東方欲望録   作:アンダーソンキャッスル

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27話 探偵の勘とグリードと Sの涙/ 止めろ願い

欲望(グリード)メモリ……?」

「財団の技術力を結集し創った。至高の一品だ」

「……財団は抜けたって言っておいて、しっかり力は利用してんだな」

「ふん、元々は私の技術でもあるからな」

 

 これに勝るメモリはないとでも言うかのように、謎の男は両手を広げる。

 

「……」

 

 

 柊は膝に力を入れて立ち上がった。

 

「それが何だってんだ、ちょっと火と風が出せて透明になるだけだろうが!」

「そうか、凡人にはそう映るのだな」

 

 異形な形のドーパント。彼の頭部からは、雷が放たれた。

 

「う、うぁぁぁ……!!」

 

 柊はいきなりの攻撃に避けられず、全て食らってしまう。

 

「う、うぅ……なん……だその力……雷まで使えんのか……」

「鈍い奴。オーズの変身者ともあろう者がこの力に気づかないとはなぁ!!」

 

 今度こそは、と意気込んでカウンターを入れる為の姿勢をとるが、グリードドーパントの早すぎる接近に対処できない。

 

「せいっ!!」

 

 殴る直前、グリードドーパントの左腕が銀色に変色する。

 

「硬ッ!?」

「隙あり!」

 

 そして、柊は声すら出せないほどの威力の拳を受け、地面にクレーターを作る。

 

「ゲホッゲホッ……ええい、くそ……!」

 

(ぐ、グリード……メモリって言ったな……)

 

 その時、彼の脳裏に答えが浮かび上がる。

 

「それぞれのグリードの力が内蔵されてるのか……!」

「ボンクラめ。だがそれで? 分かったところでどうするというのか──な!!」

 

 羽根を展開して、上空へ上がるグリードドーパント。そして、そのままこちらへ向かって落下してくる。

 

「──フィリップさん! 皆んなを中へ……!! 裏口から逃してやってくれ!」

 

 ──《SCANNING CHARGE》! 

 

「柊! そのドーパントの力はまだ未知数だ! 真っ向から行くのは危険だ!」

 

 そのフィリップの発言は遅かった。彼の繰り出した蹴りを止めるのはもう間に合わない。

 

「はぁぁぁ……せいや──っ!!」

「ふん……いいぞ、白黒付けてやろう」

 

 互いのキックが宙で交差する。

 

 そして、──互いに態勢が崩れダメージを負う。

 

 グリードドーパントの右足の部位が少し剥がれ、柊は右足を抑える。変身している今の姿ではわからないがおそらく内出血を起こしている。

 

「「ぐぅぅ……!!」」

 

 同時に着地した瞬間、振り向きざま拳を振るう。

 

 

「うぐっ……成る程、ただの肉弾戦では拮抗するか。……仕方がないな、さすがはオーズか」

「そりゃ、ただの科学者に遅れを取るわけにはいかないんでね」

「もういい、戦闘データは取れた。このメモリ1つで仮面ライダーに対抗できる、ならば本題に入ろう」

 

 そう言って、右手に火炎を纏う。

 

「……!」

 

 そのまま右手を、鳴海探偵事務所へ向けて、火炎を放った。

 

「うぐっ……くそ……!」

 

 火炎がかもめビリヤードに当たれば、中にいる皆んなが怪我をする。だがこのタイミングではトラクローで弾けもしない。柊は受けるしかなかった。

 バッタレックを使い、全力で跳躍。そして事務所を庇う形で攻撃を受けた。

 

「うわぁぁあああああ!!」

 

 

 火炎を抑えはしたものの、攻撃を受けた反動によりかなりの速度で、事務所に突っ込んだ。

 

「うわぁあ! 柊くん!? 大丈夫!!?」

「亜樹子! 早苗を連れて逃げなさい!!」

 

 紫が、囮になるかのように柊の前に出る。

 

「……誰だぁ? 研究の邪魔をするな!!」

 

 グリードドーパントが火炎を放とうとした瞬間、謎の音で動作を遮られる。

 

 ──《SCANNING CHARGE》! 

 

「……なにぃ?」

 

 柊は地に突っ伏したまま、スキャニングチャージをし、今度は柊が頭上へ飛んだ。

 

「せい、やぁ……あ!!」

「しまっ……!!」

 

 

 不意をついた一撃。火炎を放とうとしていた隙を上手く突くことに成功した。

 

「ぐおおっ!!」

 

 3つのオーラングサークルが浮かび上がった。タトバコンボによるキックが成功したのだ。

 

「ハッ……ハァ……ハァ……せ、せめて……他の亜種コンボでも使えたら……あいつに対抗できるのに……!」

「ええい、貴様もしつこいな! ……これは貴様用ではないのだが……」

 

 グリードドーパントは今度こそは、と言わんばかりに懐から何かを取り出した。

 

「……? な、何を……ぐっ!」

 

 先程受けた火球のダメージも無視できない。柊は思わず膝を地面に付けてしまう。

 

「柊! 貴方は亜樹子を追いなさい! 逃げてあの子達を……」

「まぁ待て女。面白いものを見せてやる」

「! やめてっ!!」

 

 紫が叫ぶ。

 その叫びに呼応するように謎の男にフィリップが拳を振るった。

 

「柊、すまない僕の判断が遅かった。君をそんな目に合わせてしまったのは僕のせいだ」

「き、気にしないで……フィリップさんの所為じゃ……な、い」

 

 事態はピンチのままだ。そしてフィリップの一撃が、謎の男を抑えていたリミッターを外したのであった。

 

「ふ、ふふ……人をイライラさせるのが上手い奴らだ……」

 

 謎の男、グリードドーパントがフィリップ、柊に手をかざすと、二人とも地面に押し付けられる。

 

「これは……重力の力、か……!!」

「ぐ、うう!」

 

 フィリップは、なんとか上体だけは起こしているが、柊は抗う体力を失い完全に地ベタに伏している。

 

 このまま殺してもいいが、なるべくこちらの御し易いように仕向けておこう、と。

 

「ふぅ……おい、娘!」

 

 グリードドーパントは声を荒げる。

 その声のターゲットは、当然奇跡の少女(早苗)

 

「お前が大人しくこちらにその身を渡せば……これ以上手は出さん!」

 

 当然、柊とフィリップにはそれが嘘だと分かっている。

 黙っている二人ではない。

 

「逃げるんだ、紫さん! 早く……!」

「……う、ぐ……俺達で守る……!」

 

「じゃじゃ馬共め……人の会話に割り込みするなよ? 大切な風都の仲間が死んでもいいのか?」

 

「何……?」

 

 グリードドーパントは上を見るように指示をする。二人が見上げると宙には奇妙な物体が浮かんでいた。

 

「あれもこの力の一端で作ったものだ、あれの中には人間が入ってる。……そして奴らは俺の持っているこのスイッチを押せば木っ端微塵だ……!」

 

 一気に青ざめる二人。

 そんなバカな、とフィリップはつぶやいた。

 

「嘘なものか……! 何なら試してやろうか? いや……この方がいいか」

 

 グリードドーパントの肩が震える。力を使い何かしているようだ。

 

