東方欲望録   作:アンダーソンキャッスル

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10話 宴会と心配と制裁

「……柊?」

「はい、ただいま」

「……」

 

 慧音は眉間に皺を寄せながらも、柊を迎え入れた。

 

「おかえり」

「えっと、ただいま……です」

「随分遅かったな」

「……あ、はい、今日起きたので」

 

 慧音はお茶を用意してくれた。この家に帰って来るのも久しぶりだった。

 

「それで、どうした。また怪我でもしてるのか」

「いえ、大丈夫です」

「そうか、それなら良い」

「……」

 

 久しぶりに会ったとはいえ、それだけでは言い表せない違和感があった。慧音は今、普段とは違う気がする。

 

「もう、身体は大丈夫か?」

「はい、お陰様で」

「……」

 

 それから慧音は暫くの沈黙を貫いた。

 

「あの、慧音先生」

「何だ」

「何かありました?」

「いや、何も無いぞ」

 

 慧音はずっと黙ったままだ。床を見ながら。

 

「……そうですか」

「ああ」

 

 会話が続かない。気まずい空気が流れる中、慧音が口を開いた。

 

「柊。頭をこっちに持ってこい」

「え?」

 

 自分が動かすまでも無く、慧音が自分から頭を引き寄せた。そして。

 

「あ、あの……慧音さ」

 

 言い切る前に、柊の視界に慧音の服が覆った。

 

「……? え?」

「良かった……」

 

 慧音はそのまま抱きついて、力いっぱい柊を抱きしめた。それに対して、柊は反応を見せずに、ただ、手を背中に回す。

 慧音の涙も、この時間も暫くは止まりそうにない、柊は一言、真っ先に伝えたい事を口にする。

 

「慧音さん、心配かけてすいませんでした」

 

 

     ♢

 

 

「……」

「……」

 

 数分経っただろうか、慧音の抱く力が強くなる。色々と思ってくれているんだろうことは柊にも分かる。

 けれど。それでも柊は異変に赴いて良かったと思ってる。

 

 フランがレミリアとよりを戻せた事。それを間違いだとは思うまい。

 

 そして慧音が泣いてる理由にも大体想像がつく。心配の念もあったろうが、何よりは自責の念。

 慧音に世話になってから随分と時間も経って人柄くらいは理解したつもりだ。慧音はこういう時自分の所為にする。

 

「あの、ほんとに心配かけてすみませんでした」

「私こそすまなかった。お前をこんな目に遭わせてしまって」

 

 やっぱり、こういう人なんだ。

 

「慧音さんのせいじゃありません」

「私の責任だ。私がもっとしっかりしていなかったからだ」

 

 そう言いながら、慧音の体は震えている。

 

「俺が勝手なことしたんだ、だから責任があるとすれば俺の方です」

「お前の所為じゃない」

「……」

「お前を止められない、私が弱かった」

 

 慧音の声が一層大きくなる。

 

「慧音さん、俺は大丈夫ですよ」

「でも私はお前に怪我をさせてしまった。それは事実だ」

「……」

「お前が異変解決に行った時、私なら止められた」

 

 その言葉には強い意志を感じた。それは自分の為に言ってるんだろうけど。

 でも、違う。

 

「俺は、きっと貴方が何をしても異変を解決しようとしたよ」

「…え?」

 

 以前、自分にしてくれた様に、背中をゆっくりと叩く。

 優しく撫でるように。子供をあやすように。

 

「俺はやるべきだと思ったことを止められない質だから。異変解決に行くなって約束してもきっと咄嗟に破ってしまう。だから別の約束をしたいんです」

 

 慧音の手を強く握り、柊は言う。

 

「これからも何があっても必ず生きて、戻ってきます。だから慧音さんは心配せずに笑って迎えにきてください」

 

 そう言うと、俯いてた慧音が顔を上げた。

 

「次も必ず帰ってこい。約束だぞ」

 

 涙を浮かべながらも笑顔で言った。

 

「はい」

 

 

 ♢

 

 

「今日、霊夢の所で宴会があるらしいですし、俺たちも行きませんか?」

「行く、そこで異変のこと話して欲しいな」

 

 涙声で笑う。その姿は、吹っ切れているようでいて健気で、安心する。

 

「先に行っててくれ、柊。私は妹紅を呼んでくるよ」

「わかりました」

 

 イメージでは宴会とか苦手そうな感じがするけど。

 

「──いるぞ」

「……ん?」

 

 その声は妹紅本人のものだった。ドア前で手を壁に押し付けて立っている。

 

「いや……ほら、慧音も久し振りに柊と再会したんだから積もる話もあるだろうと思って……宴会の誘いに来た」

 

 妹紅は胸の前で人差し指を合わせながら気まずそうに呟いた。

 

「その、ケンカしてたから入るに入れず……」

「あはは、もう大丈夫だから、ありがとう」

「い、良いのか? ……いいのかなぁ」

 

 普段の強気な妹紅と違い何故かオロオロとしている。それに困惑している柊に気づき、慧音がフォローを入れた。

 

