東方欲望録   作:アンダーソンキャッスル

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まーじ久しぶりの投稿過ぎてビビった。


萃夢想 編
31話 変化と式神と弾幕ごっこ


 幻想郷の賢者は適当な者が多いとは、部下からの提言だ。

 

「紫様」

「ん〜?」

 

 紫の式神が尋ねた。

 

「ここ暫くオーズに対しての旨を聞かないのですが意図的に放置しておいでですか?」

「あーもう辞めたの、それ」

 

 紫は応える。

 

「なるほど……む?」

 

 式神は一瞬固まった。だがそれを無視して紫は話し続ける。

 

「私を信用してくれる数少ない友達だし? それに彼はもう幻想郷の一部だし私がどうこうすることはないわ、それじゃいつも通り私の仕事処理頼むわね〜」

「な……敵対を止めるということですか?」

「敵対? 何言ってるのよ藍ったら。さっさと仕事して頂戴な」

 

 

「ちょっ…待って……説明して下さい紫さまぁぁぁ!!」

 

 気まぐれな賢者は、今日も元気にスキマを通っていくのだった。

 

 

 ♢

 

 

 

「柊! 奴だ!」

 

 人里離れた草むらにて。炎を纏う少女、妹紅が叫ぶ。

 

「了解 ──変身っ!」

 

 

──タカ! ──トラ! ──バッタ!

 

──タ・ト・バ! タトバ! タ・ト・バ!!

 

「うがぁ!?」

 

「はっ!!」

 

 妖怪がオーズに気づき動揺した隙にトラクローを叩き込む。

 

「よし、いいぞ!」

 

 よろけた妖怪を妹紅が羽交い締めにする。

 

「今だ! やってくれ!」

「あ〜ちょっと待って下さいね…」

 

 そう言いつつ、メダルを2枚ベルトから抜き取る。

 

「ん〜〜〜……」

 

 頭でそれぞれに念じこむ。

 

「おい! まだか!? 腕が齧られてるんだが!! 」

「ええ!? ごめんなさいもうちょい待って下さい!」

 

 

──タカ! ──ウナギ! ──ゾウ!

 

「いくぜ!」

 

──《SCANNING CHARGE》!

 

「はぁぁぁ……せいやぁぁ!!!」

 

 ウナギの鞭をしなり斬撃へと変える。

 

 

「うぎゃぁぁぁ!!」

 

 妖怪はオーズの一撃を受け叫びと共に爆散する。

 

「ふぅっ!」

 

 変身を解いて一息ついた。

 

「こんな人里近くに妖怪がいるなんてな。よっぽど飢えてたのかな」

「どちらにせよ、被害が出る前に済んで良かったです」

「それよりお前、あの時間かかるやつどうにかなんないのか?」

 

「あ〜」

 

 フォームチェンジの件。

 柊は外の世界から帰ってきた時、起きたらなぜか三枚のメダルとオーズベルトが布団の横にあったことに気づいた。

 一応紫の元へ話を聞きに行ったが『そこにあった理由は私には分からない。だがその力は間違いなくあなたの物よ』と言ってから好きに使うといい。とだけ言ってくれたきりで、何が何だかという感じだ。

「これ前よりもちょっと使い勝手が悪くなりまして……」

 

 コアメダルを変えたいときは一度外し、メダルを握ることで自分の腕から脳までリンクさせ、変化させたいメダルをイメージして己の意思を伝える必要がある。

 

「ふ〜ん、隙だらけだから一対一じゃ危ないな、それ」

「ええ、俺もまだまだです」

 

──これを映司さん達は平気で使えてたし、尚更肩を落としてしまう。やっぱりまだまだだなぁ……。

 

「よし、それじゃ帰って慧音に……ッ柊!!」

 

 柊に向かって衝動的に飛び込む妹紅。

 

「うぉあ!」

 

 忍び寄っていた妖怪が隙を突こうとする。

 

(こっちが報告の妖怪だったか!? 間に合わん!)

