その翌日、一組ではある噂で盛り上がっていた。
「ねえねえ織斑君は知ってる? 二組に入ってくる転校生の噂」
「ああ、知ってることは知ってるよ」
「なんでも中国の代表候補生らしいよ」
その話題は膨れに膨れ上がり既に1組の全員がこの噂について駄弁っていた。
真夏は中国の代表候補生と聞いてとある人物が頭をよぎった。
(まさかな……いや、あの子は驚かせるのが趣味だったくらいだから)
するとセシリアが様になっている腰に手をあてて上機嫌に
真夏達の話に入り込んできた。
「あら、このわたくしの存在を危ぶんでの選択かしら?」
「それはないな」
「な、何ですって篠ノ之さん!」
セシリアは箒の言った事に怒りだすが箒は華麗に
スルーしながら真夏に言い始めた。
「だが、真夏気を抜いてはならんぞ。来週からトーナメントが始まるんだぞ」
「そうそう! 真夏君には勝ってもらわないと! 学食スイーツ一カ月分だしね!」
「大丈夫だよ! 専用機持ちの代表はうちと四組だけだから」
「その情報古いよ……」
後ろから声が聞こえその場にいた全員が振り返るとそこには
ドアに体を預けて持たれているツインテールの女の子がいた。
「二組の代表はあたしに変わったから」
「……鈴、かっこつけてるとこ悪いけど微妙だよ」
「う、うるさいわね!」
鈴はカッコいいと思っていたのか真夏にそう言われて
顔を赤くしながら否定し始めた。
「真夏、こいつは誰だ?」
「この子は鳳鈴音、箒と入れ違いで日本に
転校してきた子で僕とは二番目お幼馴染」
「そ、中国代表候補生だから」
するとセシリアが神妙な趣で鈴に近づいてきた。
「貴方が中国代表候補生ですか、わたくしはイギリス」
「あぁ、良いよ別に。他の国に興味無いし」
「あ、貴方ねえ!」
すると真夏は少し脅えたような表情で鈴に警告を発した。
「鈴もセシリアも早く座った方がいい」
「なんでよ!?」
「なんでですの!?」
「さっさと座れ馬鹿もの」
「「ぎゃん!」」
真夏の警告も空しく二人に向かって出席簿という金棒が
二人めがけて落とされバコン!といういい音が鳴り響き
二人は痛みに悶絶した。
「オルコットは自席に、鳳はさっさと教室に戻れ」
「ち、千冬さん」
「織斑先生だ」
「は、はい! 真夏逃げないでね!」
そう言い鈴はものすごいスピードで自教室へと帰っていった。
そして昼休み。
一夏と簪はいつものように二人で食事を取るべく、食堂にいた。
やはりこの時間はIS学園のほぼすべての生徒が集まることもあり、
生徒でごった返していた。
「簪お嬢様は何に致しますか?」
「え、えっと自分で決めるよ」
「いえ、簪お嬢様には席を取っておいてほしいのです」
「そ、そう言うなら分かった。日替わり定食で」
「畏まりました」
そう言い一夏は一度お辞儀をしてから食券を購入して
長蛇の列の最後尾へと並んだ。
そして簪も席を取ろうと辺りを見回していると一席
開いているのが見えたので荷物がないか確認して座った。
「ねえ、そこあたしたちが取ってたんだけど」
「え?」
する2人組みの女子生徒が簪が座った後になって
いちゃもんの様なものをつけてきた。
「え、あ、いや荷物なかったから」
「いやいや、あたしたちが最初にとってたから退きなさいよ」
リボンを見てみると簪達とは違うので年上なのは確実だった。
「え、えっと」
「何? 先輩の言うこと聞けないの?」
「……すみません」
「分かればいいのよ」
そう言い簪は俯きながらその座席を退き先輩に譲り
再び座席を探すが昼休みということもあって満席だった。
「簪お嬢様、おまたうぉっと!」
一夏が簪の分を持って近づくが簪は急に走って
食堂から出ていった。
「おぉ! おぉっ!」
一夏はバランスを崩して熱々のお味噌汁がのっているお盆を
グラグラと揺らしていた。
その光景を周りの女子たちは
固唾をのんで見守り、中には零すか零さないかで賭けている者もいた。
「おぉっと! ふん!」
『おぉーーーー!』
一夏が足の力を入れてバランスを取り戻すと周りから
盛大な拍手が送られた。
中にはガックリと肩を落としている生徒もいたが……
「はは、どうもどうも!」
(簪お嬢様、どうかしたのでしょうか)
不審に思った一夏は食堂のおばちゃんに後でお盆を返すように
言って許可をもらうとそのまま簪の後を追いかけていった。
一夏と入れ違いで真夏達が入ってきた。
「待ってたわよ真夏!」
「……鈴、そこに立つと皆邪魔だよ」
「わ、分かってるわよ!」
鈴は指摘されて必死に抗議しながらもそこを退き
座席を探していた。
「中々無いわね~お、見っけた」
鈴が見つけたのはすでに食べ終わり片付けも済ましているが
延々としゃべっている先程の年上ガールズだった。
「ねえ、食べ終わってるならそこ退いてよ」
「は? 意味分からないし。なんであたしたちがどかないといけないわけ」
「あんた達食べ終わってるならさっさと退きなさいよ。
喋るんなら自分の教室で話してきなさいよ」
「先輩なんですけど~」
片割れがリボンを見せつけるようにするが鈴は全く
意に介さず無理やりお盆を置いた。
「退きなさいよ、邪魔」
「あ、あんたねえ!」
「鈴の言うとおり邪魔です」
鈴の後ろからお盆を持った真夏達がやってきた。
「行こう!」
片割れが気分を害したのか不機嫌気味に食堂から出ていった。
その後、真夏達は昔の話をしながら賑わっていた。
「え~? クラス代表を辞めさせてほしい?」
アリシアは昼ごはんを食べようとした瞬間に職員室に来た
簪の発言で止められていた。
「でもなんで?」
「……私には合わないからです」
「でもな~一度決まっちゃったしね~」
「お願いします」
簪は頭を下げて懇願するがアリシアが悩んでいた。
すると職員室に二つのお盆を持った一夏が入ってきた。
「あ、こんな所にいましたか~」
「……一夏」
「あ、三河屋さん」
「ちぃ~す三河屋で~す……じゃなくて!」
「よ! ナイスノリツッコミ!」
二人のやり取りの何人かの教師が必死に口を押さえて
笑いをこらえていたとか。
そして一夏はひとまず簪に定食を渡して生徒会室で食べるように言って
職員室でアリシアから事情を聴いてみた。
「何かあったんですか?」
「ん~それがさ~簪ちゃんがクラス代表辞めたいってさ~」
「何でまた」
「それを調べるのが従者の役目、でしょ?」
「まあ、それはそうです……なんで知ってるんですか」
更識家関係の事は理事長と千冬にしか知らされていない筈
なのだがアリシアが知っている事に一夏は驚いていた。
「いや、だって君普段からお嬢様お嬢様言ってるからさ~
どんな家の従者かは知らないけどまあ、仕えてる身なのは
大体予想がつくでしょ~」
「は、はぁ~」
「ま、頑張んなさいな」
「はい」
一夏はアリシアに励まされるとお盆を持って簪のもとへと向かった。
こんばんわ~。明日から学校ですわ~