「はぁ……はぁ……た、ただいま戻りました」
「おん、助かったぜ。ミー子とワン太、ちゃんと連れ戻してきたか?」
「この子達ですよね」
犬と猫がワンキャン泣きながら、事務所へと入っていく。
「おーよしよし、お前手際いいな。かなり早かったぜ」
「そりゃどうも。しばらく休んでいいすか」
「おう」
顔にタオルを乗せてソファーにへたり込んだ。
「そろそろ帰って来る頃だな」
事務所の時計を、ちらりと見てから言う柊太郎。
「帰って来る?」
「ああ、さっき二人で一人のって言ったろ。そのもう一人だ」
噂をすれば、元気にただいまーと言ってドアを開けてきた。
「無事で何よりだ。それより紹介したい奴がいるんだ、いいよな?」
「紹介?」
「ああ」
顔をあげたフィリップは翔太郎の指差す先を見る。
「夢知月 柊、仮面ライダーです! 来た理由は依然として分かりませんがとにかく、来た以上は俺も加勢します! どれくらいいられるか分かりませんが、ここにいる間はよろしくお願いします!」
「僕はフィリップ、好きに呼んでくれていいよろしく頼むよ」
横からズイッと柊の視線に入る少女。
「私鳴海 亜樹子!よろしくね〜! 柊くん何才?」
「16歳です」
生で見る実物の二人を観て再び感激する柊。
「「わっか!?」」
「高校生かよろしく」
翔太郎と亜樹子が後ろで驚く。
「自己紹介するなら、亜樹子の後ろにいるその子も紹介して上げて?」
紫が笑いながら言う。ジッと見ると確かに後ろに緑髪の少女がいる。
「え……と」
緑の綺麗な髪をした少女は口をモゴモゴしたまま、名前をついぞ話さなかった。
「…………」
「早苗、いつまでもそのままじゃ変われないわ、ちゃんと自己紹介くらいはできるようになりなさい」
早苗。彼女は早苗というらしい。
「あ、あはは、早苗ちゃんは照れ屋さんだもんね!」
「すみません……」
「いやいや! 早苗ちゃんが謝る事ないから!」
亜樹子が励ませば励ます程に暗い顔へと様変わりしていく。
「……すみません」
「「「……」」」
その場は神妙な雰囲気になってしまった。
何か事情があるのだろうか? それともただの極度の人見知りか?
そう考えていた柊は後に後悔する事になる。匿ってもらっている時点で悲しむような、話したくなくなるような出来事が起こっていたのは容易に想像が付くはずなのに。柊は軽い気持ちで考えていた。
「こんなタイミングで悪いけど敵よ」
「ああ、みたいだな」
翔太郎は帽子に息を吹きかけ立ち上がる。
「今度はサイクロンジョーカーになるかい?」
「ああいや、お前はもしもの為に嬢ちゃんの横に付いててくれ。何かあった時は頼むぜ」
帽子を被り仕度をする翔太郎。慌てて柊も支度する。
「俺も行きます! 」
「ダメよ、貴方はここに居て頂戴」
「な、なんでですか?」
「何かあった時には貴方とフィリップくんしか守る人が居ないもの」
(言ったでしょ? 私は貴方に力を渡してる、それにそうじゃなくたって現代じゃ私の使える力は限られてるわ。現界するだけでもそれなりにリスクがあるの。フィリップくんだけではドーパントからは早苗を守れない。だから居てくれないかしら?)
紫からの頼みも理解できる。だが、今回の事情においては柊太郎を頼ってない訳ではないが、柊には何か嫌な予感がしてならなかった。
「う、うーん」
「心配すんな、どうせまた財団の下っ端共だ。ちゃっちゃと決めてくるさ」
「わかりました」
「本当に大丈夫かい? 柊が変身できるなら別に僕が行っても」
「心配すんなって、それに柊にはあまり変身してもらいたくねぇ」
「え?」
ピシッ!と柊のはめている時計に柊太郎は指を差した。
「時計にゃ不要なボタンが何個もある。それにボタンの横に書いてある顔はお前が変身する仮面ライダーの顔と見た。それから推察すると……」
流石は探偵。翔太郎は隠し続ける気でいた柊の事情を看破した。
「お前はそこにあるボタンの数しか変身出来ねぇんじゃねぇか?」
「……はい」
「とすると、雑魚の相手で散らしていい物じゃねえはずだろ」
「…流石の観察眼ね。恐れ入ったわ」
「突然降って湧いた人間だ。そんなヤツが見たこともねえ変わった時計をしてりゃ警戒ぐらいする、まぁそれを隠す理由はわかんねぇけどな。でも聞かれたくないから隠してたんだろ? なら聞かねえさ。俺は依頼人の依頼と言葉を信じるだけさ」
帽子を乱暴に取り、ドアに手をかける翔太郎。
「翔太郎くん無理しちゃダメだよ! 危なかったら帰ってきてね!!」
「分かってる。そっちも無理はすんなよ」
「翔太郎さん」
「あん?」
外に出る直前に止められ、柊太郎は首だけをリビングに向けた。
「黙っててすいませんでした、必ず早苗は守ります!」
「……」
パチン。と指を鳴らして颯爽と外に出る翔太郎。
「……カッコいいですね」
「ええ」
「ちょっとハーフボイルドでキザっぽいけどね」
「誰がハーフボイルドだ亜樹子ォ!」
♢
「……さぁてと、こっちもそろそろ温まってきたし、容赦はしないぜ」
──《JOKER》!