「た、助けて……!」

「うわぁぁあ! 死にたくねぇ!」

 

 殻の一部分が開き、中に閉じ込められていた者達の声が響く。

 

「……なんて、野郎だ……!」

「……どうすれば助ける?」

 

「……分かり切っているだろう! 匿っている女を渡せばいい!」

 

 

 グリードドーパントの大声を聞いて、苦渋の表情を浮かべながらも思わず飛び出ようとする早苗。だが紫が手を掴んだ。

 

「ダメ……! 貴女の為に闘ってるの!! それにあいつについて行ったら貴女は間違いなく酷い目に遭う……!」

「……!!」

 

 

「柊……! 」

 

 小声で呟いたフィリップを柊は見た。

 フィリップは時間を稼ぐ、とジェスチャーした。

 

 そして、ニヤリ、と笑い余裕を持つグリードドーパント。

 

「それで? 良き返答を期待するがどうだ?」

「……も、もう……」

 

 柊とフィリップの背後から少女の声が聞こえる。

 

「来ちゃダメだ……! 早苗……!」

「まずい……!」

 

 二人の声を阻害するように語りかけるグリードドーパント。

 

「もう?」

 

 

『助けて』と呼ぶ声が。頭の中で流れる柊。

 

「もうやめて下さい!!」

 

 早苗の迫真の声と共にグリードドーパントは吹き飛ぶ。

 

「なっ何だこれは……!!」

 

 グリードドーパントに圧力が掛かっている。と同時に柊とフィリップにかかっていた重力の負荷が消える。

 今が好機だと言わんばかりにフィリップが走り出した。

 

「柊!」

「はい!」

 

 バッタレッグを使い、家の壁を蹴り上げながら跳躍する。

 

「なっ!? は、離せ!」

「嫌だ……柊!」

 

 左手に握ったリモコンをどうにかして奪おうとするフィリップ。

 

「だっ!」

 

 卵のようなものに閉じ込められている人達をトラクローで助ける。

 

「もう大丈夫ですから! そっちの家の屋根に順番で飛び移って!」

 

 中にいた人達は腰が抜けているようで自ら動く素振りはなかった。

 

「……っ……大丈夫、一人ずつちゃんと運びます!」

 

「ぬぉぉ、離れろ!」

「……よしっ!」

 

 フィリップがなんとかリモコンを奪い取った。

 

「……なんてな。本気でそんなヘマをすると思っているのか?」

「何?」

 

 それは、柊が被害者を持ち上げた時だった。

 

「よし、貴方から……」

「た、たすけて……」

「はい! 絶対助けます! もう大丈夫」

「違うの……」

 

 被害者達の様子がおかしい。目がどこか虚で、力が入っていないような立ち振る舞いだ。

 

「……ち、違うって……?」

「何か入ってる……私の中に……助けて……助けて」

「俺もだよぉ……さっきからドンドン熱くなってるんだ……胸のあたりがさぁ……熱いんだよぉ……!!」

 

 徐々に。被害者達が震えていく。感情が入り乱れていく。

 

「なっ何が起こってるんだ……」

 

 心なしか、抱き抱えてる被害者の身体に熱がこもっていくように感じる柊。

 

「……お母さん……」

「……え?」

 

 涙を流しながらぐったりと身体を地面に伏せている少女。

 

「……死んじゃった」

 

 

 グリードドーパントが腕を上げる。

 

「く!」

 

 グリードドーパントが起き上がる衝撃から身を守り、受け身をとるフィリップ。

 

「あーあーあー、私もこんな事本望じゃないのだがなぁ。さっさと渡さないからだぞ?」

「……まさか」

 

 無線のようなものを取り出して、グリードドーパントは叫んだ。

 

 

「起爆しろ、ボムドーパント」

「や……やめろ──っ!!!!」

 

 通信越しで、ボムドーパントが応答する。

 

「あいよ、ぼーむっ!! 起爆だあ!! あはははははは!!」

 

 

 フィリップは通信越しに聞く声を聞いて、最悪な展開を想像する。

 

 

 ドーパントの笑い声が響いた直後、被害者達の身体が膨れ上がる。

 柊が抱えていた女性は腹部が異様に大きくなり、身体中が発光する。

 

「お母さん……!」

「来るなっ!!」

 

 咄嗟に強く当たる柊、そして女性は一言だけ、口にした。

 

「逃げて……!」

「お母さんっ!」

 

 その一言だけは母親としての本音だと、柊は受け取った。

 

「ごめん……ごめんっ!!」

 

 柊は女性を()()()()()()()()。そして少女に手を伸ばした。

 

「手を出して! 早くっ!」

 

 少女が手を伸ばせば、抱き抱えられた筈だった。だが──少女には柊の手より先に母親の爆発する姿が映った。

 

「さ……や……っ」

「お母さん……いやっ! いやぁぁぁぁあぁあ!!!!」

「……クソ!!」

 

 柊は少女に飛びかかり、爆風を受け吹き飛んだ。

 そして、人体爆弾達は巨大な爆風と共に消し飛ぶ。

 

「ははは! こっからでも見えるぞ〜! たーまやー!!」

 

 ボムドーパントは高らかに笑う。人間を火薬とした花火を見て。

 

「んふふ、次はだーれを爆発させちゃおっかな〜!?」

 

 超至近距離で人間爆弾を受けたジョーカーは死んだ、とボムドーパントは思い込んでいた。

 ゆえに背後の気配には気づかなかった。

 

「……ぜっってぇ、許さねぇ!!!!」

「……え!?」

 

 後ろから、肩を掴まれるような感覚に身震いするボムドーパント。そして、左 翔太郎の声がする。

 

 ──《MAXIMUM DRIVE》! 

 

「うぉらぁぁああ!!」

「おっおっおぉぉお!?? 俺がボムしちまうっ!! ……のも悪くないかもぉぉおおおあああっ!!!!」

 

 ボムドーパントは、ジョーカーのライダーキックでメモリブレイクを起こした。

 

 

 ♢

 

 

「柊!」

 

 空から勢いよく地面に飛び込む柊を見て、慌ててフィリップが駆けつけた。

 

「息はしている……だが……」

 

 抱いている少女の意識が薄い。爆風に巻き込まれたせいか、と彼は推測した。

 

「……」

「そんな目で睨んだとて無駄だ! そもそも化け物をさっさと私に引き渡しておけばこんな事せずに済んだんだ。私も胸が痛いよ」

 

 早苗は涙していた。身体も崩れ落ちて、逃げる気力すら失っている。

 

「彼女は化け物なんかじゃない……!」

「そうか、じゃあな!」

 

 グリードドーパントの火球。早苗の前に立ち、フィリップは自らが受けようとした。

 

「させねぇよ」

 

 だが颯爽と現れた翔太郎、もとい仮面ライダージョーカーが防ぐ。

 

「お前が爆弾ドーパント野郎の仲間か?」

「そうだと言ったら?」

 

「絶対に許さねぇ!!」

 

 誰の目から見ても明らかだったが、今の翔太郎は憤激している、

 その興奮は、心臓が飛び出ていきそうなほどであった。

 

「ぬぉっ!」

 

 この怒りは、一発殴ったくらいじゃ到底治まんねぇ! そう言いたげに拳を奮い続ける。

 

 渾身の力を込めた右の正拳突き。それはドーパントに炸裂し地面に転がせた。

 更に右手を振り上げて3発目の用意があることを示す。

 

「い、いぎっ……!」

 

 グリードドーパントはバックステップし、火球を何度も放つ。しかし、その全てをジョーカーは左手で軽々と弾く。

 

「てめぇらがやった事、そのまま受けてみやがれ!!」

 

 

 ──《JOKER》! 

