生徒達の悲鳴が木霊する学園。続けざまに爆音を上げていくせいで
逃げ惑っている生徒達が爆発時の爆風で吹き飛ばされ、壁に当たっていき
次々と気を失っていく。
そんな中、千冬は一人、そんな状況の生徒達を抱えて外へと運び出していた。
さっき、職員室に向かったと千冬の前に会ったのは今までに見たことがない
ほどひどい惨劇だった。
職員室に集まっていたのは全員ではないことからまだ、生きている教師が
生徒達の避難誘導をしていることを祈っていた。
「ケホッ! クソっ!」
千冬が毒づきながら校舎へ入ろうとした瞬間、目の前にISを纏った女性が
千冬の進路をふさぐ形で上空から降りてきた。
「ハロ~。織斑千冬。どう? あの子が準備した宴は?」
「貴様ら……こんなことをしてただで済むと思うのか?」
「思っているわ。既に学園が所有しているISはほとんどが大きなダメージを受け、
動かすことができない状況。例え怪物と称される貴方でもISには勝つことはできない!」
スコールが腕を振り下ろそうとした瞬間! 千冬の死角から耳をつんざくほどの
音を響かせながら白い鎧を身に纏った人物が凄まじい速度で千冬の目の前にいた
女性の脇腹に蹴りを入れ、そのまま蹴り飛ばした。
「姉さん! 大丈夫!?」
「真夏!」
「さっき、連絡を聞いたらシャルとラウラはショッピングモールで
あやしい人物を片っ端から拘束中。セシリアは会長と合流。箒も
すぐにここに来るよ! あ、あとこれ!」
そう言うと真夏は両手に持っていた消化器を千冬に渡した。
「黒煙が上がってたから念のために持ってきたんだ」
「へえ、あなたが私の相手なのね」
その声を聞き、千冬と真夏がその方向を振り向くと瓦礫を退かせながら
スコールが二人を睨みつけていた。
「そう言えばこの前の決闘。まだ、決着付いてないよね。
今、ここで決着をつけようか……姉さん。市街地での戦い、今回だけ
許して。絶対に一般の人には攻撃はさせない」
「……信じるぞ」
そう言い、千冬は手に消火器を持って燃えている校舎の中でまだ生徒がいるかを
確認するために校舎に入っていった。
それを確認した真夏は雪片弐型を手元に呼び出した。
スコールもそれと同時に手元に長刀を呼び出した。
そして同時に駆け出し、同時に己の得物を叩きつけた!
「学園の皆を傷つけた罪は重い!」
真夏がスコールに蹴りを入れると同時にスコールも真夏の腹部に蹴りを入れ、
二人とも軽く吹き飛ぶが真夏は空中で体勢を整えると同時に雪羅のカノンモードで
生み出した球体を目の前に浮かばせてスコールめがけて蹴り飛ばす。
しかし、スコールはシールドを目の前に展開させてそれを防ぐと瞬時加速で
一気に真夏へと近づく。
それを真夏は予測していたのか冷静に雪片弐型をスコールめがけて振り下ろすと
金属音とともに長刀を持ったスコールが姿を現した。
二人は同時に宙へと浮かび、己の武器を振るい続ける。
金属音と火花を散らせながら二人は戦いの場所を空中へと変えて、
偶然か、それとも狙ってなのかは分からないが彼らがいる場所へと
近づいていった。
その頃、一夏の目の前ではにわかに信じがたい光景が広がっていた。
十本のアームを持ったISが指から細いレーザーを出しながら周囲のビルを切断し、
さらには車をアームで持ち上げ、人が大量にいる場所へと投げていた。
「な、何やってんだ……何やってんだ!」
「あ、兄さん」
一夏の怒号で後ろを振り返ったマドカは小さな笑みをこぼし、一夏を見ながらも
周囲の建物の破壊をやめようとはしなかった。
「だから止めろって!」
「何を?」
「町を破壊するのをだ!」
「何言ってんの? 兄さん。この世界はいらないよ……今は大掃除中なんだ」
満面の笑みを浮かべながら破壊を止めないマドカを見て、一夏は背筋に
嫌な何かが通り過ぎたのを感じた。
自分の中にもあんな遺伝子が入っているのかと思うと怖かった。
「クロバット……クロバット!」
「あいあもがぁ!」
突然、クロバットのそんな声が聞こえ、慌てて振り返るとそこにはクロバットを
両手で抑えつけている楯無が今にも泣きそうな表情で立っていた。
さらにさっきまで向いていた方向に爆音が鳴り響き、振り返ってみると
鍔迫り合いをしている真夏と文化祭で見た覚えがある女性が巨大なISの
足もとにいた。
「い、一夏は使っちゃダメ! 私が倒すから!」
次、一夏がメモリーを使えば確実に楯無の頭の中から一夏の記憶は
削除されてしまう。
一夏はそっと近づき、楯無の手に自分の手を重ねた。
「氷ちゃん……聞いて。あいつは織斑マドカ」
その名を出すと楯無は驚いたような表情をした。
「あいつを止めないといけないのは……同じ織斑。俺の頭の中には
織斑の時の記憶はないけどこの体の中にある血液は織斑……だから、
行かなきゃならないんだ」
楯無は涙をボロボロと流しながら徐々にクロバットを握り締めていた手の
力を抜いていく。
そして、クロバットが抜けだすと一夏は彼女の手を強く握りしめた。
「氷ちゃん。大好きだよ…………また、僕が君に
告白をしたら付き合ってくれますか?」
「……うん」
楯無はボロボロと落ちていく涙を服の袖でふき取りながらも
一夏の言葉に首を上下に振った。
「クロバット!」
『おうよ!』
一夏はクロバットを手に取り、メモリーを展開させ、上空に浮かんだ時に
ふと楯無が自分に手のさしのばしているのが見え、一瞬心が揺らいだが
すぐさま目を離し、マドカのもとへと向かう。
「マドカ……場所を変えるぞ」
「良いよ、兄さん」
そう言い、マドカが空へと飛び出したときに一夏の背後に真夏が
吹き飛んできて、背中合わせになった。
「イタタ……まだ、覚えているよ。兄さん」
「そうか……真夏」
「え?」
「死ぬなよ」
そう言い残し、一夏はマドカが向かった場所へと急いで向かった。
「……もちろんだよ、兄さん」
(一夏一夏一夏一……あれ? さっきまで私、何を言っていたんだっけ? なんで、
私空に向かって手を伸ばしているの? なんでこんなにも……悲しいの?)
「会長!」
真夏の大声で我を取り戻した楯無はすぐさま、自らのISを展開させて
真夏に加勢しようとするが、再び響いた真夏の大声で立ち止まった。
「会長! この人は僕が倒します! この辺りに銃を持った奴らが
たくさんいるはずなのでそいつらを拘束していって下さい!」
「で、でも」
「良いから!」
「わ、分かったわ!」
楯無は真夏の言っていることに従い、すぐさまその場から離れた。
表世界で永遠に語り継がれるであろう戦いと、誰の頭にも残らず、決して
語り継がれないであろう戦いが始まった。
まさしく、この戦いは―――――――――――。
光の戦いと闇の戦い。
やっべ、今月中に終わらなかったよ。とにかく夏休み中に
完結するように努力するぜ! とりあえず二つほど連投です