 

「くっ!!」

 

 しかし、新たな妖怪は別方向からの弾幕で文字通り灰になった。

 

「え!?」

「危なかったな、だが助けられたみたいで良かった。ここから先は妖怪の山に繋がってるから野良妖怪も多いんだ。余程の何かがなければもう立ち入るんじゃないぞ?」

「ありがとう! 君は?」

 

 妹紅は新たに現れた者の顔を見てすぐに柊に語りかける。

 

「 柊、私の後ろに来い!」

「え?」

「この女狐、妖怪だぞ!」

 

 両の手に炎を灯し威嚇する。

 

「む、そうか、そうなるか。事情を説明させてくれ。私はあなた達を襲う気はないんだ」

「そんな分かり易い誘い信用できるか!!」

「いや──大丈夫だ、妹紅さん。信用しよう」

「は!?」

 

 柊の甘い発言に腹を立てる。

 

「お前はなんでそう警戒心が薄いんだ!」

「俺を狙ってるならいくらでもチャンスはあったでしょ。それにこの人の眼は嘘をついてない」

「何馬鹿なこと……」

「妹紅さん、大丈夫だよ。この人は心配するほど悪い人じゃない」

「……」

 

 妹紅は呆れたような顔で柊を見る。

 

「……襲われても私の所為にすんなよ。お前が言ったんだからな」

「うん、ありがとう。妹紅さん。それじゃ、いいよ話して」

 

 金髪の少女は柊に言われるなり首を縦に振る。

 

「すまないな、まずは……」

 

 

 ♢

 

 

「ごめんなさい」

 

 安全な場所に移動するなりすぐ頭を下げた女の人。

 

(ん? 尻尾がある……)

 

 しかも9本、この人もしかして九尾の妖怪ではなかろうか。

 

「私は紫様の式神、八雲 藍という。好きに呼んでくれて構わない」

「八雲、お前何しに来たんだ? 人里によるならこっちじゃないだろ」

 

 柊の前方で守るように立つ妹紅。

 

「紫様が……もうオーズを狙わないと言っていたから謝罪しようと」

「え、ああ」

「いや柊、こいつは信用しないほうがいい。紫も何企んでるか」

 

「いや、いいよ。こっちこそすいませんでした」

 

 肩をポンと押す。すると頭を上げて聞く。

 

「許してくれるのか?」

「ええ、はい。俺も事情は知ってますから」

「おい柊お前、危機感なさすぎるぞ」

 

 呆れた顔で柊を見つめる妹紅。

 

「紫さんとも仲直りしたし、大丈夫ですって」

「はぁもういい。……はた迷惑な人たらしめ」

「こっちも悪かったし、はい! 仲直り!」

 

ガシッと手を握った。

 

「ありがとう、貴方は紫様の数少ない友達だ、私も手伝える事は快く手伝おう」

 

フッと笑う藍。

 

「あ、なら敬語じゃなくていいです。多分俺の方が下でしょうし」

「そうか、では早速だか何かあるか? 手伝える事は?」

「う〜んそうだな……」

「別に今じゃなくてもいいだろう、手伝って欲しい時は呼べばいい」

「そうですね、また何かあったらお願いします」

 

「そうか、では失礼する。紫様は呼べばいつでも来るからそこから私に伝えてくれれば。よっぽどの用で手が埋まってるでもない限り手助けに行こう」

 

 証印を開き、その場から消える藍。

 

「すげ、消えた」

「式神だからな主人の元に行く事は容易だろ。ほらそれより慧音に報告、行くんだろ?」

「ああ、はい! て、なんか怒ってません?」

「いいから行くぞ」

「やっぱ怒ってる! ご、ごめんなさい!」

 

 

 

──昼飯時を終えて、紅魔館へと向かった。

 

「くか〜……くか〜」

 

 

「……ぉぉおおおおぉおお!」

 

チーターレッグで爆速で紅魔館に着いた。

 

「ふうっ! これなら霊夢達に怒られないからやっぱ便利だな!」

 

これからは一人でも紅魔館、これるもん!

 と、体制を整えた所で門番さんを見る。

 

「寝てるじゃん美鈴さん」

 

 鼻ちょうちんを膨らまして立ったまま寝てる。

 

「仕方ねぇな…」

 

 放置してたらナイフを頭に刺されそうなので助けてあげよう。

 

 パチン!

 

「ふえっ!?」

「おはようございます」

「し、柊くん……はい、おはようございます。今日はよくおいで下さいました。どうぞ」

「どうも〜あ、それと」

 

「?」

 

「俺、力戻ったんでよければまたこれからは特訓闘りませんか?」

 

「ほんとですか!? 是非! 是非やりましょう! そりゃ!」

 

目を光らせて戦闘態勢に入る、が。

 

「いてて……後日だってば」

「あ……」

 

 

 ♢

 

 

「よく来たわね、今日は私に会いに来たんでしょう?」

「ついで感覚ですけどね」

「ふふ、いいわよそれで? それで?」

「レミリアさんに助けられた部分も多かったのでありがとうって言いにきたんです」

「……というと?」

「レミリアさんが運命は変えられるって言ってくれたから、最後の最後で手を伸ばせたんです」

「そ、良かったわね」

 