 ──《MAXIMUM DRIVE》! 

 

 

「お、お前……は」

「オラァ!!」

 

 拳が唸る。このドーパントになるだけでかいダメージを負わせようと、ジョーカーの拳が火を噴く。

 

「ちっ!」

 

 重量を操り、最大限の力でジョーカーの動きを封じようとするが。

 

「……ッラァ!!」

 

 そんな力知るものかとジョーカーは思い切り拳を振った。

 

「うぎゃぁっ!!?」

 

 攻撃をくらい、吹き飛んだドーパントは、前のめりになってその場に崩れ落ちる。

 

「ええい、おのれ!!」

 

 グリードドーパントは風と同化し姿を消した。

 

「……どうやら、消えたみたいだ。透明化してるわけでもない」

「柊も……あいつらにやられちまったのか……うっ!」

「! 大丈夫かい、翔太郎!!」

 

 変身を解いた翔太郎を支えるフィリップ。

 

「あ、あぁ……俺は無事……でもそれじゃしょうがねえんだ。俺だけが無事じゃ……」

 

 ベルトを外し、その場にうずくまる。騒音が消えたのを察知してか、亜樹子が扉から出てくる。

 

「ちょ、ちょっと翔太郎くん! 柊くんも!」

「亜樹ちゃん、先に戻って救急箱を用意していてくれるかい? 僕が二人を担いで行こう」

「あ、う、うん!! 早苗ちゃんも手伝ってくれない?」

「……ぇ……」

「早苗ちゃん! お願い!」

「は、はぃ……」

 

 早苗達は事務所へ入っていく。そしてそれを見送ったフィリップは柊太郎へ話しかけた。

 

 

「すまない翔太郎……」

「……あ?」

 

「やはりサイクロンジョーカーになっていた方がまだ……」

「フィリップ」

 

 目と目を合わせる。

 

 そして、翔太郎は言う。

 

「お前はお前の出来ることをやりきったじゃねぇか、お前に非はねぇよ。むしろ俺が甘過ぎた。だから今度こそは、俺たち全員であのドーパントをぶっ飛ばしてやろうぜ」

 

 この場でも、翔太郎の言葉はフィリップの心に温かみを与える。

 フィリップは満足らしく笑みを漏らす。

 

「……ああ、相棒」

 

 

 そして──。

 数時間の後、柊が起きた。

 

「ここは……」

 

 この家のソファだ。と手触りを確認する柊。

 

「鳴海探偵事務所、だ。ちゃんと記憶はあるか?」

 

 どうやらドーパントとの闘いは柔らかベットで見てた夢、と言うわけではなさそうだと知るや否や頬を叩く柊。

 

「翔太郎さん……」

 

 全てを思い出した柊の顔は、とても高校生の浮かべられた表情ではなかった。

 

「みんな無事だ、お前が一番酷かったんだぜ。ま、お前が仮面ライダーである以上タフさは信頼してたけどな」

「あの……俺が抱えてた女の子は……」

 

 一段と深刻そうな顔で柊太郎は話す。

 

「今は病院にいる、あの子だけは助かったみたいだ」

 

 あの子だけ。という言葉に今一度、柊は胸を締め付けられた。

 

「すいませんでした……」

「……今は休んでな」

 

 そう言って椅子から立ち上がる柊太郎。そして、亜樹子が料理を運んでくる。

 

「今食べれる?」

「……はい」

 

 本当は今彼に食欲はない。だが、これからはいつご飯を食べれるかも分からない。食べれるうちに食べておくべきだと判断したゆえの行動だった。

 

「……亜樹子、柊。俺は地下にいる何かあったら呼んでくれ」

「うん、分かった」

「……はい」

 

 翔太郎は柊を慮り席を外した。

 

「……すみませんでした」

「ん?」

 

 柊の握る手に力が入る。

 

「……大丈夫、早苗ちゃんは無事だよ。ご飯もちゃんと食べたみたいだし」

 

 柊はそれ以上言葉を発したら心が耐えられなくなりそうで、無言で時を過ごした。

 

 

 ♢

 

 

「……検索を始めよう。キーワードは『グリード』」

 

 フィリップによる能力検索、地球の本棚(ほしのほんだな)を使って能力対策を講じるフィリップと柊太郎。

 

「やはり以前調べた時と同じだ、該当するものが多すぎてこれでは奴の能力を絞れない」

「二つ目のキーワードは、ドーパントだ」

「ああ……」

 

 翔太郎の言う通りに調べてみると。

 

「まだだ、まだ……」

「三つ目のキーワードは……財団X研究員」

 

 3つ目のキーワードでようやく、絞ることが出来た。

 

「これだ。グリードドーパント……名を叶 望(カノウ ノゾム)。元財団Xの研究員だ」

「叶 望……?」

「? 何があるのかい? 翔太郎」

「いや、なんでもない……」

 

 財団Xの刺客だと言うことは二人とも承知をしていた。

 

「……元ってのは?」

「今は研究員のメンバーから外されているみたいだね。元々は病気についてのデータ採集専門家だったようだ。財団に入る前には一度医者として働いていたと記されている」

 

「ああ、それに奴には……」

 

 次のページを目くったフィリップは、目を少し見開いた。

 

「娘もいるみたいだ、それにまだ生きている。母親も……やはり知っていたのかい?」

「俺が風都の人で知らないのはいねえ」

 

 それはそれは。と誰かが地下へと降りてくる音を聞く二人。

 

「紫さん。あんたも大丈夫なのか?」

「私は無問題よ、ちょっと火傷したくらいだし」

 

 火傷をしただけと言いながら歩く紫は、なんともまぁ頼もしい姿だ。

 

「それでどうする? ちょっと娘でも攫って人質にでもする?」

「こえーよ紫さん……」

「娘も母親も今は彼と共に住んでいる訳ではないようだ。娘と母親は叶が何をしているのかすら知らないだろう」

 

 まぁ、それはいい。と翔太郎は言って。

 

「あんな真似許せねぇ、とっ捕まえてやる。行くぜ相棒」

「待つんだ翔太郎! 対策もなしに闘うのは危険だよ、それにどこに居るかも分からないんだ!」

「今回財団Xが追ってたのは嬢ちゃんじゃなくて叶だったんだ、なら奴らの後を追えば自然と叶に辿り着く。それに対策なら簡単だ、相手が複数の能力を持ってんだからこっちも闘いながら立てればいい」

「……後ろ見ずな姿勢は翔太郎の長所だ。けど早苗ちゃんを守ることを考えたらそれは危険だよ」

「……はぁ、分かった。なら二人は対策なりなんなりを考えててくれ。俺は用がある」

「翔太郎! 冷静に闘ってくれなければこのままではきっとエクストリームになれない!」

「ああ分かってる、大丈夫だ、あとは頼む」

 

