東方欲望録   作:アンダーソンキャッスル

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5話 異変出動と我が儘とメイド長

「れ、霊夢…」

 

服も体もボロボロな柊の姿を一通り見てから、ため息をつきながら言った。

 

「弱い癖に出っ張っちゃうからそうなるのよ。これに懲りたらお人好しも程々にすることね」

 

 言葉のみではそれなりに毒気があるものの、柔らかな声色と声から発せられたその言葉からは、言葉通りの意味には聞こえなかった。だからか、柊も笑って。

 

「め、面目……な、い」

「はいはい、喋らない。ちょっと待ってなさい、すぐ楽になるわ。……囮になってたみたいね」

 

 柊の額に手を当てる。そして言った通り柊の苦悶の顔は少しずつ緩む。

 

「お知り合いで?」

「命の恩人よ。コイツのね」

「成る程?」

 

 霊夢は腕をポキポキ鳴らしながら美鈴の元へ一歩一歩足を運ぶ。

 

「アンタには関係ないわ。それより喋ってないで早く来なさいよ。どうせ弾幕苦手なんでしょ」

「……博麗の巫女ともあろうものが……油断ですか?」

「んなわけ無いでしょうが。最初で最後のチャンス捨てちゃって良いのかって言ってんだけど?」

 

 柊に向けた言霊とは打って変わって棘を含んだ言い方に美鈴はむっと顔を顰めた。

 

「よほど自信があるんですね」

「ええ」

「はっ!!」

 

 霊夢がいい終わるか否かという半ば奇襲の状態。更に並みの妖怪では出せない驚異的なスピードで地面を駆けて一気に霊夢の背後に行き拳を振る。

 

「はい、お終い」

 

 霊夢はヒラリ、と拳を躱して美鈴のお腹に掌底を喰らわす。

 

「がっ…! あ……ぅ」

 

 美鈴はそのまま仰向けに倒れ込んだ。

 

「……前言撤回。アンタこんな奴に負けたの?」

「ご、ごめん」

 

 さっき褒めてくれた霊夢と同一人物か疑うほどの呆れた顔で、柊はモノ言われる。

 

「少し身体に負担が掛かるわ」

「え?」

 

 霊夢は何も言わずに柊の頭を触りながら、目を閉じる。

 

「…は!!」

 

 俺の額に貼った札の重圧が掛かった後、すぐにそれは消え身体が軽くなった。

 

「今……のは」

「さっきのは止血結界、今のは私の霊力を分けたわ。これで少しは動けるようになったでしょ。人間で良かったわね。霊力を分け合うのは人間にしか出来ないことだから」

 

 切れた唇の血を服で拭いながら、霊夢に言う。

 

「助かった、んじゃ、屋敷入ろうぜ」

「……まぁいいわ。時間がないし、歩きながら話しましょうか」

 

 

     ♢

 

 

「久しぶりにあったけど、変わってなさそうで良かった」

「ええ、そっちも変わってないようね。……どうせ人里の人達の為に来たんでしょ」

「ああ、流石に被害が大きすぎたからな」

「こういう時は私が出っ張るから無理しなくてもいいのに、慧音も言ってなかった?」

「それでもやれることあるだろ?」

「そ」

 

 そう言って霊夢と柊は紅魔館の門を通り抜ける。

 

「それよりさ!なんであの姿で俺って分かった?」

「? ……遠くから見てアンタかなーって、直感ってやつ?」

「すげぇな……」

「ま、この仕事を長くやってると敵味方の区別はつくようになるのよね」

 

 自慢げに言う霊夢を穏やかに見つめながら、柊は切り出す。

 

「そうじゃなくてさ、俺を見て妖怪だって思わなかったの霊夢がはじめてなんだよ」

「……まぁ、おかげで合点がいったこともあったし。姿が変わるって言ってたからね。そりゃちょっとは驚いたけども、妖力は感じなかったから」

 

 柊の目から見てもさっきの美鈴に対しての闘いっぷりも相当手慣れてた。やはり霊夢は只者ではない。以前から見ていた霊夢への価値観、というより見方が変わる。より凛々しく見えた。

 

