やはり師匠の青春ラブコメはちょーかっこいい。   作:黒虱十航

25 / 42
お詫びを。
まず分量が短いです。すみません。
そして一巻分は原作に近かったですが今では全然別になって
しまってます。すみません。四巻には修復します。


三巻分
彼は、本当に犬ではない。


 夜も深まる、午前二時。真っ暗な部屋の中、僕はパソコンに向かい、キーボードを無心で打つ。

「にししし……」

 深夜テンションゆえなのか、気持ちの悪い笑みが口の端から漏れてしまう。

「後ちょっと。後ちょっと」

 悲鳴をあげる脳と身体に言い聞かせるように連呼する。今日はいつもよりもラノベ執筆が捗っていた。

 もう、今の時間はここも寝ている。彼女とは、十一時過ぎまではメールをしていたが、それからは疲れて寝てしまったので僕は一人でラノベ執筆をしていた。こことメールをしている間はよかった。その間は、癒されていたおかげで脳の方も身体の方も適度に休んでいたのだ。

 だが、メールをしなくなってからの三時間ほどの間は、そんな癒しがなく、自分の世界にどんどんのめりこんでしまっている。自覚しながらも止まれないのは、ラノベ作家志望の純粋なところだろう。

 これは、次のJO文庫の小説賞に応募するために書いたものだ。孤独な主人公がとある部活に入部させられ、そこで色んな人の悩みを解決しながらも孤独の強さを証明する、という話だ。

 どこかの誰かさんのようだが、別にいいだろう。だってもう、あの人は僕の師匠じゃない。なら慮る必要もないのだ。

 本当に人と人との繋がりはあっけないものだ。些細なことで簡単に壊れてしまう。人生を一期一会だ。それを悲しむのは、人生そのものを悲しむのと同じだし、僕は人生を悲しみたくはない。悲しんだら、こことの出会いさえも悲しむことになるのだから。

 ここも、比企谷先輩も、雪ノ下先輩も結局のところ〝持つ側〟だ。僕のような〝持たない側〟の気持ちなんて理解できるはずがない。……ここのことを悪く言うつもりはないのに、寝不足だからかちょっと八つ当たりみたいになってしまった。

 ぴろりん、ぴろりん。

 そんな音が鳴った。スマホだ。メールの通知に設定していた音だけに、僕は送り主が誰なのか戸惑ってしまう。僕は基本的にパソコンかラインでしかやり取りしないのだ。

 ちょうどいい機会だ。まだもう少し書き終えるのに時間がかかりそうなので、一旦休んでメールを確認する。

『お主、学校に来ておらぬようではないか。まさかあいつらと戦っておるのか?』

「うっせぇ!!」

 ノータイムで僕はスマホをベッドに投げた。まったく、生ゴミ先輩は全然変わらない。本当に鬱陶しくて、嫌な記憶ばかり蘇る。

 あれはそう、僕が中二病だったときの頃だ。ネットで生ゴミ先輩と知り合って、リアルで会うことになって。本当に嫌な記憶だ。それを思い出すくらいなら中学校の時の先輩を思い出した方がいい。

 比企谷先輩のように目の腐った、けれど色恋沙汰に興味を抱き、幾度と振られて色んな人に愚弄されていた先輩だ。

 あれだけ色んな人に馬鹿にされても動じていなかった孤独なあの先輩に憧れて、僕は孤独になろうとしたのだ。ま、なんだかんだであいつとかここと仲良くなったんだけど。

 そういえば、あいつとも最近は話していない。仕事の依頼、報告はするけれどそれ以外のことは話さないようになった。中学のときは話したんだけどな。

 これもまた、一期一会。悲しむことではない。

 それなのに……

「あー、わかったよ、くそがっ」

 中途半端だからダメだって言うんだろ? 全ての関係性をデリートしてないから、悲しむ余裕があるんだろ?

 だったらいいっつうの。全部、人間関係なんて断ってやるよ。

「ラノベも、彼女も、学校も。何もかもいらねぇよっ!! くそがっ。くそ、くそ、くそ。全部全部くたばれよ、ごみがぁっ」

 部屋をのた打ち回る。ベッドを、壁を、床を。全力で叩いて、壊して、消してしまえばそれでいい。

 まずは、連絡先だ。ラインはとりあえずアプリを消せばいい。連絡先に関しては、使うメールアドレスを変えて前のは使わないようにしよう。そして、最後に学校をやめれば今の既存の関係性なんて……ああ、それじゃ不完全だ。親がいるじゃんか。それにこの家がばれたら、関係性は断てない。

 そうだな、家を出るか。

 決めてしまえば、後は迷うことなんてない。僕は自分の決めたことには従わざるをえないのだ。

 服を漁る。中二病時代のコートや中学生のときに彼女とのデート用に買った服。こうして見てみると、思ったよりも服を持ってるんだなぁ、と思う。

 が、そんなものを着たら意味が無い。関係性を断つのだから、誰かと結びつくことのない服にしないと。と、なると着る服は決まっている。

 灰色のパーカー。猫の耳がついていて、何故か着たいと思った服だ。かなり前に買ったやつだが、やたらと大きいのを買ったで今もぶかぶかだ。

「ふっ」

 フードを被ってみると、なんだか落ち着いた。何をイライラしていたんだか。今やってるのは、ただ使ったティッシュを捨てる作業だろうに。そんなことに、焦る意味もない。すぅ、と息を吸って僕は充分に充電したスマホをもって外に出た。

