早速身軽な服に着替えてロビーに集合する。
夕張と晋太郎はニューヨーク観光に行くよ、とそのまま出かけて行ってしまう。
「近くにパルクールの施設があるから行くよ!」
恵奈と結衣と美雪と杏子、暁と雷、それに響がジャージ姿で、
運動の苦手な真由と仁美さんはジャージで見学兼撮影係である。
その施設はストリートを模して作られており、電話ボックスや地下鉄の階段、
手摺りやビルの隘路に消防栓等、アメリカンのストリートセットが屋内に作られている施設であり、
他にも、トランポリンや
もちろん、事前に撮影許可は貰っている。
「それじゃあ体動かしていこっか」
しっかり柔軟体操をすると、早速ストリートエリアに足を運ぶ。
身体能力が高い恵奈と、元軍人の結衣は、早速隘路に立ち入って、壁蹴りで反対側の煉瓦の壁の隙間に摑まって、反対側の壁を蹴って摑まるのを繰り返す。
そのまま二階建ての屋上に攀じ登ると、自然と鬼ごっこになっていく。結衣が追いかけ、恵奈が逃げる。
アスレチックや広いフィールドがあると行われる、
屋上から、隘路に設置してある登り棒を摑んで滑り降りると、結衣も滑り降りる。
そのまま地下通路の階段を駆け下りると、結衣も追いかける。
見学組の真由と仁美さんがカメラを持っていて、それを追いかける他に、恵奈と結衣も
暁もカメラを持っていて、トランポリンで体を温めている面々を撮っている。
恵奈が走り込んだ先は行き止まりで、左右に手摺りが付いている。
振り向いた恵奈は、左右にフェイントを掛けながら結衣の動きを見ており、
結衣も、そのフェイントに対応しながら、両手を
「んっふっふ~、追い詰めたよ、恵奈ちゃん。たーっち」
結衣が、つい私欲に駆られ、
「うわっ!!」
そのまま摑むものを失った結衣は、前のめりになるも、前方受け身をして立ち上がる。
そのまま地下通路の階段を駆け上る恵奈を、結衣が追い掛ける。
「待てやこらー!!」
追いかけてきた真由や仁美さんをするりと躱すと、結衣も階段を二段飛ばしで駆け上がる。
駆け上がった結衣に、ある程度距離を取った恵奈が、「べろべろばー」のポーズをすると、くるっと向きを変えて走り出し、その先にある反り立つ壁に駆け上がって登って行き、そこに繋がっている狭い壁のスパイダーウォールみたいなものに足を掛けて、両方の壁を両足で蹴りながら進んでいく。
「よいしょ、よいしょ」
まだまだ
「はぁ……はぁ……
いくら元軍人とは言え、体力も曲がり角な結衣は、一度反り立つ壁を失敗し、諦めて先回りする作戦に打って出る。恵奈はそれに気づくと、くるっと180度ターンをして、今度は両手も使って来たところを戻って行き、反り立つ壁の横にある登り棒をするするっと降りると、それに気づいた結衣が戻ってくる間に距離を稼ごうとした……時に、
「ターッチ!」
「え!? わっとっと」
と、背中に触れられる感触がして振り向くと、バランスを崩して前方受け身を取りながらゴロゴロ転がり、立ち上がってタッチした人物を見ようと、顔を見上げた。
そこには、サングラス姿の
「おっそーい」
「あれ、島風さん!?行方不明になったんじゃあ!?」
「島風、久しぶり!」
事情を知らない恵奈と、事情を知ってる結衣で反応が違っていたが、島風は
動画に出ても問題ない、と島風が言ってくれた為、そのまま動画を撮影する。
陽子妖精さんは今日は留守番、とこっそり教えてくれた。
準備運動という名の、
「エナツキ恵奈!」
「美雪っ!」
「杏子だよ」
「暁に」
「雷」
「響だよ」
「結衣でぇ―っす」
「真由です」
「ハーイ!ゲストの島風だよ」
「という訳で、準備運動も終わったところで……」
「結衣、半分バテてるからね…」
恵奈の言葉に、結衣が疲れたような表情でツッコミを入れている。
結衣も恵奈も汗びっしょりで、Tシャツが濡れている。
