現在は授業中で教室は静かになっており耳を澄ませば
時計の針が動く音まで聞こえるんじゃないかと思うほど静かだった。
「ISに関する罰則はその国によって違うけど
大元は一緒だからちゃんと覚えといてね~」
ふと、アリシアが壁に掛けられている時計に目をやると
授業が終了する1分前を示していた。
「時間も少ないしそろそろ終わっちゃいましょ~
委員長! ……はまだ決めてなかったけ。じゃあ、次の時間で
委員長決めちゃうからなりたい人は考えておいてね~じゃ、バイビ~」
そう言いチャイムが鳴った瞬間にアリシアは教材を抱えてダッシュで
どこかへと逃げ去るように走っていった。
生徒達は朝の頃のアリシアとは大きく違っている事に
驚きを隠せずにボーっとしていた。
「ふ~終わった」
「お疲れ様ですお嬢様」
授業が終わり一夏は簪のもとへと近づいていった、
「一夏はどうだった? 勉強時間少ないけど」
「はい! 簪様の素晴らしいご指導でもう余裕でございます!」
「は、はは。なら、良いかな。お姉ちゃんのところにはいつ行くの?」
簪がそう言うと一夏はポケットから手帳を取り出し
数ページめくると大きく本日の予定と書かれてるページで止まった。
「そうですね、楯無お嬢様の事もあるので放課後に行くのが妥当かと」
「分かった、じゃあ放課後に行こう」
「承知いたしました、簪様」
「何?」
「委員長に立候補してみてはいかがでしょうか」
それを聞いた簪は呆気にとられたような顔をして
数秒間の間が空いた。
「わ、私は良いよ。私なんかがしたらクラスの
みんなに迷惑がかかっちゃうし」
「そんなことはございません、簪様ほど情報処理能力が
ある人物はこのクラスにはいませんよ」
「じゃ、じゃあそういう一夏が立候補したらどうなの?」
簪は反撃のネタを掴んだのか一夏に逆襲を仕掛けてきた。
「わ、私がですか? 私は残念ながらそういう光が当たる
役職には就けないのですよ」
一夏が言った事に簪は少し疑問が湧いたのだが質問しようとした
途端に、チャイムが鳴ってしまい一夏は自分の席に戻っていた。
その時の一夏の背中は大層小さかったとか。
「はいは~い! 皆~これからクラス代表さんを決めちゃうよ~
クラス代表さんて言うのはね~委員長みたいな感じだよ~
誰かいないかにゃ~? 自薦、他薦なんでもカモーンだよ!」
アリシアは先程とは比べ物にならないハイテンションで
クラス全員に聞いていると一人の女子生徒が手を挙げた。
「はい! 神門君を推薦しちゃいます!」
「あ、私も!」
まるで連鎖反応のように次々と一夏を推薦する手が挙がっていき
最終的にクラスの半分以上が一夏を推薦してしまった。
「ありゃりゃ~神門君、どうかな」
「え、えっと俺は簪お嬢様を推薦いたします!」
「な! い、一夏!」
自分が推薦されるとは思っていなかった簪が立ちあがりながら一夏に
反論しようとするがアリシアがその間に割り込んできた。
「ふんふん、二人出ちゃったか~こういう場合は
どうしようか美晴ちゃんはどうする?」
教室の後ろで待機していた美晴がアリシアに話題を振られ
一瞬、焦ったもののいつものクールさに戻り答えた。
「こういう場合は模擬戦を行い決めた方がよいかと」
「うんうん! だよねだよね! てことで二人には戦ってもらいまーす!」
こうして来週の土曜日の正午からアリーナで戦うこととなった。
一組でもそうした模擬戦が行われるらしいが四組の前に
行われるらしい。
そして授業が全て終わり放課後になると一夏と簪は楯無のもとへと向かっていた。
「あ~もうなんで一夏は私を推薦するかな~」
「良いではありませんか。簪お嬢様も一度はこういう
経験が必要でございますよ」
「は~私はゆったりと過ごしたかったのに」
そう言い合いながら二人は生徒会室と書かれた部屋まで
たどり着くと中へと入っていった。
「いらっしゃ~い」
「楯無お嬢様!」
一夏は楯無の顔を見るや否やダッシュで近づき楯無に膝まづいた。
「ご挨拶が遅れまして申し訳ありません!」
「ふふ、仕方がないわよ。授業があったわけだし一度
部屋に戻ってからここまで来たんだから時間がかかってもおかしくないわ」
「楯無お嬢様」
一夏は楯無の器の大きさに感涙の涙を浮かべていた。
「それとここではお嬢様と呼ばないでね♪」
「はい! 楯無会長様!」
楯無はあんまり変わってないようなと思ったがまあいいと思い
二人を開いている席に座らせると話を始めた。
「ひとまず二人とも入学おめでと。まさか全員が同じ学校に
入るとは思ってなかったけど、まあ良いわ。という事で
簪ちゃんと一夏にはそれぞれ役員になってもらいたいんだけどいいかしら?」
「わたくしは構いません!」
「まあ、偶にでいいなら私も」
「ふふ、良かった。じゃあ、簪ちゃんが会計で
一夏が副会長ね。という訳で今日はパーティーよ!虚ちゃん!」
楯無が虚を呼ぶと虚はおもむろに立ち上がると備え付けられている
冷蔵庫からショートケーキを取り出し全員に配りオレンジジュースを
コップに注ぎ全員に渡した。
「皆、今年は大変だと思うけど頑張って
いきましょう!じゃあ、カンパーーイ!」
『カンパーーーイ!』
楯無の乾杯の声とともにパーティーが始まった。
楽しかったパーティーも終了し今は虚と一夏で後片付けをしていた。
外はすでに真っ暗で夕食時でもあった。
「楽しかったですか?一夏さん」
「ええ、久しぶりに肩の力が抜けました」
「そうですか……一夏さんは」
「はい?」
いつもとは違う低い声音の虚に疑問を感じた一夏は彼女の方を向いた。
「一夏さんは今も会長の事を想ってらっしゃるのですか?」
虚のいきなりの質問に一夏は一瞬、戸惑ったが今、自分が
思っていることをそのまま話した。
「はい。わたくしは楯無様の事を想ってます」
「……すか」
「え?」
「私では駄目なのですか!?」
いきなり虚は大声を出して一夏に叫び出したかと思うと
大粒の涙を流しながら一夏に抱きついてきた。
「虚さん?」
「私では駄目なのですか!?私は貴方と初めて会った日から
今日の今まで好きなんです!」
「……虚さん」
「私じゃ……駄目ですか?」
「……ごめんなさい、私が愛しているのは楯無様ですから」
一夏の返事を聞き、虚は悲しみに満ちた表情を一瞬だけ浮かべるが
すぐにその表情を奥へと押し込めた。
「…………そうですか……すいません、みっともないところを見せて」
「いえ、さあ片づけましょうか」
一夏が片づけの続きに取り掛かろうとすると虚が
一夏の手を引きドアの前まで引っ張った。
「後は私がします」
「え、でも」
「お願いです……私を一人にさせて下さい」
「………はい」
一夏は何かを悟った後そのまま生徒会室から去っていった。
そこに残っていたものは虚のすすり泣く声だけだった。
連続です。