やはり師匠の青春ラブコメはちょーかっこいい。   作:黒虱十航

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この巻はいじめ、不登校への偏見が入っていたりとか(一応、私見のつもりではありますが)原作改変がはなはだしかったりとかするので、嫌な方は見ないようにお願いします。
その分、ここを読まないからわからない伏線はなくすつもりですので。

それでは、どうぞ。


一色いろはは狂わせる。

 見慣れた地元の駅を離れ、ワンボックスカーは進み始める。平塚先生の運転する車はインターチェンジに向かった。僕たちの目的地である千葉村に向かうなら、カーナビの示す高速道路に行くのが一番よい。

 車に揺られながら、僕は深くため息をついた。

「ついてねぇなぁ」

 別に来たくなかったわけじゃない。むしろ、楽しみにしていた。

 奉仕部の合宿、なのだから。

 夏休みには入って少しして、ラインのグループ会話で平塚先生が合宿について話した。

『平塚静です。夏休みに奉仕部での合宿を予定しています8月1日から8月3日までですので予定を空けておいてください』

 とか、なんかそんな感じのやけにお堅い文章だった。平塚先生、普段と文章違いすぎるだろ、とか色々思ったわけなのだが、まあそういう人がいることは僕も知っていたし、省木がそうだったのでわざわざ気になるところではなかった。

 気になったのは、合宿のメンバーについて。

 夏休みに奉仕部が合宿する、となればそれはほぼ確実にボランティア活動だろう。ならば人手は多いほうがいい。そう考えた僕は平塚先生と交渉し、最終的に戸塚先輩、ここも一緒に行く事になった。なんか奉仕部だけの合宿じゃないらしいし。

 で、朝、僕たちはばっちり指定されていた場所に集合した。

 ここと一緒にラブラブしながらもきっちりと時間を守って集合したので、問題はなかったはずなのだ。

 それなのに、問題が発生した。

「いろはちゃん、サッカー部とか大丈夫だったの?」

「あ、はい! 大丈夫ですよ。むしろ、ここと一緒におでかけって最近できてなかったんで、誘われて嬉しかったですよ♪」

「え、いろはちゃんとこっちゃんって仲よかったの?」

「そうですよ! いろはは私の可愛い妹です!」

「誕生日的には私の方が年上だけどねっ☆」

 問題を生じさせた張本人がきゃぴっとした声で由比ヶ浜先輩と、ここと話していた。おのれ一色め……どうしてお前がいるんだよ、そもそも。

 まあ、そんなこと聞かなくても分かってるんだけどな。

 ようするに、夏の合宿→海や川で遊べるんじゃね?→水着!→あ、じゃあ愛する妹の水着を見たい! という、ここの変態な面が出てきてしまったのだろう。あ、わかるだろうけど別に一色とここは血の繋がりがあるわけではない。ただ、ここが一色の事を妹のように可愛がっているだけだ。

 僕がここを誘うと、ここは快諾すると共に一色を誘いたいと言い出した。一色と仲がいいわけではない僕はできればお越しいただきたくなかったが可愛い可愛いここ頼みということもあって断れなかった。そのことに調子に乗りやがった一色はここの隣、という特等席を雪ノ下先輩と共に奪っていったのである。

 なら雪ノ下先輩も悪い、という気もするが雪ノ下先輩にそういう気遣いを期待するのは間違いだと知っているので諦めた。なんもかも、一色が悪い。

「ふっ、まあたまにはいいだろう? 君とは話したいこともあったしな」

「たまにはですか……正直、その話したいことに心当たりがあるからこそ、今回は回避したかったんですよ」

 後ろでは女子勢と師匠がいる。だからその中に混じりたい、というのもある。でも、今回一番問題なのは、〝このタイミング〟で、〝平塚先生の隣〟になってしまったことだ。

 と、ここであまりに唐突だが一年生の夏休みの宿題について語ろう。

 一年生、ということもあってその宿題は非常に少ない。いや、高校というものは宿題が少ないものなのかもしれない。まあ、そこはどうでもいい。別に僕は宿題が嫌なわけではないし。

 で、今回、宿題として出されたものの一つに人権作文、というものがある。……もう話が見えたとか言うなよ。最後まで説明させろ。

 その人権作文だが、夏休みに入るまえの授業で原稿用紙を配られた。指定枚数は原稿用紙二枚以上。平塚先生は、さすがに五分では原稿用紙二枚を埋めきれないと思ったのだろう。授業で残った時間、それをやってもいいと許可を出した。

 が甘かった。僕は、それをきっちり五分で終わらせ、夏休み間、持っているとなくしそうだからという理由で平塚先生に提出したのである。――後々、胃が痛くなるとも知らずに。

「あの作文に関しては、教師としても人としても褒める気にはなれなかった。いや、否定すべきだとすら思ったな」

「そうですか。まあ、そうでしょうね……」

 逆に、あの内容を褒められてしまう人間が教師をやっていたら、僕は一刻も早く教師をやめろという。人としても教師としても、そりゃ失格だ。

 そこまでの内容だったけれど、でも僕はそれを不真面目に書いたわけではない。むしろ今回に関してはワナビとしての全身全霊をかけて書いたと言ってもいい。

 小町、雪ノ下先輩、由比ヶ浜先輩、一色、ここの楽しそうな会話と師匠のけだるそうなため息を聞きながら、僕は自分の書いた作文を思い出す。

 

