「ねえ、これはどう?」
「はい! とてもお似合いです!」
「むぅ! さっきからそればっかり!」
IS学園の制服を着た男女が楽しそうに水着売り場で試着をしていた。
女の子の方は試着室で水着に着替えては男の方に見せ、逆に男の方は
大量の女性ものの水着を両手で抱えて立っていた。
「私は一夏の感想が聞きたいの!」
「で、ですから」
女の子の押しに男の方が若干たじろいでいた。
何故、こうなったのかというと、それは数日前にさかのぼる。
「そう言えばもうすぐ、一夏と簪ちゃん、本音ちゃんは臨海学校よね?」
ふと、楯無が思い出した様に生徒会室で仕事中に三人に尋ねた。
臨海学校――――――通常の学校ならば楽しい行事だけのものなのだがIS学園は一味違う。
初日は自由なものの、残りの2日間はまるで地獄にいるような辛さが待っている―――――
というのが上級生たちの感想である。
実際に上級生の中で臨海学校後に体重計に乗ってみると数キロやせたとういう噂もある。
「わたくしは臨海学校は辞退しようかと思っております」
「え~なんで~?」
「まあ……その……体力的にといいますか」
本音の緩い質問に一夏は苦笑いを浮かべながらそう答えた。
「今回は行ってみたらどう?」
「え?」
楯無の急な提案に一夏は驚きの余り後に言葉が続かなかった。
「一夏は修学旅行にだって行けてないんだし。少しでも
思い出を作りなさい。生徒会長命令ね♪」
楯無の満面の笑みに一夏は一瞬、ポケッとした後、
少し表情を赤くして笑いながら答えた。
「ま、まあ。お譲様がそう仰るなら」
「でも、一夏って水着とか持ってたっけ?」
簪の質問に一夏は、しばし考えてすぐに答えを見つけた。
「そう言えば、一着もありません」
「っ! だったら私と一緒に行こう!」
という訳で一夏と買い物に行くことになった楯無は前日の晩、
8時に就寝し、翌朝の5時に目を覚まして準備をし始めた。
まずは下着から入り、次に服を選び次に化粧を軽くするという順番だった。
下着はまあ決まった。
いつもよりも可愛いものを選んだのだが服はそういかなかった。
一応持っている服は全部出してきたがあれも良いしこれも良いしという
悪循環に入ってしまいなかなか決められなかった。
おかげで楯無の部屋は服だらけである。
「ど、どうしよう。服が決まらない」
するとタイミングを合わせたかのように虚が入ってきた。
「お譲様、服でお困りでしたら私に任せて下さい」
「虚ちゃん……でも、虚ちゃんも一夏が」
楯無も、虚も一夏の事が好きであり、2人は親友でもあり恋敵でもあった。
「私は……見事散りました」
「え?」
虚の言った事に楯無はあっけにとられてしまった。
「さあ! 服を準備しましょう!」
準備ができていた一夏はひと先ず楯無の部屋に行ったが
まだできていないという事で先に校門の前で待っていることにした。
「暑くなってきましたね~」
ここに入学した当初は温かかったが今は暑いと言った方があっていた。
「お、お待たせ……一夏」
「はい、じゃあ行きましょう。楯無様」
「あ、あの! い、今は様づけじゃなくていいから…昔みたいに呼んで」
楯無は相当恥ずかしいのか被っている帽子の鍔で赤くなった顔を隠していた。
その仕草が可愛いのなんの。
おかげで一夏は胸キュンしまくり。
「はい、分かりました……氷ちゃん、行こうか」
楯無の名を襲名する前の本当の名前は更識氷菓。
2人は顔を赤くしながら水着を買いに向かった。
二人が来たのは駅前にあるいくつものお店が入っているビルで
休みの日などは多くのお客でにぎわっておりまた、IS学園から
近いという事もありIS学園生からは好評だった。
ひと先ず、二人は本題の水着を買いに服屋のある階にまで向かった。
「な、なあ氷ちゃん」
「ん~? なに?」
「確か俺の水着を買いに来たんだよな? なんで俺は
今、氷ちゃんの水着をこんなに持ってるのかな?」
今回の目的は一夏の水着を買うというのだったのだが彼の水着を買い終わると
楯無も少し見たいという事で回ったのだが今度は試着したいと言いだし今に至る。
そして気にいったのが見つかったのか楯無はその水着を清算した。
「去年も買ってなかったっけ?」
「うん、まあきつくなっちゃって」
「太ったの?」
それを言った瞬間、楯無は本気で一夏の足を踏みにじり
