【死んだと思ったら】ブラックに来てしまった【刀剣男士?!】   作:午後ティー好き

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読んだ後の苦情は受け付けませんのであしからず。

自衛大事!!




【死んだと思ったら】ブラックに来てしまった【刀剣男士?!】

 

 

けほ、けほ…っ

 

また風邪でも引いてしまったのかと目の前の事実から目をそらそうとするが、内蔵が焼けるような痛みと喉から上がってくる鉄さびのにおいがそれを許さない。

 

無常。うん、知ってる。

 

まぁ、風邪なんかで血を吐くわけないからいくら何でも無理がある。

 

そして、僕達『刀』が風邪をひくわけが無いのだから。

 

 

 

 

 

とはいっても今は刀剣男士として、審神者と契約し肉の体を得ているから人間がそうであるようにひくのかもしれない。

 

僕が『私』で在った頃の、話。

 

僕は今でこそ刀剣としてここにいるが、一つ前はそこらへんにいるただの人間だった。

それが『私』で在った頃ということ。

 

『私』はいわゆる記憶を持ったまま転生もしくは成り代わりをしたらしい。誠に遺憾である。激おこだ。

 

事実とは小説より奇なりとはよく言うがなんで僕なんかに起こるんだろうか。

しかもどうやら私もやっていた大人気ゲーム『刀剣乱舞』の世界。

何が困るって今現在進行形でそんな事が起きてるからだ。

このパターンは成り代わり主がブラック摘発してハッピーなendまで持ってけってことなんだろーか。小説で読んだことがあるし。

無理だろ。冗談キツイ。しかも僕は前世女だったんですけど。

 

 

レアの為の無理な進軍。

赤疲労、重傷進軍当たり前。刀装もあったりなかったり。

手入れはお気に入りか本当に折れる一歩手前くらいにならないと受けられない。

折れる一歩手前でも使えないと判断された刀は放っておかれ、そのうち無理な進軍で折れる。

濁った笑い混じりに振り下ろされる拳。

無理無謀な命令を言霊で命じられては罰だと縁ある者の前で見せしめのように折られる仲間達。

 

見目美しいものや女と見紛う程華奢なもの、愛らしい幼子の姿をしたものたちを嫐る、下卑た声。

 

皆、皆。傷つき、折れてゆく。

まだ誰も堕ちていないのが不思議なくらい。

 

この地獄のような場所に来てから来てからひと月くらいしか経っていないのに知っているだけで両手でも足りない数の刀が折れた。

 

 

そして、僕。

僕は気に入られたらしい。

 

革で作られた悪趣味な首輪

歩く度に引き摺りしゃらりじゃらりとうるさい鎖が繋がる左足の枷

鎖こそ付いていないが右足にも両の手首にもまるで趣味の悪いアクセサリーのように付けられた枷

 

そして、審神者は僕が泣き叫ぶ様に楽しみを見出したようだった。

 

これが一番嫌だ。

他のことには……夜伽でさえなんの抵抗も見せなくなった(手入れの催促等に使う時はもはや手段として割り切っている)今でも、これには出来るだけ、精一杯の抵抗する。

暴れて、叫んで…言霊で押さえつけられて何も出来なくなるまで…。

例え、審神者を喜ばせるだけになったとしても。

これだけは嫌だった。

もちろん枷に鎖で繋がれているので暴れれば怪我もするし痛みを伴うがそんなものは瑣末なことだ。

 

なんて、惨いことをするのだろうか。

 

僕の目の前で刀剣をさんざん痛めつけるのだ。

己の快楽のためだけに。

 

 

僕を拘束した上であえて言霊では縛らず、ある程度意味をなさない抵抗を楽しむように眺めた後、言霊で押さえつけて目の前で殴り、蹴り、切りつけ、折るのだ。

わざわざ僕に言霊で折れと命じることすらある。

 

何より悲しいのは僕のせいで折られるようなものなのに誰一振りとして僕に恨み言を言ってくれないのだ。

僕のせいなのに。自らの手で折ったことも一回や二回じゃないのに。

折れてゆく本刀も、残される兄弟刀や仲を良くしていた刀でさえ、一言も僕を責めようとしない。

 

それがなによりも痛かった。

 

 

 

他にも何日も吊るされたり、毒を飲まされたり、焼きごてのようなものを押し付けられたり、変なものを使われたり、なにやら怪しい術の実験台にされたりと、間違いなくエログロで両方年齢制限がかかるおおよそ一般の人が知ればドン引きするような事を沢山されている。片目をえぐられたこともあった。

そのまま折れてしまえたら良かったのだが折れそうになると手入れされてしまい折れることが出来ない。

 

 

一つ救いだったことは暴力は無くならないものの性的な虐待の被害がほぼ僕にのみ向かうようになったこと。

普通の野郎ならともかく(いや、駄目だが)見た目だけとはいえ小さい子の悲鳴や泣き叫ぶ声を聞きたくないし、絶望に染まっていく目を見たくない。

むりやり絶対ダメ!!

ロリショタイエスノータッチ!!!!だろ!!!

それに『私』はゲームをやっていたしキャラクター達が多少の好みの差はあれど大好きだったのだ。

オリジナルキャラクターを創作してしまうくらい。

 

いたいっ…あいたたたな感じだったのは認めよう

 

 

楽しいことももちろんあったけれど苦しくて辛いことの方が多かったから、何かを心の支えとしていないと負けてしまいそうだったんだ。

 

だから、オタク趣味に!はしっても!!しょうがないよね!!!