島風はタンクトップにショートパンツ姿で、割と色っぽくなっている。
「二人共元気ねー」
そんな二人に、暁がツッコミを入れる。
「パルクールの施設に来てるんですけど、今日も結衣さんは
『おー!』
暁達も、ストリートエリアでパルクールを楽しんでいく。
身体能力は、島風、恵奈、暁、結衣、雷、響、美雪、杏子の順で高く、
全然
恵奈と暁以外は、島風を追いかける鬼ごっこを始めている。
島風は、米国に渡って以来日頃からパルクールを楽しんでおり、五人がかりで追い掛けるのをスイスイ逃げ廻っている。
真っ先に、体重がやや重い杏子がバテてダウンし、次にアラフォーの結衣が、先程のガチ鬼ごっこの疲れもありダウン、その次に美雪がヘロヘロになって、響と雷が島風を追い掛けている。
だが、エナツキ参加歴が一番浅く、アスレチック経験の少ない二人は、島風のトリッキーな動きに従いて行けなくなっている。
「おっそーい!」
鬼ごっこをやっている間、
恵奈は、常日頃からアスレチックコースも、
「ちょっと暁、カメラ持って!」
「ふぇっ!?」
島風が「おっそーい!」と言っているのを聞くと、闘争本能が燃え上がり、カメラを暁に渡して、恵奈が走って行く。
隣のコースから、トランポリンで跳んで仕切りの網に摑まると、そのまま攀じ登ってパルクールエリアに飛び降りて、島風に向かって走っていく。
「えっ!?」
「今だっ」
不意を突かれた島風が一瞬動きが固まった隙に、恵奈がダイビングで飛び込んでタッチする。
「おー、さすが恵奈ちゃん。まさか飛んでくるとは思わなかったよ」
「えへへー」
タッチした勢いでゴロゴロ転がって大の字になっている恵奈は、
その後、島風と別れた恵奈達はホテルへと帰って来る。
恵奈と美雪と杏子と真由がメインの動画を撮っている中、隣の部屋では暁達がセカンドチャンネルの動画を撮っていた。
「はい、エナツキ日和 暁!」
「雷!」
「響だよ」
「
結衣は、ベッドで寝転がりながらフレームに入っている。
「結衣さんは
アスレチックに行った日のセカンドチャンネルは、大抵この四人でやっている。
「いやあ、今日こそ恵奈ちゃんを捕まえられると思ったんだけどなぁ」
アップロードタイミングは一緒なので、メイン動画の話題から入る。
「追い詰めた時は、今日は恵奈さん捕まる、と思ってましたよ」
フレームの外から仁美さんの声が入る。
セカンドチャンネルは、仁美さんはフレーム外から喋るのが恒例で、今の所メインチャンネルのみ顔出し出演となっている。
そのまま届いたピザを持って、出て行ってしまう。
「いやあ、邪念がちょっと胸に行っちゃってさぁ」
「いつもの事じゃないの」
えへへと笑う結衣の頭に、チョップでツッコミを入れる暁。
「あだっ、いいじゃない減るもんじゃなし」
「結局、今の所1on1鬼ごっこで恵奈ちゃんを捕まえたのは結有だけかぁ」
以前エナツキにゲストで結有が出た時に、アスレチック鬼ごっこで恵奈は瞬殺されたのだ。
さすがは、20代で身体能力も全盛期の、特別教導隊のエースである。
速度も体力も桁違いで、一気に距離を詰められ、アスレチックに攀じ登って逃げようとした恵奈を、ジャンプで食らいついてタッチする、という離れ業をやってのけたのである。
「あれはバケモン」
結衣は、結有のことを
「まあ、結有は凄い身体能力よね」
「そうだね」
暁の言葉に響も同意する。
セカンドチャンネルは、いつもこうやって撮影の裏話やこぼれ話を撮影して終わるのだ。
メインチャンネルの撮影が終わった頃に、暁は部屋に戻って恵奈と共に編集を行う。
恵奈と暁は忙しい中でも、こうやって二人で雑談しながら、動画を編集していく。
そして、編集の区切りがいいところで一緒のベッドで仲良く眠るのだ。
恵奈と暁の、忙しい中でのほっと一息つける時間が、この睡眠時間なのだ。
翌朝、恵奈と暁は元気一杯で、MTFFの会場に皆と向かう。