「ああ、私が普段こんな姿見せないからビックリしたんだろう。そうだろ? 妹紅」

「そうだよ。お前のそういう所私初めて見たよ」

 

 慧音の言葉にホッとした表情を見せる妹紅。そして慧音の方へ向き直り。

 

「ま、それなら尚更行こうか、宴会」

 

 

 ♢

 

 

「どうも〜霊夢いますかー」

 

 神社の中に入ると、テーブルに沢山の料理が置かれていて、人も多い。ある程度準備が済んでいたようだ。

 

「あ、柊!!」

 

 柊を見つけた瞬間フランがとんでもない速度で突っ込んできた。生身の身体の柊では避けれるわけもない。

 

「柊〜!!」

「はい、ストップだ」

 

 妹紅がフランの突進を止めた。

 

「今柊は怪我してるんだ、無茶させるんじゃない」

「それもそうね。ありがと、お洒落なお姉さん」

「えっ?」

「うん、私は、フランドール・スカーレットよ。よろしくね、 あっちの青髪が私の姉だよ」

「あっ……えっと、藤原妹紅です。こちらこそ、よろしくお願いします」

 

 予想外の反応だったようで、少し戸惑っている様子の妹紅。

 

「どうも、妹が迷惑かけたわね」

「お前が姉さんなんだろ? 常識の教育してやりなよ」

「なんで私達が人間に合わせなきゃなんないのよ」

「これだから妖怪は……」

 

頭を押さえながら愚痴る妹紅をよそに、フランは柊に近寄った。

 

「えへへ、朝ぶりだね」

「うん、朝ぶりだな」

「ほんと懐かれてるわね同じガキ同士波長が合うのかしら?」

 

 フランは柊の手を引く。

 

「宴会の準備しにいきましょ」

「あ、ああ」

「紅魔館ではしない癖に」

「だって咲夜がいるじゃない!」

 

 やれやれ、とレミリアは諦観する。

 

「私も手伝おう、妹紅は?」

「手伝うよ、私だけ手伝わないのも何だかな」

「レミリアさんは? あと……え〜……パチェさん……でしたっけ」

 

 レミリアの横で読書する紫髪の女性。

 

「パチェ? 気にしないで。あと私も手伝う気は無いわよ」

「そ〜ですか」

 

 二人の暇つぶしには気にせずキッチンへ向かう。

 

「えっと、あ、紅さん」

 

 キッチンへ向かうと、皿を運ぶ美鈴と合流した。

 

「あ、んん〜? 誰ですか?」

 

 変身した時の姿しか知らないのだから、今の柊の姿を知らないのも通りだ。

 

「え……と…変身!」

「ああ〜! 柊さん! すいませんあの時の記憶曖昧で。もう一つの姿は覚えてたんですけどね」

 

 変身ポーズを真似しただけなのだが。よく人を見ている証拠だ。

 

「この前は有難うございました! わざわざ部屋まで連れて行って頂いたそうですね」

「ああ、いえいえ気にせずに。俺も壁壊してすいません。今度修理手伝いに行きます」

「ほんとですか!? 有難うございます! 咲夜さんが血涙流して喜びますよ!」

 

 サクヤサン? その疑問は1秒で解決した。

 

「サボるんじゃないわよ、美鈴」

「あっあふん」

 

 突如美鈴の頭にナイフが刺さる。

 

「ぎゃ────!!!!??」

 

 腰が抜ける。床にへばってしまった。

 

「咲夜さん勘弁して下さい! 柊さん困ってるじゃないですか!」

 

 美鈴がそう言うと咲夜は少し不機嫌そうな顔になる。

 

「いや、それより何でピンピンしてるんです!?」

 

 頭に血を流しながら平気な顔をしてる美鈴に驚愕して、身の毛がよだつ。

 

「あ、妖怪ですんでこれくらいじゃ死なないんです」

 

 人間だったらどう見ても即死だろう。流石は妖怪。

 身体を張ったギャグにも慣れていたらしい。

 

「そ、そうですか」

「柊様、貴方も準備しに来たんですか?」

 

「え、あはい。何が手伝える事があれば」

「助かります。フラン様もお連れの様ですね。美鈴は早く持って行きなさいそれ」

 

「はい!」

 

 咲夜は美鈴に指示を出す。そして美鈴もそれを請けてサッサと運んで行く。

 そして厨房では、霊夢が支度していた。

 

「あら、貴方……」

「あ、おう霊夢。宴会だろ? 混ぜてくれよ」

 

 久し振りのはずだが。霊夢は一瞬目を大きくしただけでそれ以上の反応はなかった。

 

「別に良いけどキッチリ手伝いなさいよ?」

「ああ」

 

 病院から復帰した事には特に反応無しのようだ。なんてつまらない事考えながら着々と料理を進めて行く。

 

「へ〜アンタ意外とやれるのね」

「柊は普段から良く手伝ってくれてるよ」

「まぁ居候の身で手伝わん訳にもいかないからね」

「ふ〜ん。私だったら胡座かいて絶対手伝わないわ〜」

「自信満々に言うなよ…」

 

