男性が一夏のほうに歩いて来て目の前でしゃがんだと思うと
一夏の口に張ってあったガムテープをはがした。
「おいお前名前は」
「何言ってんだよ、そいつは織斑千冬の弟の織斑真夏だろ?
あの世間で篠野ノ束と同等の天才だって言われている」
(また真夏か……真夏と僕を比べるな!)
「忘れたのか? こいつらは双子だ。で、名前は」
「真夏真夏うるさいな! 僕は織斑一夏だ!」
それを聞いた男たちは驚きに顔を染めた。
「う、嘘をつくな! お前は織斑真夏だろ!」
「嘘じゃない! 僕は一夏だ!」
「ふざけんな!」
「ぎゃい!」
男性は怒り狂い縛られて動けない一夏に何度も腹部に
蹴りを入れて暴行を始めた。
「くそ! どうすんだよ!」
「どうするって言ってももうあの方たちは到着なさるぞ!」
「これじゃあリアルに首が飛んじまうよ!」
すると一人の男性が何か思いついたかのように呟き始めた。
「……なら、こいつ殺そうぜ」
一夏は意識がぼんやりとしていたがそれだけははっきりと聞こえた。
「もう俺たちは死ぬんだ、だったら最後くらい人を殺してみようぜ」
「……そうだな、そうしよう」
男性達は胸ポケットから拳銃を取り出し一夏に向けた。
「恨むならこの世に生を受けたことを恨みな」
(僕死んじゃうの? ……僕は生まれたらいけない子だったの?)
一夏は目から大粒の涙を流しながらそう思った。
そして男性達の指が引き金に置かれた瞬間、突然
壁が爆発を起こし大穴があいた。
「な、なんだ!?」
「我々は更識家だ! 抵抗は無駄だ!」
その後、何人もの足音が倉庫内に響いた。
その時だった。
「痛!」
一瞬、首筋にチクっとした痛みを感じそのまま意識を落とした。
意識が落ちる前に一瞬だけ青色の何かが見えた。
おはようございます!