「それより魔理沙見なかった? 多分魔理沙のためにあいつとやり合ってたでしょ? 魔力は感知したし、いるはずなんだけど」

「ああ、魔理沙なら先に館の中に……」

「あのバカ……アンタを一人にしとくなって自分で言っておいて……」

「まぁ頼んだのは俺だから……」

 

 ──不甲斐ない所ばかりで申し訳ないな。あれ?ていうか今の発言は…。

 

「心配してくれてたのか?」

「自惚れるな。助けてやったのに、私の目に入るところで死なれたら後味悪いでしょうが」

「そ、そっか…いやでも…」

「うるさい。はいこの話終わりぃ!」

 

 ほんのり赤くなった顔で霊夢は否定した。

 

「それでも、やっぱ凄いよさっきの動き」

「はいはい、分かったらとっとと慧音の所に戻りなさい。ここはアンタにはちょっと危険すぎね」

 

 そうは言っても、まだ異変は解決していない。

 

「いや、俺も一緒に行くよ」

「は? 絶対ダメ、アンタが帰れるように霊力消費したのよ? それにさっきので懲りてないの?」

「で、でも…」

 

「あ?」

 

 すごい眼圧で睨みを決める霊夢。怖すぎて柊は何も言い返せなくなった。

 

「な、何でもない」

「門番であのレベルなんだから屋敷はもっと手強いのがいるはず……ったく面倒くさい」

「せめて……美鈴さんを自室に連れてく事だけは」

「異変を起こしたのはそいつとその連れよ。それに妖怪だから少ししたら起きるわ」

 

 そうかもしれないけど。

 

「でも……ほっとけないよ」

「はぁ〜、わかったわ、そいつ自室に連れて行ってやりなさい、ただしそれ終わったらすぐ帰る事、 私は解決を優先するから貴方を守ってやれない。どうしてもやばくなったらそいつ捨てて走って逃げること、いいわね?」

「ああ、分かった」

 

 美鈴を抱える柊を気に留めず館を観る霊夢。

 

「この壁穴から中に入るわ、付いて来なさい」

「あ、ああ!」

 

 霊夢の跡を追うと、そこには扉があった。

 扉を開くと薄暗く広い廊下。

 

「……内と外で空間の広さが違うような……」

 

 柊が霊夢の前に一歩出ようとすると、霊夢が左手を出して遮った。

 

「……お出ましね」

 

「え? あ……」

 

 前方に、銀髪のボブカットでメイド服を着た女の子が現れた。音の一つも立てずに。

 その少女は顔色ひとつ変えずこちらを見つめていた。

 表情は氷のように冷たく凍ついていた。

 

「私たちはこの館の中にようがあるの。悪いけどそこ通らせて貰える?」

「……」

 

 メイドは何も言わない、無言のまま立ち塞がっている。

 

「あっけない」

 

 

「え?」

「柊!ッ!!!」

 

 一瞬の出来事だった。

 

 霊夢が腕を引っ張り、移動させながら、もう片方の手で弾幕を放ちナイフを相殺させた。

 柊が元いた場所には、ナイフが数十本刺さっている。霊夢が手助けしなければとっくに串刺しにされていた所だ。

 

「な!? しゅ、瞬間移動か何かか……?」

「クスクス……力を持たない人間にはそう見えてしまうのかしら」

 

 流石の霊夢も動揺していた。

 

「貴方人間……よね、また随分なビックリ人間が幻想郷にいたもんだわ…」

「今のはただのお遊び、余興はここからよ?」

「ええ、そうね。私はたっぷり楽しんであげるから、柊は行きなさい」

 

「え?」

「アンタにはやらなきゃいけない事があるでしょ? どうせ逃げろって言っても聞かないんだから、さっさとそいつ安全なところに運びなさい」

「あ、ああ任せた!」

 

 一瞬霊夢を見つめた後、霊夢の後ろ姿にサムズアップをする。そしてすぐに走り出した。

 

「あら、そうですか残念です。手応えがなくて」

「!?」

 

 後ろで物音がするので後ろを向くと、霊夢が俺を庇うように立っていた。どうやらナイフを投げられたようだ。

 

「っ……ごめん霊夢! 任せた!」

「言われなくても。ほら行きなさい」

 

 霊夢に顔向けすることなく、美鈴を連れて逃げる柊。

 

