東方欲望録   作:アンダーソンキャッスル

24 / 41
24話 休日と香霖堂と神か去り

宴会も無事に終わり、暫くの日が経ったある日の事。

 

俺は慧音さんの家に居た。

 

「柊〜ご飯の時間だぞー」

 

 そして、妹紅さんも今日は慧音さんの家に来ていた。

 

「ああ、今行きます」

 

 慧音さんに頼まれた薪割りを済ませて、しっかり手を洗ってから部屋に入る。

 

「「「いただきます」」」

 

「どうだ? 柊、体の調子は」

「好調です。もう痛みもありませんし」

 

 俺はあの後慧音さんに、泊まっていいと言われ、素直に居候したのだ。だが、相変わらずオーズにはなれない。

 

「二人はどうする?」

「私は用がある」

「俺は特に何も…その辺散策しようかなって……」

「そうか」

 

 雑談しながら朝食を終える。

 妹紅は既に帰った後だ。

 

「せんせー! すいませーん!」

「「ん?」」

 

 慧音を呼ぶ女の子らしい若い子の声。

 2人は外出用の服を着て、外に出る。

 

「柊別に私への依頼だろうから部屋でゆっくりしていてもいいんだぞ?」

「そんな水臭い。もし手伝える事があったら協力したいじゃないですか」

「相変わらずだな。それで? どうしたの今日は?」

 

ドアを開けると、少女が困り顔で見ていた。

 

 

「「猫ぉ??」」

 

「はい、これくらいの……」

「猫ね」

 

 その少女は慧音さんの勤める寺子屋での教え子だ。沙耶(サヤ)と言う。

 可愛い教え子の頼みとあってか依頼はご大満足で引き受けた。

 

「ちなみにどれくらい捜索した?」

「全部!」

「人里中全部か。頑張ったな」

 

 となると人里の外に出て行った可能性がある。

 

「よし、ここは異変探偵の柊と呼ばれる俺に任せろ。沙耶ちゃんは家に帰って待ってな。すぐ見つけ出してやるよ」

「ああ、もう心配しなくていいからな。必ず見つけるよ」

「うん! ありがとう! 先生! あと…変な人?」

「んなっ!?」

 

 

 

 

「ははは、まぁまぁ……気を落とすな」

「先生と思ってなかったのはよしんば良いとして…まさか変人扱いされるとは…」

 

子供は純粋だからな…いいけどさ。

でも俺も人里の人達と大差ないだろ!?

 

「それだけ若く見られてるって事だよ。それじゃそろそろ行こうか」

「いよーし、速攻で見つけてただの変人じゃないって所見せつけてやるか!」

「その言い方だとやばい変人を見せつけるってことになるがな…?」

 

 

 ♢

 

 

「見つからないなぁ」

「まぁそうそう簡単にも行きませんよね」

 

 そもそも猫がそうそこら辺を彷徨いてる訳がないのだ。

 

「何事も都合良くは進まないな」

「んじゃ外出てみますか」

 

 人里の外。今までは気軽に出れたが今の柊ではそうもいかない。

 必ず誰か付き添い人がいないと危なくて出られないのだ。

 

「外に出たからと行ってすぐに見つかる訳じゃ……」

「まぁまぁ、あんまり待たせるとあの子が勝手に探しに行かないとも限らないし…ってあー!!」

 

 首輪した猫が一匹こちらを威嚇している。絶対こいつだ。

 

「ほーら、怖くないぞう。よしよし」

「慧音さん、何やってるんです。無駄ですよそれ」

 

 威嚇してないならまだしも。相手がこちらに敵意を剥き出しの状態で人間が宥めても返って怒りを招くだけだろう。

 

 フシャーッ!!

 

「ひっ!」

「ほらぁ、ていうか慧音さん」

 

 ──もしかして猫苦手なのか?

 

「教え子に頼まれた手前断らなかったが。ネコ科の類がちょっと怖いのは事実だ」

 

 また可愛らしい教師もいたものだ。どこのどいつだよこんな可憐な人と一緒に働いてる奴は。

 

「ど、どうしよう、このままではまた見逃してしまう」

「……にゃーん」

「……えっ?」

 

 仕方がない。ここは俺が一肌脱ごう。

 

 フシャーッ! シャー!