 ドアを思い切り締めて出て行った。

 

「ちょっと、あれじゃ一人で闘いに行くんじゃ……」

「いや……それについては大丈夫さ。翔太郎は依頼人を無視して独断で闘うような真似は絶対にしない」

「そう? 貴方が言うなら、信用するけど」

「翔太郎は落ち着くための時間を作りに行ったんだ、僕達はその間に対策を考えよう」

 

 翔太郎が走って出た衝撃で地面に落ちたペンを拾い、ホワイトボードに文字を書き始める。

 

「……全く。落とした物くらい自分で拾ってくれると助かるんだけどね」

「ねぇ、どうして翔太郎はあそこまで怒っていたの?」

 

 翔太郎の立ち振る舞いはまるで自分の身体を痛めつけられ怒っていたように紫の目には映っていた。

 事実痛めつけられはしたが、どうにもそれだけでは合点がいかない程怒っていたし、矛先が違うように思える。

 

「彼にとってこの街風都は自分の身体そのものと言っても過言ではないからさ。彼はこの街を愛してるんだ」

 

「そんな彼が風都の人達を爆弾に変えられて無理やり爆破なんて真似されたら……」

「怒髪昇天、なんてレベルじゃ済まないって事ね。気持ちはよく分かるわ……私も、故郷が大好きだから」

「だがね……」

 

 焦りを含んだ笑みを浮べるフィリップ。

 

「一応僕達が狙われてもファングジョーカーならどうにかなるし、翔太郎側が狙われても問題はない。……けど」

「大丈夫よ、ちょっとくらいなら外に出ても。叶も怪我を負ってるだろうしすぐには来ないわ」

 

 頭をかくフィリップ。どうやら探偵というのも一筋縄ではいかないようだ。

 

「そうは言ってもね……万全の状態でいないと不安なんだ」

 

 だが今回は翔太郎のメンタルを優先させた。……だが、もしかすると今回はエクストリームになるべきではないかもしれない。

 

「そういえば言ってたわね……エクストリームになれないとか何とか……」

「ああ。僕と翔太郎がエクストリームになるには完全な調和が必要になる」

 

 頭の中で今日の出来事を二人で反芻した。

 

「ジョーカーメモリには人間の感情で性能が上がるという性質があってね。今日の闘いぶりから見ても翔太郎のジョーカーメモリには普段以上のパワーが漲っているのが分かった」

 

 フィリップにはもう冷静さを取り戻したように見える。

 

「今日の様な状態でエクストリームになるのは危険なんだよ」

「……なるほどね」

「だが仮にエクストリームになれずとも問題はないはずだ。そもそもグリードメモリなんて大層なものを基盤に乗せた製造は不可能だよ。例え財団Xであってもそれは例に漏れないのさ」

 

 つまりフィリップは、グリードメモリと叶の相性は別にいいものではなく、あくまでメモリを模した模造品であるがゆえに、ダブルになった自分たちなら闘えるという。

 

「……どうでしょうね、それは」

「何か心当たりでもあるのかな? 紫さんには」

「詳しくは話さないけど、依然柊とは敵だったの、私」

 

 扇子を揺らして笑う紫。

 

「そうなのかい?」

「ええ、今は仲直りしてるんだけどね。彼のオーズの力もそうだけれど、欲望の力を侮ってはいけないと思う。例え相手が戦闘経験もないただの医者もどきであってもね」

「肝に銘じておくよ」

 

 あ、そういえばと呟く紫。

 

「彼も、大分やられたみたいで……」

「うん、亜樹ちゃんに頼んでるけど。彼はまだ若いみたいだし、次の戦いはどうかな」

 

 今度は紫が苦しそうに頭を抑える。

 

「ちょっと彼に見せるにはショッキング過ぎたわよねぇ。何があったのかは聞いたけどさぁ」

 

 自分が憧れていた世界で、というのも彼を苦しめる理由としては大きいだろう。

 

「こういう経験はこれが初めてかい?」

「自分が死にかけた事はあるけれど今回みたいな精神的なのには慣れてないみたいで」

「慣れていた方がこちらとしては悲しいよ」

 

 昔の事を思い浮かべているのだろうか、どこか遠くを見つめているフィリップ。

 

「……次は必ず僕も出る。今度こそ頼れる姿をお見せしよう」

「ええ、期待してるわよ」

 

 少しの間があってから、無意識に紫がため息をついた。

 

「何か心残りが?」

「早苗にどう接してやればいいか分からなくてね……」

「……ふむ」

「正直何を思ってるのかも分からないもの、本当に私達の住む場所に来たいのかすら怪しいわ」

「彼女が心から出た言葉を話してくれる事を信じるしかないね」

 

 紫はどこか罰が悪そうに他所を向く。

 

「私もよく嘘つくし、信じてもらえるかしら」

「人の心を検索する事は誰にも出来ない。だから直接聞いて、それを信じるしか出来ないんだ。大丈夫、早苗ちゃんを信じれば、きっとあっちも信じてくれるよ」

 

「ふぅ、そうね」

 

 清々しい面持ちでフィリップに向き直す。

 

「私達は私達に出来ることをやりましょう」

 

 

 柊がご飯を片付けて、身を休めている時、丁度翔太郎が外に出て行った。

 

「……翔太郎さん?」

「嬢ちゃんの事は頼んだぜ」

 

 柊に質問させる暇なく、外へ出て行った翔太郎。

 それを見た柊は、どこか虚な眼をしていた。

 

(……また……守れなかった)

 

「……グスン……」

 

 誰にも自分の気持ちを悟られる事がない様、溢れる涙を抑え、漏れる嗚咽を少しでも押さえ込む。

 

「行かなきゃ……」

 

 守れなかった少女の元へ。柊は走り出した。

 

 

 柊太郎の言い分から病院にいる事を察した柊は病院へと走り出した。己の行く目的地を書いた置き手紙を遺して。

 

「はぁ……はぁ……!」

「わっ!? どうしたの君……? 随分疲れてるみたいだけど」

 

「あの……今日運ばれてきた女の子……さ、さやさんはどこですか?」

 

 受付の人に会わせるよう懇願した。柊の願いは承諾されなかったが、扉越しに見る事だけはできた。

 

 扉の鏡部分から見える少女は。包帯巻きになってベットで寝ている。

 

「仮面ライダーが助けてくれたらしいの。……でもそれ以外に記憶がないらしくて、お母さんが死んだって知らないらしいんだけど……でも言えないでしょ」

 

 母親、十中八九最後にさや、と呼んで爆発させてしまった人だろう。

 

 当然だ。今追い討ちを掛ける必要などない。母親が死んだ事実を再び告げるなんてそれこそ残酷だというものだ。

 

「仮面ライダーが助けた……か」

「そうよ、この街にはね、本当にいるの。仮面ライダーが」

 

 柊は当然その事は知っている。だが、それは、仮面ライダーは…自分のことではない。

 

「そいつは……仮面ライダーなんかじゃない」

「え?」

 

 彼は俯いたまま、何も答えなかった。

 

「……それじゃ私は……」

 

 案内を終えた受付の看護師は再び受付に戻って行く。

 

「……んな……ごめんな」

 

 柊は自責の念に駆られる。己の不甲斐なさにどうしようもなく不安を覚えてしまう。

 

(結局オーズの力を持ってても……守れねーじゃねぇか!)