 そんな世間話? のような違うような他愛もない話をしながら、気づけば料理は作り終えていた。

 

「よし、フラン気をつけて持っていってな」

「ええ、任せてくれて構わないわ」

 

 そうして皿並べも終えて、全員が席を囲む。

 

「それじゃ、異変も無事終わって…一杯ね、柊! 乾杯の音頭は任せるわ〜」

「は!? いや俺そう言うのは……」

「まだ正式な自己紹介はまだだろ〜? 良いからやれって〜!!」

「これは紅魔館のやつらと貴方の歓迎会でもあるんだからね」

 

 いつのまにかいる魔理沙にも急かされながら、仕方なく肩を上げる。

 

「えーっと。改めて、どうも…夢知月 柊です、よろしくお願いします。折角集まったので、これも何かの縁だと思って仲良くしてくれると嬉しいです。では、乾杯!」

『カンパーイ!』お疲れ様でした! 乾杯!」

 

 柊の声と共に、乾杯! と斉唱。全員が一口飲んで、宴会が始まる。

 

「挨拶でもしようかな」

 

 何人か、知らない顔の人もいる。一応でも挨拶はしておくべきだろう。

 

「すいませ〜ん! この前の異変でちょっと質問させて頂いても?」

「? どうぞ」

 

 瞬間。前方の眩しさで目を瞑ってしまう。

 

「カメラですか?」

「はい! 貴方外来人ですよね! それも能力持ち! 興味あるんです私! 記者として!!」

 

 いるとは思わなかったが幻想郷には記者がいるらしい。

 

「どの世界でもジャーナリストは好奇心旺盛ですね…あの、仕事柄とかやめて、普通に話したいと思ってたんですけど…」

「ふむ? いつもだったら煙たがれるので新鮮ですね」

 

「柊は頼めば言うこと聞いてくれるよ?」

 

 膝に座るフランに勝手に言われた。

 

「では、まず私の名を。私は射命丸 文です! 文々。新聞っていうのを書いてるんですけど……」

「へぇ〜、まぁ…よろしく?」

「はい! よろしくお願いします!」

 

 こうして幻想郷の新たな住人となった夢知月 柊と、その仲間達は、異変解決後の宴会を楽しんだ。

 

 

 ♢

 

 

「──それと、この服は」

「あの、射命丸さん、もうこの辺にしときましょう……」

 

 一問一答をかれこれ20分、そろそろ終わっても良い頃合いだろう。

 

「私も聞いてるだけで疲れたし、もういいでしょ」

「あり?」

 

 フランも共に愚痴を入れる。

 

「まだまだ聞きたいことが沢山あるんですが。まぁまた今度にします」

「どうも。また見かけたらいつでも話しかけてもらって結構ですからね」

「はい! それでは!」

 

 文は嵐のように去って行った。

 

「フラ〜ン。俺挨拶して回るからさ…そろそろ」

「え〜、もう少しここにいない?」

「美鈴さんの所で暴れててくれ、ちょっとだけ挨拶して回ろうと思ってるからさ」

「むむぅ……そうねぇ……」

 

 手を組んでフランはかつてレミリアに言われたことを思い出す。

 

『フラン、柊は幻想郷に来て間もないの、あまり迷惑かけてはダメよ』

『? はぁーい!!』

 

「うん、しょうがない、私は美鈴で遊んで来るわね」

「ああ、ありがとな」

 

 そして、フランは柊の頭から離れる。

 

「美鈴〜、 抱っこしてもらえるかしら」

「はいはい、いいですよ」

「それじゃまた後で」

 

 そう言って別れてから、見覚えのない人達への挨拶をしていく。

 

「どうも、初めまして」

「あら……よろしく、えっと」

「柊。柊です」

 

「ごめんなさいね、折角音頭を取ってくれたのに…ありがとう……私はアリス。アリス・マーガトロイドよ」

「よっ! 久し振りだな! ていうか退院したなら言ってくれよ!?」

「悪い悪い、起きたの今日なんだよ」

 

 魔理沙は霊夢と飲み比べをしていたが、既に出来上がっていた。

 

「なら仕方ないか〜」

「心配してくれてありがとな」

「そりゃするぜ、見舞い行っても行っても起きなかったんだし」

 

 机に肘を乗せてこなれた感じで肴を食べている。

 

「な、なぁ酒飲んで何ともないのか?」

「飲んだ事ないのか?」

「う、うん。お屠蘇くらいかな」

「宴会って言ったら酒だろ〜!? ほら飲めよ!」

「うはぁ…無事かなぁ」

 

 手を仰いで酒瓶の匂いを嗅いだ。

 

「うっ……鼻をつく匂い……苦手だ」

「ふふ、初めは誰でもそうよね」

「ほーらイッキ! イッキ!」

 

 アルハラという単語は現代で忘れられてこっちに現代入りでもしたのかな、そう思いながら飲み干した。

 

