インフィニットストラトス 光の英雄、闇の英雄   作:kue

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第四十二話

束が開発した最強のISがマドカによって盗まれてから数日が経ったある日、

真夏は学園の医務室に監視という名目のもと束の見舞いに来ていた。

実際は別の教員がその任に付く予定だったのだが千冬の進言と楯無の

協力もあり、学園長直々の指令ということで真夏が任についた。

無論、二人で駆け落ちにも似た逃走をするんじゃないかということから監視の監視までも

付けられかけたのだが千冬にそれがバレてしまい、その計画自体がなくなった。

「や、束。元気?」

「……うん」

真夏は見舞い用に持ってきた花を花瓶に入れながら束に話しかけるが

束は気まずそうに布団のくるまっていた。

逆に真夏は普段どおりの感じだった。

花を入れ終わった真夏は束が横になっているベッドの近くにイスを置いて

近くに座った。

「……まっ君」

「ん? どうしたの?」

「…………ご」

「僕に対しての謝りの言葉はもう良いよ」

真夏は顔を出している束の口に人差し指をおいて、それ以上の言葉を

口から出させなかった。

「姉さんも見たことがないくらいに怒っていたよ。今すぐにでも

突撃してくるくらいにね……でも、姉さんは待っているよ。

束の謝りの言葉。傷が治ったらまずは姉さんに謝りに行こう」

「うぅ……ちーちゃんにボコボコにされる」

「それは束の自業自得としか言いようがないよ。ボコボコにされるくらいまで

のことを束はしちゃったんだから…………ただ、謝らないのと謝るのとでは

違うよ。ボコボコにされるっていうことは変わらないけど」

真夏はそう言って束の頭を軽く撫でてから病室を出た。

実際に束の話を聞かされた千冬はすぐにでも束を殴りに行こうとしたのだが

一年生の専用機持ちと楯無の力を総動員してどうにかして止めた。

そして、真夏は束の傷が癒えてから話しの場を設けることを

約束させ、なんとか千冬には下がって貰った。

「ふぅ……でも、重大なのはそれじゃないんだよね」

束以上に重大なことがあった―――――兄に関することだった。

既に二、三年の生徒の頭の中からは一夏の記憶は抜け落ちており、一年生も

楯無、真夏、千冬、束、そして彼の義理の両親だけが記憶を持っている状態だった。

もしも、あと一回でも一夏がメモリーを利用すれば確実に楯無の記憶は消える。

それを受けて授業中のISの起動に関しても一夏は専用機は使わず、

打鉄などを使う措置を取っていた。

無論、四組の疑念は吹き出てきたがそこはメモリーの点検と

言うことで抑えつけてあるがそれがバレるのも時間の問題。

さらにいつ、束が制作した最強のISとやらが真夏達に再び牙を

向くかも分からない状況にある。

「…………ほんと、織斑の家族は波乱万丈な一族だよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「へぇ~。これが最強のISね~……まったくISには見えないんだけど」

「これを使えば兄さんは私のものだ」

スコールは相も変わらずであるマドカのブラコンっぷりに大きくため息をついた。

兄以外はゴミくずであると考えているマドカは仲間を一切考慮していない。

つい先日の学園襲撃でもオータムに重傷をあわせた。

彼女いわく、『ゴミを掃除して何が悪い』ということらしい。

「スコール、そっちの準備は大丈夫なんだろうな」

「もちろん。この計画のために水面下で家無しの子供とかを連れて来て

兵士に仕立て上げたわけだしさ。おかげで地上部隊の数は凄いことになっているわ」

「こいつは私が使う。そして兄さんを救ってみせる」

「はいはい。それと並行してIS学園の破壊もキチンとしてよ?

