ファントムタスクとの戦いから数か月が経過したある日のこと。
崩壊したIS学園の生徒達は一か所に集められて実技は行わず、
ISの理論などを学んでいた。
全寮制だったために遠くから来ている生徒の暮らす場所をどうするかなどが
一時期問題になったが潰れかけていたホテルを仮の寮とすることにより、
政府からそのホテルに補助金が支払われ、学園寮と同等のレベルの部屋が
生徒分用意された。
さらに教員も各国の代表や研究者などを招集して補われた。
そんななか、学園の生徒の間ではある奇妙な噂が流れていた。
『我らが生徒会長がレズに目覚めた!?』
そんな噂が立つようになったのは学園が仮の場所で再始動し始めたばかりの時だった。
突然、楯無が『抱きしめていい?』と言うな否や了承も取らずに抱きつき、
数秒経つと『違う』と言ってその場から去っていくらしい。
当然、この噂の真実を知る者は真夏と千冬だけ。
だが、二人は自分から彼女に会いに行くことはしなかった。
彼女が自分たちのもとへと訪れた時にあの事実を言おうということにしたらしい。
そして、もう一つ。
学園に設置されている医務室に開かずの病室というものがあった。
そこは常に二人の警備員が入口に立っており、近づく者には注意を勧告し、
それでも近づこうものなら拘束までするという徹底ぶりだった。
生徒達の間では何か凄いものが眠っているという噂になってはいるが
この真実も知る者はあの二人だけ。
そこにいるのは一夏とマドカの二人。
既に二人の意識は回復しているもののその当時の話を聞くという名目のもと
隔離されていた。
そして、その時は来た。
「ねえ、織斑君」
「はい?」
「抱きついても良い?」
真夏は心の中でようやく来たかと思い、快く承諾するとどこか楯無は
満足したような、探していたものをようやく見つけたような様子だった。
「……貴方なのね」
「違いますよ」
「え?」
真夏は抱きついている楯無を自分から剥がした。
「貴方が探している人物は僕なんかじゃないですよ。確かに似ていますけどね。
開かずの病室に行ってみてください。きっと探し物が見つかりますから」
真夏はそう言い、楯無の傍から歩き去った。
楯無はようやく見つけたものが離れていくのを見て、その近くへ
歩み寄ろうとするが足が一歩も動かなかった。
まるで、自分の身体を何かが抑えつけているように。
「…………」
楯無は先ほど、真夏が言った言葉に従い、彼から離れて二人の警備員が
立っている開かずの病室の近くにまでやってきた。
いくら自分が生徒会長でも開かずの病室に入ることはできずに警備員に
注意を受けるだろう――――――そんなことを考えながらドアに近づいていくが
注意は受けなかった。
既に二人の視線は自分に向いている。にもかかわらず何故、二人は注意しないのか。
そんなことを考えながらドアに近づいていくと二人の警備員がまるで彼女を
招待するかのごとく、ドアを開けた。
楯無は不安を感じながらも中に入るとそこにはベッドに横たわった二人がいた。
「……待ってましたよ」
小さな笑みを浮かべながらそう言う男性を見た瞬間、頭の中を凄まじい勢いで
幾つもの映像が飛び込んでくると同時に懐かしさと嬉しさが同時に
心の底から涙として噴き出してきた。
楯無は涙を流しながらゆっくりと近づいていき、抱きつくと男性も
楯無を抱きしめた。
その瞬間、今までおぼろげだったビジョンが一瞬にしてクリアになり、
その映像に映っている男性の名前も全て蘇ってきた。
今までなぜ、こんなにも大切で愛している人の名を忘れたのか。
「お帰り。氷ちゃん」
「それ……私のセリフだよぉ」
楯無は涙ながらにそう言い、一夏を強く抱きしめた。
もう離さない、離れない、忘れない。そんなことを思いながら。
『終わったじぇ』
『終わった……か……始まったんだ』
『何がだ?』
『俺達の災いすら撥ね退けるほど色こいあの二人の物語がだ』
受け継がれし戦い――――――それはIS学園に所属していたブリュンヒルデの弟であり
あの天災の篠ノ乃束譲りの頭脳を持つ織斑真夏が率いるメンバーとファントムタスクとの戦い。
受け継がれぬ戦い――――――それは一度は争い合った兄妹……一夏とマドカが
二人で力を合わせ、平穏を取り戻した闘い。
この二つこそが光の戦いと闇の戦い。
語り継がれる戦いと語り継がれぬ戦い。
そしてその勝者こそ―――――――――――。
世界の平穏を取り戻した光の英雄と
兄妹の平穏を取り戻し、記憶をも取り戻した闇の英雄。
終わったぞ……終わったぞぉぉぉぉぉぉぉ!
ハーメルンに移籍してから初の完結作品です! 今までありがとうございました!
ていうか、完結設定はタグでやるのかな?