「それで聞きたいんですが、俺がオーズになるってなんで言ってくれなかったんです?」

「その顔が観たかったからよ」

 

 ニイッと笑って柊を見下ろしている。

 

「おかげさまで、何回ももうダメだと思いましたよ」

「仕方ないじゃない、何が起きるか言ったら実現しなくなる可能性の方が高そうだったもの」

「俺がオーズになれるように仕組んでくれたんですか?」

「仕組んだんじゃなくて、仕組まれたものを解いたというか……」

 

 でもね、と続ける。

 

「私はお前にもっと苦しさも楽しめる余裕を持って欲しいのよ。あわよくば」

「なんですかそれ」

「柊、お嬢様はそういう人なの。諦めなさい」

 

 紅茶をもって突如現れたメイド長。

 

「ビックリした。まぁ、ならその件はもういいや」

 

 聞きたいのはそれじゃないし。

 

「それともう一個、こっちでも俺が力を使えるのはレミリアさんのお陰ですか?」

 

「違うわよ? 私本当に見てただけだし。知らないわ」

「あ、そうなんですね、すいませんでした。でも一応教えてくれてありがとうごさいました」

「ええ、ええ、 良いわよ」

「それじゃあ」

 

 トボトボと廊下を歩いていく柊を見届けた。

 

「……伝えてあげないのですか?」

 

 お嬢様は賢い、きっと原因にも気づいてる筈だ、と察する咲夜。

 

「最初は自分で考えてみないとね、何でもかんでも自分の思い通りにいくと思ったら大間違いよ」

「やはり理由は気づいてらっしゃるのですか」

「まぁ、その推測も確定じゃないし。それにどうでもいいじゃない? なんで力が手に入ったかなんて。素直に喜べばいいのにさ。これだから人間は…」

 

「力にはそれだけの責任が伴いますから…」

「私だったら気にしないで悪用するけどね……」

 

はー、と素で言うレミリア。柊に少し同情せずにはいられない、といった顔の咲夜であった。

 

 

廊下を歩いて奥の部屋に、フランはいた。

紅霧異変以降、部屋を移したらしい。

 

「やっほ〜フラン」

「あ! 柊だ!!」

 

がばっ!! っと抱きつくフラン。

 

「ああ、いっぱい遊ぼうな、今日は」

「わ──い!!!」

 

本を読んだり鬼ごっこだったり、フランの言う通りの事をやり終えた後。

 

「ねぇしゅーう?」

 

「ん〜?」

 

「弾幕ごっこしたい!」

「弾幕ごっこ?」

 

 弾幕ごっこって何だ?

 

「え? 弾幕ごっこ知らないの?」

「あ、ああ」

「こういうやつ!!」

 

 フランの右手からトゲ状の弾幕が飛び出て、壁を粉砕した。

 

「……なるほどね」

 

「でも柊もやってたじゃない、私と。なんで知らないの?」

 

「いやぁ…あくまで護身術でしか力を使わなかったからかな。名前だけなら聞いたことはあったんだが」

「偶に遊びに来る魔理沙ともやるけどすっごく楽しいんだよ?」

 

 そういえば魔理沙も弾幕飛ばしてたな。

 

「けどフラン…俺弾幕撃てないよ?」

「じゃあ今日はそれやる!!」

 

「えぇ? それやるの?」

 

きっと今日は、大変な1日だ。

 

 

 

「いやっほ──う!!」

 

地面を這い寄る数多の弾幕。

 

「いやぁぁぁぁぁ!」

 

それを気合いで避け続ける。

 

「どうして反撃してこないの? 良いんだよ?」

「バカ! 俺は弾幕が撃てねぇの! さっき言ったじゃん!」

 

「あり?」

 

ピタッとフランは一度攻撃を止めた。

 

「よくそれで今日まで生きてこれたわね、どうやっていつも闘ってたっけ?」

「俺と闘った時の事覚えてないのか?」

 

「いーや覚えてるわ! あの時の弾は魔理沙の弾幕だったわね」

 

そうそう。あの時は魔理沙に手を貸してもらっていた。

 

「だから俺は弾幕が撃てないから接近するしかないの。それかタジャドルかコンドルをつかってオーズになるしかないけど……」

「随分と面倒くさい闘い方ね。撃てば良いのに」

「だーかーら! 撃てるなら撃ちたいよ俺も!」

 

撃てば良いじゃない。と頭上から声がする。

 