あそこには打鉄だとかリヴァイブとかのISがいっぱいあるんだから」

「もちろんだ」

「まあ、問題は学園の教師よね」

IS学園の教師は何もただの教師ではない。

通常の教科を教えることができるほかに彼女たちは各国の国の代表候補であり、

中には代表としてヴァルキリーの称号を手にしたことがある人材だっている。

そいつらにISの機能による差はあまり通用しない。

彼女たちにとってすればISは共通して兵器であるのだから。

「貴様なら掃討できるはずだろ」

「そううまく行くとも思わないのよね~。ヴァルキリーでも数が増えれば

面倒なことになるだろうし、ブリュンヒルデなんかが出てきたらもう

お手上げよ。あいつは本物の怪物なんだから」

「それに対抗出来る怪物がこいつだ。これで兄さんを救いだし、

姉さんを倒し、織斑の残りくずを殺す」

「ブリュンヒルデが最初に出てきたらどうするのよ」

スコールがそう言うとマドカはポケットから中央にボタンが一つある

物を取り出し、すコールに見せた。

「これで学園を破壊すればいい。その為にこの前の襲撃事件に

乗じて侵入したんだ」

ゴーレム数体が侵入してきたときにマドカは学園が所有しているISが

保管されている場所、他にも学園のシステムなどにダメージを与えるように

小型の爆弾をいくつも設置していた。

「でも、今向こうには二人も天才がいるのよ?」

「大丈夫さ。ウサギは今は療養中、織斑のクズはほぼ毎日その傍にいる。

バレやしないさ…………さて、兄さんの奇跡の救出劇まであと一日だ」

「そうね……ていうか、あんたがいつも兄さん兄さんって言っているのって誰?」

「少なくともお前の記憶にある奴じゃない。もう貴様の記憶にはない」

そう言い、マドカはスコールを放置して用意されている自室へと戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日のIS学園は普段通りの時間を消費していた。

生徒達は朝早くに起き、今日もあのしんどさが待っているのかと考えると同時に

学園を卒業した後の華やかな未来のためにと気合を入れ、友人とともに

朝食を食べる。

そして、身だしなみを整えた後は教室へと向かい自分よりも先に教室にいる

友人のもとへと向かい、始業のチャイムが鳴るまで喋りつくす。

そして、教師が来ればピタッと喋りをやめ、その教師が話している

言葉を一言一句、聞き逃すまいと必死にノート、もしくは教材に

ペンを走らせていく。そして、授業が終われば肩の力を抜き、

また授業を受け、昼御飯を食べて放課後まで頑張る……そんな時間を

送るはずだった。

しかし、この学園にいる誰もが気付いていない。

打鉄、リヴァイブなどの授業で扱うIS保管倉庫に大量の爆弾が取り付けられていることを。

そしてアリーナ、整備室に大量に仕掛けられていることを。

“通常”という繭を破り、その中から“異常”という生体が繭の周囲にある

普段通りの生活をしている存在を喰らい尽くすまで残り――――――――五秒。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日、真夏と箒は久しぶりにということで箒の実家にある道場で

竹刀を振るっていた。

防具の中で汗をひとしきり出したあと彼らは休息を取るために外へ

出て、風に当たっていた。

月はもう十月。暑さも徐々に身をひそめ、過ごしやすい気候が多くなってきていた。

「もう十月か」

「そうだな。やはり、学園にいると時間が早く進んだ気がする」

「まあ、今年は特別に色々とあったしね」

真夏が手に持ったコップのお茶を飲み干そうとした瞬間!

耳に鈍痛を残すほどの爆音が向こうの方から響き、モクモクと黒煙が

空に昇っているのが見えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日、シャルとラウラは秋物の服を買いに学園の近くにある

デパートまで足を運んでいた。

ラウラの持っている服があまりに少なすぎるためということもあったが、

シャルも秋物の服が欲しかった。

「かなり買ったな」

「そうだね……ラウラ?」

「少し持っていてくれ」

そう言い、ラウラはシャルに荷物を預けるとスタスタと歩いていき、シャルの

位置からは見えない影に行き、数秒経った後に人間を引きずって戻ってきた。

シャルは最初はラウラを怒りそうになったがその引きずっている人物を

見て、口を閉じた。

「これって」

「あぁ……どこかの軍所属では」

そこまで言いかけた時、突然大きな揺れがデパート全体を襲うと同時に

銃声の音と人の悲鳴、そして黒煙が空に昇っているのが見えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

突然の爆音を聞いたセシリアは学園を走り回り、一般生徒の避難を行っていた。

「なんですのいったい、ケホッ……」

セシリアが咳きこんだときに背中にいくつかの銃を感じた。

「そこまでだぜ、お譲ちゃん。悪いけど俺たちに」

男性が言い終わるよりも早くにセシリアはブルーティアーズを展開させ、

方法は荒いが侵入者と思わしき銃を持った男性五人を拘束した。

「貴方達はなんですの?」

「……答えると思げぼっ!」

答えないと知ったセシリアは男性の鳩尾にISを装備したままの

拳を叩きつけて、意識を刈り取った。

セシリアはすぐさま男性達の装備を取り払っていくがめぼしい情報は

余り、入手できなかった。

「軍人ではないですわね……というよりも軍人は背中に直接、

銃口はつけませんわね……とりあえず、会長と合流しましょう」

セシリアは男性を全員担いで、火を吹いている場所へと突っ込んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おぉ~。なかなかいい景色ね」

スコールとマドカは各々のISを装備した状態で学園から少し離れた

ビルの屋上から様子を見ていた。

「そろそろ教師も動くんじゃない?」

「安心しろ。職員室にもしかけてある」

それを聞いたスコールはヒューっと口笛を吹いた。

「さあ、宴の始まりだ」

太陽を背に、十本のアームが道路に影を作った。




最終章に入りました! さて、気合い入れて書くか!
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