引きこもってなかったし!

無遅刻無欠席だったし!七年くらい!!

成績も悪くなかったし!

友達も少なかったけどいたし!

 

多少人嫌いだったけどさ…

 

いいじゃないか!リアルに影響はほぼ出してない!

 

 

ま、そんなんでもおそらく死んだんだけどね☆

 

その日はなんだかだるい日だった。

なんか体調悪いな?って思いつつも学校を休むわけにもいかないと登校したんだ。

専門学校は学費高いし厳しいから。

で、授業を受けてたんだが突然動悸が激しくなって、いつものかと放っておいたのが悪かった。

どうやら放置しちゃイケないタイプの発作だったようで授業が終わり昼休みに突入しても治まらず、息が苦しくなって咳込みそのまま痛みにもがきながら……倒れた。

倒れつつ思ったのは今が休み時間でしかも4人しかいないクラスメイト達は皆昼食を買いに出ており、後二十分は戻ってこないだろうということだった。そして、別にいいや、とも。

 

嫌なことが重なってかなり投げやりに近かったのだ。

つまりはほぼ死にたがり。

そして、床に倒れたまま意識を失った。

 

 

それから私の主観的には数秒でここの審神者に顕現されて名乗って契約を済ませたところでやっと意識が現実に追いついた。

ここ、ヤバ気な感じがする。

空気が淀んでる、どころか穢れが溜まってる。

 

ん?なんで穢れなんかがわかるんだ?

なんて思ったのもつかの間。

今しがたした自己紹介(?)を思い出して心の中で白目を向いた。これって暇つぶしに考えたオリジナルキャラクターの名前じゃないか?!?!!!!!!!

と。

内心あうあう言いつつ動揺しようと時間とブラック審神者はまっちゃくれない。

早速喰われた。

ナニをって?

聞いちゃあかん。前世は女だし、性行為どころかキスもしたことなかったんですけど……腐女子だったけどね…………。

男になったショックを受けるまもなく怒涛のクソ審神者アタックだったからね……デブだしハゲだし臭いし何より気持ち悪い。全てが。最悪。

中身でどれだけ焦っていようが吐きそうになってようが現実には鉄壁の表情筋で無表情のままだっただろうけどね。…そういう設定でしたありがとうございます。

過去の『私』ナイス!……多分。

 

そうして衝撃のさよならとこんにちはを終えて

縛られて吊るされたりあー……うん。ちょっ…いやかなりなことをされる日々。

 

それでも、私がゲームをやっていた時の初期刀である(ゲームの本丸にいた子とは別刀とはいえ)山姥切国広、チュートリアル鍛刀で来てくれた五虎退。それから大好きだった青江。

 

嬉しくないわけがない。

ホワイト本丸だったら腐女子根性で萌えられたんだけどな……。

無理やりもモブレも監禁も似非SMも美味しいのは二次元まで。三次でやったら惨事。コレ絶対。

環境が悪すぎてそんなの言ってられない……とか悲しすぎるよ。

 

 

 

 

 

慣れたくはなかったがいい加減夜伽にも慣れた頃。山姥切国広は厚樫山に出陣中、検非違使に。五虎退と青江は京都市中に出陣中、高速槍にやられて折れてしまったことを聞いた。

 

こんな環境でも…いやだからこそ仲良くしていたからか僕の中で何かがこわれた音がした。

 

泣かないと決めたはずなのに。

流石に無理だった。

 

来て数日で枯れたと自分に言い聞かせたはずの涙が溢れて止まらなかった。

情けなく泣き続ける僕を小夜君と長谷部さんが慰めてくれた。すごく優しくてそれが哀しくて悔しくて絶対にこの地獄を終わらせてみせると強く強く唇を噛み締めた。

 

 

 

 

 

ちなみにここの審神者は月と狐、鶯、虎徹兄弟、日本号、物吉、不動、源氏兄弟、数珠丸難民で、それ以外の刀帳は埋まっている。

なのに、今この本丸にいるのは20〜30振りほどでマジギルティ。なんで変動してるかって?

折れては来るからだよ。言わせんなくそったれ。

 

 

今はなんちゃって刀剣男士だが、僕にだって元人間なりの意地がある。

人間は力を貸してもらっている側なのだ。

それ以上に僕はあまり出陣させられていないとはいえ共に助け合い、むしろ練度の低い僕は随分と助けてもらってばかりだから。

 

そんな顕現されては折られてゆく恩刃達をこのままになんてしておきたくなんかない。

 

一刻も早くこの地獄を終わらせるために。

 

だから、少しずつ、少しずつ。

証拠を集めてきた。

慎重に慎重を重ねて。

そして、明日。

日付的にはもう今日。

演練に連れていかれることが決まっている。

 

やっと。やっとだ。

こんのすけは封印されているのか見かけないし、この本丸の担当は汚職に塗れている。

だから、不特定多数の審神者の目があり、政府も監視している演練場での通報してもらう。

そうすれば握り潰されることもない。

 

呪具をつけられ、他にもたくさんの術で雁字搦めにされている僕はどうなるか分からないが、

皆を……どうか助けて欲しい。

 