「おっ!? どうだ?」

「……にがい──!」

「あはははは!! 渋い顔してんなぁ!」

「初めてなら仕方ないわよね」

 

 苦笑いしているアリスと爆笑してる魔理沙。同じ魔法使いでも三者三様だ。

 

「……やっぱお茶がいいや」

「お茶の方が苦くないか?」

「おかしいだろお前の舌はよ……」

 

 苦みのベクトルが違う。

 

「へへっ、私の方が大人だったみたいだな?」

「へいへい、そうですね」

「所で貴方は普段何してるの?」

 

 急にアリスが柊に質問する。

 

「慧音さんの所で居候してます。昼は慧音さんの手伝いをして、夜と朝は護身術の特訓をしてもらってます」

「ふ〜ん、魔理沙が言ってたけど紅霧異変じゃ大活躍だったんでしょ?」

 

 そう。この前のレミリアの一件は紅霧異変と名付けられたそうだ。

 

「いやぁ実際には霊夢におんぶに抱っこで。ずっと霊夢の霊力を借りながら闘ってたんです」

「へぇ? 教えてほしいわ私詳細をよく知らないのよね」

「ええ、いいですよあの時は〜〜」

 

 

 ♢

 

 

「私のワインはどうかしら? 霊夢」

「悪くないわ。けどやっぱりお酒の方が性に合ってるかな私は」

「そう、残念。今度はお酒の醸造しようかしら」

「しようかしらって……するのは咲夜でしょ」

 

 相変わらず人使いが荒いわねこの吸血鬼は。

 

「いいじゃない別に。それよりさぁ……」

「?」

「あの子と話さなくて良いの?」

「ぶっ!?」

 

なんだその質問は。

 

「だって何回も見舞いに行ってたんでしょう? 私は大丈夫だって言ったのに」

「ただの気まぐれよ」

 

「あの子は久し振りに会ったのに碌に話せてないって嘆いてたわよ」

「嘘ね。だったらあっちから話しかけに来るでしょ」

「フフ、正解。でももしかしたら思ってるかもよ? それに貴女は?」

 

さっきから何なのだろう。馬鹿馬鹿しい。

 

「無事で良かったわ。はいこれで満足?」

「う〜んまぁ及第点」

 

 

 ♢

 

 

「んでな!? パチュリーのやつ大魔法を軽々使ってきやがったんだぜ、しかも自分家で!」

「はいはい、もう5回は聞いたわよその話し」

 

 そろそろ酔いが回って来ているのか。魔理沙が顔を赤めて饒舌に話している。

 アリスは困った顔で俺を払うようにジェスチャーしてくれた。

 

(お言葉に甘えます。アリスさんありがとう)

(また今度ゆっくり話しましょ。魔理沙は私が相手するわ)

 

 そうして席を後にしたが、どこもかしこもそれなりに酒の匂いがする。宴会だから普通のことだけど。

 

「あんたのいえから少しは金よこひなさいよ!」

「貴女がどれだけ持ってても宝の持ち腐れよ、無駄無駄」

「お子ちゃまの癖に! どうせそこのメイドに任せてんでしょ!?」

 

「はぁ〜これだから貧乏巫女は」

「言ったわね?」

 

「うふふ、悪かったわねぇ」

 

「お嬢様、その、ワインはもう控えた方が」

「何言ってるのよ咲夜これは水よ? 私は酔ってないわ?」

 

「はい、分かりました」

 

 暴れる巫女と煽る吸血鬼の主人。とても抑えが効きそうもない。巻き込まれている素面のメイド長がただただ可哀想である。

 

「ええっと……」

「別に手伝わなくても良いわよ。味覚はお子ちゃまの癖にワイン8本も飲むから」

 

 声のする方を振り返ると、冷淡な声の本人が、本を読んでいる。

 

「えっとパチェさんですよね」

「ええ、そう。本名はパチュリーよ。貴方の事は私も知ってるから自己紹介はいらないわ」

 

「そ、そうですか」

 

 倒れている美鈴、その上にのっかって飛び跳ねてるフラン。

 

「ふ、フラン様…勘弁を……」

「あはは凄い凄いわ!」

 

「何やってるんです? あれは」

「あれは酒をたらふく飲んだ美鈴の腹に乗りまくって美鈴を無理やり吐かせようとさせてるわ」

「止めた方がいいんじゃないすか……」

「フランも酔っ払っちゃってるから」

 

「あれ?」

 

 そういえばさっきまで暴れていた霊夢が、消えた。

 

 

 ♢

 

 

「……ったく」

 

霊夢は厠の方へ向かっている。そして、独り言ではない一人言を話す。

 

「殺気、出し過ぎよ紫。分かってるんだからね」

「….あらそう、良くわかったわね霊夢」

 

その人物こそは、幻想郷の創設者の一人であり、大賢者である、八雲 紫。

 

「折角ほろ酔い気分で楽しもうとしてたのに、最悪」

「博麗の巫女が遊び呆けられてもね」

「普段はちゃんとやってるからいーでしょ」

「ちゃんとの意味」

 