 

「にゃお〜ん、にゃーん、にゃおん…にゃ〜」

「お、おい…柊…?」

 

 おい、引かないで下さい。

 

「にゃん? にゃんにゃ〜」 

 

 ……ゴロゴロゴロ

 

 某探偵事務所のハードボイルドを語る漢のやり方だ。

 俺が猫探しで活用できる知識なんてそれぐらいしかないのだからしょうがないだろう。

 

「にゃーん、にゃんにゃ?」

 

 トコトコとこちらに歩みを寄せる猫ちゃん。

 いい感じだな。

 

「そのまんまこの手に乗るんだにゃ〜? いい子だからにゃ?」

 

 まさか本当にこのやり方で捕まるとは。いいぞ、最悪このまま突っ込めば必ず抱き抱えられる。

 

「ファァアゴ!!」

「に"ゃっ!!?」

 

(鼻先を引っ掻きやがった! このとんだジャジャ猫!)

 

「いてぇぇえ!」

「しゅ、柊!」

「ふしゃぁああ!」

「やってる場合か!?」

 

 素早いバックステップで再び威嚇する猫。

 

「……ん? 待て柊。この猫様子がおかしいぞ。なんで威嚇するばかりで逃げないんだ?」

「確かに」

 

 何かを守るかのように立ち回る猫の動きだ。まさか。

 

 

「なるほど、俺はやられ損だな」

「おかしな事するから抵抗されたんだ。よし、子供も連れて帰ろう」

 

 そんなこんなで事件は解決したのだが。

 

「……んん?」

 

 慧音がドンドンと遠ざかっていく中、柊は奇妙な物に目を奪われてしまう。

 

「これ…は?」

 

 カエルの顔の形したヘアピンだ。随分と可愛らしいがここにあるという事は。

 

「誰かが襲われでも、したんだろうか」

 

 拾い上げたその時。ふと消えてしまう。

 

「……は?」

 

 どこに落ちたでもなく、そこから綺麗さっぱりとなくなっていた。

 

「おーい行くぞ柊」

「あ、はい」

 

(なんだったんだ……)

 

 今日起きたこの出来事が柊を大きく動かす出来事となる。

 

 

 ♢

 

 

「子どもが生まれてたのね! もう! 心配したんだから!」

「お前も、次は飼い主を困らせるなよ?」

「よかったな、キレのあるジャブを打つ猫め」

 

 鼻をやられた身としては少し複雑な気持ちだ。

 

「ははは、まぁ許してやれ。きっとこの子も子供を守るので必死だったんだから」

「まあ確かに」

 

 仕方がない。撫でてあげよう。別に猫は嫌いじゃ。

 

「な……いだっ!?」

 

 やっぱり嫌いだ。

 

 

 ♢

 

 

 数日後。柊はある場所を目指してきた。

 初めて行く場所で正しくつけるか不安だったが。

 

「ここか…」

 

 どうやらしっかり行けたみたいだ。

 

「こんにちは〜…」

 

「おや? 随分と若い子だねいらっしゃっい、ゆっくり見ていくといい」

 

 香霖堂という道具屋だ。

 ここでは現代の物もあるらしい。

 

 

「ええ、初めまして、ありがとうございます」

「うんうん、……うん?」

 

 洒落た眼鏡を掛けたこのイケメンなお兄さんは、森近霖之助…だった気がする。

 もしかしたら名前を間違えてるかもしれないから本人に確認は取らないが。魔理沙からはよくツケと言って物を持ってかれているようだ。

 

「君もしかして、柊くんかい? 魔理沙がよく僕に話をするんだが」

「え、あはい、多分その柊ですね」

「異変解決にも協力を惜しまないと聞いているよ。元気なんだね」

 

 あっちに知られていたのに驚いたけれど自分が知ってるんだから別にいいか。

 

「ええ、まぁ俺も魔理沙にはお世話になってます」

「でも彼女といると疲れるだろ?」

「ははっ確かににそうですね。でも年相応でいいと思いますよ。元気もらってるし」

 

 微笑みを浮かべる霖之助さん。

 

「魔理沙を良く知っていそうだから君には教えておこうか、珍しい男友達だしね」

 

 耳元に近づいてくる霖之助さん。

 

「実は魔理沙は昔はね、とても人見知りだったんだよ」

 

「……えっ!??」

 

 そ、想像ができない!