いや、僕も本当は助かりたい。

でも、それが叶わないなら……

 

 

そんな事を白んでゆく濁った空を見つめながら考えていた。

逸る心を押さえつけるために。

憎む心を悟られないように。

 

別のことを考えよう。

ああ、物理で下半身の……えーっと………あれなところが痛い………ついでに腰痛い。

というか無事なのって顔くらいだからそこもかしこも痛い(笑)

 

うん。少しは肩の力が抜けたのかなぁ。

でも自分の自虐ネタは面白くない。

当たり前か。

 

 

ははは、しにたい。

ダメか。

みんなをすくうまでは。

 

 

 

 

 

それからゲートをくぐってやってきた演練場。

ここの審神者は狡猾で演練に出る時だけは手入れをし、刀装も良いものを付けさせる。

そうやって摘発を逃れてきた。

だが、それも今日まで。

 

今日のメンバーは隊長に僕、長谷部君、一期さん、鶴さん、江雪さん、平野くん。

僕と長谷部君以外は見事にオキニイリのレアだ。平野くんは一期さんへの人質も兼ねているのだろう。

長谷部君は練度が高いし…主命には逆らわないから、僕は……多分レアとはまた別の意味で珍しいからじゃないかな。てか、僕しかいない可能性が微レ存。弱いから意味無いと思うけど。元人間、一般ピーポーに無茶言うな。

 

一戦、二戦は辛くも勝利をつかんだ。

 

三戦目、ここの刀剣に全てを託そうと思った。

 

そこの刀剣男士と審神者は試合が始まる前の数分でも、仲が良くいい関係を築いているのが見て取れた。

どこか三日月系統の達観した様な雰囲気を感じるが、刀剣達を見る時に目に浮かぶ優しさは本物。

そして、審神者練度と様子を見るにかなりベテラン。

これは大事。何故かというと新人はツテも少ないだろうし、弱いものを巻き込んでは共倒れしかねない。

……それだけは避けたい。

 

相手のメンバーは最悪なことに隊長は三日月宗近、浦島虎徹、長曽祢虎徹、蛍丸、髭切、膝丸と見事にうちの本丸にいない刀剣男士揃いでしかも三日月宗近がいる。

僕のところのクソ審神者は大まかにいえば月狂いとカテゴライズされるブラック審神者なので刺激しそうなものだったがここでこのクズがボロを出して摘発されれば皆、助かる。

最悪も考えておかないと……刺激された挙句摘発されなかったら、媚を売って少しでも被害を減らさなければ。うーん。何系があのクソの最近のお気に入りだったかな?鎖かなぁ?無垢で泣いちゃう感じかなぁ?……うえぇ胸糞。あ、泣くとはいっても演技だからノーカン。

 

 

試合前に審神者同士が挨拶をする段になり、逸る心を押さえつけようとこれからの手順とともにそんな事を考えているとクズが苛立った顔を気持ち悪いニヤニヤ笑いに変えたかと思うと

「俺が勝ったら三日月を寄越せ」

と因縁をふっかけたのだ。

向こうの刀剣は殺気立ったが向こうの審神者がす、と軽く手で制したことで収まる。

彼とて腹は立てているのだろうが冷静さは失わずに極々落ち着いた態度のまま

「お断りする」

とだけ答え踵を返し相手にしない事にしたようだ。

 

賢明な判断だ。クズの戯言に付き合うだけ時間の無駄だ。

相手にされないことか気に食わないのか顔を赤くしてずんずんとこちらに向かってきたかと思うと「絶対に勝て」と言い捨て観覧席に荒い足取りで向かっていった。

 

 

そして隊列を組み、試合が始まる。

隠蔽と索敵はどっこいくらいだろうか。

だがヤバイことに相手方に大太刀がいる、ましてや演練の悪魔と言われている蛍丸だ。

おそらく一撃で、最低でも二振りの刀装が壊れる。

最悪なら三振りが戦線崩壊に追い込まれるだろう。

平均的な練度はほぼ同じだが……と考えて、ふと勝たなくてもいいのだと思い当たって安心したような虚しいような気持ちになった。

ああ、枷のない手足が軽いはずなのに重い。

つらつらと考えてはいたがその間にも索敵の結果を受け取り、口は陣形を指示していた。

無意識凄い。

残念ながら陣形を見抜けず失敗していたので統率を意識した方陣で、迎え撃つことにした。

 

遠戦。あちらは浦島虎徹と長曽祢虎徹しか遠戦の刀装をつけられる刀剣がいないのでこちらが少しだけ有利だ。

 

僕は弓兵を展開する。

平野くんは銃兵。

長谷部さんは投石兵。

 

こちらは浦島虎徹が展開した弓兵からの直撃をもらってしまった僕が弓兵を2つとも壊されたくらいで済んだ…どうやら長曽祢虎徹は投石兵は装備していなかったようだ。

あちらは髭切の軽騎兵二つ、蛍丸の軽騎兵一つが破壊。

 

そして白刃戦が始まる。

 

 

直前にした打ち合わせでは練度が高く演練の悪魔と名高い蛍丸に刀装を3つ装備できる江雪さんと一期さん、三日月宗近に鶴さん、長曽祢虎徹に長谷部さん、髭切と膝丸は練度が低いようなので僕が時間稼ぎ、浦島虎徹に平野くん。

