インフィニットストラトス 光の英雄、闇の英雄   作:kue

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第二十五話

「真夏、ちょっとこい」

「何? 姉さん」

夏季休暇という事で久しぶりに帰ってきている千冬は専用機持ち達と楽しそうに話している

真夏を少しだけ借りて彼女たちには聞こえない距離まで離れると腕を組んで壁に

少しもたれかかり話をし始めた。

「ああ、実はなお前の兄である一夏と今月中に話をすることになった。

お前とあいつとの一対一だ。異論は認めんぞ」

「……分かったよ。それだけ?」

「最後だ。真夏、この世の中はなお前や束がやっている

計算では全てを予測することは不可能だ」

「そんな事はない。僕が計算で出した答えは完ぺきなんだ。間違っているはずがない」

「はぁ~……真夏、そう言うのを世間一般ではなんて言うか知ってるか?

唯我独尊、自己中心的、自意識過剰というんだ。じゃあな」

そう言って千冬はスーツのまま再び仕事へと出かけていった。

「……僕が唯我独尊?」

玄関には真夏の小さな声が響いていた。

 

 

 

 

 

 

そして場所は再び変わり

あの激戦の臨海学校から帰ってきた一夏は非常にドキドキしていた。

隣には同じくドキドキした青色の髪をした少女、楯無がいた。

臨海学校も無事に終わり帰ってきた一夏はすぐさま楯無とデートを取り付けた。

そして今は横に楯無がいるのだが二人の間に会話はほとんどなく二人とも

暑いせいもあるが恥ずかしいという感情で顔がほんのり赤くなっていた。

隣同士で並んで歩いているので時折、手がぶつかるのだがそのたびに一夏と楯無は

ビクッと肩を震わせていた。

「……ひょ、氷ちゃん」

「な、何? 一夏」

「えっと……そ、その……」

いつもなら話すことは山ほど出るのだが今回ばかりは頭の中がごちゃごちゃに

なっており、いくら落ち着こうとしても余計に慌てふためき話題が出なかった。

「きょ、今日は暑いね」

「う、うん」

(うわー! 俺の馬鹿! そんなもん夏だから当たり前だろ!)

一夏は先程の会話に心の中で激しく後悔していたがそれは楯無も一緒だった。

(うわー! 私の馬鹿! 何であんなにそっけなく返すのよ!)

 

 

2人がドギマギしながら歩いているのを三つの影が隠れて眺めていた。

「……あの態度から見て一夏はもうお姉ちゃんが

好きだって気付いたっていう考えなんだけど本音と虚さんはどう思う?」

「「同感」」

簪と本音、それに虚までもが楯無達の後を追っていた。

「これは追いかける価値があると私は思いますが……どう思われますか虚隊長」

「勿論、行きますよ簪隊員」

「レッツラゴ~」

「イエェェ~!」

「「……てか貴方誰!?」」

三人のどれの声でもない女性の声が聞こえたので振り返るとそこには

簪と一夏の担任と副担任でもある柊とアリシアがいた。

「皆さんこんにちわ。四組の副担任と担任です」

「あ、こんにちわ」

柊が丁寧にお辞儀をしたので虚も丁寧に深々とお辞儀をし返した。

「今、どのような状況なのです?」

「ええ、実は一夏さんと会長がデートをしてるんです。それを追跡していると言いますか」

「むふふふ、このエロゲーの様な展開を放ってはおけぬな! 皆のもの行くぞよ!」

こうして新たに2人のメンバーを加えて追跡隊が結成された。

 

 

 

一夏と楯無が向かった先は今、人気急上昇中のアトラクションパーク。

その名もエンジョイパーク、もう少し良い名前がないものかと思ってしまう

ほど微妙な名前だが中に入れば一目瞭然。

数多くのアトラクションにレストランやお土産屋さん、さらにその敷地内には

映画館やプールまであるという夢のような場所だった。

払って中に入ると夏季休暇ということもあり家族連れやカップルでにぎわっていた。

「結構多いんだね」

「うん、ここは去年に開園されてから経営は

ずっと黒字だからね。じゃ、俺たちも行こうか」

「うん!」

ひとまず2人が最初に向かったのはコーヒーカップなるものを

くるくる回して回りまくるあれである。

「それではお楽しみください~」

スタッフさんがそう言うとともにカップが回転し始めた。

「それにしても二人でこんな所に来るのは久しぶりね、一夏」

「え、あ、うん。そうだね」

「「あ」」

2人はもう少し回転をあげようと真ん中にある奴を回そうとすると

2人の手が重なった。

「っ! ご、ごめん!」

「ま、待って!」

一夏が慌てて重なった手を離そうとすると楯無はその手を強く握って

離そうとしなかった。

「こ、このまま……一緒にまわそ」

「で、でも」

「ダメ……かな?」

楯無は頬を少し赤くし、さらに少し涙で潤んだ目で上目づかいで一夏を

見つめると一夏も断るに断れなくなりそのまま手を重ねてまわした。

 

 

「むっひょー! いいねいいね! 今のあの二人のフラグ構築率は

7割を超えちゃってるよーー!」

「ア、アリシア先生! そんな大声出しちゃばれますよ!」

大声をあげて興奮するアリシアを簪は慌てて止めるが

既に遅く周りからは変な目で見られていた。

 