 魔理沙の幼い頃をいくらイメージしても小生意気な可愛い女の子くらいにしかイメージ出来ない!!

 

「はっはっは、いい反応だ。まぁ当然だがね、今の魔理沙からは想像もつかないだろう?」

「う、う〜ん。あの魔理沙が人見知りですか」

「そう。でも人見知りから脱却したのは確か一人暮らしを初めたくらいだったかな」

 

「一人暮らし? 以前は誰かと一緒に住んでたんですか?」

「ん? 知らないのかい? 昔は父親と暮らしてたんだよ」

「へ〜〜」

 

 魔理沙のお父さん。魔理沙と同じで元気そうな感じだけど、まぁ会ったことないからどうとも言えないな。

 

「本当に前から魔理沙を知ってるんですね」

「そうだね」

 

 俺の知らない側面の魔理沙をこの人は知ってるんだ、そう思うと、ちょっと興味もある。

 

「それで? 今日は何しに来たのかな」

 

そうだ、本題に入らなきゃ。

 

「外の世界の道具を見せて欲しいんです、探したい物があって」

「オーケー、こっちに来なさい」

 

 指をチョイチョイと引いて指示された場所へ行く。

 奥の部屋にいくと、色んな道具がずらりと並んでいる。

 

「これ全部現代の?」

「そう、幻想郷に流れてきた物だよ」

「すご……」

 

 横並びにしてあるが、数は尋常じゃない程ある。

 

「僕の能力で名前と何に使うかくらいは分かるんだけど肝心の使い方が分からないんだよね。まぁ、道具なんて用途が分かれば使い方はなんとかなりそうだがね」

 

 いや、流石にそれはならないと思う。けど現代にあるものなら俺の出番だろう!

 

「多分、俺大体の物は使い方が分かると思います」

「本当かい? それはまた何で?」

「俺は元外の住民なので」

 

 目をちょっと開く霖之助。

 

「そりゃ魔理沙とも仲良くなるわけだ……なるほどね。柊くん1つ頼んでもいいかい?」

「? なんです?」

「ここにあるもの1つ何でも持っていっていい、その代わりに君が知ってる道具について使い方を教える、ってのはどうだい?」

「……本来なら無償でやる気だったんですけど、お言葉に甘えてもいいですか? もし俺の探してる物があったら、きっと俺の金じゃ足りなかったので」

 

 正直、俺が目当ての物がここにあったのなら多分大金が必要だと思っていた。

 

「ああ、構わないよ。善意だしね貰ってくれ」

 

 そう言われて、横並びされているものをとりあえず適当に見る。

 だが、霖之助さんは聡い人間のようで、横から使い方を説明してくれるのだが大抵があっている。

 

「ここまでは僕でも何となく分かるんだが、こっからは全く分からない部類だ。君に期待を置くよ」

「答えられるだけ…まぁやってみますよ」

 

(ああスマホね……まぁ、流石にこれはここにあっても意味がないだろう)

 

「たくさんの用途があるみたいなんだが、全くどうにも」

 

 ── ていうかスマホが幻想入りしてるんかい。持ち主は何やってんだ。

 

「これは電池がないと動きませんよ。充電切れてるみたいなんで、ただ充電あっても、ロックされてるから多分動かせないだろうけど」

「そういうものか。そしたらこれは……」

「……!」

 

 そして、手に触れてみただけで感じた、異質だ。

 何だこれは。

 

「それは? なんだい?」

 

 手のひらサイズのカエルの髪飾り。だが、手に触れるだけで何か嫌な気分になる。

「……これは、髪飾り…だと思いますが、これの使い方も分からなかったんですか?」

 

 髪飾りをつけている女の子など人里にもざらにいる。

 そして今まさに気づいたかのような霖之助さんは の反応からすると。

 

「いや、そこに置いた記憶はないんだけどね……」

「ということは今幻想入りした物が、ここに? 」

 

「そういうことになるね。それはいいや、貸してごらん。私が処理しておくよ」

 

(ちょっと待てよ? いや見間違いか?)