 皮肉めいた笑いを紫は浮かべ扇子を仰ぎながら霊夢を見据える。

 

 

「混ざりたかったらそんなコソコソせずに言えばいいじゃない、私も飲みたいって」

「ウフ。残念だけど今日は気分じゃないのよ」

「紫。アンタの殺気は紅魔館の奴らに向けてかしら?」

 

さっき感じた一人の殺気。あれは霊夢、そして周りにいる誰かに当てたものだった。

 

「違うわ。オーズよ」

「オー……柊に?」

 

 随分遠回しな言い方に引っ掛かりを覚える霊夢だが、本題はそこにはなかった。

 

「……それってアンタ(妖怪)(人間)を殺すって言いたいわけよね?」

 

 今の霊夢に酒気は微塵も感じない、むしろ霊力が漲っている。今眼前にいる妖怪を祓うために。

 

「それならアンタは──私の仕事の対象よね?」

「あの子を庇えば後々貴女の首自身を締めることになる」

「庇うわけじゃないけど、あいつは誰かに殺意を向けられるような事する奴じゃないわ」

 

 扇子片手に不敵な笑みを浮かべる。ここまで霊夢が露骨に敵意を見せてなおこの余裕のある顔。これこそ、霊夢が紫を胡散臭いと述べる理由だ。

 

「別に、今日の楽しい楽しい宴会を台無しにするつもりはないわ。それにまだその時じゃない」

「私の目が黒い内は、殺させやしないから」

「彼が生きているだけで幻想郷が危機に陥る」

「? あいつはただの人間よ、そんな多逸れた事出来るわけないし、する訳もない」

 

 途端。紫の目が鋭く、ギラついた視線になる。

「自分の力のみで幻想郷に来た外来人がただの人間、ね」

「なんて事ないわ、一人くらいそういう奴が来ることもあるでしょ」

 

 臆病者。紫は小声でそう呟いて、スキマを再展開させる。

 

「そう、まあ良いわ。けどね、言っとくけど彼を殺した方が、貴女の為にもなるのよ」

「はいはい。いいから今日は帰りなさい、アンタの所為で酔いも覚めちゃったもの」

「それは悪い事したわね、それじゃあ。御機嫌よう」

 

 紫はスキマに乗り込んで消えた。寒々しい空気を残しながら。

 

「なんだって言うのよ……」

 

皿に残した微量な酒を、ヤケクソのように飲み込んだ。

 

「悪酒ね、後味の悪い」

 

空の月を眺めながら、再び酒を飲む。

 

「あれ、霊夢。ここに居たのか」

 

 こと、このタイミングでくるのは間がいいのか悪いのか。

 

「ええ、夜風を浴びて酔いを覚ましてる最中よ」

「覚ますのに飲むのか」

「私の勝手でしょ」

「その通りだけど、なんで怒ってんの? 俺何かした?」

「うっさい」

 

 苛立ちがわかるような程乱雑に、皿を縁側に叩き置いた。

 

「霊夢、お前酔いすぎるなよ?」

「分かってるっつの。飲んだこともない癖に、心配してんじゃないわよ」

「飲んでる方が偉いと思ってんな!?」

「……」

 

 柊のツッコミを無視して霊夢は飲み続ける。

 

「ほんと、アルコールには気をつけろよ? 未成年なんだし」 

 

 そう言う柊の言葉で、霊夢はいまさら事実を思い知った。

 

(……そっか、ほんとにこいつ外の世界の人間なんだ)

 

 そう思うと、なぜか彼の素性に興味が湧いてきたのか、霊夢は柊に尋ねた。

 

「ねぇ、アンタ元の世界では何をしてたの?」

「? ん〜何を、かぁ。高校生だったし普通の学生だったよ」

「ふ〜ん、コーコーセイ、ね」

「ここで言う寺子屋みたいな感じだな。登校して、いろんな勉強して、ふつうに生きてきたら、色々あってここに居た」

 

 色々を言うか迷ったが、今の雰囲気に合わないと判断し今回は避けた。

 

「ふ〜ん。それにしちゃ普通に闘えてたと思うけどね」

「え? う、う〜ん……まぁなるようになれって感じだったし」

「そ。まぁどうでもいいわねそんな事。それより、どうだった? はじめての異変は」

「ん〜早く霧払わなきゃって気持ちでいっぱいだったな。フランと会ってからは色々会ったけど」

「私の霊力持って行って好きなようにしてたからね〜」

「悪かったよ、あとこういうこと言うのは不謹慎かもだけど」

「? 何よ言ってみなさいよ」

 

 柊は空を見渡してから言った。

 

「ちょっとだけ嬉しかったな」

「そ。なら良かったじゃない、これからもたくさん楽しいことあるでしょうしね」

 柊は嬉しそうに肯定する。

 