 

打ち合わせ通りに長谷部さんには及ばないがそこそこの機動にもの言わせて髭切に斬りかかり戦線崩壊に追い込んだ。

兄者ァ!と叫ぶ膝丸の隙をついて背後から斬ったが刀装に阻まれて通らなかった。

正面から斬り結ぶのは分が悪い。ついでに刀装も無いし。

力で押し負けてしまっているから、いなして間合いを取ろうにも相手だってそう簡単には逃がしてはくれない。

鍔迫り合いになってじりじりと押されつつも膠着状態になった。根性で。

首から下げていた小さな記録媒体が上着から飛び出しているのに気づいてヒヤッとしたものの、これはある意味チャンスと兄を倒された怒りからか結構怖い顔をしている膝丸にそっとごくごく小さな声で話しかける。

 

「…ねぇ、ひとつお願いがあるんだ」

「なんだ?言っておくが勝負は譲れないし同じ本丸の仲間を売ることもできんぞ」

「…これを、ね。君の主様にお渡しして欲しいんだ」

「?」

「…これを見ればわかる。みんなをたすけたいんだ。君の主様を害したり君の仲間を奪うようなことはしない……僕の刀身にに誓ってもいい」

「おい!………よくわからんが大事らしいな。主に渡そう。見るか見ないかは主にまかせるが」

「…ありがとう」

 

クズから死角になっていることを確認し首から下げていた紐をちぎって左手に握り込む。

 

そして数回打ち合い。

 

あたかも体力が尽きたように力を抜き、斬られる。その時膝丸に倒れかかり記録媒体を握らせた。

 

もちろん、まともに受けた僕は戦線崩壊。

 

そして、戦線崩壊判定を受けた僕は野球場のベンチのような控え場に転送された。

もちろん政府の技術?によって刀装ごと回復している。

 

それから間もなく平野くん、一期さん、鶴さん長谷部くん、江雪さんの順番で戦線崩壊。

もちろんあちらの勝利。Cだけど。

クズが喚く。負けたのが相当に気に入らず、腹立たしい模様。苛立ちに任せて突然平野くんを蹴ろうとした。

刀剣男士なら楽によけられるような型もない蹴り。

だが、避けれは次は言霊で縛られて抵抗できないようにしてからさらにひどい折檻を受けるだろう。

縁のあるものや仲の良いものを虐待されるかもしれない。折られるかもしれない。

 

覚え込まされた恐怖が体を縛るのだ。

 

けど、僕は考える前に飛び出していた。

平野くんを抱きしめ運動不足のデブのくせにそこそこ強い蹴りを背中に受けた。

あんまり痛くはないけど、やっちゃったなぁ。

どうか誰も八つ当たりされませんように。

……折られませんように。

 

 

平野くんが悲痛な声でやめてくださいと言うが離してなんかあげない。

大丈夫。僕は索敵が低い代わりかは知らないが生存はちょっとだけ高めだ。

 

二度目は術式かなにかで強化したのかいつものよりもずいぶんと強い蹴りを叩き込まれ、ある程度ころがってしまうが平野くんを守るようにぎゅっと抱きしめて衝撃が行かないようにする。

ただでさえ生存が少ない短刀たちはいつ折られてしまうかわからないのだから。

 

もう、何振り看取ったか

 

見送ったか。

 

壊したか。

 

わからない。

 

勢いがなくなるかなくならないかくらいでまた蹴られる。今度は後頭部。

次はまた背中。

 

ごろごろ、ごろごろと転がされる。ついに平野くんを手放してしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

ああ、痛い。どうして今蹴られているんだろう。ぐるぐるする。あ、吹っ飛んだ。

痛いなぁ、壁にぶつかったじゃないか。

 

下卑た笑い声。怒号。悲鳴。悲鳴?

 

悲鳴、誰のだろう。助けなきゃ。

すぐ近くのはずなのによくわからない。

 

ねぇ。きみはだれ?

なかないで。

 

今、こいつを終わらせるから。

 

 

ゆらと立ち上がり、わめき散らすクズを睨みつける。

 

ついに頭の中にまで侵食してきた『従え』といううるさい声を断つべく刀(自分)を一閃。ああ、切ったはずなのに頭が痛い。耳鳴りが酷いし、割れそう。

その時に何やらよくわからない呪術の核を埋め込まれて手入れをされても見えなくなっていた左目がぐちゃ、と潰れる音がしたが別に気にしない。だって見せしめにされたあの子の方がずっと痛かったから。

 

ぴし、と音がする。

 

呻きながら一歩、踏み出す。クソが何かを叫んで嫌に重い音を立てて左足が落ちた。

気にもならない。だってあいつにぐちゃぐちゃにされた挙句僕に斬られたあの刀はそれでも僕に心配かけまいと笑って折れた(逝った)。

 

 

ぱき、と音がした。

 

嗤いながら一呼吸で接近し振りかぶる。あれが何かの印を結んで札を投げつけてきた。右腕で薙ぎ払う。残念、利き腕は左。

札が弾け触れてしまった右腕が燃えて焼けて焦げて使い物にならなくなるのがわかる。

だから?

だって皆、皆。もっと痛かった、苦しかったはずなんだ。

この程度の痛みが何?