 

 柊にはなまじ解決出来るだけの力があった。オーズという、絶対的な力が。だから余計に助けられなかった少女やその母親達への罪の意識が高まっていく。

 

「ぅ……く、ぅ……」

 

 俺でなければ助けられたのだろうか。という意識が余計に彼の肩に重荷を増やす。

 

「……一回吐いて楽になりゃ良い。偶然ここは病院だしな」

 

 柊の肩に優しく、翔太郎が手を掛けた。

 

「翔太郎……さん……なんで、ここに」

「……風都の人間の涙を嗅ぎつけたからさ。俺はこの街じゃ誰一人泣いてほしかねぇ」

 

 柊の肩を優しく持ち上げて、場所を変えようと提案する。

 

「もう、大丈夫ですから、早苗の所に……」

「今のお前は見過ごせねえよ、これで涙拭いとけ」

「……泣いてませんよ」

 

 雨だ。そう心に言いかける。

 

「例え眼から涙が出てなくても、心が泣いてることくらい、一眼みりゃすぐ分かるんだぜ」

 

 翔太郎はそれ以上は口にはしなかった。

 

「手が届くのに手を伸ばさなきゃ死ぬ程後悔するのは、嫌というほど知ってました」

 

 映司の教訓として、ではなく柊自身が死ぬ寸前の実感として見に染みていた。少女を一度死なせてしまっている自分だから、手を伸ばしたのだ。

 

「でも俺の手じゃ……助けられなかった……届かなかった……!」

 

 母親も彼女の心も。自分の力で守る事が出来なかった。

 オーズという大層な力を持っていながら。彼女を守る事に必死になり過ぎて彼女の気持ちには配慮する余裕などなかった。

 

「良い子だったから、自分の目先の危険よりお母さんの身体に気が向く子供だったから、俺は力を振り回すべきじゃなかったんだ」

 

 心の本音を呟くと呟くだけ涙が出てくる。その粒はどんどん大きくなっていった。

 

「この力があって闘わないのはきっと後悔するから闘ってた……けど、力を振りかざさないほうが良かったかもしれないなら……もう、俺は闘えない。俺は仮面ライダーにはなれない」

 

 早苗も、少女と同じ惨状に遭ったらと思うともう闘えない。そう愚痴る柊。

 

「もうどうすればいいか分からない…… あの時、母親を振り解くしか彼女を助ける方法はなかった……それが……余計にあの子の心を傷つけたかもしれないなんて……」

 

 『人を助けるときには、そのたまたまを忘れてはいけない』

 

 これは、憧れた人が言っていたことだ。

 柊は、その言葉を聞いて共感していたが、その本当の意味を実感したのは今日が初めてだった。

 

 それからはもう、言葉すら出てこない。柊はひたすら雨に打たれ嗚咽する。それすら抑えはしなかった。

 

「……俺は、今のお前しか知らねえ、昔のお前のことは分からない」

「……ぅぅ……」

 

 身体を支える力を失って地面に崩れる柊を、すんでのところで柊太郎が支えた。

 

「苦しくて、力が入らねぇよな……自分の弱さを責め続けちまう、どうしようもない自責の念に囚われて、自分の全てを否定しちまう」

 

 翔太郎はいわゆる凡人だ。照井やフィリップのような特殊な能力など持ち合わせていないし探偵としての能力も全て叩き上げた物だ。だからこそ、今柊を支えられるのは。

 

「でも、これだけは言わしてくれ、お前は間違ってねぇって」

「……皆んな殺した。俺が……きっと早苗、も俺じゃ、救えない」

 

 嗚咽しながら、息を少しずつ吸って必死に息を吐く。

 

「お前が誰よりも必死に周りの奴等の為に動いてたのは知ってる。気遣いも、思いやりがある事もな」

 

 翔太郎は柊がかもめビリヤードでご飯を食べていた時から既に周りを慮っていたのに気付いていた。

 そして、柊もまた翔太郎が慰めで何かを誤魔化して言う性格の人間ではないという事も分かっている。

 

「お前言ったよな……手を伸ばさなきゃって。でもな、手を伸ばすのはお前だけじゃなくて助かる側も手を伸ばさなきゃ手は掴めねえんだ。もちろん、助けてもらう側を責めてるわけでもない。ただ、どちらかが伸ばせない時もある、そういう偶然ってのは、あるもんだ」

「じゃあ……もうどうすれ、ばいいか……尚更分かりませんよ俺にはっ!!」

 

 翔太郎が、帽子を柊に被せる。

 

「相手を信じて手を伸ばすんだ。今度こそ助けるから、お前も手を伸ばしてくれって」

「また、助けられ、なかったら……」

 

 次こそ、彼の心は折れてしまうかもしれない。

 

「そんな事ある訳ない、そう思えるお前自身の心を信じろよ。次は必ず手が届くって、そう本気で願って手を伸ばすしかねぇんだよ。誰かを助けたいならな」

 

 柊は帽子を握り、膝から落ちる。

 

「翔太郎さんは……怖くないんですか……?」

「怖いさ、怖いに決まってんだろ。……けど俺はそれでも依頼人の為ならどれだけ怖くても、相手が強くても食らいついて必ず倒す」

「なんでですか……?」

 

「俺達が仮面ライダーだからだ」

 

 一歩、翔太郎が前に出る。

 

「なぁ、柊。この世に完璧な人間なんて一人もいねぇ。互いに支え合って生きて行くのが人生ってゲームさ、そうは思わねぇか?」

 

 差し伸べた翔太郎の手は、柊の乱れた気持ちを整理させるには十分な優しさが包まれていた。

 

「……立てるか?」

「……翔太郎さん達の手を借りて……ようやく、ですけどね」

「上出来だ、出来すぎてるくらいだぜ」

 

 柊の頭を二回撫でるように叩き、向き合う。

 

「それで? お前はこれからどうしたい?」

「……グスン……闘う、次こそはこの手を届かせてみせる!」

 

 再び覚悟の灯った柊の眼を見た翔太郎には、もはや不安の余地はなかった。

 

「よく言った、なら一緒に来るか?」

「はい! 絶対……絶対止めましょう!」

 

 唯一助かったと言える少女の為にも、再び闘う意思を灯した柊と翔太郎は再度病院へ向かった。

 

「……どうしてまたここに戻ったんです?」

「ちょっと気になる事があってな。この部屋にいるのは叶の娘だ」

「叶って?」

「グリードドーパントの変身者だ」

「!」

 

 既にアポは取ってあるという。

 

「失礼するぜ。悪いな、気が滅入ってるだろうって時に」

「大丈夫です」

叶 恵(カノウメグミ)。間違いないな?」

「はい」

「恵……」

「ちょっ、ちょっと翔太郎さん……」

 

 翔太郎の袖を引っ張って小声で柊は訪ねた。

 