「本当に、幻想郷に来てからは驚きっぱなしだよ」

「ふふ、そうね私も貴方に驚きっぱなしよ」

「なんで?」

「空から降ってくる人間なんて貴方が初めてだったから」

「その説はほんと、ごめん」

 

 霊夢は柊の肩をポンッと叩く。

 

「気にしてないわ、むしろ壊す前より綺麗にしてくれて感謝してるくらいよ」

 

 それよりさ、と霊夢は尋ねる。

 

「ねえオーズってなんなの? 貴方のあの姿がオーズなのよね?」

「うん、そうだよ。オーズっていうのは、動物の力が込められたメダルを使って闘う仮面ライダーだよ」

「仮面…らいだぁね」

「まぁ俺はほとんど力を使いこなせてないけどな。でも何で急にそんなことを?」

「いやね、外来人が来たことは前にもあったけど能力を持ってた奴は初めてだから。興味があってさ」

「俺もビックリだよ、元々力なんてこれっぽっちも持ってなかったからな。ここに来たら変身できるようになっててさ、夢みたいだ」

「……まぁ、それもそうよね。わざわざ私が貴方の能力を自覚させてようやく能力を把握したんだし」 

 

 柊は縁側から外を見て言う。

 

「ホントの事言うとさ、人助けすることより変身できた事の方が嬉しかったんだよな」

 

 現金なやつかもしれないけど。と付け加えて言った柊の顔を見て、霊夢は一息ついてから。

 

「嘘ついてカッコつけるよりマシなんじゃないの」

「えっ……うぅん、確かにそうか」

「でしょ。それでいいのよ、私はそういう方が好きだし、好感が持てるわ」

 

 柊は若干照れつつも、思っていたことを語る。

 

「俺も出来れば映司さんみたいに強くて頼れて、根っから人助けできる人になりたいんだけどね…」

「別に、アンタの憧れてる人の全てを自己投影する必要はないんじゃない?」

「え?」

「柊は柊なりの生き方があれば、映司? って人には映司なりの生き方があるように、夢知月 柊なりのオーズってやつがあるんじゃないかしら?」

「確かに?」

 

 柊は庭を見て、静かに頷く。

 

「貴方はオーズになったからそういう生き方を強いられるの? その人はきっとオーズじゃなくても同じ生き方をした筈よ。だったら、貴方も貴方の好きに生きればいいじゃない」

 

 星の瞬く空を見上げて霊夢は笑う。

 

「弱くてすぐボロボロになって、異変を楽しんじゃって、すぐ落ち込んで…でも優しくてお人好しで、ちょっとだけ素敵な貴方でも、いいんじゃないの?」

「いいのかなぁ、そういうのも」

「いいじゃない別に。だって楽しいと思うのも本心だけど、助けたいっていうのも本心なんでしょ? 立派なもんよ」

「すっごい我儘だな、ははっ」

「自分のやりたい事やるくらいの我儘じゃなきゃここは生きてけないわ。とにかく、やりたいようにやってみればいいじゃない、今あんたが見てるもんも聞こえるもんも全部あんたの物なんだから」

 

「そういう考え方もありかなぁ」

「ま、あんま気負わなくていいんじゃない。何か異変が起きても私が必ず解決するし」

 

 あはは、と笑う柊。その横で霊夢の顔が少し俯いた。

 

「……だからまぁ、あんま無茶しないでよ」

「……!」

「あっ……! ち、ちがっ……ご、誤解しないでよ、あんたが無茶すると私の邪魔になるって意味だからね!」

 

 そう言って霊夢先ほどのレミリアの発言を思い出し、回想する。

 

 

『いいじゃない別に。それよりさぁ……』

『?』

『あの子と話さなくて良いの?』

『ぶっ!?』

『だって何回も見舞いに行ってたんでしょう? 私は大丈夫だって言ったのに』

『……気まぐれよ』

 

 

 ♢

 

 

「……いや、違うわね」

 

 私はボソリと呟いた。

 嘘だ。

 本当は心配で仕方なかった、けれどそんな気持ちを悟られるわけにはいかない。

 意地っ張りで素直になれない私にとってそれは恥辱なんだから。

 そしてそれを他人に見られるのはもっと恥ずかしかった。

 だけどレミリアは気づいていた。

 それに今更気づいたことと、既に柊に言った言葉が恥ずかしくなって、どうしようもなくなる。

 

 なんて言えば良いんだろ、なんか言ってよ。気まずいじゃない、この雰囲気。

 

 

「違わないだろ」

「……え?」

 

 思いがけない柊の言葉に、霊夢は困惑した。

 

「今回の件、俺が関わらなきゃ多分お前にあそこまで負担は掛からなかったんだと思う」

「そうね、それは間違い無いでしょうね」

 

 霊夢は遠慮して否定する、などということもなく冷静に頷く。

 

「慧音さんも泣かせちゃったよ、俺。ずっと見舞いに来てくれてたらしい」

「知ってるわ、さっき聞いた」

「そっか……」

 

 柊も少し、顔を俯ける。

 

