この時期のIS学園は非常にガヤガヤしていた。
長かった夏休みも終わり臨海学校の次の目玉行事である学園祭が近づいているのである。
「それじゃあ4組は何をやりますか?」
クラス長である簪が4組の面々に何をしたいか問うと我さきにとばかりに勢いで
いくつもの手が挙がった。
言われる文化祭の案を簪は前の電子ボードに打ち込んでいく。
「神門君の執事喫茶、神門君と10分デート……最初のは
まあ良いとして後のは全部却下だよ」
『え~』
クラスから一斉にブーイングのあらしが巻き起こったが簪は
毅然とした態度でクラスに対応した。
「駄目だよ! ここは間を取って執事メイド喫茶はどうかな?」
「ん~それでいっか」
「そうだね~」
簪の提案に女子生徒たちは賛成し、四組が行うことが決まった。
(簪お嬢様……あんなにご立派になられて! うぅ! 神門感激です!)
「神門君何泣いてるの」
「ぐす! こっちの事情です!」
一夏は簪の成長ぶりに涙を流して感動していた。
「何? 真夏がいないだと?」
放課後千冬は麻耶から真夏が部屋にもどこにもいないことを報告で受けていた。
「一応お家の方も探した方がよろしいでしょうか」
「……私が探しに行く。少しの間抜ける」
「分かりました」
「……僕は一体何なんだ。何のために存在しているんだ」
真夏はフラフラとおぼつかない足取りで街を歩いていた。
その表情は些か生気が少なく見えた。
夏休みでの一夏との模擬戦で何もかもを粉砕され生きる糧すら
粉砕されてしまった。
今までは自分は天才であり何もかも出来る完壁な人間だと思っていた。
しかし目の前に自らに兄でありまた自らを超えるものが現れた途端に
その自信はあっけなく崩れ去った。
「僕はなんなんだ」
そのまま真夏はフラフラと街中を歩いていった。
一方その頃、幸せ絶頂の氷菓はというと。
「はぁ~一夏に会いたい」
「399回目」
「会いたいよ~一夏~」
「400回目。おめでとう、これでたっちゃんは400回アニバーサリーを迎えたよ」
同室者である薫子は数を数えながら自らが所属している新聞部の書類を
整理していた。その中には一夏の写真も含まれていたのでこれを見せれば
少しは収まるかと思ったが逆効果で先ほどよりも短い間隔で同じフレーズを口にしていた。
「楯無、時には制限が必要だ」
「おぉ! シロバットも言う事言うじゃねえか!」
シロバットとクロバットは楯無の頭の上を
宿り木のようにして捕まっていた。
「クロ~シロ~。お願いだから一夏に会わせてよ~」
「駄目だ。今あいつは仕事中だ。それはお前も承知のはずだ」
「そうだけど~。うぅ、一夏に抱きしめられたい」
そう言い氷菓は顔をボフンと枕に押し付けた。
「あ、そうだ。ね、たっちゃん」
「な~に~?」
「最近さ、妙な事が起きてるんだよね」
「妙な事って?」
薫子の話に楯無は顔をあげて耳を傾けた。
「ISを男で操縦できるのは何人でしょう?」
「二人に決まってるじゃない」
「だよね? でも、何故かある生徒は一人だって言うのよ」
「え?」
一人という事は真夏か一夏、どちらかしか知らないという事になるが
そんなことは皆無である。
いまどき2人の名前を知らない人はほとんどいない。
世界中にそういう風に情報が発信されているからである。
「あ、そうそう。他にも雑誌とかでも真夏君の事しか載ってなかったり」
「それはただ単に天才関連じゃないの?」
「それが違うのよ。その雑誌はIS関連の雑誌で優秀な代表や候補生を
紹介してて今は男性IS操縦者の特集をしてるの」
「それって薫子のお姉さんのところ?」
楯無がそう聞くと薫子は首を縦に振って肯定した。
「お姉ちゃんがそんな間違いをするはずないと思うんだけどね~」
「ねえ、クロ、シロ貴方達何か……いない」
楯無が二匹に聞こうと後ろを振り向くがそこには何もいなかった。
「なあ、そろそろやばくねえか?」
夜の校舎に白と黒のコウモリが飛んでいた。
「ああ、そろそろ気づくはずだ」
物語は変化点へと差しかかろうとしている。
なんかそのうち、矛盾が発生しそうな予感です