「まさか叶の事を言うつもりですか……!? 関係ない人は巻き込むべきじゃ……!」

「大丈夫だ、ただ聞きたい事があるだけでそれ以上もそれ以下もねぇよ。ドーパントの話はしない」

 

 ここは俺に任せとけ、と言って。

 

「俺は左翔太郎。探偵をやってるんだが、聞きたい事があるんだ、いいかい」

「大丈夫ですよ」

「もし途中で気分が悪くなったり言いたくなかったら無理には言わなくていい。それじゃ聞くぜ」

 

 帽子を抑えて、翔太郎が少女へ尋ねた。

 

「まずひとつ目だ。君はどういう病気でここに入院してるんだ?」

「臓器が悪いみたいで……治すのが凄い大変な病気らしいです。ここじゃとても出来ないってもし治したいなら外国の一番大きい病院で手術しなきゃ出来ないって言ってました」

「……そうか」

 

 眼が見えなくなる程に帽子を深く被る翔太郎。

 

「それじゃ二つ目、家族が今何をしてるか教えてくれ」

 

 核心に迫る質問だろう。固唾を飲んで見守る柊。

 

「お母さんは私が何かあったらすぐ動ける様にここで働いてます、兄弟はいませんし……お父さんは……」

 

 最後に口詰まる、それだけで彼女にとっての父への気持ちは感じ取れた。

 

「悪い、嫌な気持ちにさせちまったな。お父さんとはもう関わりはねぇのか?」

 

 少女は無言で頷いた。

 

「……お父さんが昔はどこで何やってたか、今ならどこで何やってるか、思い当たる節があったら教えてくれ」

 

 柊の目には、翔太郎が確固たる意思を持って聞き続ける姿に、どこかしら辛さを抱えているのがありありと見えた。

 

 聞く方だって辛いのだ、と。それが今になって気付くほど自分は焦っていたのだという事も分かった。

 

「……よし。ありがとな、またお見舞いに来ても良いか?」

「はい……ありがとうございます」

 

 そして、病院を出た。

 

「間違いない。叶は今もこの街のどこかに居る。恵を助ける為に」

「え? でも家を捨てて研究にのめり込んだんじゃないんですか?」

 

 頭を横に振る柊太郎。

 

「大切な人との絆は、そう簡単に切り離せるもんじゃないって事さ。前を見てみろ柊」

「え? あ! 紫さん!」

 

 傘を持って前方から近づいてくる紫の姿をとらえた二人。

 

「冷えたでしょう? 傘も持っていかないから、ほら」

「ありがとう……紫さん」

「本当にいい漢ってのは雨打たれても様になるからな」

 

 柊の肩に手を乗せて笑う柊太郎。そして柊も翔太郎を見て笑った。

 

「随分とまぁ仲良しになって、フィリップくんも心配してたわよ?」

「ああ、今回は手掛かり見つけられたし、今度は俺と相棒がいる。大舟に乗ったつもりでいてくれて良いぜ」

 

 事件の解決は鳴海探偵事務所一同に任せても良い、と判断した紫と柊。だが二人はまだ問題がある事に、ちゃんと気づいていた。

 

「早苗もまだ苦しみの波に飲まれてる。……ついさっきまでの俺と同じだ」

 

 翔太郎は頷く。

 

「だな。だかそれについては紫さんと柊。二人に任せるぜ」

「俺達に……?」

 

 指を鳴らす翔太郎。

 

「お前も紫さんも嬢ちゃんが帰る場所にいるんだろ? なら解決するべきはあんたらだ。それに、もうお前は苦しさもどうすれば良いかも分かってる筈さ、そうだろ?」

 

 ふと柊が上を見ると看板がある。既に鳴海探偵事務所についた様だ。

 

「紫さんはそいつの肩支えてやってくれ。勿論嬢ちゃんの肩もだ。頼んだぜ」

 

 軽々とドアを開ける柊太郎。自分達が入らないわけにもいけないので紫と柊も入る。

 

「柊。あの子について教えるわ、それで何をすべきか。一緒に考えましょう?」

 

 

 三人が戻る少し前。

 

「早苗ちゃーん! ご飯出来たよ〜!」

「あ、あの……ご飯は大丈夫です」

「そう? でももう朝から食べてないし……倒れちゃうよ?」

 

 沈んだ顔のまま、下に顔を下ろす早苗。

 

「大丈夫よ! あーんなバカタレなんて柊太郎くんやフィリップくん達がケチョンケチョンにしてくれるわっ!」

 

 シャドージャブを繰り返す亜樹子、それを見て、微かに早苗は微笑んだ。

 

「……ごめんなさい、私なんかの為に」

「ん〜ん! 私なんか、じゃないよ早苗ちゃん! 早苗ちゃんすっごい美人だし髪サラサラしてるし人一倍いや二倍三倍優しいの、私知ってるからね!」

 

 手を大袈裟に振って、気遣う亜樹子。

 

「だって私の所為で……風都の人達にも迷惑かけて……死人も……」

「違うよ早苗ちゃん! 迷惑かけてるのはあいつらなの! 早苗ちゃんは何も迷惑かけてないじゃない! それにフィリップくんと柊くんを助けてくれたのは早苗ちゃんでしょ!」

 

 早苗の肩を思わず激しく掴んだ。

 

「あっ! ごめんね! で、でも……早苗ちゃんはやっぱり間違ってないよ!」

 

 だって、と言って。

 

「生きたいと思う事なんて何も間違ってないもの! そんなの誰が否定できるかって話よ!」

 

 シュッ! シュシュ! 自分の口で擬音をつけながら拳を振るう亜樹子。

 この時亜樹子は早苗の様子に気づかなかったが、確かに早苗の眼が揺らいでいた。

 

「だからそんな非常識な奴らはうちの頼れる探偵二人が木っ端微塵にぶっ飛ばして依頼者を守るのよ! 大丈夫!」

「……ありがとうごさいます、亜樹子さん」

 

 そして現在に至る。

 

「亜樹子。貴女は本当にいい女ね。感謝してもしきれないわ」

「えへへ! そうでしょ! 旦那さんの為にももっといい女になる!」

 

 目を燃やしながら奮闘する亜樹子。

 

「今早苗は?」

「早苗ちゃんはご飯食べて寝てると思うけど……」

「……起こすのも悪いけど話せるのももう今くらいしかないだろうしな」

 

 翔太郎とフィリップが話し終えたらおそらく動きっぱなしになる。そしたら話してる時間などないだろう。

 

「あの子は本当に良く笑う子だから。……ただ優し過ぎて今は笑えないでいる。笑っちゃダメだと思ってる……頼んだわよ」

「……はい!」

 

 部屋の奥へと向かう柊。

 

「……よく、折れずに早苗に話し続けてくれたわね、本当にありがとう。貴女は強いわ」

「ああいう時は周りが頑張るのが良いって知ってましたから!」

「やっぱり、貴女は強いわ」

 

 亜樹子の頭を撫でる紫。亜樹子も満更ではなく笑っている。

 

「あとはあの子がどうするか決める事ね」

「あんのバカドーパントは、私達がキッチリ解決するから任せてください!」

「ふふ、柊太郎もそう言ってたし頼りにしてるわよ。鳴海探偵事務所一同ね」

「はい!!」

 