「レミリアさん…!」

 

「面白そうだから私も混ぜてちょうだい……と言いたいところだけれど今日はここまでね」

 

「えーなんで〜!?」

 

フランが不満そうに叫ぶ。

 

「宴会だそうよ」

「えんかーい?」

「またか? 先週もやったばかりですよね?」

 

そうね。と肯定する。

 

「私ここで柊と遊ぶからお姉さまだけで行ってきてよ」

「貴女仮にもここの主人である私を一人で行かせる気……?」

 

我が妹ながら正気じゃないわ、と呟く。

 

「俺も酒飲めないしなぁ……先週行ったから俺も今日はいいかも」

「はーん、私の言う事が聞けないわけ?」

 

「う、分かりました…じゃああっちで遊ぼうぜフラン」

「ぶー! 柊はお姉様には弱いんだ!」

「ごめんごめん、遊ぶから許してくれよ」

 

プイッとフランは咲夜の元へ身支度をしに行った。

 

「嫌われちゃったかしらね?」

「互いにですよ。もう……それよりさっきのは? 話聞いてましたよね?」

 

撃てばいいじゃない、とは。

 

「お前の身体にはちゃんと霊力を感じるわ、お前が撃てないのはコツが分かってないからよ」

「あー自転車に乗れたら簡単だけど乗るまでが難しい、みたいな?」

 

そうそう。と頷く。

 

「でも大事なその自転車がまずないっていう話では…弾幕打つアイテム的なやつ……」

「作りなさいよ、自分で」

 

無茶をいう。そんな知識も技術もないっていう話だ。

 

「それは追々ね」

「すぐ、はぐらかす……どうせ何か見えてるんでしょ?」

「ま、今に分かるわよ」

「? まーた含みのある言い方をする…」

「ククク、ほら良いからお前も準備をするの!」

 

 

そして宴会の場についた。

 

「げ」

「もう既に出来上がってるやつもいるわね」

 

「あら? アンタ等来るの遅いじゃない。もう飲んでるわよ」

 

何人かは寝ているし、霊夢も既に数本飲み干していた。

 

「先週から、またなんで?」

「なんででも。別に理由なんて些細なもんよ。ほら、桜だって観れるし?」

 

そうだ。春雪異変が終えてから幻想郷には桜が咲いた。

幻想郷はその名に負けず幻想的で煌びやかな桜が咲いている。

 

「日本でもこんなに綺麗な桜は観れた事なかったなぁ」

「ああ、外来人なんですってね」

 

咲夜。と指を鳴らしてワインを仕入れる。相変わらず手際いいなぁ。

 

「うん、美味しい! 流石は咲夜。今日もいいもの持ってきてくれちゃって」

「偶々ですよ、お嬢様」

 

「ほんとだ、おいちー」

ペロペロと確かめるように舐めるフラン。

 

「フラン、はしたないから辞めなさい」

「えー」

 

渋々やめるフラン。そして自分のグラスのワインを分けてやるレミリアさん。ほんと仲良くなったな。

 

「ほんと、平和ですね」

「………」

 

ワインを一口。そして。

 

「……ええ、そうね」

 

今日も何事もなくただ、宴会を終えて紅魔館に泊まった。

 

紅魔館宿泊から二日後。

 

「は? また宴会?」

「ええ、明日らしいです」

 

私の頼れる従者、十六夜 咲夜はそう告げる。

 

「……ふーーん?」

「? どうかなされましたか?」

 

「咲夜は明日の宴会どう思う?」

「どう? ですか?」

 

素朴な疑問を問いかけてみた。

 

「別に…どうという事も…」

「そ、分かったわありがとね」

 

パタパタと羽根を広げて館を移動する。

 

 

そして、思いっきり息を吸って叫んだ。

 

「柊ーー!! いるかしらーー!?」

 

「はーい!」

 

いつも通り、フランの部屋にいるようだ。

 

「なんですか?」

 

ガチャリ。ドアを開けると、顔に墨がついていた。

 

「何してるの?」

 

「おままごとで泥棒の役をさせられてるんです」

「私が泥棒に恋する乙女よ。館を壊して侵入した泥棒に心を奪われる役よ」

「楽しいのそれ」

 

「「さぁ……」」

「くっくっ……」

 

相変わらず真剣にバカやってるみたいで良し。

 

「そう、面白そうね私も混ぜてくれない?」

 

と、言いたいところだけれど。と以前と同じ口調で話しかけてみた。

 

「明日、宴会だそうよ? どう思う? 柊。フラン」

 