 

 

次に2人が向かったアトラクションはジェットコースター。

しかし……

「こ、これに乗るの? 氷ちゃん」

「うん、そうだけど……もしかして嫌い?」

実を言うと一夏はジェットコースターみたいに激しい乗り物は苦手である。

「う、うん……まあ」

「……行きましょう! ぜひ行こう!」

「ちょ! ひょ、氷ちゃん!」

それを聞いた楯無はSのスイッチが入り嫌がる一夏の手を無理やり

引っ張ってジェットコースターへと連れていった。

 

 

 

 

「え、えっと……ごめんね?」

たった今ジェットコースターを乗り終えたのだが今の一夏の具合は

最悪と言っても過言ではなかった。

並んでいる時で既に顔は真っ青、額からは異常なほどの汗が吹き出し

膝は大笑いを通り越して大爆笑をし出していた。

そして、座席に座った途端に限界突破したのか妙にニコニコと笑っていて

氷菓との会話も弾みまくったのだが動いた瞬間、大仏の様に動かなくなり

頂上から落ちていった瞬間、誰よりも叫び声を腹の底から吐き出した。

そして現在に至る。

「もう二度とジェットコースターは乗らない」

「わ、分かってるわよ。さ、次に行きましょ」

氷菓は一夏の手を取り次のアトラクションに向かっていった。

 

 

 

その光景を影から見ていた団体がいた。

「むっほーー! ねえ見た見た!? コーヒーカップでは手が

合わさっただけで赤くなってた楯無ちゃんが無意識のうちに彼の手を取っちゃったよー!」

「ちょ! アリシア先生! 静かにしてください!」

「かんちゃ~ん。もう諦めようよ~」

「ふーふーふー! 私の推測では2人の距離はもうあとわずか!

このまま王道中の王道の観覧車に乗って頂上でチューだもんねー!」

辺りの人々はアリシアの事を白い目で見ており小さい子供を持つ親御さんは

その子の目を隠してダッシュでその場から走り去っていった。

 

 

 

「ん~楽しかった!」

「そうだね……」

そう言っているのとは裏腹に一夏の表情はあまり芳しくなかった。

「どうかしたの? 一夏」

「……俺だけこんな幸せになっていいのかなって思って」

それを聞いた瞬間に楯無は一夏のトラウマになっていることを思い出した。

あの一件から一夏は自分の幸せよりも他人の幸せを優先し、また困っている人がいるならば

例え自分に被害が被ろうとも助けようとするようになった。

いわゆる自己犠牲であるのだが度が過ぎていた。

例をあげれば一夏が中学生の頃周りの同級生の頼みを聞きすぎて

良いように動いてくれるパシリになっていた。

「一夏、最後にあれ乗りましょ」

氷菓が指さしたのは観覧車だった。

 

 

 

「うわぁぁぁぁ~、結構高いわね~」

「……うん」

先ほどよりも一夏のテンションはがた落ちで表情もあんまり楽しそうな感じではなかった。

「ねえ、一夏」

「何? 氷ちゃん」

すると氷菓はいきなり一夏の頭を自分の胸に押し付けて抱きしめた。

「ちょ! 氷」

「一夏は幸せにならなくちゃいけないの」

氷菓はゆっくりと一夏に話し始めた。

「確かにあの子を助けられなかったのは一夏の責任かもしれないし

そうじゃないのかもしれない。でも、それと一夏が幸せになっては

いけないのは違うわ。むしろ幸せにならなくちゃいけない」

「で、でも俺は」

「一夏はあの子が生きられなかった分だけ生きるの。そして

幸せになれなかった分あなたが幸せにならなきゃあの子も空の上で恨んでるわ」

「でも! でも俺は!」

一夏は大粒の涙をポロポロと流し氷菓の胸を濡らしていった。

「一夏、貴方はあなたの気持に正直になればいいの」

「氷菓……俺は氷菓が好きだ! ずっと好きだった! いつ好きになったかなんて

もう思い出せないけど俺はお前が好きだ!」

「ふふ、私も好きよ一夏」

2人は観覧車が地上に着くまで抱きしめあった。

 

 

 

「ふふふ」

「ん? どうかしたの? 氷ちゃん」

2人は学園までの帰り道を指をからませて、俗に言う

恋人繋ぎをして幸せそうに帰っていた。

「ふふ、嬉しいな~って。ずっと一夏の事が好きだったもん」

「――――――っ!?」

一夏はその言葉を聞いた瞬間に一気に顔を赤くさせた。

意外とうぶな一夏である。

 

 

 

その光景をまたもや変人達が見ていた。

「むっひょー! とうとうフラグが成立して

めでたくくっついちゃったよー! あの初々しいカップルはもう

天然記念物ものだよー!」

「もう何も言わない」

簪は額に手をあてて大きくため息をついた。

こうしてひと夏の恋は無事に実を結び、綺麗な花を咲かせた。




おはようございます! 新年あけましておめでとうございます!
センター試験まであと……二週間と二日ですか……早いものです。
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