 

札の衝撃で狙いが狂い、クズの右腕を落とすに留まったがこれでいい。あ、でもおそろいみたいなのは嫌だな。

 

クソの劈くような悲鳴が耳障りだ。

 

これで______もう、大丈夫。

 

ぱきん。

 

 

終わりだ。僕も、お前も。

 

 

僕を呼ぶ声が聞こえる気がした。

 

ごめんね、眠いんだ。疲れちゃってさ。

 

んん?冷たいな?寒いかも。

まあいっか。気にならないし。

 

 

ああ、堕ちてゆく。

 

 

「置いていかれるのは辛いけど…。置いて逝くのも、嫌なものだね…」

 

 

ねぇ、僕を■してよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゆき

 

ゆきさん

 

おきてよ

 

 

【雪守】

 

 

 

 

 

 

優しく、そっと、触れられたり、さすられる。

大きな手、小さな手。

あたたかい、手。

 

性の匂いのしないただひたすらに親愛のこもった手つきにぬくもりと心地よさを感じる。

力を与えようとするように手をきゅっと握られてまた少し、あたたかさが増す。

 

 

「……それでですね。この間いち兄がやっと笑ってくれたんです。小さくですけれど、ちゃんと。『ふふ、そうだね。平野』って。

 

ずっとずっと僕達を雪さんや皆様と守ってくださっていて、その分、たくさん傷ついていたのは知っていました。でも、僕は何も出来なかったので……少しぎこちなくても…笑顔を見ることが出来たことが嬉しいのです。

 

僕達を引き取ってくださった審神者様も良くしてくださっています。

 

みなさん…、少しずつ笑えるように、なって来たんです。

昨日、お花見も、しました」

 

ん?これは平野くんかなぁ?

 

左手をそっと握られてる。

この遠慮がちな感じはやっぱり平野くんだな。

 

遥かに年上だってわかっててもついつい撫でたくなっちゃうこの感じ。

 

「お話したいことが、たくさん、あるんですよ…っ」

 

うん。起きよう。思う存分なでなでしよう。

ご所望とあらばお話しもたくさんしちゃおう。

 

そして、潔く一期さんにお覚悟されよう。

 

沈みそうになる意識を引き止めつつ、薄目を開けば木目の天井。

左側にやはり平野くん。

日差しがぽかぽかとあたたかいせいかうとうとしてる。

うん。控えめに言っても天使かな。

かっこかわいい。うん!!すっっごくかわいい!!!

僕の手を優しく握りながら正座した太ももの上に置いている、だと!!!?!!?

 

あ、ぼくしんだかも。

 

いやいやいや!!

僕が置いたわけじゃないからセーフセーフ!!!

 

左手がまさにheavenなので(どういうこっちゃ)よいしょとギシギシいう身体をゆっくり動かして寝返りをうち、右手を伸ばして起こさないように優しく撫でる。

サラッサラ!!何この御髪!!

やっぱり平野くんは天使だったんだね(壊)!!

 

さっきの話によるとどうやらホワイト本丸に引き取られたらしいのと、それを裏付けるように開けてある障子から見える美しい庭。

怪我ひとつなく赤疲労にもなっていない平野くん。ちなみに内番服。ゲーム以外で初めて見た!

 

僕も手入れされたのか最終的に\(・ω・\)SAN値!(/・ω・)/ピンチ!というか見せられないよ!なことになっていた左目やら右手やら左足やらは治っているらしい。とりあえず右腕と左足はちゃんとあるし痛みもないから。

ただ左目は包帯を保護するようにぐるぐると巻かれているから…わからないが。

 

こっくり、こっくりと船を漕ぎ出した平野くんが危なっかしかったので、寝すぎてしまったのか嫌な感じに重い身体を起こして平野くんを男の膝で悪いがのばした足の太ももの上に(布団ごしだよ!!)誘導して寝かせる。あたたかいとはいえ風邪をひくといけないので布団の上にかけてあった羽織を平野くんにかけてこれぞ日本庭園!といった豪奢な庭と平野くんの寝顔を堪能する。

 

 

 

平野くんの髪をすくように撫でながら樹齢何年かも予想がつかない桜の木に見とれているとやや早足気味の軽い足音が聞こえてきた。

うん。この五感の鋭さは流石刀剣男士クオリティ。

 

その刀は誰かを探しているのか不規則に止まっていくつかあるらしい部屋を確認しつつこちらに向かってくる。

そして、ひょっこり顔を出したのは小夜くんだった。猫さんかな。きゃわゆい。

 

「!!?」

「小夜くん?」

 

僕が起き上がっていたことにか、平野くんが眠ってしまっていることにか、はたまた違うことにかはわからないがとても驚いたようで、音もなくその場で跳ねた後またほとんど音を立てることなく着地したその姿が驚いた猫のようでとても愛らしく感じた。あ、やべ。顔がにやけたかもしれない。

 

それがいけなかったのか、ツリ目気味の青い目に涙が盛り上がり、ぽた、と落ちた。

 

え!?腐女子だけど短刀君たちに下心はございませんよ!!??太刀組とか打刀組とか脇差組に……嘘。実は薬研くん受けとかにもちょ…いや、めっちゃあるけど!!!

 

僕自身はlikeな大好きだよ!!!

 

な、泣かないでぇぇぇ!!!引かないでぇぇぇ!!!和撲されるぅぅぅ!!!