 僕は不登校児の人生は潰れてしまえばいいと思っている。

 無論これは、病気などによって入院していて学校に来れていない人をカウントするものではない。僕がここで不登校児、と定義するのは精神的な理由によって教室にこれていない状態の人のことを言う。いじめ被害者とかもそうだし、いわゆる教室に行くハードルが高い人。そういう人はどんな事情があっても、消えてしまえと思う。

 何故か。簡単だ。不登校児は教室にくる。ただそれだけのことができないのだ。そりゃ、人が怖いのかもしれない。いじめられてきたって人なら、またそうされるのかもしれないというトラウマに襲われるのかもしれないし、なんとなく学校にいけないって人にも苦悩があるんだろう。

 でも、そんなの学校に行ってる人間だってもってる。いじめられても、学校にいけている人はいる。ソースは僕だ。かつて、僕はいじめられていて正直行きたくないと思っていたがそれでも必死に学校に来ている。その理由は簡単だ。他の奴が行っているから。それに僕にだって苦悩くらいある。でも、その上で行っていたのだ。

 まあこんなこと言うと『お前は不登校児ほど悩んでいない』とか言う奴がいるだろう。でもな、そんな奴に僕は言ってやろう。悩みに大小なんてねぇよ、だったら不登校児の悩みが僕の悩みよりでかいって証拠出してみろよ、と。

 不登校になってなければ、どんなに深刻な悩みでも大したことないっていうのか? そんなの、それこそ差別だろ。

 まあ不登校児っていうのは基本的に自分がダメだ、と思っている。自分が弱いのなんて分かってる。でも、そこで終わりだ。ダメで、弱いとわかった上で弱い者の戦い方をしない。自分がダメなら一度、無理矢理でも教室に連れて行ってもらえばいいのに。でも、それさえできない。人と関わることさえも恐れる。

 人と関わることが恐ろしいことだ、とは僕も思う。でも、だからといってそれを忌避してしまってはだめだ。少なくとも、義務教育である中学までは。

 それさえ終われば、自由に生きればいい。高校に行きたくなければ、行かなきゃいい。でも義務教育である中学まではダメだ。

 結論。

 不登校児が不登校児のままでいるのなら、そいつの人生は消えてなくなってほしいです。

 

 社会的に見て、一般的に見て、正しいとは思わない。でも、不登校児について僕はこう思っている。

 でもね、平塚先生、時に鉄拳制裁も厭わない人なんすよ。

「……すみませんでした、書き直します。そう言えばいいんですか?」

 暗に、そんなこと言うつもりは無いと伝える。

 そうだ。そりゃ、胃は痛い。この状況、なに言われるかたまったものじゃないからおちおち気を休められない。

 でも、だからと言ってあの作文を否定するつもりはない。

「いや、別に構わないよ。褒めるつもりにはなれない。……でも、君にも考えがあるんだろう?」

 運転しながらだったけれど、確かにその意識は僕の方に向いていた。平塚先生の言葉に僕はふと過去のことを回想させられる。

 小六のときに書いた作文。そのときの担任の反応。それを思い出して、僕は平塚先生に訊いてみたくなった。

「先生。一つ訊いてもいいですか?」

「ん? なんだね? 年齢以外なら答えてやろう」

「え、じゃあ生まれた年を」

「あ?」

 目はマジだった。

 いや、まあここで突然年齢以外とか言い出した平塚先生が悪いと思いますけどね。だってこの状況でさすがに年齢は聞かないでしょ、KYでも。

「冗談ですよ」

「だろうな。そうじゃなければうっかりファーストブリットが決まってしまうところだった」

「ふぁーすとぶり? 何ですか、それ」

 聞き覚えのない単語だった。久しぶり、みたいな感じの言葉だとは思うのだが。憶測で言葉を使うのはよろしくないから訊いたのだ。

 しかし僕の質問に、なぜか平塚先生は悲しい顔をした。

「ごめんなさい、戦闘アニメ自体、あんまり興味なくて」

「そ、そうだな。戦闘アニメだからな。古くは無いからな!」

 うわぁ、なんか一生懸命だなぁ。そもそもとして別に年じゃないんだし、気にする必要ないのに。それはそうと、本命の質問だ。

「で、本題なんですけど。――先生はいじめをしてはいけない、と思いますか?」

 問いに、平塚先生は顔を顰めた。それは、どこか答えにくそうな顔だ。

 いじめをしてはいけないか、という教師なら即答すべき質問に対して、答えにくそうな顔をした。そのことに、僕は感動する。あの時の担任とは違うんだな、と思って純粋に嬉しくなった。

「ま、いいですよ答えなくて」

 だからわざわざ答えを聞く必要なんてない。答えるのに戸惑った、という事実だけが重要だから。

 それからは、平塚先生とどうでもいい会話をして、時々よいしょして、千葉村にたどりつくまでの間、待った。

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