「フフッ、かっこ悪いわね、女の子に任せるなんて。そうは思わない? 博麗の巫女」

「別にいいんじゃない? 無駄死にされるより、よっぽど賢明よ」

 

 霊夢とメイドが睨み合う。

 

「ここで貴方は死ぬけどね」

「誰に? まさかアンタとか言わないわよね? だとしたら片腹痛いわ」

 

「そう……ふーん、貴方の臓物、お嬢様に見せれば少しは喜んでくれるかしら」

「言ってろヒステリー女!」

 

 

     ♢

 

 

「わーい」

「きゃはは」

「それ咲夜さんのパンツだわ〜!」

 

「よ、妖精が沢山……大妖精が知ったら喜ぶかもな」

 

 柊はメイド服を着た妖精達に囲まれていた。

 

「あ、あのー」

 

「ひえっ、侵入者ですか!? 誰ですか?」

「なんで門番の人を抱えてるんですか!!」

「ひ、人質……いやよ、妖怪質だ! あの人、妖怪質してる!」

 

「あ、あの……メイド妖精さん……たち、俺美鈴さんを寝かせに来たんだ」

 

「……もしかしてここの人?」

「あんな人紅魔館に居たっけ……」

「……いたんじゃない?」

「じゃ、いっか」

 

 そう言って妖精たちはまた散らばっていった。

 

(セキュリティに関してはず、随分と甘いみたいだな……助かった)

 

「所でさっきは何やってたの?」

「下着の柄だけ見て誰が履いてるのかを当たるゲームよ!」

「貴方もやる?」

「いや、いいや……遠慮しておく。ていうかお前らもやめときな? タチ悪いよ…」

「なんでよー楽しいよ?」

 

 ──さっきあんだけかっこつけておいてパンツ当てゲームをしてたって霊夢にバレたら人間扱いしてもらえなくなりそうだ。苦笑いでもしておこう。

 

「あ、ははは……そ、それで美鈴さんの部屋は?」

「どこだっけ?」

「さあ?忘れちゃった」

 

「う、嘘だろ?……」

「えへへごめんなさーい」

 

 こうなってはもうどうしようもない。諦めて自分で探すことにした。

 

 

     ♢

 

 

 そして、門番をくぐり抜けた魔理沙は。地下図書館にいた。

 

「ぐぅ! パチュリ〜! もうちょい手加減してくれても良いんだぜぇ!?」

「断るわ。全力で潰す」

 

 『アミュレット』と呼ばれるアクセサリーを装備した少女が立っていた。

 

「挨拶し合った仲じゃねえかよ! もっと優しくしてやろうとか、そういう人情はないのか!?」

「妖怪に人情を求めるとはね、同じ魔法使いが聞いて呆れる」

「ちえっ……まっ宴会じゃ良い話題になるな!」

「あら? 地獄でも宴会はあるのかしらね?」

 

 冗談か本意か。恐らく半分半分の怖い顔で言うパチュリー・ノーレッジ。

 図書館を散策していたら彼女に捕まった魔理沙であった。

 

「怖い事いうなよな〜って私は地獄行きかよ!」

「なんなら地獄に行けないくらい塵にしてあげてもいいけれど?」

 

「そいつはごめんだな! 全力で抵抗させて貰うぜ!」

「貴方は虫籠の中の虫。死からは逃れられないわ」

 

 脅しに近い宣言にも動じず、男勝りな笑みを浮かべる。

 

「はっ、そこまで言うんなら乗ってやるさ」

 

 手にミニ八卦炉を携えて、魔理沙は高らかに叫ぶ。

 

「虫かどうか……試してみろよ!」

 

 

 ♢

 

 

「広すぎる……」

 

 もう随分探したが一向に美鈴の部屋は見つからない。

 なにせ屋敷が広い。

 

「無駄な所で体力使いたく無いけど……しょうがないよな」

 

 

 すいません、と柊。

 美鈴を床に優しく降ろして変身する。

 

「──変身ッ!」

 

 

 ──タカ! ──トラ! ──バッタ!

 

 ──タ・ト・バ! タトバ! タ・ト・バ!!

 

 

 鷹の目が真紅に染まる。同時に視界が広がり透視出来るようなった。

 

「部屋は……あっちか……って」

 

(俺さっきまで生身だったのになんでなんともなかったんだ? 霊夢がなんかしてくれてたのか?)