 

数秒間ひたすらオロオロしていると小夜くんに突撃された。

 

 

いきがとまっておはなばたけとかみえてないよ

 

ほんとだよ

 

へぶんなだけだよ

 

HAHAHA

 

 

「っぐふ!……小夜くん?僕はここだよ?」

 

 

や、倒れたら膝枕してる平野くんの首を痛めちゃいそうだからぐっと堪えたよ。

 

えへへ☆なんてね★

 

小夜くん……練度高いんだから少しは手加減をしておくれ………嬉しいけど!!!!!!

 

 

「どうしたの?怖いことでもあった?」

 

右手で僕の右横腹しがみつく小夜くんの頭を失礼ながらぽんぽんと撫でる。

ふあっふあぁぁぁぁ!!!天国ぅぅ!!!

はっ!正気に戻らなければ!!

 

「あなたが…っ、もう、起きないかと思って…っ」

 

ごめんねぇぇぇ!!!大丈夫!!!ぴんぴんしてるから!!!だから泣かないでぇ!!!心が痛いぃぃぃ!!!

 

「小夜くん。僕は大丈夫だから。…ね?」

 

「うん…っ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

て、ありゃ?泣き疲れちゃったのか小夜くんも寝ちゃった…………?

 

本格的に身動き取れないかも。

 

た!だ!し!

 

ヘブン!!癒しだよぉぉ!!!

 

あ、でもねむい、かもしれない。

子供体温あったかい。

うとうとしていると、二人を探す声がする。あ、あの声長谷部さんだ。

あ、もしかしてと部屋に置いてあった小さな置時計を見ると八つ時。

あーそれで平野くんを小夜くんが探しに来てたのかと納得した。

食べそびれちゃかわいそうだから、悪いが長谷部さんにお願いして二人の分を残しておいてもらうように台所番の刀に伝えてもらわないと。

僕?二人を起こしてしまわずに動く自信が無い。ぼすけてー長谷部さーん!

多分小声でも気付いてくれるはず!!

 

「はせべさーん…っけほ」

 

「?!!雪守っ…!」

 

あ、咳き込んだ。

 

素晴らしい機動でシュタッと開いている障子の前にまで来てくれた長谷部さんは僕を見て、涙腺を崩壊させていた。なんでや工藤。

そして、来た時と同じように走り去ってしまった。足音はない。oh!ニンジャ!いや、違うか。

 

 

なんでだろーなー?と考えているとなにやら少し遠くで騒がしくなりどどどと刀剣男士らしからぬ足音とともに(気配からして)前の本丸のメンバーが走ってきた。

走ってきた!?!

 

騒がしくしたら平野くんと小夜くんが起きちゃうじゃないか!!!

 

そして、数人は身構えるまもなくと び こ ん で き た ! ! !

 

 

あああ…これは潰れる。とりあえず二人を庇いたいが間に合いそうにない。

思わずぐっと目を瞑ったが痛くない。

 

そしてふわり、と香るのは優しい藤の香り。

ん?誰かに持ち上げられてる?

 

あるぇ?と目を開くと二振りとも寝ていたはずなのにいつの間にか僕を守るように立ちふさがっていらっしゃった。

そして何故お二振りとも本体を抜いておられるんです……?

 

そして、何故僕は長谷部さんに抱っこされてるんです……?長谷部さん目が赤くなってても麗しいですね。さすが国宝。ははは。

 

 

しかも子供抱き。

 

お姫様抱っこよりはマシだけれど!!!

すっごくいい匂いしますねって違ァう!!!

意外とがっしりしてて安定感あるしどきどきしますねってちがぁう!!

あああ、彼氏さん(?)に怒られる…っ!!!

カプはにほへしかな?燭へしかな?くりへしかな?へし燭も好き。

 

 

「大丈夫か?雪守」

「」

「おい」

「」

「雪守?」

「?!あ、はい!?!」

 

思考の中で乙女と腐女子を行き来していると少し焦ったような長谷部さんに名前を呼ばれる+覗き込まれるで顔が紅くなっちゃったよね。

恥ずかしい。ぎゃあああ。

 

「大丈夫か?」

「大丈夫だから…降ろして欲しいな。少し、恥ずかしい」

「お前なんだな。本当にお前、なんだな」

「変な長谷部さん。僕はここにいるよ」

「痛いところはないのか…っ」

「大丈夫。直ったみたい」

「雪守…」

 

 

うーん、降ろしてはスルー?

ぎゅっと苦しくない程度に力が込められる。

おおう。超いい匂いするしあったかい。

……やめれ。

あーでも長谷部さんにはアレを見られちゃってるからなぁ。うん。いろいろやばそうなものをブチ切ったのは覚えてるし。

この反応もしゃーないのか?

 

大丈夫だよ。僕は僕だし。

エクストリームは相手が相手だったからだしさ。

 

何よりも皆の元気そうな姿に目頭が熱くなりそうだ。

皆にまとわりついてた穢れも綺麗になくなってるし。引き継いだ審神者さんがかなり優秀な模様。

本丸の空気に混ざる霊力もとても清浄でどこか優しい。こんなに居心地がいいなんてなぁ。

 

あ、まだ新しく主になる人とちゃんと契約してない。

皆をこんなに明るくしてくれた人なのだからお礼を言いたいしきちんと刀剣男士として主だと仰ぎたい。

なんかもう刀剣男士の本能(?)的な………こう主に尽くしたい!みたいな欲求が溜まりまくっててなんかもやもやする。

 

そうと決まればご挨拶に上がろうじゃないか!