 そして、柊は奥の部屋の前に立ち止まった。

 

 

「……失礼、します」

 

 暗い。やはり寝ているか? と恐る恐る眺める柊。

 

「…………どうも。こうして一対一で話すのは初めてだな」

「……」

 

 全然起きていた。早苗は目を柊に向けながら、押し黙る。

 

「…朝はごめんな、怪我はしてないか?」

「……私はしてない……です」

「ああごめん」

 

 しくじった。多分この子にはこういう遠回しな言い方は逆効果だ。

 真っ直ぐ聞いたほうがいいのだろう。

 

「もうこれ以上自分の所為で他人が傷つくのが見てられないんだな? それもあってか、……口数も減らしてるみたいだが」

「……」

 

 否定も肯定も言わないが、図星なのだろう。早苗の戸惑う様子から見てとれた。

 

「……うーん、先に言っといたがいいな」

「……?」

 

 この場にいたならおそらく紫は止めただろう。柊は自らの出自を語った。

 

「俺、この世界の人間じゃないんだ。別の地球で一度死んでから幻想郷に行ったっていうちょっと特別な境遇の人間だからさ、今更迷惑もクソもないっていうか……迷惑だって感じたら俺は自分の意思でとっととここから出ていけるんだ。まぁ、だから俺はお前のことが迷惑だなんてこれっぽっちも思ってないから、気軽に接してもらってかまわないよ」

 

 気に入らなかったら自分は消える。当たりの強い言い回しはしたが、今の早苗にはこのほうが却って効果的だと判断した。

 

「わかり……ました。よろしくお願いします」

「おう」

 

 きっと早苗は今心臓が早く鼓動している、そうみて取れるほど、何かに狼狽えていた。

 

「……自分が守られるのは、やっぱ嫌か?」

「……私がいなければ、こんな事には……ならないと思うと……」

 

 聖人、巫女ゆえの思考回路なのだろうか。悪いのは相手なのに、自罰してしまう。だからこそ、それはおかしいと思える一般人同然の自分が止めなければならない。そしてそれは柊もまた自覚している。

 

「それは違うそれを言うならあいつらが居なければ、だよ。悪いのはあいつらだろ? 早苗が気に病む必要なんてない」

 

 早苗が、肩を震わせる。

 

「違うんです……あの」

「……?」

「私を狙ってるのは……私の友達の……お父さんなんです」

「…!」

 

 

 ♢

 

 

 早苗の部屋へ訪れる前。

 

 

「彼女の素性を教えてほしい」

「……この世界ではあの子はなんてことない普通の子よ。友達と遊んで、学校へ行って……」

「……その生活でなんで幻想郷に? 不満なんてなさそうですけど」

 

 紫は柄にもなく、眉を顰めていた。

 

「大昔……神代には神様が実際に存在していたの。いろんな苦難があった時、人々は神様に祈りを捧げて、その信仰の力で神は苦難を説き伏せてきた……」

 

 神様が実在するなど、俄には信じ難い話だが、紫がこんな状況で冗談をいうような人でないことは分かっていた。

 

「けど、神秘が科学で実現できるようになって、人々が自分たちの力だけで生きられるようになりつつあってからは、信仰の力は徐々に衰退していった」

「まぁ、道理ですね。今の時代、本当に神様を信じている人たちなんてそういないでしょうし」

 

 紫は首肯した。昔の人間達にとって祈りが当然で、自分たちの力ではどうにもならなかった事柄が今では当たり前のように出来ている事だってある。ならば今の人間にとっては科学の力が当然で、祈りが不自然な物だと判断しても仕様がない事なのだろう。

 つまるところ、科学と祈りは裏表の関係で、どちらかが栄えればどちらかが滅び流。両方を選ぶことは出来ないのだ。

 

「信仰されなくなった神様はどうなると思う?」

 

 先ほど紫は信仰の力によって人々の苦難を解決したと言った。神様にとっての大元の力が人間の祈りの力ならそれがなくなれば。

 

「……まさか、死ぬんですか?」

「そう、消滅するの。祈りがなくなるということはその神様が消え去るということ。二度と生を受けることもなくなるわ」

「……」

 

 このまま科学の進歩が進めば、祈りの力なんてものはそれこそ一欠片も無くなるだろう。

 

「そしたら……神様はみんな消滅するんじゃ……」

「10年やそこいらではない話でしょうけど、いずれ訪れる未来は来るのでしょうね」

 

 紫は本題はここからよ、と言って。

 

「あの子には事情があってニ柱の神が付いていてね、先の説明の通りその二人は幻想郷に行かなければ消滅してしまう。だから早苗は二人を助ける為に幻想郷に行くの」

「なるほどな……」

「まぁ、それは早苗の事情だけれど……」

「……え?」

 

 ボソッ、と呟く紫の言葉を聞き取れず反応した。

 

「なんでもないわ……それで、リスクを鑑みて、あの子は家族にも友達にもお別れを言わないままこの風都へ逃げ延びてきた」

「そっか。そりゃ……きついよな」

「二人があの子に付いているのは早苗の奇跡の力のせいでもあるからね。責任を感じてる面もあるんでしょう」

「奇跡の力、か」

 

 確かに、彼女には不思議な力がある。ただの人間である自分ですら、近くにいれば感じたのだ。おそらく紫の目にはもっと正確に、力が映っていたのだろう。

 

「早苗はその力があるせいであの男に狙われた。そして、その力があるせいで二柱の神を引き留めている、ないし周りに迷惑をかけていると思っている。……話ってこんなものかしら?」

「……ん? 奇跡の力で神を呼んでるんじゃないんですか?」

 

 紫の気になる言い回しにとっついた。

 

「違うわよ。早苗の元にいる二柱は自分たちの意思で早苗を見守っているのよ。ただ、そこら辺の事情は複雑だから、早苗には全ては話さずにいるわ」

「……あの、確認なんですけど、早苗を騙したりとかしてないですよね」

 

 事情は分かったが、なんとなくこの話には裏がある気がしてならない。というか、あるだろう。

 

「……騙して……う、う〜ん」

「それなら話は変わってきますよ」

「……!」

 

 ほんの少しの敵意を含んだ目で、柊は紫を睨む。

 

「話を聞いた限りじゃ命を失うのは神様だけだ。早苗を幻想郷に連れていくのは……まぁ安全の為にっていうんであれば分かるけど」

 

 それならば何故今回の件が起こる前に移動させなかったのか。

 

「ち、違うわ! あの子を騙していないって言ったら嘘にはなるけど……決して陥れるためについた嘘じゃないのよ!」

「……早苗を守る為の嘘、ってことですか?」

 

 焦った様子で紫は頷く。本来なら見られない光景だが、今の力を失っている紫だからこそ、今回の件で柊の力を失うわけにはいかないのだ。

 

「さっきも、話を逸らそうとしたのは……二柱の神とそういう約束をしたからなの。早苗を守る為に、必要以上の情報は第三者に与えないってね」

「……早苗も幻想郷に行かなきゃいけない理由があるんですね?」

「え、ええ……でもその事実は早苗本人に伝えなくてもいい事なのよ。世の中、知らない方が幸せだって事なんて、いくらでもあるでしょう?」

「それは、まぁ…」

 