「医者の人にも怒られた、身体は大切にって。でも、俺には無理だ。見殺しになんて出来ない」

「ま、お人好しだもんね、あんた」

「……ううん、俺はそんな理由で人助けしたかったわけじゃないよ」

「──え?」

 

 どこか遠くを見るように、柊は話す。

 

「幻想郷に来る前に、女の子を一度見殺しにしてるんだ」

 

 今でも新鮮な映像として脳裏に残っている。

 

「俺はその子が死ぬ寸前で見せた俺への目が忘れられないから、きっともう一回あの目で見られたら耐えられないから、見殺しに出来ないんだ。したくないんじゃなくて、本当に出来ないんだよ」

 

 自分の無力さを嘆いた。

 どうして自分はこんなに弱いのかと。

 それでも少女を助けるために必死に足掻いて、 結局は助からずに、目の前の少女を悲しませて、後悔だけが残った。だから、見捨てることだけは絶対にできない。

 

「……そうだったのね」

「な? 思ってるような人間じゃなかっただろ?」

「そうね、むしろ安心したわ」

「──え?」

 

 霊夢は目を瞑りながら、笑って言う。

 

「柊も人間なんだなって、ようやく実感が湧いたから。正直今までのあんたって不気味だったの。理由もなく人を助けて、壊れた機械みたいだと思ってたから。でもちゃんと人間だって分かったから嬉しいわ」

 

 霊夢は俯いた顔をあげ、盃を飲み干す。

 

「あんたは人より少し臆病なのかもね」

「……うん、そうかも」

 

 また少女の事故と同じ出来事に遭いたくない。見殺しにされる人間の目をもう見たくない、それは柊の臆病さを裏付けていた。

 

「今回、柄にもなく私は誰かさんの真似をして、危うく死にかけた」

 

 はぁ、とため息をついて言う。

 

「私はさ、お人好しとかそういうのがよく分からないのよね。そりゃ誰かのために自分を犠牲にできることは素晴らしいことなのかもしれないけど、進んでやりたいと思う人間の感性が全く理解できなかったし怖かった」

 

 空を見上げながら、静かに語る。

 

「けど、今ならちょっとだけ理解できるかも。……要は自分に負けたくないってことなのね」

 

 霊夢は柊の顔を見て笑う。

 

「それは優しさっていう私にはない強さなんだって、さっきの話で少し、納得できたわ」

「そうやって言ってくれると、少しは気が紛れるよ」

「だから、安心した。あんたは、強いかどうかは分からないけど、やっぱり良い人なんだわ」

「でも、結局今のままじゃ皆んなに心配かけてばっかりで、おんぶに抱っこだ」

「……」

 

 霊夢は、柊にかける言葉が見つからず、黙る。

 

「だから、俺もっと強くなるよ。人を助けることも、心配させないことも両立させる」

「……!」

 

 霊夢の表情が一瞬で明るくなる。

 

「良い案だと思うわ」

「ま、心配させずに済むようになるのは大分時間がかかりそうだけどな」

「出来るだけ早く強くなることね、私の迷惑になられてちゃ困るもの」

「ああ、お前にも心配かけたくないからな」

「なっ……! …ふぅ、全く……」

 

 霊夢は照れ隠しに酒を煽る。

 そして柊は、少しバツが悪そうに霊夢に謝る。

 

「ほんと、迷惑ばっかりかけて悪かったな霊夢」

「貸しはちゃんと数えとくから楽しみにしてるわよ?」

「分かってる、ありがとな」

 

 二人は笑い合う。宴の喧騒が遠ざかり、静かな時間が流れる。

 その時間を二人は満更でもないように過ごした。

 

 

 ♢

 

 

「うわぁ、飲みすぎだ慧音。帰れなくなるぞ?」

 

 テーブル一面に広がる酒瓶。

 そしておぼつかない行動を取る慧音。

 

「……うん、もう一瓶だけだ、もう一瓶」

「ダメだってば」

「あー!!」

 

 妹紅が慧音の酒瓶を取り上げた。慧音は叫びを上げる。

 

「慧音……明日も寺子屋で仕事があるんだろ? お前は程々にしとけ」

「たまには 一緒に飲んでもいいじゃないか!せっかくの宴会なのに!」

 

 妹紅に寄りかかって甘える慧音。普段見せない様子に妹紅はたじろいだ。

 

「はぁ。なんでそんなに今日は甘えてくるんだよ」

「たまにはいいだろたまにはさぁ!」

「そんなに心配してたのか」

 

 慧音は固まる。

 

「まぁ、それなら気持ち汲んだやらんこともない」

「……私のせいで危うく殺しかけたんだぞ。子供を。……うぐぅ」

 

 悩む慧音に妹紅が語りかけた。

 

「確かに子供は大切だけど、あの時に人里を放棄してる場合じゃなかったのはお前も分かってただろ? お前はお前の立場でもやれる最大限のことをやってたよ。結果的には誰も死ななかったんだし」

