アメリカに渡る。
エナツキガールズ達がホテルで今までの苦労話を初めて語る。
「皆さ~ん!パスポートは持ってますか―!?」
慌ただしい木曜夕方のエナツキハウス。
リビングで、マネージャーの仁美さんが全員に声を掛ける。
『はーい!』
エナツキガールズ達がパスポートを片手に掲げる。
「アメリカは総理時代の外遊以来だね」
元総理大臣の矢部晋太郎が感慨深げに答えるのを聞き、夕張が笑顔を浮かべる。
エナツキは、最近携帯会社の学割CMに出たり、
恵奈と暁が《デストロイヤーズFeat.エナツキ》名義で、CDを出したのを皮切りに、
全員が参加しての楽曲『We Areエナツキ』をリリースしたり、大忙しな日々を送っていた。
皆、ダンスも歌もレッスンのお陰で上達し、矢部晋太郎の『還暦過ぎでのダンスを踊る挑戦』にも注目が集まっていた。
そんな中での350万登録達成、と順調に伸び続けているエナツキは、アメリカのMeTubeファンフェスである、MTFFに招待されることになった。
他にも、デストロイヤーズや他の日本のトップMetuberも招待されている。
流石に、学校や職場は金曜日と翌週月曜日はお休みを取った。
それぞれの学校の先生達は、皆普段から学業とMeTuberを両立していて、
特に恵奈は基本的には皆勤している為、快くお休みを認めてくれた。
行きの飛行機は、プレミアムエコノミー席で、エコノミーよりちょっと
エナツキの、特に学生達は初めての海外旅行に、目をキラキラさせていた。
航空券は、響が日々投資で稼いだり、エナツキの収入や仕事のお給料からコツコツ貯めて捻出している、
湊の計らいで都内にある高梨家本邸に泊まらせてもらって、朝に成田から日本を出るのだ。
時差の関係上、朝出発して午前中にはニューヨークに到着するのだ。
帰りはその逆の現象が生じる。
金曜日、学生・元艦娘組と結衣はフリーランニングの施設でロケを行ったりしている。
飛行機疲れも感じさせず、精力的に動き回っている。
夕張と晋太郎はニューヨーク観光を楽しんで、夕方にホテルで待ち合わせである。
その夜、ホテルで動画の撮影を始めた。
「はいどうも、エナツキ恵奈です」
「美雪っ!」
「杏子」
「真由でーす」
食い気味に自己紹介を行うと、恵奈が笑顔のまま、
「今アメリカに来ていて、明日MTFFに出ます。今日はね、フリーランニングの施設で汗を流してきたんで、そっちは、また帰国後にリリースしますね」
「という訳で、四人でフリートーク」
「お題は?」
恵奈の言葉に、美雪が首を傾げる。
「そうだね、高校生になって変わったこと」
それぞれ別の高校に進学して、早半年経ったのだ。
「うーん。小・中学時代の友達が突然増えたこと、かな?」
美雪が腕を組みながら言うと、
「あるある、小学校時代では陰キャラとか呼んでたやつとか」
「うん。何かそういうの多かったね」
「突然親戚が増えたり」
恵奈・杏子・真由がそれに続く。
有名になると、そういうことは多々あるのだが、中学後半から高校で一気に登録者数も増えて、こうやってテレビやイベントに出ることが増えて露出度も上がった為、学校では
それまでは、Metuberで忙しく、友達付き合いが少なかった為、
「それはいいんだけど、大抵そういう人達って、いくら稼いでるの?とか、ご飯奢ってよ、とかなんだよね」
「学校の皆でご飯食べに行った時に、『じゃあ、お会計はみゆちゃんお願いね』っていうノリになるのが嫌だよねー」
恵奈の溜め息に、美雪も続く。
「まだそれはいいんだけど、お金貸してって、仲良くもない相手から突然言われたり、LINE教えて、ってなるんだけど、いや、おかしいよそれ、って思うよね」
「私は、突然増えた親戚が携帯に連絡して来るから、そっちはそっちで留守電にして、もう一本携帯持ってるよ。信頼できる人だけ教える番号?みたいなの」
杏子もそれに続いて、真由が溜め息を吐いている。
「いや、ごちそうするのはいいんだよ。有益な話とか楽しい話が出来たら、皆のその時間を買っている、ってことだから。いくらでも出すけど、うちだって