 

 降ってわいた疑問を首で振り払い美鈴roomと書いてある標識を見つけた。

 美鈴を軽々持ち上げて、おんぶする。

 

「急がなきゃ……」

 

 

 とことん鍛えられたのもあるかもしれないけれど、最初の変身と違って身体に力が溢れるだけじゃなくて、余裕すらある。

 

 あのボロボロ状態からこれだけピンピンしているとなると、霊夢は相当霊力を送っていてくれた様だ。

 

 

(でもこれだけ俺に体力を送ってたなんて……霊夢は大丈夫なのか?)

 

 

 ただ、先の戦いで霊夢の強さは把握している。美鈴さんを一撃で沈められるくらい強いのだから

 大丈夫だろう。多分。

 

 

「美鈴さんの……部屋かな?」

 

 美鈴roomと書いてあるんだから、これで間違いないはずだ。

 

 女の子の部屋に入る事に少し躊躇いながら、ドアを開け、ベッドに寝かせて早々に部屋を出た。

 

 

「よし……ん?」

 

 

 コツン、と地面にある仕掛けに気づき、疑問に思ったのでタカヘッドを起動した。

 

「この館、下に空洞がある? のか?」

 

 下が空いている、凄い構造だ。

 

「いや……違う、誰か、小さい子が…?」

 

 牢屋みたいな何かに捕らえられている、人形を抱いた女の子が見える。

 

「この館の主人は……女の子を、監禁してるのか…!?」

 

 

 この館の配色といい、館の主人はさぞかし趣味が悪く、質の悪い変態男に違いない。

 だが、さっき霊夢に止められたばかりだ。役目を終えたら帰れ、と。

 

「……はぁ」

 

 脳裏にまた、よぎる悪夢。

 あのときと同じだ、やらなきゃ後悔する。

 

 

「これが済んだらとっとと帰ろう……うん、ちょっと寄り道するだけ。助けてすぐ逃げる! それで俺の役目はおしまい!」

 

 

 ──《SCANNING CHARGE》!

 

 オースキャナーでバックルにセットしてある三種のメダルを読み取り、力を増幅させる。

 

「はぁっ!!」

 

 

 美鈴の部屋から離れた廊下の床を、思い切り砕き、地下へ向かう。

 

 

「やっぱり侵入者だった──!!!」

「きゃ──!!!?咲夜さ──ーん!!!」

 

 

 ♢

 

 

「妖精さん達には少し悪い事しちゃったかな……」

 

 人様の家を壊したと思うとお腹が痛くなる。けれど少女の救出が優先だ。

 

「よっと……」

 

 地下は結構下にあるようで、落下時の衝撃が足に響く。

 

 

「こ、れは……」

 

 

 酷い、酷すぎる。鉄柵越しに見える少女。人形に抱きついて、孤独な少女。

 

「お兄さんは……何してるの?」

 

「今からこの柵を壊す、危ないから下がってて!」

 

「?何やってるの貴方それ壊す意味なんて──」

「せいやぁ!」

 

 トラクローで柵を切り裂き、無理矢理ドアを壊す。

 

「おいで、ここから出るんだ」

 

「……ねぇ、お兄さん」

「何だ?ここから早く「お兄さんは私と遊びにきたの?」……は?」

 

 先ほどの様な、悲しい変え顔が嘘だった様に、笑顔でこちらを見る。それも、猟奇的でどこか壊れた様な。

 

(ずっと捕らえられてたんだもんな……可哀想に)

 

「ああ、外に出たら幾らでも遊べるから、早くここから──」

「そう……じゃあ遊ぼっか、お兄さんで」

 

 直後、身体が浮く感覚がした。

 

「え?」

 

 

 ♢

 

 

「げほっげほっ……!?」

 

 パチュリーと呼ばれる魔法使いが地下の異常に気付く。

 

「けほっ……あ? どうかしたのか?」

 

 互いの弾幕による砂けむりで咳き込む魔理沙。

 

「……侵入者相手にペラペラとうちの事情を吐くと思う?」

「そうかよ、勝ったら教えろよな」

「それはない」

「ん? 勝てないって事か? それとも教える気がないのか?」

「両方よ」

 