手慣れた手つきでジョーカーメモリを起動させ、ロストドライバーに装填する。
「変身」
──《JOKER》!
「いたいた……」
ゾロゾロと、人型のまま、集団でこちらに来ていた。
「なっ…仮面ライダー……のかたが」
「もうそれはいいわ! オラッ!」
財団Xの下っ端は変身するかと思いきや、そのままジョーカーに突っ込んだ。
「──何っ!」
ジョーカーは振りかぶっていた拳を止める。動きを止めたジョーカーは7,8人がかりで身体に突組まれた。
「テメェら、何が狙いだ! 何企んでる! おい!」
「やめて! お願い! ねぇ!」
「はぁ!?」
翔太郎は変身していない相手をWのまま殴ることは決してしない。無理に暴れればただでは済まない事が分かっているからだ。
「ククク、せいぜいそうしていなさい」
「……あん!?」
家の屋根に登り、メモリを構えている男。
雰囲気で其奴が何者かを翔太郎は理解した。
「幹部か! っくそ、俺を抑えてるうちにって腹か……こんなもん!」
「違うの! 動かないで!!」
「ああん!? さっきから何言ってんだ!」
翔太郎の検討とは違い、彼はメモリを身体に差し込んだ。
「決定的な一撃を加えてあげましょう、左 翔太郎。心にも身体にも、ね」
──《BOMB》!
「……あ?」
ボム・ドーパント。財団の男はそう名乗った。
「……いい加減離れやがれっ!」
強引に戦闘員を引き剥がす。
「フッフッフ…隙あり…」
「うぐっ!?」
己の左腕を導火線のような手へと変化させた彼は鞭のようにしなった左手で、ジョーカーを握りこむ。
「う、動けねぇ…」
翔太郎は、ここで戦闘員達の様子がおかしいことに気付いた。
(なんだ? 止まりやがった)
「や、助けて……!」
「なっ!!」
「今だ!自爆しろ!!」
言われるがまま、超至近距離で、戦闘員と思わしき人間達が自爆する。
「うわぁぁぁああ!!!!」
巨大な爆煙が上がる。そして、何かを察知した紫。
「……!」
「どうしたんだい紫さん、翔太郎の身に何かあったのかい?」
「……不味いかも」
その言葉を聞いた瞬間、柊はドアから飛び出した。
彼は嫌な予感を信じて、何かが起きた瞬間に変身することを決めていた。
「まっ! 待ちなさい柊! 変身するのは早計過ぎるわ!」
「俺もしてたんですよ、嫌な予感!」
柊を追いかける為に二人も外へ出る。
「後手後手はうんざりだ、変身!」
柊は時計のボタンを押し、変身する。
──タカ! ──トラ! ──バッタ!
──タ・ト・バ! タトバ! タ・ト・バ!!
「あれはオーズ? どういう事だ!? なぜ彼はオーズに変身できるんだい!?」
当然。オーズを一度見たことがある彼がその疑問を抱くのは必然である。
「……馬鹿……」
♢
オーズのタカヘッドが何かに反応した。
「こいつっ…! はっ!」
柊は空気を切った。…と、紫達からは見えていた。
「何をしてるの?」
「分からない、まさか……」
メモリガジェットであるバットショットを用いて、柊がいる範囲をフィリップが目視すると。
「やはり間違いない……ドーパントだ……!」
「透明化するドーパントかしら?」
「ああ、恐らくインビシブル・ドーパント……そうか、翔太郎を別の場所に誘き寄せて、その隙に奴が来る気だったんだのか」
柊が変身しなければ、恐らく早苗は連れ去られていただろう。
「……変身しちゃって良かったってわけね!」
「ああ、亜樹ちゃんも大概だが、彼もなかなかの幸運の持ち主のようだね」
「はっ! せい…! おりゃ!」
「ぬぅぅう……」
度重なる斬撃を食らい謎の男は透明化を解いた。そしてインビジブルメモリをポケットへと収納する。
「悪いが、策は失敗だったな」
「失敗? とんでもない、手間がかかりはするが、こちらとしては実験にもなる。好都合だ」
「……何?」
異様な雰囲気を柊は感じ取った。眼前にいる敵が、まるで自分の力と近い性質を持っているような。
「貴様が何故オーズになれるかは知らん。だがオーズは既に戦闘データを閲覧済だ。ならば私の研究の糧にしてやる」
「これで終わりだ!! 財団X!!」
「……勘違いするな、私は既に財団から反旗を翻している!」
「なっ!?」
右手に渾身の力を入れて拳を振り上げた。
しかし、敵の生み出した風圧により、拳が弾かれる。
柊とフィリップはこの異様な状況に気づく。
「なっなんで……!」
「インビシブルはあんなこと出来ない。改造したのか」
「フッフッフ。こういう事も出来るぞ?」
右手をスナップすると右手に炎が捲き上る。
「!!」
「耐久力の実験台だ!!」
拳を左手で受け止める。
「アッツ!! アツっアツっ!!」
フィリップは口元に手を置き考える。
「なんだあれは……? ヒートメモリ…?」
ついで、左脚の蹴りを食らう。
「がは……」
柊が地べたに転がる。
「……これが新しい新世代を歩む超性能のガイアメモリ。さしずめ