 

なかなか降ろしてくれない長谷部さんの肘に優しくだが的確に衝撃を当てる。

急に力が抜けて驚いた長谷部さんには悪いがやることがあるので腕をするりと抜けて床に音もなく着地する。モドキとはいえ刀剣男士ですもの。えっへん。

 

「ふふ。降ろしてって言ったのに降ろしてくれないんだもの」

 

唖然とする長谷部さんの肩にくすりくすりと笑いながらぽんと触れれば、少し拗ねたようにすまんと返ってきたので僕こそとごめんなさいと返した。

 

そして皆に置いていかれたのか走る音が聞こえてきて、現れたのは支給されるらしい審神者服を纏った青年だった。

眼鏡が知的なイケメンと言ったところだろうか。黒髪に違和感を覚えるのでおそらく染めているのだろう。

整いすぎれば冷たい印象を与えるものだが青年がふわり、と柔らかい笑みをうかべると少し幼くなり案外かわいい顔立ちに見えるから不思議だ。

そのまま青年は自分が審神者であることや本丸を襲撃されたことにより引退し政府で働いていたがここの管理を任されたこと、ここの刀剣たちが落ち着いた後ここの本丸の主となるように言われているが無理強いはしないこと。

他の本丸に移りたい時や刀解を望む時には応じることなどを話した。

自分の刀剣男士を連れていないのは襲撃で全て失った為だと悲しそうにいう様子を見るに完全に乗り越えてはいないのだろう。青年に遺された加護を見る限りとても深い絆を結んでいたようだから。

 

ここの本丸に巡る霊力を感じた時から決めていたがこの人の目を見て話を聞いて覚悟が決まった。

このお人の刀になりたい、と。

支え、守り、指揮の下戦いたいと。

 

「僕は雪守。僕は有名ではないけれど、守りの刀。あなたを守りきってみせるから折れるまで使ってほしいな」

 

思った時にはするりと口上が出ていた。

あ、正式版はこっちだった。あのクソには名乗っただけだもんな。

 

突然のことに目を見開く主は震える声でなんでと言った。

皆を守れなかった主の俺になんで、と。

相当、心の傷が深くなってしまっているようだ。

 

「あなたがいいの。ねえ、呼んで。僕のこと」

「そんな…っでも、貴方は…貴方達は…っ」

 

そんなふうに言い淀む彼に疑問を抱いたがすぐに原因に思い当たった。

あのクソ野郎が。ここでも邪魔をするか!

 

「あのクソ野郎とあなたを一緒にするんじゃありません!」

 

「えっ」

 

ん?なんで驚いてんの??

 

「人間全てに恨みがあるとでも?恨みがあるのはあのクソ野郎だけ。にしたってそんなことに労力使いたくないし、いい主に巡り会えたら大事にしたい。なにかおかしいの?」

 

なんか心外だわ。

そりゃまぁ少しの間はビビるかもしれないけどそれとは話が別だっての。

 

皆はわかってくれてたみたい。嬉しい。

 

急に契約を持ち出したことには驚いてたみたいだけど。

 

主ははっとしたような顔をしてくっと唇をかみ、恐る恐ると言った様子で言葉を紡ぐ。

 

「ぼ…俺は『白百合』。よろしくな、雪守」

 

ふわっとあたたかくなって、どこかで主と繋がったような感覚に包まれ誉桜が舞った。これが本来の契約なのだろう。

 

「こちらこそ。主」

 

する、と緩くなっていた包帯が解けて左目を開けるとこちらはまだ良く見えないものの、泣きそうに笑う主が見えた。なんか映画みたい。

 

そこから怒涛の契約祭り(?)で、主が面食らっていた。なんか泣きそうにもなっていたけど。

 

でも嬉しそうに笑っていた。

 

だから僕も嬉しくなって笑うと感極まった五虎退くんや平野くん、小夜くん、そして長谷部さんに突撃されて軽傷になった。あなや。

僕めっちゃ弱い。笑うしかなかった。

 

慌てた皆と主に手入れ部屋に担ぎ込まれ大丈夫だって言ってるのに丁寧にぽんぽんされた。あたたかくて満たされるようでめっちゃ癒された。

 

それから主に皆して胃袋を掴まれていて羨ましい!と、駄々をこねたらサンドイッチを作ってくれて僕も速攻で掴まれた。

まじで美味しい。

 

主が優しいものだから僕も作りたい!と教えて貰って作ったら上手く出来てしかも、褒めてもらったものだから思い切り誉桜が舞った。

なんか面映ゆいな。

めっちゃよしよしされた。

 

僕は我ながら単純に出来ているので褒められると頑張っちゃうよ!

と、張り切って色々やった結果厨メンバーに名前が上がるまでに上達した。

特に洋食とお菓子が得意だよ!

 

 

 

そして!念願の!出陣!!

 

僕の練度でも1振りで行けるような易しいステージだけどね!

 

なんかね!凄く動ける!!って感じ!

人間だった時よりも重くなっていた身体が凄く軽やかに俊敏に動く!