「……でも、でも私はぁ……うぅ」

「ああもうほら泣くな。仲直りもしたじゃんか。それにお前のせいってのは違うよ、慧音」

「……クスン……え?」

「あいつは慧音が思ってるより子供じゃない、あいつはあいつなりにちゃんと考えてる。今回だってお前のせいで死にかけたんじゃなくて、あいつはあいつの意思で戦いに行って、あいつ自身が覚悟してその結果で死にかけたんだ。それに責任を感じるってのはむしろあいつへの侮辱になっちゃうよ」

「……」

 

 慧音は妹紅の言い分を聞いて、自分の胸で噛み締める。そして涙を拭いて言う。

 

「……あの子が帰ってくる前に言って欲しかったよ」

「ははは、それは悪かったな。お前もとことん真面目だもんな」

 

 真面目に落ち込んで、自責の念に刈られていたのだろうが、今は少しだけ元気を取り戻したらしい。慧音は妹紅の言葉に救われた気がしていた。

 

「……はぁ、私は本当にダメだな」

「そんな事ない、慧音はよくやってるよ」

「そう思ってくれるなら、尚更私の酒に付き合ってくれ」

「分かった分かった。もう今日はとことん付き合うよ、ほら」

 

 二人は縁側に腰掛け、酒を酌み交わす。

 

 

 ♢

 

 

「美鈴〜? どうしたの?」

「ギブ……オェ」

 

フランの足代わりに馬乗りされていた美鈴は宴会で得た食事を戻す。

 

「うえー!? 汚いよ!」

 

 美鈴が口からお酒を戻す、がフランは吸血鬼持ち前の動体視力で避け、レーヴァテインで振り払った。

 つまり、アルコール塗れの空気に火がついた。その火の粉はレミリアの後頭部に火を付ける。

 

「?……なんかこの部屋暑くないかしら?」

「そうですね、たった今お嬢様の頭部が熱を灯したようです」

「頭? わちゃ──!!?」

 

 レミリアがグルグルととんでもない勢いで回転し続ける。

 

「お嬢様、どうなさいますか?」

「ドッドっどどうするって何!!? ……いやというかなんでそんな冷静!?」

 

 あたふた走り回るレミリアのことに、誰も対応しない。というより忙しない状況でレミリアの異常事態にまで手が回らなかった。

 

「フラン、ちょっとお前その剣下ろせ! 咲夜さん美鈴さんが戻……ぅぉぉお!? レミリアさんの頭が燃えとる!?」

 

 それを見た咲夜は、 しかし慌てる様子もなく、ただこう言った。

 

「仕方ありませんね、柊様、美鈴を借ります!」

「美鈴さんを借りる? まぁど、どうぞ」

「ほぎゃっ!? おっうぷっ……」

 

 咲夜が美鈴の両足を掴み、風を靡かせるように振る。

 

「美鈴さーん!!」

「ヴェロロロ」

 

そして喉を通り越そうとしていた美鈴の口から戻され、酒が空気に飛び散り、更に引火する。地獄絵図だ。

 

「ちょっ……咲、夜さん…… 私の服破れちゃったじゃない……ですか!……オロロロロ!!」

「私のスカートも焼けたんだからおあいこよ ……っていやぁぁぁあ!! 吐瀉物がタイツにかかったぁああ!!」

 

 クールを装っていた咲夜も流石に堪えたのか涙目の咲夜はそのまま複数のナイフを美鈴に発射。

 

「ぎゃー!!!?」

 

 美鈴は死んだ。そう思っていたのも束の間。神社が爆発したおかげで、咲夜の投げたナイフは全て神社の外へと飛んで行った。美鈴は爆発に巻き込まれてボロ雑巾のように地面に倒れていた。

 

「!? ゲホッゲホッ……」

 

 爆発元を見ると、レミリア姉妹が暴れている。

 

「貴女私に放火するなんて命知らずね!」

「やったのは美鈴よ!……フォーオブアカインド!!」

 

 二人は剣を持ち、鍔迫り合いを仕掛ける。

 

 ──わーすげぇ綺麗。

 

 柊はこの異常な状況にむしろ冷静になる特有の現象を起こしていた。

 

「そうねぇ賑やかねぇ……」

「え?」

 

 傘を刺して柊を鋭く見据える美女。

 しかし驚きなのは、どうみても地面から上半身を出している事だ。

 

「貴女……は」

「生で見るのは初めてだけれど……思ったより小柄ね。適合者はこんな子どもだったの」

「は?」

 

 未知の気配。今までオーラが凄い人だったり、妖怪や魔法使いの気配を肌で受けたことがある柊だったが。

 目の前にいる人物の気配は分からない。ただ、どうしようもなく背筋が凍る。指一つ動かせなかった。

 

「短い縁でしょうけど、よろしく」

 

 名も知らぬ女性はそう言い残し、一切の姿を消す。と、同時に柊は身体から力が抜けたように地面に身体が崩れる。

 

「……俺も酔ってるのか?」

 

 今のは何だったのか?

 最後に疑問を残して、再び日常に戻る──筈だった。

 

 

 

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