翌日の朝、トーナメント開始当日の日。
真夏とシャルルは気合いを入れて控室でトーナメント表の相手を見ていた。
「ラウラは僕たち一年生のなかでは上から数えた方が
早いほどの強さを持ってるよ」
「そんな事は分かってるよ。でも、この試合は負けられない」
「うん……頑張ろうね。真夏」
「勿論」
2人は拳と拳をコツンとぶつけあって試合が始まるまでの
短い時間を過ごした。
場所は変わり観客席では―――――
「……」
一夏はどこか気が抜けた表情でボーっと観客席で座って
試合が始まるのを待っていた。
一夏のペアの試合はまだまだ先なので先に行われる試合を
観戦するという事なのでいつもの裏家メンバーで来ているのだが…
「……ねえ、簪ちゃん。何か一夏あったの?」
「……さ、さあ? 今朝からああだったよ」
「……多分、あの日の夢を見たのでは」
あの日――――――それは一夏の心に深い傷をつけた事件が起きた日だった。
今から5年前、一夏は外出中に偶然、火災現場に立ち会わせていた。
「ケホッ! あ~くっそ! 運が悪いな今日は」
普段から死ぬほど体を鍛えている一夏にとって火災現場から
避難する事は造作もないことだった。
「……て!」
「え?」
一瞬、誰かの助けを呼ぶ叫び声が聞こえたかと思い
後ろを振り向くがそこにはただただ赤い炎がゆらめているだけだった。
「……ケホッ! 気のせい」
「助けて!」
「っ!」
今度は確実に誰かの声が聞こえ、一夏は声がする方向へ向かうと
瓦礫の下からその助けを呼ぶ声が聞こえてきた。
「誰か助けて!」
「待ってて! 今、助けるから!」
「っ! お、お兄ちゃん!?」
「ああ! 助けるから待ってうわっ!」
一夏はすぐにでも助けようと動くが火の手がすぐそこまで迫っていて
瓦礫がガラガラと落ち始めて来ていた。
「熱い! 熱いよ!」
「待ってて! 今行くか!」
少年の悲痛な叫びを聞き、一夏が瓦礫をどかそうとした瞬間!
真上から大きな瓦礫が落ちてきたので一夏は慌てて
その場から離れるが先程まで聞こえていた助けを呼ぶ声は無くなった。
「あ……あぁ! あああぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「一夏? お~い、一夏~」
「……楯無様?」
「もう試合始まってるよ?」
一夏が我に帰ったとき、目の前に楯無の綺麗な顔があり
既に会場は興奮の渦に飲み込まれ熱気が凄まじかった。
目の前のフィールドでは白のISと黒のIS、そしてオレンジ色のISが
縦横無尽に飛び回り試合を行っていた。
2対2なのだが既にラウラの相方である箒はエネルギーが尽きて
失格となっており真夏とシャルル側に数では有利があった。
「はあぁぁぁ!」
「ぐあぁ!」
真夏の雪片弐型による一閃がラウラのISのボディを切り裂き
火花を散らすとともにエネルギーを大きく削った。
(これが零落白夜か!)
「その力は教官の物だ!」
ラウラはエネルギー手刀で真夏に斬りかかるがいきなり
真夏が体を伏せたかと思った瞬間、鉛の雨がラウラに直撃した。
「ぐおおぉ!」
鉛の雨に打ちつけられたラウラはフィールドの壁にぶつかった。
「止めは僕が行くよ、真夏!」
「お願い!」
シャルルはパイルバンカーをコールしラウラに止めを刺そうとした瞬間!
「うぐわああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「「っ!」」
突如、ラウラのISから電流が周りに放出されたかと思うと
徐々にその姿を変えていき、ドロドロの液体がどこからともなく
溢れ出てきてラウラを飲み込み、女性を形どった姿になった。
「そ、その姿は」
真夏はその姿を見て怒りに打ち震えていた。
何故なら目の前にあるものは姉である千冬の姿に似ていたからである。
『オオオォォォォォォ!』
「っ!」
別の事に気を取られていた真夏はとっさに斬りかかってくる敵に
反応できずに隙だらけの状態になっていた。
(ヤバッ!)
慌てて雪片弐型で防ごうとした瞬間。
―――――ドオオォォォォォォォ!
突如、敵を黒い衝撃波の様なものが包みこみ
フィールドの壁に叩きつけた。
「邪魔だ。消えろ」
一夏は普段の彼からは想像ができないくらいに感情を
押し殺した状態で問答無用で引き金を引き敵にBTのレーザーと
鉛の弾丸を降り注いでいった。
「ま、待って! あれにはまだラウラが!」
「心配ご無用です。死にはしません」
シャルルがやり過ぎだと思ったのか止めに入るが一夏は
気にも留めずに引き金を引いていく。
「待てって言ってんだろ!」
真夏が大声で叫ぶとようやく一夏は引き金を引くのを止めた。
「あれは僕がケリをつける! お前はひっこんでいろ!」
「……助けに来たやつをそう言って追い返すか」
一夏は棘のある言い方で真夏にそう言いその場を離れた。
『オオオォォォ!』
「ラウラ!」
敵の刀と真夏の雪片弐型がぶつかり辺りに火花を散らした。
「グヌヌヌヌヌ! でやあぁぁぁぁぁぁぁ!」
真夏は剣を上に振り上げ敵の剣を弾いた。
「目を覚ませぇぇぇぇぇぇぇぇ! ラウラァァァァァァァ!」
真夏は隙だらけの敵に思いっきり剣を振り下ろし
真っ二つに両断すると千冬を型どっていたものが液体の様なものに
代わり中からラウラが排出され真夏に抱きとめられた。
「ふぅ。僕の計算通り」
真夏はさっきの戦いでどのような角度で剣を防げばいいのか、
最小限の力でどうやって剣をはじき返すかを瞬時に計算し
それを実行に移していた。
「お疲れ様‘真夏”」
「ま…な…つ?」
「い、一夏!」
遠くの方で『真夏』と言う単語を聞いた一夏の
様子が徐々に変化していく。
その言葉は善なる彼を、全てを破壊するものへ――――破壊神と
同党なる存在へと変えていく。
全てが破壊される。
こんばんわ~