「織斑、お前の専用機だがもう少し時間がかかる」
「え? 専用機ですか?」
入学式から数日経った日の朝。
一組では千冬が授業をしていたのだがその途中で突然、千冬が
思い出したかのように真夏に言うと周りの生徒が羨ましがり始めた。
「え? この時期に専用機?」
「良いないいな~私も専用機欲しいな~」
「それでいつくらいに届きますか? 先生」
「恐らく模擬戦前日になるがどうしてだ?」
千冬が真夏に聞くと真夏はさも当然のように言いだした。
「その専用機を自分で整備しておきたいと思って」
すると周りの生徒が一気に驚き始め教室は少し騒がしくなった。
「え!? 織斑君てIS整備できるの!?」
「うん、伊達に天才って呼ばれてないしね。それに束さんから
ISの事、コアの製造法以外聞いちゃったし」
『えぇぇぇーーーー!?』
それを聞いたとたんに女子生徒は一気に騒ぎはじめその叫び声は
一年の全クラスに響き渡ったとからしい。
「静かにしろ!」
千冬の怒号が教室に響き渡り一瞬にして静かになった。
「織斑も余計な事は話すな」
「あ、はい。すみません」
それからは騒ぐこともなく静かに授業が進められた。
「安心しましたわ! 訓練機で戦われてはフェアではないですもの!」
授業が終わり、休み時間にたったとたん金髪ロールの女子生徒が
真夏に突っかかってきた。
「また君か。そんなに専用機がある人は特別なのかい? そういう差別意識を
持つ人を候補生にするだなんてイギリスもどうかしてるね」
「な! また貴方は母国を侮辱しましたわね!」
何故こうなっているかというとクラス代表を決める時に
ほとんどの生徒が真夏を推薦したのだがイギリス代表候補生
であるセシリアがそれに猛抗議をし、
男を根幹から否定するような意見をめちゃくちゃに言うと
真夏がそれにキレ売り言葉に買い言葉で結局こうなってしまった。
「男性という種族を根っから否定した人に
言われたくないね。箒、君もそう思うだろ?」
真夏が箒に話を振ると箒も真夏に賛成した。
「あ、ああ。男性を根っから否定するのは人間として恥だ」
「キーーーーー! 貴方ねえ! それでも篠野ノ博士の妹ですの!?」
「あの人は関係ない!」
セシリアがそう言った瞬間に、箒は血相を変えてセシリアに怒鳴り散らした。
そして、時間は過ぎていき放課後。
一夏と簪は第三アリーナを貸し切り、ISの特訓をしていた。
簪が身に纏っているのは自らの専用機である、打鉄弐式。
純国産ISである打鉄に改良を加え、専用機としてのスペックに
まで引き上げたものが簪の専用機である。
そして、一夏の纏っている物は純国産ISである打鉄だった。
「じゃ、じゃあ始めるよ」
「はい!」
「でも本当に私なんかでいいの? お姉ちゃんの方が」
「いえ、私は簪お嬢様にお願いをしました。今は楯無お嬢様は関係ありません」
「う、うん」
一夏が簪にISを使ったのはまだ数回だから慣れたいとのことで
専用機持ちであり日本代表候補生である簪に鍛錬に付き合ってもらうことにした。
「じゃあひとまず飛行から」
「はい……とと」
「ああダメ。そんなに意識し過ぎちゃダメ、
体が宙に浮くイメージを軽く頭の中でイメージして」
「はい」
一夏は意識しすぎたのか宙に浮いた瞬間に少しよろめいたが
簪のアドバイスにより今度は完全に浮くことができた。
「こんな感じでしょうか」
「う、うん。昔から飲みこみが早いね一夏は」
「勿体なきお言葉でございます」
「じゃあ、次は」
その後も戦闘は行わずにアリーナを広々と使い回避方法や
イグニッションブーストを使っての移動や
急停止、急加速、そして武装のコールなどを続けていった。
そして全部をやり終えると時間はすでにアリーナの使用時間ぎりぎりだったので
2人はすぐに訓練機を片づけ引き揚げた。
「ふ~ん、じゃあ一夏は私じゃなくて簪ちゃんに聞きに
行ったんだ。戦う相手だっていうのに」
鍛錬が終わり、一夏と簪は生徒会室へと行き仕事をして今は
コーヒーを飲んでの休憩タイムだった。
「ええ、まあ。何か問題でもありましょうか」
「いや、まあ問題はないんだけどね」
楯無は若干、口を窄めて不機嫌そうな顔をした。
「でもやっぱりお姉ちゃんの方が効率も良いんじゃないかな?
基本事項は私でも教えられるけど応用事項はお姉ちゃんの方が上手いし」
「確かにそうですが今はわたくしはど素人でございます。いきなり
応用など不可能なので簪様にお願いをと」
「それなら私でもいけると思うんだけどな~」
何故か楯無は少し不機嫌気味に頬を膨らませながら
虚の入れたコーヒーを啜っていた。
「でも~イッチ~なら~飲み込み早いから~応用もいけるんじゃないの~?」
ダボダボの服を着た虚の妹であり簪の専属メイドである本音が
一夏にスローリーな話し方で話し始めた。
「いえ本音様。何事も基本からでございます」
「で~も~基本ばかりだと上に行けないよ~?」
「偶に本音様は痛いところを突きますね」
一夏は本音に痛いところをつかれ、苦虫を噛み潰した表情を浮かべた。
「ありがと~」
「褒めてはないんですが……」
「ところで本音ちゃん、真夏君はどうかしら?」
「会長!」
「あ!」
楯無が真夏の事を話題に出した瞬間に、カップが割れた音が響いた。
「ま……な……つ?」
「お、落ち着いて一夏!」
簪が慌てて一夏に近寄り宥めるが一夏は若干錯乱気味で
顔色も先程とは違い非常に悪かった。
「あぁ! あぁぁぁ!」
「ふん!」
「うぅ!」
楯無は一夏の首筋に衝撃を与えて意識を刈り取り、
気絶した一夏を備え付けの簡易ベッドに横にした。
「いけない、私としたことが。一夏の前で彼の事はNGだったわね」
「なんとか暴れる前に抑えれましたね」
一夏は記憶を失った日以来真夏の名を聞くと錯乱状態に陥り
目に映るものを全て壊そうと暴れ出してしまうのである。
なので更識家と布仏家、及び神門家では真夏という単語はNGになっていた。
「ひと先ず今のうちに彼の事について話し合いましょう」
それから一夏が目を覚ますまでの間、真夏に関する
会議が行われていたことは一夏の記憶にはない。
こんにちわ~