俺は、普通の人間のまま死んだ。だから彼女の境遇を聞いてもよく理解できない。毎日何の危険もなく学校に行けてた、ただの友達がいた。そしてある時突然死んで、突然力を手に入れた。
その力で生前の未練を解消しようと奔放したけれど、その生活で一つ悩んでいたことがあった。
もしかしたら必要になるのは、求められるのは、自分じゃなくてオーズの力なんじゃないかって。
そんなちっさな疑問を持った時、ラッキーというべきか不運というべきか。俺のベルトは破裂した。
そして死の後の世界へと行って本物の閻魔様と一緒に暮らした。
あの人は、俺の寂しさを患った思いに気づいていたのか分からないけど、俺自身に接して蟠りを解いてくれた。オーズの俺ではなく、俺という人間そのものを大事に見てくれた。
それは、幻想郷の皆んなも変わらなかった。見舞いに来てくれたし、俺が博麗神社に一人で行った時、身を案じて怒ってくれた。
それでまた気づいた。俺は恵まれてるんだと。
そして、今。早苗と出会い、早苗についての事情を聞いた。
今の俺に出来る事は────。
♢
「必ず叶える、少し待ってろ……あ、そうだそれと」
ポケットから、綺麗な髪飾りを出した。
「これだけは知っててほしいんだ」
その髪飾りは再び煌めきを集めていた。
「お前が死んで喜ぶ人間なんていない。けど、お前が自分の意思で生きたいって思えて、笑ってくれればそれだけで嬉しい人たちは確かにいるんだ」
その輝きに早苗は、目を奪われた。
だからか、口が軽い。思わず素直に応えた。
「お前が笑う事を拒否する人間と、喜ぶ人間。どちらと共に生きるか選んで、選んだ人間に対してどういう接し方をするのかは、ちゃんと考えておいた方がいいぞ。その方があとグサれなく生きれるからな」
「あ……はい! ありがとうございました!」
そして──。
「……てなわけで、俺は絶対に早苗の願いを叶えてやる事にした。協力お願いします」
「ちょっと!!」
余計なリスクを背負おうと言っていることに等しい。当然紫は許可しなかった。
「どうしました?」
「それって早苗を連れて外に出るって事でしょ? 危険すぎるじゃない! 私達が何の為に無断でこの地に来たのか…」
「それ自体が早苗にとっての心残りだったんだ。早苗はお別れを言いたがってた。だったら俺はそれを遂行させる」
紫が分かりやすく癇癪を起こした。
「それで死ねば何もかもおじゃんよ!? たかだか一回の会話の為だけに死ぬリスクを高めるなんて! 翔太郎くん、貴方からも言って頂戴!」
「ああ分かった。──よく言った、漢だぜ柊」
「はぁ!?」
互いに目を合わせフッ──と笑う。
「ククッ僕達はいつも振り回される立場だね、紫さん。だが……依頼人が望んでる以上そうする事が最適だと、僕も思う」
「紫さん、ごめん。私もそう思う」
紫は眼をパチクリと開けて、大きく肩を下げた。
「……はぁ……どうせ私に止められる力はないもの……ただし絶対に早苗を守ってね」
「勿論さ……悪いな紫さん。アンタが嬢ちゃんを大切に思っているのが本当だってのはよく伝わるんだ。だが…」
「皆まで言わないで頂戴。依頼人にとっての一番の幸せ……それはあとグサれのない別れだものね。私にとっても早苗にとっても、大事な事だし、謝らないで」
「ああ、ありがとな」
「こちらこそ」
そして、数十分経って。
「フィリップさんと翔太郎さんは?」
「あと少し準備に時間がかかるってさ。それが終わったらすぐ行くよ!」
「りょーかい!」
「あ、コーヒーどうですか〜? 紫さん」
「ありがとう亜樹子。頂くわ」
「あ、俺もください」
「はいはーい!」
トテトテと、支度をする亜樹子。そして寛いでいると横から紫が口を開いた。
「……ごめんなさいね、私じゃあの子の力になれなくて……」
「いや……あのそれよりも紫さん。聞きたいんですけど…この髪飾りなんですけどどう思いますか?」
紫が数秒髪飾りを見て言う。
「可愛いわね」
「ありがとうございます! いやっじゃなくて! これ偶に光るんですよ」
「え〜? そんな事ある訳ないじゃない、それどっから拾ったのよ」
「幻想きょ……あの、えーっと……早苗が行こうとしてるところから?」
誤魔化し方がぎこちない柊にちょい焦りを見せる紫。
「貴方ねぇ……ま、いいわ。光ってるって事はその間何かが起こってるって事よね」
「俺がこっちに来る前もこれ光ってたんですよ」
ていうか多分光ったのが原因でこっちに来たんじゃないのか。と推測する柊。
「それが光った時に近くにいた人がワープするって仮説を立てたわけ? じゃあそれが仮に光った時に何かを動かすビックリアイテムとしても…今回は何が動いたのよ?」
「さぁ……?」
後頭部を押さえて話す柊。だが柊には少し心当たりがある。
「ただ……早苗が何か関係してんじゃないかな〜って」
「早苗? どうしてあの子が」
「だってさっき突然光ったんだし……あの子の感情に呼応して光ったっていうならなんか納得できません?」
最初光った時も、微かに助けてという声が聞こえた。あれが早苗の心の声だったんならば理解もできる。
「なにそれぇ……じゃあ早苗ちゃんが柊くんに助けを求めたら柊くんが来たって事? ……念力ってやつぅ? 」
「いや、早苗とは今日が初対面だからあり得るのは髪飾りを探してたって線かな」
と言って。
「どゆこと?」
「……この髪飾りを無くした事に気づいた早苗が、手元に来るように念力を使った。そして近くにいた俺もたまたまでワープした。……として……まぁ、それが出来るのは早苗くらいだろう」
「尋常ならざる力ねぇ……」
(ま、正直言って早苗の力ならあり得る話なのよねぇ)
「結局俺がここに来た理由は分からずじまい…か」
「貴方まで来たのに理由なんてあるのかしら……」
「普通に助けてーって思ったからじゃない? 早苗ちゃんが」
「「え?」」
最後の二択、永久に迷宮入りか出口への光か。
その二択のレールを。
「だって柊くん仮面ライダーでしょ?」
えいっ、と軽ーいノリでただしき道へ踏み出した。
「……ぷっ。あははは! そうね! 亜樹子の言う通りよ、柊。貴方が仮面ライダーだからここに来れたんだわ。だって困ってる人がいたら助けるのが仮面ライダーだものね?」
そんな根も歯もない事を……、と困惑する柊。
「仮面ライダーなら次元だって何だって飛び越えれるんだから!柊くんもそうでしょ!」
「「ぶふっ!?」」
亜樹子はただ、比喩で言っただけだが、正解している。柊は次元屈折できるライダーだ、一瞬それを感知されたと勘違いし思わず二人とも吹いてしまった。
ちょっと整理しよう。
「結局その髪飾りは早苗のだって線が濃厚なのよね」
「じゃあ柊くん今から返しに行ってあげたら? 探してたんでしょ?」
「うーんでも今は寝てるっぽいので……余程の理由でもなければ起こすのは…」
「本当に欲しいと思ったんならいつかもらいに来るだろうし、柊がそれまで持っててあげたら?」
「そうします」
「ま、時間も時間だし。まだまだ分からないことがあるけれど何はともあれ助かったわ、亜樹子。ありがと、お休みなさい」
「「お休みなさい」」
そして──朝。