[第1話]転校生
3月某日 陵桜学園
鈴木「ここか……まさか俺が主人公にありがちな転校生になるとはな……俺、一体誰に話してるんだ?」
彼の名前は鈴木善治。多分、どこにでもいる普通の男子高校生でした。でした、と過去形なのは彼が転校生だからです。転校生とは往々にしてラブコメの主人公になるなど、普通の男子高校生が経験しないことに巻き込まれてしまうのが一般なのです。
学年は1年。ただし来月からは2年になるのですが。
鈴木「どこに行けばいいんだ?……とりあえず……職員室か?」
果たして彼の場合はどうでしょう。迷子になることも無ければパンをくわえた女子高生と曲がり角でぶつかったりする事もなく彼は職員室に辿り着きました。彼はそのままノックして職員室に入ります。
鈴木「失礼しまーす。今日、転入してきた鈴木です。」
1人の女教師がその声に反応してやってきました。
桜庭「あー……鈴木か。担任の桜庭だ。」
鈴木(ちっ……ちっさい……しかも取っつきにくいし……)「よ、よろしくお願いします。」
桜庭「よろしくと言っても今日だけだがな。今日は終業式だ。体育館に案内する。校長のありがたーい話を聞いてくれ。」
鈴木「あ……はい。」(何か話さないと間が持たねぇ)
そう思う彼でしたが転入初日、何も話題は持っていません。一言も会話をすることなく体育館に着き、終業式が始まりました。当たり前と言えば当たり前ですが校長の話など誰も聞いません。
校長「んにゃんにゃんにゃんにゃ~むにゃむにゃむにゃ」
鈴木(というか校長も話してないし……雑なお経みたいになってる……)
校長「んにゃんにゃ。有意義な春休みを過ごすように。」
鈴木(あ、最後だけまともに言った。)
桜庭「うし。一応、教室に案内するぞ。今日だけのだがな。まぁ気楽にしてくれ」
鈴木「あ…、はい。」(気楽に……って無理だろ。あの先生、さっきから表情変わらんし……)
桜庭「ここだ。入れー」
桜庭「よし、そんじゃま、席に着けー。転校生を紹介するぞー。」
教室はザワザワしますが桜庭先生は気にしません。
桜庭「転校生の鈴木善治くんだ。2年で同じクラスになったら仲良くしてやってくれ。鈴木、あの席な。」
鈴木「え?自己紹介とか無しですか?」
桜庭「必要か?今日でこのクラスは終わりだぞ?」
鈴木「……そうっすね」
桜庭「じゃっ、さっさとプリント配って終わりだ。」
非常にあっさりした桜庭先生のホームルームが終わり、彼は日が日だったためにちやほやされることもなく教室をあとにしました。
鈴木「おっ……校内に自販機か……なんか買ってみるかな……」
―チャリンチャリン
―ガシャン
鈴木「ん?何も押してないのに何か出てきた……しょうが湯?しかも冷えてやがる。湯じゃねぇ……!」
と文句は言いつつ彼はしょうが湯(コールド)をしっかり飲みます。
鈴木「……まじぃ……。」
??「あ!鈴木くーん?」
と彼はどこからか声をかけられました。
??「その自販機、壊れてるわよ……ってもう遅いか……。」
鈴木「ん?あー遅いです……。えーと……」
かがみ「鈴木くんで合ってた?私は柊よ、同じクラスの。って言っても今日だけだし分かんないよね?」
鈴木「すいません、分からなかったです。鈴木で合ってます。同じクラスの柊さんね。わざわざ自販機のこと言いに来てくれたの?そういう係?」
かがみ「違うわよ。そんな係無いから。たまたま見かけたから声かけただけ。」
鈴木「まぁそんな係無いよな。」
こなた「おーい!かがみー!」
かがみ「おっと……友達が呼んでるわ。また次も同じクラスになったらよろしくね」
鈴木「あっ、はい。次、同じクラスになったらよろしく。」
鈴木「……壊れてんのか、この自販機……。誰かと話すきっかけになったと喜ぶべきか……?いや次、同じクラスとも限らんし、クソまずいしょうが湯の対価としては微妙だな……帰るか。ん?……あ、バス行った……最悪……」
バス車内
つかさ「そう言えばお姉ちゃん、さっき男の人といたね。」
こなた「さては……かがみに春が来たかなー?」ニヤニヤ
かがみ「そっ、そんなんじゃないわよ!転校生なんだけどね、あの自販機を知らなかったみたいだから教えてあげただけよ。」
つかさ「へー。」
みゆき「そうでしたか。」
こなた「えー?つまんなーい。フラグ立てようよ~!」
かがみ「ゲームじゃないんだから……」
こなた「というかこんな時期に転校なんて怪しいね。実は謎の団体に所属する一介の男子高校生に身をやつした超能力者とかじゃない?」
かがみ「あんたアニメ見過ぎだ……。とにかく今日、転校してきたばかりだし何も無いわよ。」
みゆき「あ、駅に着きましたよ。」
こなた「そうだ!みんなカラオケ行かない?」
かがみ「おー良いわよ」
みゆき「ではせっかくですので」
つかさ「4人でカラオケって珍しいよね。」
こなた「よし、歌うぞー!」