 

 数日前に見た髪飾りとほぼ同じ見た目をしている。以前見たものの見た目を完璧に覚えている自信はないが、人里で流行っているわけでもないこのカエルの髪飾りが幻想郷に二つある可能性は少ない。

 

「ダメだ!」

 

 反射的に手を前に出してしまった。

 

「え?」

「なんか、ただの髪飾りじゃない気がするん、です。いきなり大声出してすみません」

 

 だとすればこれはあの時見た髪飾りと同じものだ。なぜ人里の外に捨ててあったこれが今香霖堂にあるのかなんてさっぱり分からないが。

 

(嫌な予感がする)

 

「いや……構わないけど」

「これを貰います」

「え? でも、いいのかい? 無料で貰うには価値が低いよ? それ、ただの髪飾りだし」

 

「大丈夫、これがいいんです。それに俺の目当てのものはやっぱりありませんでしたし」

 

 今、これを握った時、嫌な気配と、微かな助けを呼ぶ声がした気が…した。

 

(もしかしたら呪われてる物かもしれない。だとしたら処理しといた方がいい)

 

 霖之助さんに渡してもいいけれど、それはなんとなく嫌だと感じてしまった。なんだろうか、この嫌な気持ちは。

 そのあとは、特に変なものも混ざっておらず。一通り説明して買い物を終わらせた。

 

「ありがとね、随分助かったよ」

「いえいえ、今度また分からない物があったら、近いうちまた来るので聞いてくださいね」

「ああ、じゃあね」

「さようなら、また今度!」

 

(急いで確認に行った方が良いな……)

 

今夜は遅くなると慧音さんに伝えてから俺は急いで博麗神社へ向かった。

 

 

 ♢

 

 

「なるほどね…確かに呪物かもしれない。所で柊?」

「ん? ……!?」

 

明らかに怒りの形相でこちらをみる。

何かしたか!? と慌てる柊。

 

「貴方ここに一人で来たの?」

「あ、ああ」

 

 柊が答えるなり、霊夢が寝技で締めた。

 

「ご、ごばばば!」

「馬鹿!! 大馬鹿!! いい加減身の振り方を考えなさい! 今日は運が良かったけど、妖怪に襲われてたらどうする気だったのよ! 前も言ったでしょ!? 能力使えないなら身内と来いって!」

「そっか…確かにその通りだな。ごめん」

「手遅れになったんじゃ遅いんだからね!? いい!?」

「はいっ!」

 

 ふんっ…と、随分と怒られてしまった。

 まぁ今回の件は誰がどう見ても俺が悪い。

 

「あちゃーやっちまったな柊」

 

 隣で魔理沙が囁く。

 

「もういいわ。ちゃちゃっと祓ってあげるから見せなさい、その髪飾り」

「いや、まぁ呪われてると確定したわけじゃないけど…」

 

 とりあえず、霊夢にそれを渡す。

 

「なにこれ? 本当に何か憑いてんの?」

「分かんないけど、俺は触ったら変な感覚がしたんだよたしかに」

「なぁなぁわたしにも見せてくれよ! ふ〜ん、私もなんも感じねぇな」

「そうなのか?」

 

 気のせいならそれが一番いいんだが、あの時感じた妙な胸騒ぎはどうも気になる。

 

「じゃあ、一回霊力を込めてみるわね……ハッ!」

 

 手に持った髪飾りに力を入れる。

 するといきなり髪飾りが光る。

 

「なっ!? 霊夢何やったんだ!?」

「何もしてないわよ!! 魔理沙! 柊をこの場から…」

 

 流石の判断力は時に最大の仇となる。

 霊夢は髪飾りを手から離し弾幕で破壊しようとした。

 

 そこで一瞬手放したことで、その髪飾りは柊の眼前に迫ってきた。

 

「── 柊!!」

「っ大丈夫だ! どうにかしてみせる!!」

 

 やはり俺の感覚は衰えたり鈍ったりしちゃいなかった。

 これは俺へと向けられた殺意なんだ。多分。

 

 だとしても、こんな理不尽な攻撃で死んでたまるか。

 

「すぐ帰ってくる!!」

 

パッーーと光が消えたのと同時に、柊も姿を消していた。

 

「嘘だろ! 柊が消えちまったぞ!」

 

「言われなくても分かってる! 急いで探すわよ!! 早く行きなさい!!」

 

「私もか!?」

 

「慧音に頭突きされたくないでしょ!」

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。