そう話すのは恵奈である。恵奈も、
「そう。
「うん。元々ショートスリーパーだけど、課題もやって編集も五~六時間かかるからね。最近は分業で編集してるから一時期よりは楽になったかな?程度で、遊んでる暇無いんだよね」
「ないない。家事も専業の雷と暁が居るから、洗濯も回ってるだけであって、食事は生配信で皆で作るし」
「私はテレビの収録で、授業終わってすぐにテレビ局やスタジオ入り、ってのが多いからね。
恵奈の言葉に美雪と杏子が続く。
杏子は、学校から東京に移動、収録後深夜帰る、ということもままあるのだ。
「私はパートで、戻ったら編集の手伝いやエナツキニュースもあるから、Twitterとかで暇そうって書かれてるけど、いや暇じゃないし、家事の手伝いもあるからね、って声を大にして言いたい」
真由は、眼鏡をかけ直しながら
「あと、ネタ被りとか言われるよね?」
「ネタ被りも、先に撮ってて編集待ちの動画の関係で前後しちゃうことあるし、私達は昔から『やりたいことを楽しむのを見て楽しませたい』からエナツキやってるだけで、お金の為にやってる訳じゃなかったからね。動画くらい好き勝手やらせて欲しいよ」
美雪の言葉に、恵奈が憤慨する。
「お金の為
「
杏子の言葉にも、恵奈は自分の持論を語る。
「楽しいことやって動画やらせて貰ってるからキツイとは言わないけど、楽しくなかったらモチベーション維持出来ないと思うし、続かない」
美雪もウンウンと頷く。
「あとは、《杏子ちゃん痩せてください》。これ、一番言われるんだけど。いいじゃん、太りたくて太ってんだからって、好きでたくさん食べてるんだから」
「元々、太りにくい体質で、身長高いし
杏子の主張に、美雪が苦笑いで言う。
「うん。ちょっとふっくら辺りが、健康的だと思う」
「あと、よく言われるのは『アイドル気取りかよ』ってのかな?」
たまに、アイドル気取りかよ?と、アンチコメも目にしているのだ。恵奈がぼやくと、
「んなの気のせいだよ!」
と、美雪が自信満々に言う。
「いや、胸を張るところじゃないと思うけど。アイドルだとは思わないなあ」
恵奈が、てしっとツッコミながら答える。
「私なんか半芸人枠だし」
と、杏子も続く。大食いは、一般的には大道芸の類いなのだ。
ホテルにピザをデリバリーしていて、
「恵奈さん、ピザ来てますよ」
と言う言葉に、一旦カットポイントを作ってから、ピザをテーブルに置いて収録を続ける。
「あとは、エナツキハウスを通じて生活力は身についたよね」
恵奈が、愚痴はもういいや、とばかりに話を切り替える。
杏子はやはり
「特に、みゆちゃんと真由の料理力」
二人は料理が苦手だったが、綾の指導のおかげでメキメキと上達したのだ。
杏子がウンウンと指摘すると、
「一番食べる杏子に、美味しいって言ってもらえるのが一番嬉しい」
「美味しそうにたくさん食べる杏子が好き」
「これも、モチベーションだよね。楽しく料理するのが一番だもん」
二人の言葉に恵奈も頷く。
「今11人で生活してるけど、仁美さん含めてね、
その美雪の言葉に、三人も頷いた。
「あと、大きく変わったことは、ひたすら忙しくなった」
「嬉しい悲鳴だね」
「うん」
杏子の言葉に、恵奈と真由が続く。
杏子と恵奈と暁は、特に多忙を極めている。
恵奈は、グループ全体の統括を菅野さんとやって、企画やメインチャンネルの編集等、更に編集方法を他のメンバーに教えたりしている。
暁は、サブチャンネルとエナツキツイッターの管理やスケジュール管理と、家事家計担当で毎日忙しい。
杏子は、タレントとして忙しいし、4thチャンネルは杏子が一人で編集している。
真由は、エナツキニュースの生放送の準備や家事手伝い等、パートでのお仕事の中頑張っている。
皆、
「まあ、今日はこんな感じ。また明日、MTFF行って来ます」
そう言ってからカメラを切る。
「お疲れ。皆は先寝てていいよ」
「うん。ここのスパ入ってから寝るね」
そう言って、各々の部屋に戻る。入れ替わるように暁が入って来る。
その日の深夜、二人共夜遅くまで編集をしてから、
何処に行っても、