僕はずっと成功してきた。
生まれもったこの頭脳で。
小学生の前半には既に束さんが教師になって
高校生の勉強だって出来てたし運動も並み以上は容易にできた。
そんな僕は楽しかった。
僕の周りに皆が集まってきてくれて笑いあえることがうれしかった。
ある日、学校の道徳の授業で先生がこんな事を言っていた。
『やってはいけないことは絶対にしてはいけません』
やってはいけないこと、僕は考えた。
忘れ物をしたことを先生に報告しないこと、テストでカンニングをすること、
スポーツでずるをすることなど色々な事を僕は考えた。
そして実行に移した。そうやって僕は生きてきた。
なのに僕は兄さんらしき人物にボコボコにやられた……まだ、それだけなら良かった。
でも……僕は僕という存在を全否定された気分に陥った。
「気付いたか真夏」
「姉さん」
真夏が目を覚ましたのはすでに夕日が見えている時間帯だった。
「分かったか? この世にはお前よりもすぐれたものを持つ人間がたくさんいる」
「………も」
「何かいったか?」
真夏は何かをぶつぶつつぶやきはじめそれは次第に大きな叫びになっていった。
「姉さんも僕を否定するの!? ねえ! 僕を否定するの!?」
「お、おい真夏落ち着け」
「もう良い! 僕を否定する奴なんか大嫌いだ!」
真夏は千冬を無理やり医務室から追い出した。
「……一夏に合わせた事は失敗だったのか」
千冬のつぶやきが廊下に小さく木霊した。
箒は実家に戻り道場で竹刀を振っていた。
しかし、その表情にはいささか別の感情も混ざっていた。
箒はいったん休憩のために竹刀を置き水を一杯飲み干した。
「……真夏……何故だ。昔のお前はどこに行ったんだ」
箒はあの日の真夏に失望、怒り、さまざまな感情が入り乱れていた。
今まで自分が愛していた人物はあの程度の人間だったのか。
昔の真夏は自分が気づいていないだけであんな人格者だったのかと。
箒は数少ない写真が収められているアルバムを引き出しから引っ張り出して
真夏と一緒に撮った写真を眺めてた。
「……ん?」
ふと、箒は写真の中の真夏を見ていて違和感を感じた。
「真夏は確か……左利きだったはず……」
しかし写真に写っている真夏らしき男の子は日傘を右手に持っていた。
「まさか、この写真に写っているのは………神門……なのか?
いや、だが神門は病弱で……待てよ」
徐々に箒の記憶の奥底からぽつぽつと鍵が出てきた。
それはまだISが開発されていない頃だった。
「真夏はどこに行ったんだ?」
小学校1年生の箒はその幼い体にはあり余る長さの竹刀を
持って道場仲間である真夏を探していた。
普段ならば教室にいるのだが今日に限って入れ違いになってしまったらしい。
廊下を歩いているとようやく探している人物が見つかった。
「探したぞ真夏! さ、道場に行くぞ!」
箒は真夏の手を取り道場の方へ引っ張っていこうとするが真夏は
その手を軽く振り払った。
「……だ、誰ですか?」
その表情には明らか恐怖が感じられ小学生にしてはかなりやせ細っていた。
さらにはカバンもランドセルではなくかなりコンパクトなポシェットだった。
「何を言っている、私だ。篠乃ノ箒だ」
「篠乃ノ? ……真夏のお友達?」
「―――――? 何を言っているんだ真夏。さあ、行くぞ」
そのまま箒は手を引っ張って無理やり道場に連れていった。
そして道場につき自分は他の部屋で着替えておくから
待っておいてもらい胴着に着替えて外に出た。
「あ! 箒ちゃん!」
「よし、お前も準備ができているな!?」
「うん!」
「始めるぞ!」
「そうだ……私が道場に連れてきたのは神門だったんだ。
あの二人は双子、顔も同じだから気がつかなかったんだ」
今まで抜けていたピースがはまり心の中で何かがすっと抜け落ちた感じがした。
徐々に真夏の周りにいた者達が消えていく。
「ん~ねえ、弾」
「あ? なんだよ」
鈴は偶然出会った男友達の弾とぷらぷら歩いていた。
「あんたさ真夏に双子の兄貴がいたって知ってる?」
「は、はぁ!? あ、あいつ兄貴がいんのか!?」
弾も初耳だったのかかなり驚いたような表情をしていた。
「うん、その兄貴もISが使えてさ。同じ学園にいるんだけどなんだか
その兄貴の方は記憶喪失らしいのよ」
「へ~。まあ俺はどうでもいいや」
「まあね、あんたはあいつの事苦手だもんね」
「まあな。なんつうかさ、正義が行き過ぎてるんだよな。
まあ、あいつが言ってるのは正しいんだけどさこの世の中
正しいことだけで生きていけねえじゃん?」
「当たり前じゃない! 正しい事を7割、
やんちゃな事を3割してれば人生満開よ」
「でも、そんな奴を好きなのはどこのどいつだよ」
弾は昔の様に鈴が真夏の事を
好きなのをいじろうとするが鈴の顔は余り変わらなかった。
昔ならばすぐに顔を真っ赤にして殴りかかってきたのに。
「ん~それがさ。この前その兄貴と真夏が戦ったのよ」
「どっちが勝ったんだ?」
「断然アニキ。もう真夏はボコボコだったわよ、そんな試合のあとでもさ
真夏は自分の計算がどうとか言ってたの」
「素直に認めろよ」
弾は鈴から聞いた話を頭の中で想像してみたがため息しか出なかった。
「それを聞いたらね、な~んか今まであったものがすっぽりと抜けたのよ」
鈴の表情は真夏に恋をしていたころと変わらないほど透き通った表情をしていた。
「むぅ、ここか」
銀色の髪に少し背が低い少女が生徒会室の前に立っていた。ラウラである。
あの試合を見た日から軍人である自分の血が戦いたいと騒いでいた。
「よし、失礼する」
ラウラが生徒会室に入るとそこに広がっていた光景は
「「………」」
「………失礼した」
楯無と一夏が顔を近づけあって今にもキスしそうな位置にあった。
そんな二人とラウラの目がぱっちりと合って非常に気まずい空気が流れていた。
『ちょっと待って―――――!』
生徒会室を出たラウラを赤くなった二人が慌てて引きとめて中に入れた。
「そ、それで何か用でしょうか!? ラウラさん!」
「うむ、お前と闘いたいのだ」
「え、えっと何故?」
「うむ、先日の真夏とお前の戦いを見てな。
戦いたいと純粋に思ったのだ。ダメか?」
「別に良いですがそれなら織斑の方がよろしいのでは?」
一夏がそう言うとラウラは微妙な表情をした。
「うむ、以前までの私ならそうだろうが何故かな。昨日のあまりに
唯我独尊な奴を見ているとあいつに対する気持ちが薄れているのだ」
「分かりました。お相手をお引き受けいたします」
そう言い一夏とラウラは一緒にアリーナに向かっていった。
「うぅ~あと少しで初めてのキスができたのに~」
「くぅ~おしかったのによー!!」
「氷菓、まだチャンスはある。じっくり行け」
「うん」
そんな黒と白と青の会話があった。
こんにちわ~。
以前にも質問があったのですが……この話の
ようなことはあり得るの? というのはあり得ます。
自分の先輩で双子の方がいらっしゃるのですが……まったく、気づきませんでした。
顔も同じですし、喋り方も同じ……片方しか見たことがない場合は
なお気づくことはありません。
それでは!