一夏の腕の皮だけをつまんでちねり始めた。
これがまた痛い。
「ひぃ! い、痛い!」
「ふん! 一夏はデリカシーがないところが弱点よね」
「失敬な、これでもデリカシーは充分持っています」
「……」
「な、何ですかその視線」
楯無はジトーっと一夏を睨んでいた。
一夏のデリカシーの無さは今始まったことではない。
更識家にはあまり男はいない。
という訳で楯無や簪が不機嫌だったり調子が悪かったりする日に
生理ですか? とオブラートに包むことすらせずに直球どストレートに聞くのが彼である。
「あ、神門君と更識さんじゃないですか~」
「あ、山田先生」
前から千冬と麻耶が二人揃って歩いて来ていた。
「更識さんも水着を?」
「はい、去年のはきつくなっちゃって」
「分かります。私もこの年なのにまだ大きくなっちゃって」
一夏はすぐさまその場を気づかれないように去った。
さすがにガールズトークに口を挟む一夏ではない。
「……神門」
「何ですか、織斑先生。貴方もあそこに入ってきたら如何ですか?」
先程とは違い非常にとげのある口調で一夏は千冬と話し始めた。
彼は無意識のうちに千冬と話すときはとげのある言い方になっていた。
真夏に関しては普段の丁寧語が崩れるほど。
「元気か?」
「ええ、元気ですが……あなたには関係ないことです。
終わったみたいなので失礼します」
「あっ……一夏」
千冬は一夏に手を伸ばしかけたがすぐにその手を引っ込めた。
麻耶が千冬の所に戻ってきたときとても悲しそうな表情をしていたという。
場面は変わり、真夏とシャルは一夏達が来るよりも少し早く
水着を買い終わりその辺をぶらぶらしていた。
「暑いね~」
「確かに、今日の気温は今年で一番
高いらしいよ。これも温暖化のせいかな」
「温暖化ってなんでなるんだろうね」
シャルがそう言うと真夏はすらすらと説明し始めた。
「温暖化っていうのは僕たち人間による化石燃料の使用が
温暖化の主因て言われてて産業革命以降からどっと増加したって言われてる。
そして二酸化炭素やメタンなどの温室効果ガスが太陽から流入する可視光の
日射エネルギーを透過させて地表面を暖め」
「も、もう良いよ真夏」
「駄目だよ。僕の話は全部聞かないと。地表から放射される波長の長い
赤外線を吸収しやすい性質を有している。ちなみにこの効果を温室効果っていう。
そのため温室効果ガスが増加すると、地球に入る太陽放射エネルギーと
地球から出る地球放射エネルギーとのバランスが崩れ、
バランスが取れるようになるまで気温が上昇し、地球温暖化が進むと考えられているんだ」
「へ、へ~」
{ま、真夏って自慢したいのかな?}
シャルは一度そう考えたが真夏の笑っている顔を
見るとすぐにその考えは違うと思い始めた。
彼がそんな事をするはずがない、彼は強くて優しくて
自分を救ってくれた王子様だから。
視点は変わり一夏視点。
「ちょ! 氷ちゃん!」
「そらそら!」
一夏と楯無(ひょうか)は只今絶賛、プールで遊んでいた。
水着を買いデパートを出る時に抽選会をやっているという事で
それに参加すると一等ではなかったが三等の近くのプールの
一日無料券が当たりちょうど水着も買ったので行こうという事になり
今に至る。
「はははは! 楽しいわね!」
「はぁ、はぁ。こっちは死にかけたよ」
一夏の目にはいつものように凛々しくしている楯無ではなく年相応の
女の子の表情をしている楯無の姿が映っておりいつもよりも何倍も可愛く見えた。
それに楯無は成長が著しくスタイル抜群なのでついじっと見つめてしまう。
「そ、そんなに見ないで。恥ずかしいよ」
楯無は顔を赤くして腕で体を抱くような仕草をすると一夏も慌てて視線を外した。
「あ! ご、ごめん!」
このように初々しいカップルのように遊びながら二人は
学園の門限の一時間前になるまで遊んだ。
「ねえ、一夏」
「なに?」
2人はすっかり夕焼けに包まれた中を歩いていた。
「昔約束したこと覚えてる?」
「昔? ……分からない」
「……そう…」
楯無は少し顔を赤くさせて一夏を後ろから
腰に手をまわし抱きしめた。
「ひょ、氷ちゃ」
「……好き」
「っ!」
「もし……もしも約束を思い出したら……この返事を私に下さい」
「……」
それから二人は一言も話さず学園に戻った。
こんにちわ!
もうあと二か月も経てば公募が始まるよー!(泣)