本体なんかは(当たり前のはずだけど)身体の延長線のような馴染み具合。

あの使いづらい棒切れのような感触はどこにいった?!!っていう感じ。

 

心なしか斬れ味が良くなった気がするし。

 

あんまりにも弱いし、伽()ばっかりだったから出陣してなかったんだけど刀剣男士の本能ともいえばいいのか滅茶苦茶滾る。

 

気がつけばサクサクと進み、大将首を取ることが出来た。

 

練度も上がってるんるん気分で桜をまき散らしながら帰還した。

主含めみんなにもみくちゃにされた。

スキンシップ大好きだけど激しいね!

潰れるかと思ったよ。

 

長谷部さんが助けてくれたけどね。

やっぱり子供抱っこで。

精神年齢が低いのは元人間だから仕方ないにしてもそこまで子供っぽいと思われているんだろうか。

 

むー。ちょこっと悔しい。

対等でいたいのに。

 

でもね。もとが人間だったからこそ。出来ることもあるんだよ?

 

主の書類仕事を手伝うべく書類の仕分け、簡単なデータ入力をしているとパソコンを使えるの?!みたいな驚かれ方をしたからドヤ顔で凄いでしょって笑ってみた。

照れているのが少し赤くなった顔と微妙に舞い始めた桜でバレバレだろうけどね。

 

その他にも、ねえ?

 

「僕の主に手を出したら…ねえ?」

分かってるよね?

 

誰がそんな汚いものの所に好き好んでいくのかな?

 

 

 

 

 

 

 

『僕』の実装は始まったようだが如何せん霊力がそこまで高くないのでいわゆるレアと言われる子達並みに出ないと言われているのが災いした。

 

主の刀として参加する初めての演練。

主の為に頑張るぞーとワクワクしていたのだが初戦で当たった相手の審神者が最低野郎だったのだ。

 

前の審神者だったクズ並みに穢れている。

無いわー。

しかも。そうとう刀剣を無下に扱ってるね?

 

本来付喪神は人が好きで友好的なものが多く、ちょっとやそっとでは愛想をつかされることもない。

なのに。相手の審神者は相当怨まれているようですごい怨念を感じる。

しかも。勝ったら僕を寄越せだあ?

何処かで聞いたようなちゃちな台詞だね。

 

そんな相手とぶち当たっても相手にせず勝っておいでとにっこりイイ顔で笑う主最高。

 

よーし!雪守張り切っちゃおうかな!

 

結果は僕達の圧勝。

完全勝利S!

主は隊長していた僕含め良くやったと褒めてくれた。

嬉しさに誉れ桜がひらひらと舞う。

 

午前の部が終わったらみんなで外食して帰ろうかという主の提案にあれがいいこれがいいとワイワイしていると、空気なくせに空気読めないばっちい対戦相手の審神者が不正だ!逮捕しろ!などと喚き出した。

 

うるさいなぁ。

あ、嫌な感じ。呪詛?

 

警告を一言。

 

これで退かないなら。ねえ?

斬っちゃうよ?

 

そして冒頭に至る。

人間だった時に色々な人と接してきたから駆け引きも出来ないわけじゃない。

即座に抜刀し斬りかかろうとする皆を視線で制し、お馬鹿さんに向かってにっこり笑ってやった。

こっちから斬りかかったら主に迷惑がかかっちゃうからね。ちらと見るとみんな優秀だから主を守るフォーメーションになっていた。さっすが。

 

更に頭に血が登ったお馬鹿さんは喚くだけでなく主に呪詛を飛ばしたり、何やら術を使おうとしてきたのですっぱりと断ち斬らせてもらったけどね。

僕は守り刀。

本職に劣るとはいえこういうものもある程度は斬れるんだよ?

 

「守るのは得意なんだ」

 

まだ懲りずに術を使おうとするお馬鹿さんから主を隠すように背に庇いながらまたうっそりと誘うように笑ってやる。

でも、威圧するように。ね。

 

ふふふ。かっこいいでしょ。僕。

主の「うちの子かっこいい…」って聞こえてて誉桜爆発しそう。

 

仕えるべきお人がいる。

その人のためにふるえる力がある。

場所がある。

仲間達がいる。

 

それだけで幸せだから。

 

その幸せを壊そうとするやつは。

 

「許せないんだよねぇ。ふふ」

 

本体を一閃。

 

傍から見ればただ振っただけ。

空を斬ったように見えるだろう。

 

「雪守?!」

 

主の驚いたような声。

相手のクソ野郎もなにやら喚いてる。

 

「主。後は彼らに任せて今日はもう帰ろ?」

 

ね?と安心させるように笑いかければ困惑したような主と気づいたのか主に帰りを促すみんな。

主も駆けてきた役人に事情を説明したところ、促され帰ることに決めたようだ。

 

ふふふ。

一件落着、かな?

 

 

 

 

 

その後?何事もなく帰った後に料理当番が作ったご飯を食べたよ?

 

んん?あのクソ野郎?

 

相当あちこちに手を出してたんだねぇ。

あいつが使ってた守りの呪具を斬っただけ。

それだけ、だよ。

だからその先は僕も知らないなぁ。

 

それよりも主の書類を手伝わなくちゃ!

 

 

 

 

なんたって僕はあなただけの雪守ですから!

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