それから数日後。やっと鈴木善治も調子をつかんできた頃でした。
鈴木「って今日のシーンはこれか……」
こなた「そだね~」
鈴木「マジでやるのか……」
こなた「まぁゲームみたいにキスシーンまである訳じゃないんだし良いじゃん」
鈴木「それでも恥ずかしいし、だいたい何のゲームの話なんだそれは」
こなた「何のゲームだろうね~さぁ練習始めようか。」
みゆき「では、お願いします。」
鈴木「好きでした会うのは今日が初めてだけどずっとずっと好きでした」棒読み
みゆき「すいません。止めて良いですか?」
こなた「だね~今のはひどいよ~。言われても何も感じなかったもん。」
鈴木「すまん。でもやっぱり言いにくいセリフだ……。」
こなた「言いにくくてもやらなきゃダメじゃん。私を落とすぐらいの勢いで頑張りたまへー。はい、もう一回。」
鈴木「はい……。スキデシタアウノハキョウガハシメテダケドズットズットスキデシタ」超早口
こなた「はいかっとー。早口過ぎて聞き取れないよ。」
鈴木「そんなこと言ったって、こんなこっぱずかしいシーン!拒絶反応がぁ~」
こなた「一番おいしい場面じゃん。何?拒絶反応って」
水原「そうだぞー?ファン獲得できる絶好の場面やで?」
鈴木「うわっ!いきなり出てきたな。『やで』って……」
みゆき「裏方さんと打ち合わせは出来たのですか?」
水原「はい。まぁ裏方さんも色々あって大変そうだったよ。こっちよりはマシだったが」
鈴木「悪かったな!」
水原「ということで多分、時間足りないから私は来週から下校時間過ぎても作業出来るように届け出を出してくるんでしばらくあの大根役者を頼んますわ~」
こなた「了解~」
みゆき「わかりました。」
鈴木「大根役者って腹立つ言い方だなぁ。上から…まぁ言われても仕方ないか……。」
こなた「分かってるなら頑張ってね。」
みゆき「ではほんの少し前の場面からやってみましょう。どうぞ!」
モブA「先生は柿本光介みたいな人が好きだったんじゃないんですか?」
こなた「好きって言っても出会わなきゃ結婚も出来ないじゃない」
モブA「そんなの分からないですよ?誰かが先生のことを待ってるとは思わないんですか!?」
―タッタッタッ
鈴木「はじめまして柿本光介です。」
モブA「キヤッホンモノ!」
モブB「ちょっ柿本さん!」
鈴木「す……あー……すきでした。会うのは今日が初めてだけど……ずっとずっと好きでした……」
みゆき「カットです!」
こなた「あちゃー。なんで途中までいい感じだったのに。急におかしくなっちゃうかなー」
鈴木「やっぱりなぁ……恥ずかしいというか言いにくいというか……」
こなた「何回も何回もそんなこと言ったって仕方ないじゃん!私にそのセリフを言うのがウソでもそんなに嫌なの!?」
鈴木「だいたい元はと言えばこなたが俺にこの役を回してきたんだろ!?」
こなた「どうしても嫌なら言えば良かったじゃん!私は鈴木くんなら似合うと思ったから指名したんだよ!?」机ドン!
みゆき「あの落ち着いてください。」
こなた「もういいよ。今日は練習やめて帰る。みずりんには風邪とか適当に言っといて」
鈴木「ちょっ、待てよ」
こなた「だっていつまでも改善されないんだもん。演技でも思いっきりやってほしいけどもういいや。勝手にすれば?じゃっ」スタスタスタ
かがみ「ちょっと?すごい音聞こえたしこなたはどっか向かったしどうしたの?」
つかさ「大丈夫~?なんかすごい音が……ってこなちゃんは?」
みゆき「……かがみさん、つかささん。ちょっと待っててください。みなさん、今日は解散にしましょう。」
モブ多「は……はいお疲れ様でした」
鈴木「お疲れ様でした。」スタスタスタ
かがみ「ちょっとみゆき?どうなってるの?どうしたの?なんか鈴木くんも凄い暗い顔で何も言わず帰ったし。」
つかさ「そうだよ。何があったの?言える範囲で教えて?」
みゆき「はい……」
―みゆき事情説明―
みゆき「……ということなんです。もう今日は練習出来そうにもないので解散にしました。私は水原さんが帰ってくるまで事情説明のために残ります。」
かがみ「にしても鈴木くんも困ったもんだけどこなたもこなたねー。よっぽど楽しんでたのかしら?」
つかさ「そうだねお姉ちゃん。こなちゃん口では文句言いつつもすごい練習楽しそうだったし……。」
かがみ「私、鈴木くんと話してくる。こなたも明日には頭も冷めてるでしょうし。一観客として楽しみにしてるんだから中止とかになってほしくないしね」
みゆき「かがみさん、ありがとうございます。」
かがみ「みゆきはこなたの方なんとかしといて。頼んだわよ」
みゆき「分かりました。」
かがみ「じゃ」スタタタタ
つかさ「あの……私は?」
みゆき「出来ればこのことは裏方さんには言わないでもらえますか?不安にさせたくありませんので」
つかさ「分かったよ。さっきの音はちょっと誰かが転んだことにしとくね」
みゆき「はい、お願いします。」
つかさ「じゃあ私は自分の仕事に戻るよ。」
みゆき「はい……さて、水原さんにはどう説明しましょうか……。」
―バス車内
鈴木(はぁ……俺なにやってるんだろうなぁ……こなたを怒らせてしまったし……)
かがみ「ちょっと?ねぇ、ちょっと?」
鈴木「ん?あ、かがみか……。」
かがみ「っていつの間に呼び捨てなのよ……。」
鈴木「体育祭の時に良いって言ってなかったか?」
かがみ「そういえば言ったわね、そんなこと。」
鈴木「嫌なら戻すけど?」
かがみ「いや、別にいいわよ」
鈴木「そう?じゃ、そういうことで」
かがみ「はい、また明日ね……ってんなわけないでしょ」
鈴木「バレたか……」
かがみ「バレてるわよ。何があったか説明してもらえる?」
鈴木「……はい……。というかまぁたった一言、どうしても詰まるセリフがあるだけなんだが……それでこなたがキレた」
かがみ「どんなセリフよ?」
鈴木「待て、ここはバスの中だぞ?」
かがみ「別に大声でやらなくていいわよ?日常会話くらいの大きさで言ってくれたらいいから。文化祭はこのバス以上の人がいるのよ?」
鈴木「いや、でもなぁ……」
かがみ「ほら!別にセリフ一言くらいじゃネタバレにはならないって!ズベコベ言わずにセリフ一言くらい言いなさいよ。」
鈴木「……。」
かがみ「こりゃこなたが怒るのも分かる気がするわね……。」
鈴木「分かった!言う!言うから!」
かがみ「やっとか。セリフ一言にどんだけ時間をかけるんだか……」
鈴木「言うぞ?……好きでした。会うのは今日が初めてだけどずっとずっと好きでした。」
かがみ「えっ?」