 三枚の札が、パチュリーの周りを巡る。

 

「へぇ、お前にしては大味な事するな。パワーの魅力に気づいたか?」

「それしか脳がない貴方に言われるとはね」

「おいおい、失礼な奴だな」

 

 魔理沙は手に持った八卦炉を光らせる。

 

「弾幕ってのはパワーなんだよ」

「……人間の魔法使いが言う台詞じゃないわね」

「さてはお前虹色の極太レーザーの綺麗さ派手さを知らんな? あれは惚れるぜ」

「……試してみるかしら?」

「お!?」

 

 パチュリーの周りを描いていた三枚の紙は火・木・土。

 

「合成符、アグ二シャイン、シルフィホルン、レイジィトリリトンの上級よ」

「パチュリーにしちゃ、品ってやつに欠けてんじゃねえか!? そんなゴリ押しみたいなのはよ! ねちっこい魔法理論はどこへやらだぜ!?」

「名付けるとしたら……そうね『イグニィアトリリトンシルフィシャイン』ってところかしら」

「さっきの言葉でムキになってんのか!? おい聞けよ! 混ぜただけじゃん!」

 

 魔理沙の挑発を無視して、パチュリーは合成符を練り続けた。

 

「人間が妖怪相手にパワーで勝つなんて……思い上がりだと言うことを教えてあげる」

「うるっせぇなぁ人間人間ってどいつもこいつもよ、人間様をみくびりやがって。そこまで言うならやってやる!」

 

 魔理沙の握るミニ八卦炉はより輝きを増して魔理沙の身体を明かりが照らす。

 

「『恋符』……」

 

「……ハッ!」

 

「『マスタースパーク』!!」

 

 

 パチュリーの放った魔法陣と魔理沙の巨大なレーザーが炸裂する。

 魔理沙の技とほぼ同時に放たれた3枚の合成札。その2枚の効力によりレーザーは力を掻き消されながらも、尚も突き進む。

 

(はぁ……これだから嫌になるのよね、人間って。感情論だけで私の合成符を突破するんだもの)

 

「負けみたい……ね」

 

 レーザーは遂に最後の一枚の札を破りパチュリーを飲み込んだ。

 

 独特な破裂音とともに棚がいくつも崩れ落ちながらも、魔理沙は体勢を立て直しながらパチュリーの元へと歩み寄る。

 

「やるじゃねえかパチュリー。見直したぜ。ただのモヤシじゃなかったんだな」

「……ゲホッゴホッ……ゴホゴホッ……大きな……お世話よ」

「ははっ、ほら大丈夫かよ、手を貸すぜ」

「……要ら……ゲホッ……ない」

「そうかよ」

 

 見上げた精神だな、と思いながらパチュリーを引き上げる手を離す魔理沙。

 

「さ、途中の焦りの理由を話してもらうぜ」

「……この館の主人の妹を抑えていた封印が解けた」

 

 椅子に座りながら、咳き込むパチュリーを魔理沙は覗き込んだ。

 

「強いのか?」

「さぁね、少なくとも私のスペル一枚のセキュリティじゃ小悪魔以下の役にしか立たない。早く行ってあげなさい」

「……初めっから他のところに余力を割いてたのか?よくないぜそういうの」

「手を抜いたつもりはないわ。あれは戦闘用ではないし……ああ、でも貴方なら使えるかも」

 

 その言葉に魔理沙は眉を傾けた。自分は戦闘用の札で充分だ、そう言われたように感じたからだ。

 

「ああん?」

「喧嘩を売ってる訳じゃ、ないわよ……ゴホッ……貴方の適正って……」

 

 そう言いながら、パチュリーは胸元の懐から一枚の札を取り出し、それをそのまま魔理沙に手渡した。

 

「……ああ、なるほどな。でも好みじゃないんだよ。そっち系列の魔法は」

「魔力を込めてあるから、貴方でも使えるはず……使いたくないなら使わなくて、いいわ……ゴホッ……好きになさい」

 

 箒に跨り、パチュリーを指差して言った。

 

「まあ貰っておいて損はないし、好きにさせてもらうか。そんじゃあとは任せてくれ」

 

 そう言い残し、魔理沙は箒に魔法を掛けて、飛び散った。

 

 

 

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