 家には、今の状況を説明する手紙を残す。お前らが僕を探したらすぐに自殺する、と書いたので探さないでくれるだろう。

 懸念すべきはうちの彼女だ。あの子とは、将来さえ誓っていた。だから、僕がいなくなって、連絡もつかないとなれば心配してしまうかもしれない。僕としてもあの子との関係は断ちたくはないので、あの子のことを思い出す度に決意が揺らいでしまうかもしれない。

 でも、今、全ての関係をデリートしないと僕は暗い部屋に閉じこもることになる。全部中途半端になってしまう。

 けじめはつけなければいけない。中途半端は大罪だ。怠惰だ。僕は誰よりそれを理解している。

 だからけじめなのだ。

 ゲームをやろうと思ってスマホを持ってきたが、ゲームをやるのも馬鹿馬鹿しい。

 僕は公園のブランコに座り、眠ることにした。

 

  ×  ×  ×

 

 起きて、僕は町をぶらつく。まだかなり早い時間なので、何人か犬の散歩で公道を歩いている人がいるが、それ以外にはむしろ誰もいない。

 これなら知人と出会うことはまずないだろう。

 と、その時であった。

「わう、わう」

 という明らかな犬の咆哮と共に

「あ、ハチ……」

 という由比ヶ浜先輩の声が聞こえた。

 ロングコートのミニチュアダックスフント。それは、いつか僕の父親が轢きそうになったという犬にそっくりだった。

 父親はあの事件のことを重く捉えていた。あのミニチュアダックスフントと男の子には悪いことをした。そう、何度も語っていたのだ。だから覚えていた。

「えと……」

 いっそのこと無視してしまった方が早い。俯いて僕は由比ヶ浜先輩も、その犬も無視して歩いていく。

「わうっ、わうわう!」

 吠えながら、犬が突進してくる。軽いとはいえ犬が全力で突進してきたのだ。僕はよろめき、前に倒れそうになる。

 その状態から体勢を整えたがゆえに、被っていたフードを脱ぐ破目になった。

「チッ、なんだよっ! まったく」

 突進してきた犬にガンを飛ばし、そこから視線をスライドさせて由比ヶ浜先輩にもガンを飛ばす。もはや今、由比ヶ浜先輩は他人だ。比企谷先輩を師匠としないのなら、由比ヶ浜先輩に興味を持つ理由なんてない。

「ね、ねえ……ハチ?」

「……なんすか」

 無視はきつそうだと判断してすぐに、普段とは違う声を出す。どちらかと言えば素に近い、ここにさえ怖いと言われた日木宗八の声だ。

「な、なんで学校きてないの?」

 由比ヶ浜先輩の顔に恐怖が見える。いつか、雪ノ下先輩のきつい一言を聞いたときよりもずっとずっと泣きそうな顔だ。

 ――でも、だからなんだ?

「なんで知ってんすか」

「へ? そ、それは平塚先生が……」

「そっすか。でも先輩。俺、退部したんすよね。あんたらとやってられなくなって。なのに『なんで学校きてないの?』って、そりゃないっしょ。俺は見限ったんすよ」

 世界も、学校も。

 世の中には、少しくらい僕の期待に沿う人がいると思っていた。人数の多い高校でなら一人くらいいてもおかしくない、と本気で思っていた。

 で、比企谷先輩を見つけた。奉仕部での活躍。それこそ、由比ヶ浜先輩の件に関しては僕では決して思いつかないことをしてくれたし、生ゴミ先輩のときも僕をも救うほどの言葉をこぼしてくれた。

 けれど、白けた。

 好意には鈍感。いや、敏感なくせに気づかないフリをする。それを偽物と言わず、なんと言おう。

 そんなクソみたいな欺瞞を求めていたわけではないのだ。

 けれど期待していた比企谷先輩でさえ偽物を許容するという事実を抱え、その中で僕はあの人を妄信していた。

「悪いっすけど、俺はあんたらが嫌いだ。最初っから、あんな部活で仲良しこよしするなんてなぁ! 気持ちわりぃと思ってたんだよ! どいつもこいつも、うっぜぇんだよ! 俺の前に現れるんじゃねぇ、雑魚がッ!!!!」

 裏切られたことにショックを受けて、逆ギレするなんて最悪だ。でも、いい。

 いっそのこと、とことん嫌われてしまった方がいいのだ。それに、今の僕は素に近い僕だ。

 ――ここのこと以外はどうでもいいとさえ思っている僕だ。

「え……ハチ?」

「うるせぇ! 俺は、犬なんかじゃねぇんだよ!!」

 不満が全部爆発した。

 犬に吠えられる。

 はっ、俺が悪いのかよ。全部、俺が。

 まあ、そうだろうな。今までだってそうだった。いじめられるのも、いじめに歯向かえないのも全部俺が悪くて、いつも強者に救われて、庇護下に生きて、迷惑かけてきたんだから。

 だから強者なんて嫌なんだよ。お前らさえいなきゃ、俺は悪くねぇのによ。

「ごめん……」

 空気を読む彼女には、もうそれしか言えないと分かっている。それを利用している自分に嫌気が差した。

 結局今の俺は、一番嫌いな俺じゃねぇかよ。




読んでもわかる通り面白くないです。
スランプというか、原作から離れているせいでてが止まっているので、しばらく週に一度プラスか気が向いたらで投稿します。ごめんなさい....
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。