 ふう、とため息をついて紫は話を続ける。

 

「あの子を見守っている二柱の神は、他でもない早苗の為に、幻想郷に行くことを決めたの。今回の厄介ごとに巻き込まれたのは本当に想定外だったのよ……」

 

 それはおそらく本当だろう。そうでもなければあの紫が自らの能力に制限をかけてまで戦力を呼ぶことなどしない筈だ。本来なら自分の力で事足りるのだから。

 

「そもそも神様を幻想郷に移行させるのだって簡単じゃないのよ。おいそれと移動、ましてや定住させるには相応の準備がいるの。だから今回は本当にギリギリの綱渡りだったわ」

 

 苦しそうな顔でお腹をさすっていると思ったら、今度は嬉しそうにして。

 

「そんな状況だったから、貴方には本当に助けれられた。私と会ったことは、貴方にとっては最悪な出会いだっただろうけど、本当に感謝してるわ」

「……こちらこそ、感謝してもし切れません。だから、そんな風に言わないでください」

 

 紫は愛いものを観る目で柊を見つめた。 

 

「ありがとう。…他に質問はないかしら」

 

 柊は、一つだけ残る疑問を浮かべた。

 

「その奇跡の力ってのは仮に原因不明の病気でも治せますか?」

「……治せてしまうでしょうね、代わりに早苗が大きな代償を払えば」

 

 

 ♢

 

 

「……事情は分かった。それで? お前はどうしたい?」

「──え?」

「……今まで周りにずっと気を使ってたんだろ? 一回くらい自分の我儘叶えたって誰も文句言わねーよ」

「私の……したいこと」

「……!」

 

 ふと、早苗の顔を見ると、眼球の上をうっすらと涙が覆っていた。

 

 

 ♢

 

 

 私が奇跡の力に気づいたのは思春期になるほんの少し前のこと。

 

「ちょっと! 早苗から離れなさいバカ男子!!」

「グスン……ヒック……」

「うっせー!」

 

 私に意地悪をする子供達がいた。私は少し、ほんのちょっとだけやめてほしい、と思った。楽しいと思ってるのを邪魔するのは忍びないけど、私は楽しくなかったからだ。

 

「もう大丈夫だよ? 早苗」

「ありがとう……恵ちゃん……」

 

 恵ちゃん。活発的で男子達相手にも物おじしないカッコいい子だった。

 子供達は捨て台詞を恵ちゃんに吐きながら退散する。

 

 本当に出来心だった。私は頭の中で、フッとこの子達が、悪戯していた子達が消えるような画をイメージした。それはいけないことだと思ったから頭をブンブンと回してすぐにイメージを消した。

 けどその時の私は幼くて未熟だったからか、無意識の内に消えて欲しいと、こっそりと思っていたんだろう。

 

 次の日には全員重症で病院へ担がれていたらしい。

 

 この頃はまだ力の勝手が分からなかった。物心つく頃には自分の力を知覚していたけど、今にして思えばこの時から私は自分の力にうっすら勘づき始めていた。

 

 

 もしかしたら、幼い頃のみんなならもっと楽しいことに使ったり、面白いことに使おうと思えるのかもしれないけど私にはこの力が怖かった。

 簡単に人を傷つけることができる自分を想像すると体の力が抜けていくからだ。

 この日から私は、力を恐れて私の心を内側に押し込んだ。

 勿論、辛いとは思ってなかったし、これが正しいことなんだって分かってたから貫いてた。

 

 でも、本心では違うことも思ってた気がする。なんで私だけこんなことになるの、とかね。

 

 だからいっそもう、全部押し潰して清廉潔白な自分を演じた。だって、それが一番平和に済むから。私は仮面をつけて生きていけば皆んな幸せだ。

 

 そう思っていたら、ここ最近嫌な視線を感じるようになった。

 

 

 ちょうどその時期になってからだ、私の側にいる二人の神の様子がおかしくなったのは。そして、それに気づき「助けたい」と言って、紫という怪しげな胡散臭い人が私たちの元へきた。

 

 神奈子様はその後に私に提案した「住みやすい場所に来ないかと。そこに移動するには、もう少し時間がかかるが」、と。

 

 それから、友達や家族に別れを言う時間すらなかった。幸い一人暮らしで親元へ帰省することもそう多くなかったから、なんの音沙汰もなく引っ越せるだろう。その後のことは考えていないけど。

 

 そして。私達は鳴海探偵事務所の元へと辿り着いた。

 

 

 また、新しい人がきた、柊。と言っていた。

 その人は、私を庇って大きな怪我を負った。

 

 そして、化け物になった恵ちゃんのお父さんは言った。

 

「お前の所為で──」

 

 やっぱり。私の所為で。たくさんの人が爆弾に変わったのも彼らが傷付いたのも、私が生きてるからだ。私の力の所為だ。私の判断は間違っていなかった。この力は不味いものだ。

 

 その日の夜、亜樹子さんが励ましに来てくれた。

 

 本当にいい人達だった。

 気づけば涙が溢れていたけれど、私は本当にダメな女だ。何が、何が奇跡の少女だ。私自身は災い以外の何者でもないじゃない!

 

 甘えに甘えて、しかも力を持っていない。なのに今日の今日まで来てしまった。

 もっと早くに死んでいたら、いや違う、そしたら神奈子様と諏訪子様が悲しんじゃう。

 

 ねぇ、じゃあ、私はどうすれば良かったの?

 

 

「お前の願いを叶えたい」

 

 

 今まで悩んでたのに、鳴海探偵事務所の人達も、紫さん達も私の心のドアを強引にこじ開けてきた。

 皆んなを危ない目に遭わせてしまうことに変わりはない、けど。嬉しかった。

 

 私の力を知ってるのに、事情を知ってるのに、正面からそんなこと言われるなんて思ってなくて、だからかな、仮面が取れちゃった。

 

 

 

 ♢

 

 

 

「恵ちゃんのお父さんを止めて……それで、恵ちゃんにちゃんとお別れを言いたい……!」

 

 頭が、ポッと軽くなった、何かの呪いに掛けられてた物が取れたかのように。

 

「──」

 

 柊は、一瞬目を見開いてから、強く強く答えた。

 

「うん、任せてくれ、必ず叶えるよその願い」

「あの……」

「ん?」

 

 早苗は、ただただ疑問を抱いた。

 

「なんで、そんなに……私を気にかけてくれるんですか?」

「俺を助けてくれた礼、あとは……ケジメ」

「けじめ……?」

「そ。早苗は俺と似てたから。これは何がなんでも助けなきゃ、って思ったんだ」

「似てるんですかね……」

「うん、似てるよ」

 

 笑って応える柊に問うた。

 

「どこら辺がですか…?」

「すぐ困り眉になるところ」

 

 柊は言いながら困り眉になり、早苗もまた質問しながら困り眉になっていることに気づき。

 

「……ふふっ」

 

 微かにだが、微笑んだ。

 こうして早苗の錆びていた心の内側への鍵は、今崩れ落ちた。

 

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