「別に私はいいよー?」

 

この時点で怪しむべきではあるだろうが、フランは気分屋だ。まだ分からない。

まだ、まだ確証には至らないわ。

 

「んー? 宴会ですか? ()()()()()()()

 

「……そう。ありがとね。確信したわ」

 

そう言って外を出てから再び咲夜を探す。

 

「あ、咲夜! ちょっと!」

「? はいどうしました?」

 

「ちょっと、出かけてくるよ」

 

咲夜が訝しげに見る。

 

「こんな時間に? ってまあ。普通の時間かしら」

「そんなわけで留守番お願いね」

 

「何言ってるんですか、お伴しますって夜は危ないですよ」

 

その言葉にレミリアは物申す。

 

「誰に物言ってんのよ誰に。それに今日は急ぎの用があるの」

「でしたら、私が。急ぎの用を任せたら幻想郷1です」

 

まぁ、そりゃね。けど今回は。

 

「私が急がないと行けない用なの」

 

「今夜中に幻想郷中を脅し回ってくるつもりだから」

 

「…何かあったんでしょうか」

「何かあったの、それじゃよろしくね」

 

「日が昇る前には帰ってきてくださいね」

「あ、そうか。一応日傘を持ってくわ」

 

そういって可及速やかに羽ばたいて行ってしまわれた。

 

その後紅魔館の隅々を掃除していると。

 

「咲夜さーん」

「どうしたの?」

 

フランを抱っこして咲夜に声をかける柊。

 

「遊び疲れたのか寝ちゃってさ、どうすればいい?」

「私が寝かしつけとくわ、ありがとね」

 

いえいえ、助かるます、と慣れない敬語を使う癖を指摘され柊もまた、笑顔で返事する。

 

「……ねぇ、ちょっと」

 

折角だし、聞いてみるか。

 

「はい?」

「お嬢様に何か可笑しな点なかった? いつもと違ってここが変ってところ…」

 

ん〜と悩みながらしばらくすると。

 

「ちょっと優しいところ?」

「ぶっ飛ばすわよ」

 

えぇ…と呟く柊。

 

「じゃあ知りませんよ別に。何もおかしい所なんてないと思いますけど」

「一応、追いかけて行ってくれないかしら? 心配なの」

「過保護だなぁ」

 

ナイフをポケットから数本取り出すと、すぐ謝ってきた。もう、なら煽らなければいいじゃないの。

 

「ほら、行った行った」

「しっかたないなぁ…何もなかったら帰ってくるよ? 俺」

「ええ、それでいいから。それじゃ頼むわね、あとこれ」

「ん?」

 

風呂敷を手渡される。

 

「軽い料理が入ってるから、お腹空いたら食べて頂戴」

「どうも…」

 

咲夜さんの料理は美味しいし気持ちは有難いが、簡単には帰ってくるなというメッセージでもある気がする…。

 

「行ってきまーす」

 

そうして紅魔館の門をくぐった。

 

俺はオーズに変身しバッタレッグでピョンピョンと跳ぶ。

 

(どこだよ〜レミリアさん)

 

とりあえず紅魔館の近くを虱潰しに走り回った。がいない。

 

(ヒントも何もないし、こんな夜だしなぁ)

 

ライオンヘッドでなければ視認しづらい程に暗い。

 

ちなみに今の形態はライオン、トラ、バッタ。

これが一番索敵には向いてると判断した故の形態だ。

 

とそんな事より作業に集中しなければ。

 

「おーい! ちょっとー!!」

「…ん?」

 

「聞きたいことあるんだけれど、いいかしらー?」

 

後ろを振り返ると、そこに居たのは。

 

「私の事、覚えてるかしら?」

「えーと、アリスさん?」

 

「そ、良かったわ覚えててくれたのね」

 

そこまで知人は多くないから、忘れることは早々ないんじゃないかと思うけど…ん?

 

「俺ってこの姿見せたことありますっけ」

「ないわ。けど新聞で見た事あるし、霊力の質から貴方って分かるわよ」

 

ちょっと待った、聞き捨てならない単語が入ってたぞ。

 

「新聞で見た? って?」

 

「あの烏天狗の新聞よ、貴方の能力の事書いてあったわ」

「ちょっと!? 人里の人達にばれたらマズイでしょ!?」

「大丈夫よ、あいつ渡す相手は選んでるし、バレても何とかなるわよそれよりもこっちの方が大事」

「何とかならないと思う…んで?」

 

両肩にポン、と手を掛けて、言う。

 

「この妖霧は誰の仕業かしら?」

 

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